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第六章 航海
第36話 海蛇
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「うはーーー!! これが“海”かーー!!」
おれ達は世界樹の森を抜けて1日、港町・ボルパに来ていた。この街から中央大陸へ行く船は毎日午後に一つだけ出ている。今は朝で時間があるので海に遊びに来たのだ。
「……しょっぱいな!! 本当にこれ全部塩水なのか! すげぇーなー!!」
「はしゃぎすぎよ! エスト!」
そう言いつつセリアは裸足で浜辺の水に触れていた。そしてピチピチと水を跳ねさせている。そして指先に海水を付けて“ホントにしょっぱいね”と言いながら笑っていた。
「どの口が言ってるんだ」
セリアも海に来るのは初めてだそうだ。おれも川や湖は見たことがあっても、海は初めてなのでテンションが上がっていた。
無限に広がる水が、しかもそれが全て塩水なんだから衝撃だ。昔の魔法使いが塩を作ったとかそんななのだろうか。歴史とか地理とかを調べたら分かるのかも知れないが、おれは勉強はしたくないので一生謎のままだろうな。
「はしゃぎすぎじゃぞ、お前達。もう少し落ち着かんかい」
「年相応で可愛らしいじゃないか。私達からしたら赤子みたいな歳だろう? 2人とも」
「そう言われればそうなんじゃがな……」
向こうで何やら話しているが、あまり聞こえなかった。グラが落ち着けと言っているのは聞こえたが気にする必要はないだろう。
フリナも海は初めてだと言っていたのだが、浜から海を眺めているだけでこれといって興奮している感じはしない。大人の雰囲気って感じだ。
「ん? おい、セリア! 見てみろ! 貝だ! 中身がない貝だ!」
「え? ホントだ! ……誰かの食べかけじゃない?」
「違うだろ! そんなこと言うなよ!」
「あははっ! ごめんね!」
なんてことを言うんだ。こっちは感動してるっていうのに。
「お! これも見てみろ! ……透明な石かな?」
「ホントだ! 綺麗ね。ガラスじゃない? 本で読んだことがあるわ」
確かに石とは質感が少し違うな。海にガラスがあるとこんな感じになるのか……? にわかには信じ難いが、他には考えられないか。
「おい! お前達! そろそろ船が出る時間じゃないか!?そろそろこっちに戻ってこい!」
「おう! 分かった!」
グラに呼ばれておれとセリアは浜から上がった。それから船のある港へと向かった。
ここは風が強くて歩くのも少し大変だ。でも鳥が鳴いていたりネコが街を歩いていたり、動物の住む街といった感じで楽しい街だ。
港へ向かう途中、ついでにギルドに寄った。海を見る前にフリナの登録を済ませていたので簡単に出来る依頼なら受けておきたい。そこで軽く依頼を見ているとある言葉が目に映った。
“中央大陸行き航路に現れた巨大海蛇の討伐依頼”
「……これって中央大陸に船出ねぇんじゃないか?」
「確かにそうかも……。でも行かなきゃいけないもんね……」
「じゃあこれ受けるか? Aランクの依頼だからそんな難しくないだろ」
今おれ達はおれとセリアとグラの3人がAランク、フリナがCランクだ。フリナは戦闘能力はそこまで高くはないと話していたのだが、おれ達やフラドと比べてやや劣るだけで、充分な強さだった。精霊魔法も使えるので戦闘手段も多彩だし、隠密が得意だから暗殺者とか偵察係としても活躍しそうだ。
「儂もいいけどな、海に行く前に確認しとけばよかったじゃろ」
「仕方ないだろ。それに早く知ってても何が変わる訳でもないんだからいいじゃないか」
「そうよ。そこに海があったから行ったのよ」
「セリア、お前までそっち側に行かれると困るぞ。このパーティの唯一の常識人なんじゃから」
グラのやつ、自分が常識的じゃないってことはちゃんと理解してるのか。まぁ竜だからな。人間基準で考えれば常識外れだというのは自覚しているのだろう。
それでいうとフリナもそうだが、あいつは人間社会に疎いだけでグラほどヤバいやつじゃない。……おれは常識的だろ。
その後おれ達は正式に依頼を受けて港へ行った。今回はもう一つのパーティも参加するようで、そのパーティももうすぐ港へ来るらしい。海のど真ん中で何かあっては大変なので、一応2パーティでの依頼という訳だ。また、相手が合意すればそのまま中央大陸に行ってくれても構わないと言っていた。その場合は向こうの港町で依頼の報告を済ませればいいようだ。
「着いたーー! でっけぇー船がいっぱいだな!!」
港には大きな客船などがズラッと並んでいた。先ほど海から見えた船と同じくらいの大きさだ。
「ん? おーい! 君達、もしかして“豪炎”じゃないか!?」
突然、後ろから若い男の声がした。振り向くとそこには3人の男がいる。どれも知らない顔だ。
「そうだが、あんた達は?」
「おれ達は大海蛇の討伐依頼に来た冒険者だ。ここにいるってことは君達もだろ?」
なるほど、おれ達と一緒に依頼をこなすパーティが彼らか。みんな強そうな雰囲気だ。
「ああ、ところでなんでおれ達が“豪炎”だって分かったんだ?」
「そりゃあ黒髪の少年と金髪の少女、茶髪の長身の男のパーティなんてそんないるもんじゃないからな。聞いてた話より1人多いが。まぁなんでも、よろしくな! 俺はマザラだ」
「おう、よろしく」
これからついに海の旅が始まると思うと、胸が高鳴った。
おれ達は世界樹の森を抜けて1日、港町・ボルパに来ていた。この街から中央大陸へ行く船は毎日午後に一つだけ出ている。今は朝で時間があるので海に遊びに来たのだ。
「……しょっぱいな!! 本当にこれ全部塩水なのか! すげぇーなー!!」
「はしゃぎすぎよ! エスト!」
そう言いつつセリアは裸足で浜辺の水に触れていた。そしてピチピチと水を跳ねさせている。そして指先に海水を付けて“ホントにしょっぱいね”と言いながら笑っていた。
「どの口が言ってるんだ」
セリアも海に来るのは初めてだそうだ。おれも川や湖は見たことがあっても、海は初めてなのでテンションが上がっていた。
無限に広がる水が、しかもそれが全て塩水なんだから衝撃だ。昔の魔法使いが塩を作ったとかそんななのだろうか。歴史とか地理とかを調べたら分かるのかも知れないが、おれは勉強はしたくないので一生謎のままだろうな。
「はしゃぎすぎじゃぞ、お前達。もう少し落ち着かんかい」
「年相応で可愛らしいじゃないか。私達からしたら赤子みたいな歳だろう? 2人とも」
「そう言われればそうなんじゃがな……」
向こうで何やら話しているが、あまり聞こえなかった。グラが落ち着けと言っているのは聞こえたが気にする必要はないだろう。
フリナも海は初めてだと言っていたのだが、浜から海を眺めているだけでこれといって興奮している感じはしない。大人の雰囲気って感じだ。
「ん? おい、セリア! 見てみろ! 貝だ! 中身がない貝だ!」
「え? ホントだ! ……誰かの食べかけじゃない?」
「違うだろ! そんなこと言うなよ!」
「あははっ! ごめんね!」
なんてことを言うんだ。こっちは感動してるっていうのに。
「お! これも見てみろ! ……透明な石かな?」
「ホントだ! 綺麗ね。ガラスじゃない? 本で読んだことがあるわ」
確かに石とは質感が少し違うな。海にガラスがあるとこんな感じになるのか……? にわかには信じ難いが、他には考えられないか。
「おい! お前達! そろそろ船が出る時間じゃないか!?そろそろこっちに戻ってこい!」
「おう! 分かった!」
グラに呼ばれておれとセリアは浜から上がった。それから船のある港へと向かった。
ここは風が強くて歩くのも少し大変だ。でも鳥が鳴いていたりネコが街を歩いていたり、動物の住む街といった感じで楽しい街だ。
港へ向かう途中、ついでにギルドに寄った。海を見る前にフリナの登録を済ませていたので簡単に出来る依頼なら受けておきたい。そこで軽く依頼を見ているとある言葉が目に映った。
“中央大陸行き航路に現れた巨大海蛇の討伐依頼”
「……これって中央大陸に船出ねぇんじゃないか?」
「確かにそうかも……。でも行かなきゃいけないもんね……」
「じゃあこれ受けるか? Aランクの依頼だからそんな難しくないだろ」
今おれ達はおれとセリアとグラの3人がAランク、フリナがCランクだ。フリナは戦闘能力はそこまで高くはないと話していたのだが、おれ達やフラドと比べてやや劣るだけで、充分な強さだった。精霊魔法も使えるので戦闘手段も多彩だし、隠密が得意だから暗殺者とか偵察係としても活躍しそうだ。
「儂もいいけどな、海に行く前に確認しとけばよかったじゃろ」
「仕方ないだろ。それに早く知ってても何が変わる訳でもないんだからいいじゃないか」
「そうよ。そこに海があったから行ったのよ」
「セリア、お前までそっち側に行かれると困るぞ。このパーティの唯一の常識人なんじゃから」
グラのやつ、自分が常識的じゃないってことはちゃんと理解してるのか。まぁ竜だからな。人間基準で考えれば常識外れだというのは自覚しているのだろう。
それでいうとフリナもそうだが、あいつは人間社会に疎いだけでグラほどヤバいやつじゃない。……おれは常識的だろ。
その後おれ達は正式に依頼を受けて港へ行った。今回はもう一つのパーティも参加するようで、そのパーティももうすぐ港へ来るらしい。海のど真ん中で何かあっては大変なので、一応2パーティでの依頼という訳だ。また、相手が合意すればそのまま中央大陸に行ってくれても構わないと言っていた。その場合は向こうの港町で依頼の報告を済ませればいいようだ。
「着いたーー! でっけぇー船がいっぱいだな!!」
港には大きな客船などがズラッと並んでいた。先ほど海から見えた船と同じくらいの大きさだ。
「ん? おーい! 君達、もしかして“豪炎”じゃないか!?」
突然、後ろから若い男の声がした。振り向くとそこには3人の男がいる。どれも知らない顔だ。
「そうだが、あんた達は?」
「おれ達は大海蛇の討伐依頼に来た冒険者だ。ここにいるってことは君達もだろ?」
なるほど、おれ達と一緒に依頼をこなすパーティが彼らか。みんな強そうな雰囲気だ。
「ああ、ところでなんでおれ達が“豪炎”だって分かったんだ?」
「そりゃあ黒髪の少年と金髪の少女、茶髪の長身の男のパーティなんてそんないるもんじゃないからな。聞いてた話より1人多いが。まぁなんでも、よろしくな! 俺はマザラだ」
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