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第四章 九月
第22話 余裕と覚悟
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「私が砂の相手をするわ! アイツはほとんどの魔力を砂に回してるから本体はさっきよりも戦りやすいはずよ!」
「分かった! 気をつけろよ!」
「何のための“技”だと思っている!? 貴様ら2匹をこれで相手するためだぞ!?」
「『砂漠の剣』!」
「……!!」
砂でできた剣を巨人が握った。剣というか、もはや木を一本握っているような大きさだ。“大きい”というのはそれだけで脅威になる。
「くッ! 重ッ!!」
私は自身の身長の何倍もある剣を受け止めた。まるで巨大な岩を持ち上げているような感覚だ。
「『裂火剣』!」
猛火の斬撃で大剣を押し退けた。砂を焼き切るつもりであったが、やはり硬い。刃がかろうじて欠けたくらいで、この程度ではすぐに直ってしまう。
「『砂剛拳』!」
「くッ!」
砂の拳が腹部を強く殴りつけた。上に斬撃を放った直後であったため、防御が遅れてしまいまともに喰らってしまった。
「『砂斬』!」
「……ッ!!」
追い討ちをかけるように大剣も振ってきた。今度は少し防御したが、それでも脇腹を深く切られた。
何本か骨も折れただろうか。だが、まだ動ける。
「儂もおると言ったろう!」
「『牙竜焔拳』!」
「ぐッ……!!」
鋭い爪を硬化と炎で強化した一撃がダルカライトを突き刺した。かなり深い傷を与えることができた。だがこれでもまだ……。
「久しぶりに大怪我だぜ……。だがこれで俺を殺せるなんて思ってねーよなァ!?」
「『砂針』!!」
「……ッ!!」
「がッ……!」
奴は砂の鋭く細い柱を私達に向けて何本も作り出した。そのうち数本が私達の身体を貫き、赤い血が流れ出る。異様に傷が熱く感じる。
「さらばだ。人間共よ」
砂の巨人が思い切り叩きつけてきた。身体を動かさなければ……本当に死んでしまう。
(身体を燃やせ! 後のことなど考えるな! 根性見せろ!! セルセリア!!!)
「『炎の鎧』『最大出力』!!」
「なッ!?」
最高温度の炎で巨人の拳を溶かした。グラは……動く気力はないだろうか……
「……何とか……この一撃で……」
「死に損ないが!!」
「『極大砂爆』!」
巨人が爆発四散した。もの凄い質量の粒が飛んでくる。纏った炎が砂を溶かすも、一部はそのまま肉を突き刺してくる。だがそんなものには怯まずに、ただただ魔族に向かって直進するしかない。
そして業火を纏った剣、剣の形をした業火によ突きを魔族に喰らわせる。
「『豪炎突剣』!」
「貴……貴様! こんな攻撃をしたら貴様も……!」
命の駆け引きをしているのだ。貴様は死ぬことなど考えていなかったろうが……私達は死んでも勝つ! 自爆することなど覚悟の上!
「ぐあぁアアアアアア!!!」
「くッ……!」
「セリ……ア……! 無茶じゃ……!」
私を中心に周辺が炎に巻かれた。熱い。体が焼ける感覚がする。だが奴の体も燃えている。痛みを無視して炎を放ち続けた。
そして私は、いつしか意識を失った。魔族の姿は見えなくなっていた。
「勝ったぞ……! セリア……! 儂らの勝ちじゃ!」
「……ハァ……。エストの助けに……行かない…と……」
セリアはグラの魔力に守られたおかげで一命を取り留めた。もちろん2人とも重症である。が、これほどの戦いで死ななかったことが奇跡だ。
2人とも疲労と傷によって意識を失った。格上相手に覚悟の勝利である!
***
「ハァ……ハァ……」
「避けるので精一杯か? 人間……エストっつったか?」
身体強化で何とか攻撃をいなすことはできていたが、反撃がまったく有効にならずにいた。
「『天爆』!」
「……くそ!」
「いい威力なんだけどね。まだ足りないよ」
接近して殴りつけるも、身体が液状化してダメージにならない。恐らくこの程度のエネルギーでは足りないのだろう。
ダメージになる攻撃は今のところ“白天”しかない。だが、頼みの綱の“白天”は溜めが必要である上に当たってもすぐに治されてしまう。
「うわッ! ……っとに参っちまうぜ。どうしろってんだよ!」
アイツの周囲の地面が手のように動いている。本当になんでもありな能力だ。こちとら殴る蹴るしかできねぇってのに……。
「どうするんだい? このまま続けてもつまらないから、何もないなら殺すけど」
「そんな簡単には殺られねぇよ!」
「そう」
「うおッ!」
身体強化を使っている間はハバの速度にも対応できていた。だが、今はそれまでとは桁違いの速度であった。目で追うことも難しい。足元の地面を変化させて体を押し出していたようだ。
「ぐッ……がはッ!」
心臓に掌底を喰らわされた。痛い……苦しい。呼吸に集中しなければ気を失いそうだ。
「身体強化、解いちゃダメだろ。」
しまった……! 一瞬魔素の操作が疎かになってしまった。その隙を突かれて硬い大地が全身を横から殴ってきた。
「がッ……」
「気付いたか? ダルカライトが負けちまったよ。あっちの方が楽しめたかもな」
弱った意識の中でそんな声を聞いた。確かに言われてみれば魔力の衝突が感じられなくなっている。セリア達が勝ったんだ。おれも負けてはいられない……。
「九番っていってもそこそこ強かったはずなんだけどなぁ。油断したか?」
「いつまでも他所を気にしてんなよ!」
「『穿天』!」
“部分身体強化”と圧縮による打撃でハバを殴り飛ばした。今度は手応えがあった。意識外からの攻撃にも対応できないようだ。
「痛ったた……もう動けないと思ったのにな。思いのほか楽しませてくれるじゃないか!」
「守りに入っちゃ勝てねぇな。でも今ので感覚が分かったぞ」
内臓と骨の悲鳴を無視して身体を動かした。視界もぼやけ、身体中が熱いがそんなことは関係ない。血の流れるうちは生きているんだ。
「分かった! 気をつけろよ!」
「何のための“技”だと思っている!? 貴様ら2匹をこれで相手するためだぞ!?」
「『砂漠の剣』!」
「……!!」
砂でできた剣を巨人が握った。剣というか、もはや木を一本握っているような大きさだ。“大きい”というのはそれだけで脅威になる。
「くッ! 重ッ!!」
私は自身の身長の何倍もある剣を受け止めた。まるで巨大な岩を持ち上げているような感覚だ。
「『裂火剣』!」
猛火の斬撃で大剣を押し退けた。砂を焼き切るつもりであったが、やはり硬い。刃がかろうじて欠けたくらいで、この程度ではすぐに直ってしまう。
「『砂剛拳』!」
「くッ!」
砂の拳が腹部を強く殴りつけた。上に斬撃を放った直後であったため、防御が遅れてしまいまともに喰らってしまった。
「『砂斬』!」
「……ッ!!」
追い討ちをかけるように大剣も振ってきた。今度は少し防御したが、それでも脇腹を深く切られた。
何本か骨も折れただろうか。だが、まだ動ける。
「儂もおると言ったろう!」
「『牙竜焔拳』!」
「ぐッ……!!」
鋭い爪を硬化と炎で強化した一撃がダルカライトを突き刺した。かなり深い傷を与えることができた。だがこれでもまだ……。
「久しぶりに大怪我だぜ……。だがこれで俺を殺せるなんて思ってねーよなァ!?」
「『砂針』!!」
「……ッ!!」
「がッ……!」
奴は砂の鋭く細い柱を私達に向けて何本も作り出した。そのうち数本が私達の身体を貫き、赤い血が流れ出る。異様に傷が熱く感じる。
「さらばだ。人間共よ」
砂の巨人が思い切り叩きつけてきた。身体を動かさなければ……本当に死んでしまう。
(身体を燃やせ! 後のことなど考えるな! 根性見せろ!! セルセリア!!!)
「『炎の鎧』『最大出力』!!」
「なッ!?」
最高温度の炎で巨人の拳を溶かした。グラは……動く気力はないだろうか……
「……何とか……この一撃で……」
「死に損ないが!!」
「『極大砂爆』!」
巨人が爆発四散した。もの凄い質量の粒が飛んでくる。纏った炎が砂を溶かすも、一部はそのまま肉を突き刺してくる。だがそんなものには怯まずに、ただただ魔族に向かって直進するしかない。
そして業火を纏った剣、剣の形をした業火によ突きを魔族に喰らわせる。
「『豪炎突剣』!」
「貴……貴様! こんな攻撃をしたら貴様も……!」
命の駆け引きをしているのだ。貴様は死ぬことなど考えていなかったろうが……私達は死んでも勝つ! 自爆することなど覚悟の上!
「ぐあぁアアアアアア!!!」
「くッ……!」
「セリ……ア……! 無茶じゃ……!」
私を中心に周辺が炎に巻かれた。熱い。体が焼ける感覚がする。だが奴の体も燃えている。痛みを無視して炎を放ち続けた。
そして私は、いつしか意識を失った。魔族の姿は見えなくなっていた。
「勝ったぞ……! セリア……! 儂らの勝ちじゃ!」
「……ハァ……。エストの助けに……行かない…と……」
セリアはグラの魔力に守られたおかげで一命を取り留めた。もちろん2人とも重症である。が、これほどの戦いで死ななかったことが奇跡だ。
2人とも疲労と傷によって意識を失った。格上相手に覚悟の勝利である!
***
「ハァ……ハァ……」
「避けるので精一杯か? 人間……エストっつったか?」
身体強化で何とか攻撃をいなすことはできていたが、反撃がまったく有効にならずにいた。
「『天爆』!」
「……くそ!」
「いい威力なんだけどね。まだ足りないよ」
接近して殴りつけるも、身体が液状化してダメージにならない。恐らくこの程度のエネルギーでは足りないのだろう。
ダメージになる攻撃は今のところ“白天”しかない。だが、頼みの綱の“白天”は溜めが必要である上に当たってもすぐに治されてしまう。
「うわッ! ……っとに参っちまうぜ。どうしろってんだよ!」
アイツの周囲の地面が手のように動いている。本当になんでもありな能力だ。こちとら殴る蹴るしかできねぇってのに……。
「どうするんだい? このまま続けてもつまらないから、何もないなら殺すけど」
「そんな簡単には殺られねぇよ!」
「そう」
「うおッ!」
身体強化を使っている間はハバの速度にも対応できていた。だが、今はそれまでとは桁違いの速度であった。目で追うことも難しい。足元の地面を変化させて体を押し出していたようだ。
「ぐッ……がはッ!」
心臓に掌底を喰らわされた。痛い……苦しい。呼吸に集中しなければ気を失いそうだ。
「身体強化、解いちゃダメだろ。」
しまった……! 一瞬魔素の操作が疎かになってしまった。その隙を突かれて硬い大地が全身を横から殴ってきた。
「がッ……」
「気付いたか? ダルカライトが負けちまったよ。あっちの方が楽しめたかもな」
弱った意識の中でそんな声を聞いた。確かに言われてみれば魔力の衝突が感じられなくなっている。セリア達が勝ったんだ。おれも負けてはいられない……。
「九番っていってもそこそこ強かったはずなんだけどなぁ。油断したか?」
「いつまでも他所を気にしてんなよ!」
「『穿天』!」
“部分身体強化”と圧縮による打撃でハバを殴り飛ばした。今度は手応えがあった。意識外からの攻撃にも対応できないようだ。
「痛ったた……もう動けないと思ったのにな。思いのほか楽しませてくれるじゃないか!」
「守りに入っちゃ勝てねぇな。でも今ので感覚が分かったぞ」
内臓と骨の悲鳴を無視して身体を動かした。視界もぼやけ、身体中が熱いがそんなことは関係ない。血の流れるうちは生きているんだ。
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