91 / 100
第十三章 生残競争
第88話 回復
しおりを挟む
「ッ……! はぁ……はぁ……」
「……エスト? 大丈夫?」
「ッーー……。大丈夫だ……」
おれは目が覚めて飛び起きた。……嫌な夢を見た。目の前でじいちゃんが燃えて死ぬ夢だった。
……割と現実と変わらないが……こんなに引きずるとは、案外おれも脆いものだ。汗を拭いて水を飲み、座って落ち着きを取り戻すことにした。まずは呼吸を整えて……。
そういえば傷は結構治っているようだった。相変わらずの回復力に自分でも引いてしまう。
「誰か来たか?」
「いいえ、誰も、気配も無いわ。人も魔族も近くには来てないわ」
「……そうか。じゃあ今度はおれが見張っておくから寝ててくれ。そろそろしんどいだろ」
「ありがと。でも私も休憩は出来たから随分マシになったわ。何かあったらすぐに起こして」
「分かった。でもちゃんと休めよ」
おれはセリアの寝たところの近くに座った。木の葉や布などを使って簡易的に布団を作っている。
全快したら誰かの魔力を探ってみよう。少なくともデスバルトの魔力はどれほど遠くにいても探知できるはずだ。互いに魔界にいるのなら。
改めてこの大地を見渡すと……酷いものだな。時間にすればもう朝だろう。それなのに日の光がほとんど届いていない。土も木も異様に黒い。どこか地獄に似た雰囲気だな。……地獄よりは一回りも二回りもマシな環境だが。
魔族を退けたら濁った魔素を浄化してやらないといけないな。空気が悪過ぎる。
辺りを見渡しながら近くの魔力の反応を探ってみるが……セリアが言っていた通り、確かに何の気配もないな。転移させられる前の様子から魔族がおれ達を狩りにでも来ると思ってたんだが……いや、そもそもおれは魔力が無いしセリアは弱ってるせいで見つけられないという可能性もあるか。
だとしたら他のヤツらも案外無事かも知れないな。………どうせ今すぐは動けないんだ。希望的観測でも、今はそう思っておくしかない。
その後もおれとセリアで交互に見張りをし、見張りをしていない方は休憩するようにした。丸二日ほどそんな生活をしていた。
完全回復、とまでは流石にいかないが、充分に動いて回れるほどにはなった。デスバルトに遭遇しなければ問題ないだろう。おれ達は他の人を探しに出た。
「一つ聞くわ。私達以外に人間を見なかった?」
「……み……見てない……です……」
「そう」
おれ達は森の中を進みながら情報を集めた。途中襲ってくる魔族をしばきながら。今のは恐らく九月の1体なのだが……セリアも逞しくなったな。
魔族から得られた情報はただ一つ。今この魔界で魔族が人間を狩る競争が行われているということだけだった。
……いくらおれ達が弱っているとはいえ、そう簡単にはやられない。それはデスバルトだって理解しているはずだ。だから大量に魔族を戻してきたのだろうが……その割には数が少な過ぎる。
デスバルトは何がしたいんだ? ただおれ達を殺すならわざわざこんなことをする必要はない。何か理由でもあるのか……“ゲーム”という言葉の通りに楽しんでいるだけなのか。どっちにしたって気に入らねぇ。
「ん?」
頭の中で色々と考えていると、前方から何者かが近づいてきた。カサカサと音を立てながら寄ってくる。警戒しつつこちらも歩みを進めていくと、その音の正体はイリアだった。
「イリアか!? 無事だったんだな!!」
おれとセリアはそう言ってイリアの方に駆け寄った。怪我はしていなさそうだ。魔力は随分減っているが、とにかく生きていてよかった。
「お前達も無事だったのか。っつーことは侵界は倒せたのか?」
「ああ。なんとかだけどな。他のヤツらがどうなったかは知ってるか? お前達はデスバルトと戦ってただろ?」
「……ミーランとドーランが殺された。それ以外の奴ら、グラダルオとデモンゲート、それとガルヴァンは生きてはいるが……今どこにいるのかは分からねー。お前らも怪我してるなら俺に見せろ。治してやるよ」
そう言われたのでおれとセリアは傷を治してもらうことにした。
想像を具現化する『幻想曲』、人の怪我も治せるのか。便利なものだが相当な量の魔力を消費するようだ。自分の傷や、それこそグラ達の傷も治したために魔力を減らしてしまったのだな。
それにしても……2人も死んじまったのか……。2人共、特にミーランさんの防御力は相当なものだ。
……デスバルトと戦った人達は全員そうだった。それなのに……。重くなった空気の中、おれ達の治療を終えたイリアが口を開いた。
「ふぅ……。お前らの方は? リンシャとギルバートが居ただろ。無事なのか?」
「転移させられた後は分からないけど、その前までは無事だったわ。……無事っていうか……生きてはいた。でも2人共重傷だったから……今はどうだか……」
「そうか……」
「ありがとな、イリア」
身体が軽くなった。本当に凄い能力だな。魔力が切れない限りはなんでもありの力なのか。
「で、残りはデスバルトだけだよな。有象無象は置いといて。改めて思ったがアイツは格が違った。アイツの能力とか分からなかったか?」
「悪いけど分からねー。攻撃しようにも軌道が逸れて当たらなかったってことくらいだ。でもその理由が分からねー。何も分からずに負けちまった」
「…………」
「どれだけ強力な攻撃でもダメだった。届いたと思ったら全然効いてねーし」
イリアは悔しそうにそう言った。攻撃が無効化されるならどう戦えばいいのか……。
でもバンリューは戦えてたよな。じゃあ何かしらの方法があるはずだ。絶対に勝てない相手ではない。
「……うしッ! じゃあ回復したし行くか。セリア」
「そうね。イリアはどうする? ………いや、流石に魔力を回復しないと無茶よね。」
「いや、俺も行く! 俺も死ぬまで戦わねーと気が済まねー!」
セリアの質問にイリアは力強く答えた。とはいえ、このままでは無茶だろう。せめて魔力は回復してからでないと………。おれは頭を悩ませた。
「……エスト? 大丈夫?」
「ッーー……。大丈夫だ……」
おれは目が覚めて飛び起きた。……嫌な夢を見た。目の前でじいちゃんが燃えて死ぬ夢だった。
……割と現実と変わらないが……こんなに引きずるとは、案外おれも脆いものだ。汗を拭いて水を飲み、座って落ち着きを取り戻すことにした。まずは呼吸を整えて……。
そういえば傷は結構治っているようだった。相変わらずの回復力に自分でも引いてしまう。
「誰か来たか?」
「いいえ、誰も、気配も無いわ。人も魔族も近くには来てないわ」
「……そうか。じゃあ今度はおれが見張っておくから寝ててくれ。そろそろしんどいだろ」
「ありがと。でも私も休憩は出来たから随分マシになったわ。何かあったらすぐに起こして」
「分かった。でもちゃんと休めよ」
おれはセリアの寝たところの近くに座った。木の葉や布などを使って簡易的に布団を作っている。
全快したら誰かの魔力を探ってみよう。少なくともデスバルトの魔力はどれほど遠くにいても探知できるはずだ。互いに魔界にいるのなら。
改めてこの大地を見渡すと……酷いものだな。時間にすればもう朝だろう。それなのに日の光がほとんど届いていない。土も木も異様に黒い。どこか地獄に似た雰囲気だな。……地獄よりは一回りも二回りもマシな環境だが。
魔族を退けたら濁った魔素を浄化してやらないといけないな。空気が悪過ぎる。
辺りを見渡しながら近くの魔力の反応を探ってみるが……セリアが言っていた通り、確かに何の気配もないな。転移させられる前の様子から魔族がおれ達を狩りにでも来ると思ってたんだが……いや、そもそもおれは魔力が無いしセリアは弱ってるせいで見つけられないという可能性もあるか。
だとしたら他のヤツらも案外無事かも知れないな。………どうせ今すぐは動けないんだ。希望的観測でも、今はそう思っておくしかない。
その後もおれとセリアで交互に見張りをし、見張りをしていない方は休憩するようにした。丸二日ほどそんな生活をしていた。
完全回復、とまでは流石にいかないが、充分に動いて回れるほどにはなった。デスバルトに遭遇しなければ問題ないだろう。おれ達は他の人を探しに出た。
「一つ聞くわ。私達以外に人間を見なかった?」
「……み……見てない……です……」
「そう」
おれ達は森の中を進みながら情報を集めた。途中襲ってくる魔族をしばきながら。今のは恐らく九月の1体なのだが……セリアも逞しくなったな。
魔族から得られた情報はただ一つ。今この魔界で魔族が人間を狩る競争が行われているということだけだった。
……いくらおれ達が弱っているとはいえ、そう簡単にはやられない。それはデスバルトだって理解しているはずだ。だから大量に魔族を戻してきたのだろうが……その割には数が少な過ぎる。
デスバルトは何がしたいんだ? ただおれ達を殺すならわざわざこんなことをする必要はない。何か理由でもあるのか……“ゲーム”という言葉の通りに楽しんでいるだけなのか。どっちにしたって気に入らねぇ。
「ん?」
頭の中で色々と考えていると、前方から何者かが近づいてきた。カサカサと音を立てながら寄ってくる。警戒しつつこちらも歩みを進めていくと、その音の正体はイリアだった。
「イリアか!? 無事だったんだな!!」
おれとセリアはそう言ってイリアの方に駆け寄った。怪我はしていなさそうだ。魔力は随分減っているが、とにかく生きていてよかった。
「お前達も無事だったのか。っつーことは侵界は倒せたのか?」
「ああ。なんとかだけどな。他のヤツらがどうなったかは知ってるか? お前達はデスバルトと戦ってただろ?」
「……ミーランとドーランが殺された。それ以外の奴ら、グラダルオとデモンゲート、それとガルヴァンは生きてはいるが……今どこにいるのかは分からねー。お前らも怪我してるなら俺に見せろ。治してやるよ」
そう言われたのでおれとセリアは傷を治してもらうことにした。
想像を具現化する『幻想曲』、人の怪我も治せるのか。便利なものだが相当な量の魔力を消費するようだ。自分の傷や、それこそグラ達の傷も治したために魔力を減らしてしまったのだな。
それにしても……2人も死んじまったのか……。2人共、特にミーランさんの防御力は相当なものだ。
……デスバルトと戦った人達は全員そうだった。それなのに……。重くなった空気の中、おれ達の治療を終えたイリアが口を開いた。
「ふぅ……。お前らの方は? リンシャとギルバートが居ただろ。無事なのか?」
「転移させられた後は分からないけど、その前までは無事だったわ。……無事っていうか……生きてはいた。でも2人共重傷だったから……今はどうだか……」
「そうか……」
「ありがとな、イリア」
身体が軽くなった。本当に凄い能力だな。魔力が切れない限りはなんでもありの力なのか。
「で、残りはデスバルトだけだよな。有象無象は置いといて。改めて思ったがアイツは格が違った。アイツの能力とか分からなかったか?」
「悪いけど分からねー。攻撃しようにも軌道が逸れて当たらなかったってことくらいだ。でもその理由が分からねー。何も分からずに負けちまった」
「…………」
「どれだけ強力な攻撃でもダメだった。届いたと思ったら全然効いてねーし」
イリアは悔しそうにそう言った。攻撃が無効化されるならどう戦えばいいのか……。
でもバンリューは戦えてたよな。じゃあ何かしらの方法があるはずだ。絶対に勝てない相手ではない。
「……うしッ! じゃあ回復したし行くか。セリア」
「そうね。イリアはどうする? ………いや、流石に魔力を回復しないと無茶よね。」
「いや、俺も行く! 俺も死ぬまで戦わねーと気が済まねー!」
セリアの質問にイリアは力強く答えた。とはいえ、このままでは無茶だろう。せめて魔力は回復してからでないと………。おれは頭を悩ませた。
10
あなたにおすすめの小説
異世界異話 天使降臨
yahimoti
ファンタジー
空から天使が降って来た。
落ちたんだよ。転生かと思ったらいきなりゲームの世界「ロストヒストリーワールド」の設定をもとにしたような剣と魔法の世界にね。
それも面白がってちょっとだけ設定してみたキャラメイクのせいで天使族って。こんなのどうすんの?なんの目的もなければ何をしていいかわからないまま、巻き込まれるままにストーリーは進んでいく。
女神の白刃
玉椿 沢
ファンタジー
どこかの世界の、いつかの時代。
その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。
女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。
剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。
大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。
魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。
*表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*
【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-
いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、
見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。
そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。
泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。
やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。
臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。
ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。
彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。
けれど正人は誓う。
――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。
――ここは、家族の居場所だ。
癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、
命を守り、日々を紡ぎ、
“人と魔物が共に生きる未来”を探していく。
◇
🐉 癒やしと涙と、もふもふと。
――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。
――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~
田尾風香
ファンタジー
ある日、リィカの住む村が大量の魔物に襲われた。恐怖から魔力を暴走させそうになったとき前世の記憶が蘇り、奇跡的に暴走を制御する。その後、国立の学園へと入学。王族や貴族と遭遇しつつも無事に一年が過ぎたとき、魔王が誕生した。そして、召喚された勇者が、前世の夫と息子であったことに驚くことになる。
【改稿】2026/02/20、第一章の40話までを大幅改稿しました。
これまで一人称だった第一章を三人称へと改稿。その後の話も徐々に三人称へ改稿していきます。話の展開など色々変わっていますが、大きな話の流れは変更ありません。
・都合により、リィカの前世「凪沙」を「渚沙」へ変更していきます(徐々に変更予定)。
・12から16話までにあったレーナニアの過去編は、第十六章(第二部)へ移動となりました。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる