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第十三章 生残競争
第87話 ゲームスタート
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「ふッ……ふはははッ! ダンディール君も死に、クロワール君も死んだ! あとは僕だけ……ついに……ついにだッ!」
デスバルトは両手を広げてそう叫んだ。何だ?異様に興奮しているようだ……。いや、今はアイツの状態なんてどうだっていい。戦ったとして……勝てるわけないか。
一旦退くしかない。なんとか隙を見て……セリアとリンシャさんだけでも逃がせないだろうか。
そのためにはやはりおれが足止めするしかないが……成功するとは到底思えない。
「ふぅーー。いや、落ち着かないとね。今殺してしまうのはどう考えても面倒になる」
「何を言ってんだ……。さっきから……!」
「うん? うーん……。いや、何でもないよ。そうそう。グラ、竜帝だよね? 彼らはちゃんと生きてるから安心しなよ。……いや、何人かは殺しちゃったかな?」
「……ッ!」
誰かが死ぬ、それくらいのことは覚悟していた。だが……それは当然、許すという意味ではない。
おれはさっきまでのこともあり、かなり頭にきた。よく考えず、デスバルトに突進して拳を振った。
だがその拳は届かず、デスバルトの魔力の壁を破ることも出来なかった。
「君の身体はボロボロだろ? 無茶するな。それに力も全然入ってないじゃないか。家族を殺して気が落ちたのかい?」
「ッ……!」
「ま、今は休んでなッ!」
「ウッ……かはッ、がはッ……」
「エスト!」
デスバルトの蹴りがおれの胴体にめり込んだ。意識が飛びそうだった。あまりにも重く、何よりもおれの身体が限界だったのだ。
血を流し過ぎたし、筋肉や骨を壊し過ぎた。精神的にも疲弊している。もはや身体を起こすだけでも痛かった。呼吸をするだけで悲鳴を上げた。
このままでは、まともに戦うことなんて出来やしない。回復する時間がないと……。
「……はぁ……デスバルト! ……貴様……!」
「……! まったく……速いんだよ君は……!」
森の奥、デスバルトが飛んできた方向から、バンリューがやってきた。
金属棒を振ってデスバルトを吹き飛ばす。どうやらデスバルトは戦いを中断してここに来たようだ。バンリューが戦えるなら……まだなんとかなるかも知れない。
「痛ってて……もう少し落ち着けよ……。これからなんだから」
「……?」
「よしッ! 始めるぞッ!」
デスバルトは手を合わせてパンと鳴らした。
あり得ないくらいに大きく濃い魔力が世界を飲み込んだかと思うと、一瞬にして何百体、何千体もの魔族が目の前に現れた。世界中に散っていた魔族達だ。
まだまだ増えていく。なぜ今、呼び戻したのか。どうやって呼び戻したのか。するとバンリューがおれ達に向かって声を上げた。
「……! 一時撤退しろ……! お前達……!!」
「……! エスト!」
おれはセリアに呼ばれてなんとか手を伸ばした。セリアの肩を貸してもらい、そのまま遠くに向かって走る。倒れているリンシャさんを回収して……。
「さぁ、生残競争の始まりだ……!」
デスバルトがそう言った瞬間、世界が歪んだように感じた。急いでリンシャさんのところへ向かわないと、何が起こるか分からない。
だがそれはあまりにも一瞬のことだったため、間に合わなかった。おれとセリアだけが、魔界のどこか遠くに飛ばされた。
いや、多分飛ばされたのは全員だろう。だが、触れていたからだろうか。おれとセリアだけは同じ場所に飛ばされていた。
***
「……人間だけ飛ばして……何をするつもりだ……?」
バンリューだけはデスバルトの前に残っていた。何千もの魔族と、デスバルトを前にして。唯一、デスバルトの術に抵抗したためだ。
「本当は君にも転移して欲しかったんだけど……。ノリが悪いなぁ。だけど、君だけは生かしてはおけないよ。邪魔になるからね」
「……魔族を……呼んだくらいで……俺を殺せるつもりか…………?」
残った全ての魔族とバンリューがそこで衝突した。デスバルトだけでなく、生き残っている九月も、無数の無名の魔族も。
まだまだ世界中からいつまでも魔族が集まり続けている。雷が激しく降り続け、武器が飛び交った。その戦場には、赤い血が流れた。
***
「はぁ……はぁ……どこだ……? ここは……」
「…………魔界のどこかに転移させられたっぽいわ。デスバルトはゲームって言ってたから……すぐに殺されることはないと思うわ……」
「……そうだな。傷を癒さないと……!」
「エスト!」
全身が痛んでおれはその場に倒れ込んだ。バルファードからクロワールと連戦したせいで身体をもう動かせない。
特に身体の内側がボロボロだ。おれはセリアに担いでもらって近くの建物に入った。2000年前、人間が住んでたころの建物だ。もはや建物とは言えないほどに廃れていたが、それでもただ森の中にいるよりは安全な気がした。
……リンシャさんとギルバートさん、グラ達は無事だろうか。みんな弱っているから魔力は辿れない。
いや、ただ遠いだけかもしれないが、とにかく今はセリアと2人で生き残るしかない。
「はぁ……はぁ……ゔッ……」
「痛いけど、我慢してね」
ポーションを飲み、傷を消毒したり包帯を巻いたりした。しばらくの間は回復に集中しないといけない。
それに精神も回復しないと……本当にありとあらゆるものが限界に達していた。セリアに促され、おれは一度眠りについた。
デスバルトは両手を広げてそう叫んだ。何だ?異様に興奮しているようだ……。いや、今はアイツの状態なんてどうだっていい。戦ったとして……勝てるわけないか。
一旦退くしかない。なんとか隙を見て……セリアとリンシャさんだけでも逃がせないだろうか。
そのためにはやはりおれが足止めするしかないが……成功するとは到底思えない。
「ふぅーー。いや、落ち着かないとね。今殺してしまうのはどう考えても面倒になる」
「何を言ってんだ……。さっきから……!」
「うん? うーん……。いや、何でもないよ。そうそう。グラ、竜帝だよね? 彼らはちゃんと生きてるから安心しなよ。……いや、何人かは殺しちゃったかな?」
「……ッ!」
誰かが死ぬ、それくらいのことは覚悟していた。だが……それは当然、許すという意味ではない。
おれはさっきまでのこともあり、かなり頭にきた。よく考えず、デスバルトに突進して拳を振った。
だがその拳は届かず、デスバルトの魔力の壁を破ることも出来なかった。
「君の身体はボロボロだろ? 無茶するな。それに力も全然入ってないじゃないか。家族を殺して気が落ちたのかい?」
「ッ……!」
「ま、今は休んでなッ!」
「ウッ……かはッ、がはッ……」
「エスト!」
デスバルトの蹴りがおれの胴体にめり込んだ。意識が飛びそうだった。あまりにも重く、何よりもおれの身体が限界だったのだ。
血を流し過ぎたし、筋肉や骨を壊し過ぎた。精神的にも疲弊している。もはや身体を起こすだけでも痛かった。呼吸をするだけで悲鳴を上げた。
このままでは、まともに戦うことなんて出来やしない。回復する時間がないと……。
「……はぁ……デスバルト! ……貴様……!」
「……! まったく……速いんだよ君は……!」
森の奥、デスバルトが飛んできた方向から、バンリューがやってきた。
金属棒を振ってデスバルトを吹き飛ばす。どうやらデスバルトは戦いを中断してここに来たようだ。バンリューが戦えるなら……まだなんとかなるかも知れない。
「痛ってて……もう少し落ち着けよ……。これからなんだから」
「……?」
「よしッ! 始めるぞッ!」
デスバルトは手を合わせてパンと鳴らした。
あり得ないくらいに大きく濃い魔力が世界を飲み込んだかと思うと、一瞬にして何百体、何千体もの魔族が目の前に現れた。世界中に散っていた魔族達だ。
まだまだ増えていく。なぜ今、呼び戻したのか。どうやって呼び戻したのか。するとバンリューがおれ達に向かって声を上げた。
「……! 一時撤退しろ……! お前達……!!」
「……! エスト!」
おれはセリアに呼ばれてなんとか手を伸ばした。セリアの肩を貸してもらい、そのまま遠くに向かって走る。倒れているリンシャさんを回収して……。
「さぁ、生残競争の始まりだ……!」
デスバルトがそう言った瞬間、世界が歪んだように感じた。急いでリンシャさんのところへ向かわないと、何が起こるか分からない。
だがそれはあまりにも一瞬のことだったため、間に合わなかった。おれとセリアだけが、魔界のどこか遠くに飛ばされた。
いや、多分飛ばされたのは全員だろう。だが、触れていたからだろうか。おれとセリアだけは同じ場所に飛ばされていた。
***
「……人間だけ飛ばして……何をするつもりだ……?」
バンリューだけはデスバルトの前に残っていた。何千もの魔族と、デスバルトを前にして。唯一、デスバルトの術に抵抗したためだ。
「本当は君にも転移して欲しかったんだけど……。ノリが悪いなぁ。だけど、君だけは生かしてはおけないよ。邪魔になるからね」
「……魔族を……呼んだくらいで……俺を殺せるつもりか…………?」
残った全ての魔族とバンリューがそこで衝突した。デスバルトだけでなく、生き残っている九月も、無数の無名の魔族も。
まだまだ世界中からいつまでも魔族が集まり続けている。雷が激しく降り続け、武器が飛び交った。その戦場には、赤い血が流れた。
***
「はぁ……はぁ……どこだ……? ここは……」
「…………魔界のどこかに転移させられたっぽいわ。デスバルトはゲームって言ってたから……すぐに殺されることはないと思うわ……」
「……そうだな。傷を癒さないと……!」
「エスト!」
全身が痛んでおれはその場に倒れ込んだ。バルファードからクロワールと連戦したせいで身体をもう動かせない。
特に身体の内側がボロボロだ。おれはセリアに担いでもらって近くの建物に入った。2000年前、人間が住んでたころの建物だ。もはや建物とは言えないほどに廃れていたが、それでもただ森の中にいるよりは安全な気がした。
……リンシャさんとギルバートさん、グラ達は無事だろうか。みんな弱っているから魔力は辿れない。
いや、ただ遠いだけかもしれないが、とにかく今はセリアと2人で生き残るしかない。
「はぁ……はぁ……ゔッ……」
「痛いけど、我慢してね」
ポーションを飲み、傷を消毒したり包帯を巻いたりした。しばらくの間は回復に集中しないといけない。
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