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第五章 エルフの里・ユラトラ
第35話 海へ
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「はぁーー」
宿に着くとすぐにベッドに倒れ込んだ。思い返してみれば昨日から寝ていないんだった。どうりで疲れが激しいわけだ。
仰向けに寝っ転がりながら右手を天井に向けた。手の届かない照明をグラグラと揺らすことが出来た。
「念力か……」
触れずに力を伝える、確かに便利だ。でもどれくらいの力が出るのだろうか。さっき試したときは純粋なおれの力と同じくらいだったが、練度を上げることで出力も上がるのか? おれのコントロールする魔素のエネルギーと融合させることは出来るのだろうか? 分からないこともまだ多いが、今すぐに試せることでもないのでとりあえず寝よう。
おれは明かりを落として眠りに着いた。
鳥のさえずりと木の葉を通る風の音に目を覚ました。よく寝た。いい気分だ。……またしても本当によく寝過ぎたかも知れない。いや、セリア達が起こしに来てないから、今日は別に早起きしなくてもいい日な可能性もある。
「エスト! 起きてる?」
どうやらそういう日でもないらしい。
「ああ! 起きてるよ! ちょっと待っててくれ」
おれは返事を返して部屋を出た。時計を確認するとすっかり昼だ。昼ご飯を食べに行くから起こされたらしい。今日は昨日とは違う料理屋に向かった。
「ここでやることももう無いし、出発する?」
「そうだな。やり残したことが無かったらもういいんじゃないか?」
この里は強くなると入れないらしいからな。今ここでやるべきことはやっておく必要があるが、おれは精霊との契約も済んだし残る理由もない。空気も景色も良いからまたいつか来たいとも思うが、今は旅を続ける方が優先だ。
「儂はここで料理を教えてもらいたいぞ。いつまでも下手なままではいけないからな!」
「頼むから勘弁してくれ。お前はもう二度と食材に触らなくていいから」
「私もグラは食べるだけにしておいた方がいいと思うは。人には向き不向きがあるものね」
「あ、ああ、分かった……」
セリアが笑顔で言った言葉でグラは諦めた。可愛らしい顔なのに、どこか恐ろしさを感じる笑顔だった。グラもその圧力に屈したのだろう。
「まぁここを出るとして、次はどこに行くんだ?」
「今ここは西大陸の北端だから、これから中央大陸に行くために船に乗って行こうと思うわ。陸で行ってもいいんだけど遠いからね」
「船か……ってことは海だよな!?おれ海見るの初めてだなぁー。……グラに飛んでってもらえば良くない?」
「まぁそれもそうだけど……」
「じゃから儂は嫌じゃと言っとるじゃろうが! 王を乗り物扱いするんじゃない!」
どうしてこう……どうでもいいところに拘るのだろうか。まぁプライドなのだろうが、そこまで気にする必要もないだろうに。
「まぁゆっくり行きましょう。急いだところで私達もなにも出来ないから。せっかくの旅なんだしね」
「……そうだな」
食事を終えておれ達は店を出た。軽く食材など必要なものを買って、いつでも出発できるよう準備を整えた。
「最後に長老さんのとこに挨拶行くか」
「そうね。お世話になったし、本当はフリナにも挨拶したかったけどね」
フリナは探してみたけど今里にはいないようだ。フラドさんがもう出掛けてしまったと言っていた。
世界樹を降りて根元の家に来た。そして扉をノックして中へ入る。
「お世話になりました。今日里を出ようと思います」
「……そうか……。この前にも言ったが……君達にはこれから様々な試練が待っているだろう……。だが挫けずに努めなさい……。良い未来を期待してるよ……」
「もちろんです。ところでフリナがどこにいるか分かりますか? 挨拶して行こうと思いまして。」
「フリナ……? ……ああ、彼女なら大丈夫だよ……。気にせずに発ってくれて構わない……」
「え……そうですか……」
大丈夫とはどういう意味だ……? もしかしたらこのまま出発すれば会えるということだろうか。まぁ大丈夫と言うなら大丈夫なのだろう。
ありがとうございましたとお礼を言って家を出た。その後は向かう方向を確認して里を後にした。
「いやぁー、良いところだったな」
森の中を歩きながら話していた。住民のエルフ達も良い人ばっかだったし、壮大さも凄かった。魔族との戦いを終えたらもう一回来たいな。
「そうだろ! 良いところだっただろ?」
「ああ、本当に。……!?」
振り返ると後ろにはフリナの姿があった。いつからだ?普通に後ろに立っているんだが。
「フリナ! いつからいたの?」
「ずっといたぞ? 私はエルフの中でも特に気配を隠すのが得意だからな」
「なんで隠れてたんだ?」
「いや、びっくりさせたいだろ。せっかくなら。……それより私も冒険に連れてってくれよ!海に行くんだろ? 見たことないんだ。兄さんにも行くって伝えたから」
「いや、良いけど……どういう風の吹き回しだよ」
ついこの前まではまだ行かないとか言っていたのに。なぜ急に行く気になったんだ……?
「君が闇の精霊と契約しただろ? そんなこと話にも聞いたことなかったから凄く衝撃的だったんだ。ビビっときてな。世界にはいろんな不思議なことがあるのかって!」
聞いてるだけだと大した理由には聞こえないが、本人からしたら大きなことだったんだろう。世界を見てみたいとも言っていたしな。
「まぁおれ達はフリナが来たいならいいぞ。これからよろしくな」
「ああ、よろしく!」
宿に着くとすぐにベッドに倒れ込んだ。思い返してみれば昨日から寝ていないんだった。どうりで疲れが激しいわけだ。
仰向けに寝っ転がりながら右手を天井に向けた。手の届かない照明をグラグラと揺らすことが出来た。
「念力か……」
触れずに力を伝える、確かに便利だ。でもどれくらいの力が出るのだろうか。さっき試したときは純粋なおれの力と同じくらいだったが、練度を上げることで出力も上がるのか? おれのコントロールする魔素のエネルギーと融合させることは出来るのだろうか? 分からないこともまだ多いが、今すぐに試せることでもないのでとりあえず寝よう。
おれは明かりを落として眠りに着いた。
鳥のさえずりと木の葉を通る風の音に目を覚ました。よく寝た。いい気分だ。……またしても本当によく寝過ぎたかも知れない。いや、セリア達が起こしに来てないから、今日は別に早起きしなくてもいい日な可能性もある。
「エスト! 起きてる?」
どうやらそういう日でもないらしい。
「ああ! 起きてるよ! ちょっと待っててくれ」
おれは返事を返して部屋を出た。時計を確認するとすっかり昼だ。昼ご飯を食べに行くから起こされたらしい。今日は昨日とは違う料理屋に向かった。
「ここでやることももう無いし、出発する?」
「そうだな。やり残したことが無かったらもういいんじゃないか?」
この里は強くなると入れないらしいからな。今ここでやるべきことはやっておく必要があるが、おれは精霊との契約も済んだし残る理由もない。空気も景色も良いからまたいつか来たいとも思うが、今は旅を続ける方が優先だ。
「儂はここで料理を教えてもらいたいぞ。いつまでも下手なままではいけないからな!」
「頼むから勘弁してくれ。お前はもう二度と食材に触らなくていいから」
「私もグラは食べるだけにしておいた方がいいと思うは。人には向き不向きがあるものね」
「あ、ああ、分かった……」
セリアが笑顔で言った言葉でグラは諦めた。可愛らしい顔なのに、どこか恐ろしさを感じる笑顔だった。グラもその圧力に屈したのだろう。
「まぁここを出るとして、次はどこに行くんだ?」
「今ここは西大陸の北端だから、これから中央大陸に行くために船に乗って行こうと思うわ。陸で行ってもいいんだけど遠いからね」
「船か……ってことは海だよな!?おれ海見るの初めてだなぁー。……グラに飛んでってもらえば良くない?」
「まぁそれもそうだけど……」
「じゃから儂は嫌じゃと言っとるじゃろうが! 王を乗り物扱いするんじゃない!」
どうしてこう……どうでもいいところに拘るのだろうか。まぁプライドなのだろうが、そこまで気にする必要もないだろうに。
「まぁゆっくり行きましょう。急いだところで私達もなにも出来ないから。せっかくの旅なんだしね」
「……そうだな」
食事を終えておれ達は店を出た。軽く食材など必要なものを買って、いつでも出発できるよう準備を整えた。
「最後に長老さんのとこに挨拶行くか」
「そうね。お世話になったし、本当はフリナにも挨拶したかったけどね」
フリナは探してみたけど今里にはいないようだ。フラドさんがもう出掛けてしまったと言っていた。
世界樹を降りて根元の家に来た。そして扉をノックして中へ入る。
「お世話になりました。今日里を出ようと思います」
「……そうか……。この前にも言ったが……君達にはこれから様々な試練が待っているだろう……。だが挫けずに努めなさい……。良い未来を期待してるよ……」
「もちろんです。ところでフリナがどこにいるか分かりますか? 挨拶して行こうと思いまして。」
「フリナ……? ……ああ、彼女なら大丈夫だよ……。気にせずに発ってくれて構わない……」
「え……そうですか……」
大丈夫とはどういう意味だ……? もしかしたらこのまま出発すれば会えるということだろうか。まぁ大丈夫と言うなら大丈夫なのだろう。
ありがとうございましたとお礼を言って家を出た。その後は向かう方向を確認して里を後にした。
「いやぁー、良いところだったな」
森の中を歩きながら話していた。住民のエルフ達も良い人ばっかだったし、壮大さも凄かった。魔族との戦いを終えたらもう一回来たいな。
「そうだろ! 良いところだっただろ?」
「ああ、本当に。……!?」
振り返ると後ろにはフリナの姿があった。いつからだ?普通に後ろに立っているんだが。
「フリナ! いつからいたの?」
「ずっといたぞ? 私はエルフの中でも特に気配を隠すのが得意だからな」
「なんで隠れてたんだ?」
「いや、びっくりさせたいだろ。せっかくなら。……それより私も冒険に連れてってくれよ!海に行くんだろ? 見たことないんだ。兄さんにも行くって伝えたから」
「いや、良いけど……どういう風の吹き回しだよ」
ついこの前まではまだ行かないとか言っていたのに。なぜ急に行く気になったんだ……?
「君が闇の精霊と契約しただろ? そんなこと話にも聞いたことなかったから凄く衝撃的だったんだ。ビビっときてな。世界にはいろんな不思議なことがあるのかって!」
聞いてるだけだと大した理由には聞こえないが、本人からしたら大きなことだったんだろう。世界を見てみたいとも言っていたしな。
「まぁおれ達はフリナが来たいならいいぞ。これからよろしくな」
「ああ、よろしく!」
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