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第四章 九月
第24話 無と無限
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……? ここはなんだろうか……。何もない、ただ真っ白な世界が広がっている。距離も高さも質量も重力も時間も。空間さえもないような、それなのに無限に広がる空間のような。何もないようで全てがあるような。矛盾が矛盾せずに存在している世界だ。
さっきまでなにをしていたんだっけ……。そうだ。ハバと戦っていたはずだ。おれの一撃では倒し切れずに……何やら不思議な男が現れたんだったな。そいつがハバを倒した気がするけど……。
おれは死んだのか? いや、そんな感じはしない。根拠はないけれど、どちらかというと今は夢を見ているような気分だ。もうすぐ目が覚めるという確信がある。“もうすぐ”がどれくらい後になるかはわからないが。
そんなことを考えていると向こうに人影が見えた。周りが白いからすぐに分かった。ただもの凄く遠くにいる。遥か遠くの、おれと同じ位置だ。もう一つの別の世界か、あるいは一直線上にいる。
不思議な感覚だ。気持ち悪い世界で、何も分からないのに全てを理解している。人影は顔も見えないし魔力も感じないのによく知っている者な気がする。だが面識はないはずだ。
「君はもっと力を使いこなさないといけないな。よく考えてよく試すんだ。君の運命は険しい道だから」
「誰だ! お前は!」
「分からないか? 俺は君だ。君は俺ではないけどね」
「……?」
「ヒントもきっかけも与えたよ。これからは君次第さ」
その人影は姿を消した。神秘的な悪魔のようなやつだった。何者だ? よく知っているような気がしたが、おれはアイツを全く知らない。この世界で唯一分からないものだ。
その後おれは無限の時間を過ごした。いや、今一瞬の時間が経過しただけだ。永遠に続くこの世界は、おれが1秒も過ごしていない未来の世界だった。そして突然、闇と光が世界を覆った。
「……! あぁ……なんか変な夢を見た気がするな……」
今までどんな夢を見ていたか忘れてしまった。いや、本当に夢を見ていたのだろうか……?
まぁそんなくだらないことは置いといて、どうやらおれは今ベッドに横たわっているようだ。全身が痛いが、生きてはいるようだ。今回の戦闘はしっかり反省しなければ。おれ1人なら確実に殺されていたはずだ。
「お! 起きたか! エスト君!」
「えー……おれを助けてくれた……どちら様で?」
「ははっ! 分からないのも無理はないかな? 僕はギルバートだ。知ってるかい?」
ギルバート……どっかで聞いた名前だ。誰だったか……思い出した!
「セリアの兄さんか! 確か六法帝の!」
「おお! そうだよ! セリアから世間知らずだって聞いたけど、知ってるんだね!?」
そんなことを言われていたのか。いや、間違ってはいないんだが。一度説明されたことはそれなりに覚えているぞ。おれは。
「ところで君達が九月を倒したっていうのはそこそこ広がってるよ。ほとんど無名だった奴が最強格の魔族を倒したんだ。当然といえば当然だね」
「おれは負けたようなもんさ。あんたが来なけりゃ死んでたよ。ありがとう」
「いいさ、いいさ。謙虚だね。負けたといっても大したもんだよ。怪我が酷かったけど大丈夫かい?」
「身体中痛いけど……そのうち治るだろ。……左肩は流石に動かしづらいな」
ハバに貫かれた傷はまだ痛みが強かった。だがそのうち治るだろう。なんてったっておれの身体は頑丈だからな。
「本当に治るのが早いんだね。能力の影響かな。でも安静にしておくんだよ」
まぁ無理に動かすつもりはないからまだ寝ておくつもりだ。そんなことを思っていると2人の影が部屋に入ってきた。
「エスト! 目が覚めたのね! 良かった……」
「おう、おはよう。お前らは大丈夫か?」
「儂らはお前ほどではない。お前こそ大丈夫ではないじゃろ」
「ああ、まだ身体中が痛むよ」
「大変だったのよ!? 熱が出たし1週間も寝てたんだから!」
「そうか……それは大変だったな」
「あんたのことよ!」
「おれ!? 1週間も寝てたのか!?」
「ホントに心配したんだから……!」
「ああ、悪かった。……いや、ありがとう」
「いつ起きても平気なように果物とか買ってきてるから。好きに食べてくれ」
「ああ、グラもありがとう」
「いいんじゃいいんじゃ。お互い様じゃよ」
1週間も寝てたのか。それは確かに心配させてしまったかも知れない。今度ちゃんとお礼をしなければ。
「そういえばここはどこだ?」
「バルバタの隣町のフラガルの宿だよ。君達を運んできたんだ」
「何から何まで世話になってるな」
「構わないよ。本当は僕が九月を倒すつもりだったんだけど君達がやってくれたから手間が省けたしね。……ああ……まぁ感謝してくれるなら一つ頼みたいことがあるかな」
頼み事? 六法帝がおれ達にお願いすることなんてあるのか? ……いや、そんなことは関係ない。
「おれ達にできることならやらせてくれ」
さっきまでなにをしていたんだっけ……。そうだ。ハバと戦っていたはずだ。おれの一撃では倒し切れずに……何やら不思議な男が現れたんだったな。そいつがハバを倒した気がするけど……。
おれは死んだのか? いや、そんな感じはしない。根拠はないけれど、どちらかというと今は夢を見ているような気分だ。もうすぐ目が覚めるという確信がある。“もうすぐ”がどれくらい後になるかはわからないが。
そんなことを考えていると向こうに人影が見えた。周りが白いからすぐに分かった。ただもの凄く遠くにいる。遥か遠くの、おれと同じ位置だ。もう一つの別の世界か、あるいは一直線上にいる。
不思議な感覚だ。気持ち悪い世界で、何も分からないのに全てを理解している。人影は顔も見えないし魔力も感じないのによく知っている者な気がする。だが面識はないはずだ。
「君はもっと力を使いこなさないといけないな。よく考えてよく試すんだ。君の運命は険しい道だから」
「誰だ! お前は!」
「分からないか? 俺は君だ。君は俺ではないけどね」
「……?」
「ヒントもきっかけも与えたよ。これからは君次第さ」
その人影は姿を消した。神秘的な悪魔のようなやつだった。何者だ? よく知っているような気がしたが、おれはアイツを全く知らない。この世界で唯一分からないものだ。
その後おれは無限の時間を過ごした。いや、今一瞬の時間が経過しただけだ。永遠に続くこの世界は、おれが1秒も過ごしていない未来の世界だった。そして突然、闇と光が世界を覆った。
「……! あぁ……なんか変な夢を見た気がするな……」
今までどんな夢を見ていたか忘れてしまった。いや、本当に夢を見ていたのだろうか……?
まぁそんなくだらないことは置いといて、どうやらおれは今ベッドに横たわっているようだ。全身が痛いが、生きてはいるようだ。今回の戦闘はしっかり反省しなければ。おれ1人なら確実に殺されていたはずだ。
「お! 起きたか! エスト君!」
「えー……おれを助けてくれた……どちら様で?」
「ははっ! 分からないのも無理はないかな? 僕はギルバートだ。知ってるかい?」
ギルバート……どっかで聞いた名前だ。誰だったか……思い出した!
「セリアの兄さんか! 確か六法帝の!」
「おお! そうだよ! セリアから世間知らずだって聞いたけど、知ってるんだね!?」
そんなことを言われていたのか。いや、間違ってはいないんだが。一度説明されたことはそれなりに覚えているぞ。おれは。
「ところで君達が九月を倒したっていうのはそこそこ広がってるよ。ほとんど無名だった奴が最強格の魔族を倒したんだ。当然といえば当然だね」
「おれは負けたようなもんさ。あんたが来なけりゃ死んでたよ。ありがとう」
「いいさ、いいさ。謙虚だね。負けたといっても大したもんだよ。怪我が酷かったけど大丈夫かい?」
「身体中痛いけど……そのうち治るだろ。……左肩は流石に動かしづらいな」
ハバに貫かれた傷はまだ痛みが強かった。だがそのうち治るだろう。なんてったっておれの身体は頑丈だからな。
「本当に治るのが早いんだね。能力の影響かな。でも安静にしておくんだよ」
まぁ無理に動かすつもりはないからまだ寝ておくつもりだ。そんなことを思っていると2人の影が部屋に入ってきた。
「エスト! 目が覚めたのね! 良かった……」
「おう、おはよう。お前らは大丈夫か?」
「儂らはお前ほどではない。お前こそ大丈夫ではないじゃろ」
「ああ、まだ身体中が痛むよ」
「大変だったのよ!? 熱が出たし1週間も寝てたんだから!」
「そうか……それは大変だったな」
「あんたのことよ!」
「おれ!? 1週間も寝てたのか!?」
「ホントに心配したんだから……!」
「ああ、悪かった。……いや、ありがとう」
「いつ起きても平気なように果物とか買ってきてるから。好きに食べてくれ」
「ああ、グラもありがとう」
「いいんじゃいいんじゃ。お互い様じゃよ」
1週間も寝てたのか。それは確かに心配させてしまったかも知れない。今度ちゃんとお礼をしなければ。
「そういえばここはどこだ?」
「バルバタの隣町のフラガルの宿だよ。君達を運んできたんだ」
「何から何まで世話になってるな」
「構わないよ。本当は僕が九月を倒すつもりだったんだけど君達がやってくれたから手間が省けたしね。……ああ……まぁ感謝してくれるなら一つ頼みたいことがあるかな」
頼み事? 六法帝がおれ達にお願いすることなんてあるのか? ……いや、そんなことは関係ない。
「おれ達にできることならやらせてくれ」
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