HAMA

わらびもち

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第六章 航海

第37話 大海原の一戦

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「じゃあ皆んな、この船に乗って行くよ」

「おお、これか! そんなに大きくはないけどかっこいいな!」

 マザラに案内されて港に着いている船へやってきた。さっき見た客船とかよりは小さいが、それでも7人が乗るには充分な大きさであった。その船に乗っておれ達は互いの話をした。

「とりあえず自己紹介をしようか。俺はさっきも言ったけどマザラ。こっちの剣士がリュウトで魔法使いがゾザンだ」

「よろしく頼む」

「よろしくな!」

 剣士は長髪の赤髪の男で、魔法使いは金髪の男であった。剣士の方は刀を携えており、おそらくサムライの国の人間だろう。

「私はセルセリアよ。あと、エストとグラダルオとフリナね」

「そうか、よろしくな。君達クランを設立したんだろ? リーダーは誰なんだ?」

「「エストよ」「セリアだ」」

「……」

「……はは! 決まってなかったかな!?」

 てっきりセリアだと思っていたんだが。というかおれに任せていてはダメだろ。自慢じゃないがおれは何も分からないぞ。面倒くさいしな。

「エストでいいじゃない。今のところ私達の中じゃ一番強いでしょ」

「場合によるだろ。それに一番賢いのはセリアなんだし。なぁグラ」

「うぅん。まぁ儂もエストよりはセリアの方が良いと思うぞ。エストこいつはなんというか……任せられない」

 ……なんか言い方が頭に来るが間違ってはいない。おれには都合がいいので言い返しはしなかった。

「……じゃあ私がリーダーね」

「まぁ誰でも良いんだけどさ。クランの運営の方は大丈夫なのかい? ギルドで募集してるのは見たけどさ」

「近いうちにどこかに拠点を構えようとは思ってるわ。今でも何人かは加入してくれてるんだけど、まだ名前だけって感じね」

「それでいいんじゃないか? 君達ぐらいの名前があればそれだけでも意味はあるからね。まぁ何か困ったことがあれば言ってよ」

「あんた達はどこかのクランに入ってるのか? それとも個人か?」

「いや、俺達は“鉄壁アイアンシールド”ってクランの一員だ。知ってるか? ハーラン大陸を中心に活動してるクランで、マスターは“鉄鎧”のドーランだ」

 ドーランと言えば六法帝の1人だ。そいつが運営するクランということは相当な大きさのものだろう。どうやらマザラ達は任務で西パロンド大陸に来ていたようだ。

 そのためこのまま中央センダル大陸に行きたいようで、おれ達も同じなので大海蛇シーサーペントを倒したら中央大陸そっちに向かうことになった。

 おれ達は2、3時間波に揺られたままの状態だった。その間何の気配もない。最初は水平線にも感動していたのだが、ここまで来ると景色だけだと少々飽きてくるな。それどころか少し気分が悪い。

「エスト、大丈夫? 顔色悪いわよ?」

「うぅん……。そう見える……? おれもそう思うんだけど……なんだろうな……」

「無茶はするなよ。とは言ってもどうすることもできないけど。私達が見張っておくから横になっていたらどうだ?」

 フリナに言われておれは休憩した。まぁAランクの依頼なら誰かがちゃんとしていれば困ることもないだろう。

「ああ、エスト君のは船酔いってやつだね。乗ったことないなら分からないか。ほら、これを飲めば少し楽になるぞ」

 おれはマザラから受け取った薬を飲んだ。……少しすると気持ち楽になった。海も楽ではないな。今度からは眺めるだけにしたほうがいいかもしれない。
 
「それにしても何の気配もしないでござるな」
 
「確かに。まぁもっと進めば出てくるかも知れないし、すぐに出てくるかも知れないし、油断しちゃダメだよ」

 “ござる”……変わった語尾だな。噂には聞いたことがあったが、恐らくサムライの国特有の喋り方なのだろう。

 それよりも確かに気配がまだ感じられない。まだ中央センダル大陸までは遠いから気長に待つか、と思ってから数十分経ったころ、大きな気配の接近とともに、船が大きく揺れ始めた。

「貴様ら……俺様の領域に入るとは何事か…!!」

 そう声を上げながら海から大海蛇シーサーペントが顔を出した。龍、というかデカい蛇というか……。とにかく細長い魔物、高い知能があるようなので魔獣といったところか。

「誰の許可でここがお前ェの領域になったんだ?」

 マザラはそう言いながら空中から剣を取り出した。空間収納アイテムボックスだろう。マザラは剣士だったのか。

「前に来た人間にわざわざ伝えたのにな……! “ここはこの俺様が支配する”と! ギリギリで生きて帰してやったのを知らねぇのか!?」

 声を張り上げてそう言うと、大海蛇シーサーペントは一帯を渦に変えてさらに船を大きく揺らした。

「うおっ!!」

「くそッ!」
「『翔斬けんざん』!」

 リュウトが斬撃を放ったが、足場が安定せずに当てることが出来なかった。遠距離攻撃では照準が合わず、近距離には接近出来ない。ステージが海というだけでここまで厄介になるか。

「グラ、あなた飛んで攻撃してきてよ」
 
「勢いで船がひっくり返るかもしれん。それにアイツは美味しくなさそうじゃから嫌じゃ」

「……分かったけど食べろなんて言ってないわよ」

「何発か打ったが私の弓も当たらなそうだ。困ったな」

「みんな! 僕が魔法で動きを止めるからその隙に攻撃して!!」

 魔法使いのゾザンの言葉に頷き全員一度動きを止めた。だが、魔法の発動を相手が待つことはなかった。

「言っただろう! ここは俺様の領域だ! 人間が盾突こうなど思うことがおこがましい!!」
「『渦潮昇流ルールード』!」

「くッ!」
「『氷の世界フローズン』!!」

 大海蛇シーサーペントの起こした立ち上る海流に氷の上級魔法が炸裂した。しかし相性が悪い。何本もの海流を一つ凍らせたところで何も変わらない。

 しかも本来はもっと大規模な魔法だが、動く大量の塩水を凍らせるほどのエネルギーはなかった。魔力の宿った海水だ。無理もないだろう。

 そしてだんだん船の揺れは大きくなる。ヤツの攻撃はおれ達を仕留める程のものではない。だがみんなの攻撃も届かなくては勝負がつかない。さらに少しずつ揺れは大きくなる……!

「……おい……。おれは今気分が悪ぃんだよ……。揺らしてんじゃねぇ……!」

「むぐッ!?」

 おれの右手が大海蛇シーサーペントの口を。正しく言えば右手ではない。右手に宿った精霊の力だ。どれだけ足場が悪くてもこれなら掴むことが出来る。

「このままお前の首を捩じ切ってもいいが……お前はまだ誰も殺してないもんな……。どうしても逃してほしいってんなら逃してやるぞ?」

「ふざけろ! 俺様は我金隊隊長・バルファード様に命を捧げた身!! 人間なんぞに命を乞うたりするはずがない!」

「……そうか。気高い戦士とでも評価しておこうか……」
 
 大海蛇シーサーペントの体は消滅した。おれ達は魔石を回収し、再び船を進めた。
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