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第十三章 生残競争
第95話 絶望
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三界を全てを倒して人類の勝利。そうなるはずだった。そうなると思っていた。魔族の王は三界だと思っていたからだ。三界が滅べば、それは事実上の魔族の敗北だろうと。そう思っていた。
だから、目の前でデスバルトの魔力だったものが、別の誰かの魔力として膨れ上がっていくのはあまりにも絶望的なことであった。その魔力が何者かを作り出してゆくことに底のない絶望を感じた。
そもそも、三界はソイツの封印を解くことを目標としていた。そうエルフの長老が言っていた。そのことはこの場の全員が知っており、だから倒す必要があったのだ。
ただそれは人類が三界を倒そうとする根本的な理由であって、今回は彼らが人間界に侵攻すると宣言したからではあるが、少なくとも人類からすればソイツの解放を阻止することが争うことの原因だったのだ。
よく考えれば分かったのかも知れない。2000年もの間、なぜ解放出来なかったのか。なぜ三界はそこまで積極的には人間を殺さなかったのか。
それは“三界が全員死ぬ”ことが封印を解く条件だったからだ。人間に殺される必要があったからだ。解放されたソイツはデスバルトの身体が崩れきる前に一言、言葉を掛けた。
「よくやってくれた。デスバルトよ」
ただそう言っておれ達の方を向いた。デスバルトから出てきたからだろうか、魔神ルシフェルの魔力はデスバルトと同じくらいか、やや少ないくらいであった。
……少ないと言っても異常な魔力量だ。普通にやっては間違いなく一方的に殺される。だが変だ。普通に考えて大英雄が封印するなら、こんな罠みたいなことをするだろうか。
「……お前、魔神ルシフェルだろ……! なんで……三界の中に……ッ!!」
「“お父様”だろ。エスト」
「エストッ……!!」
ルシフェルはそう言って指を動かすと、魔力がおれの身体を貫いた。見えなかった。間違いなくさっきまでのデスバルトと同じくらいの力だ。
「……だが私も気分が良いからな。教えてやろう」
「……」
「2000年前、私はアリオスに敗北したとき確かに封印された。だがそれは不完全な封印であった。当然だ。私は神なる存在なのだからな。ただ不完全といえ、時間が経てば完全に封印されてしまう。ならどうすればいいか」
「私は自身を3体の魔族に封印し直したのだ。とはいえ強力な封印であった。“強力な3体の魔族が全員、全ての力を出し切って死んだ場合に私の封印が解かれる”という条約を結んだ上でしか封印を分割することは出来なかった。その上彼らは私の力の一部を吸収してより強くなってしまうのだから……絶望したものだ。だからお前には感謝しているさ。エストよ」
「……ッ!」
「欲を言えばデスバルト達がもう少しお前達を殺してくれていれば良かったな。力を取り戻すまでにまだ時間が掛かる。私の邪魔になる者は消してくれれば……いや、今の貴様らなど私の邪魔にすらならんな」
……今のおれ達に勝機はない。だが今しか勝機はない。放っておいては力を取り戻すだろう。なんとかして今、全てに決着をつける必要がある。
「……お前達……今……全てを燃やせ……! 今……コイツを討つぞ……!」
バンリューの言葉に他のみんなも続いた。確かに今しかない。それは正しいのだが……みんな殺されてしまうぞ……!
早くおれも加勢しないと……。しかし、昇華の疲弊とダメージの蓄積したおれは立ち上がることすらも出来なかった。
隣にいるセリアが流れ弾を喰らわないように守ってくれているが……それも時間の問題だ。早く……無理やりにでも再び昇華させないと………!
「私は『混沌の支配者』、この世界の秩序だ!貴様ら下等な人間ごときが、私の前に立つでない!」
「ッ!?」
ルシフェルがそう言った途端、近づいたバンリュー達に強力な重力が働いて地面にめり込んでいった。言葉の通り立つことすらままならない様子だ。
「私の能力は新たな秩序を作るものだ。貴様らは私に届きすらしない」
「この程度の……重力で……封じれると思うなよ……!」
バンリューは雷になってルシフェルに接近した。しかし壁でもあるように近づくことが出来なかった。ギルバートの氷も届かない。リンシャが空間を割こうにも、瞬間移動をしようとも壁に遮られた。
誰も“近づけない”ようだった。そして魔力の塊が1人ずつ貫いていく。誰の攻撃もルシフェルに届かないのに、ルシフェルの攻撃はどんな障壁も越えていく。
全てを遮断し全てを無視する。まさに無敵のような力であった。だからこそ……なんとかしておれが立たないと……。
みんなが少しずつ倒れていく。なんの慈悲もなく心臓を貫いていってる。ガルヴァンの声が、ギルバートの声が、少しずつ消えていく。
おれは……おれは死んでも構わない……。この戦いが終われば……滅んだって構わない……。だから戦わせてくれ……。
——おれが“死ぬ”代わりに“戦わせて”くれ……!
おれは一時的に戻ってきた力で起き上がり、白い光を纏った。
「…………『融合身体強化』……」
「……!? エストッ!? 無茶しちゃ……!!」
「……ごめんな。悪いとは……思ってるよ。でも今回だけは許してくれ」
おれは再び作った右手でセリアの頭を優しく撫でた。無理やり言葉を遮ったのだ。申し訳なく思いながらもおれはそう言うしかなかった。
そしてルシフェルの方を見上げた。まるで神みたいに空を飛びやがって。
だから、目の前でデスバルトの魔力だったものが、別の誰かの魔力として膨れ上がっていくのはあまりにも絶望的なことであった。その魔力が何者かを作り出してゆくことに底のない絶望を感じた。
そもそも、三界はソイツの封印を解くことを目標としていた。そうエルフの長老が言っていた。そのことはこの場の全員が知っており、だから倒す必要があったのだ。
ただそれは人類が三界を倒そうとする根本的な理由であって、今回は彼らが人間界に侵攻すると宣言したからではあるが、少なくとも人類からすればソイツの解放を阻止することが争うことの原因だったのだ。
よく考えれば分かったのかも知れない。2000年もの間、なぜ解放出来なかったのか。なぜ三界はそこまで積極的には人間を殺さなかったのか。
それは“三界が全員死ぬ”ことが封印を解く条件だったからだ。人間に殺される必要があったからだ。解放されたソイツはデスバルトの身体が崩れきる前に一言、言葉を掛けた。
「よくやってくれた。デスバルトよ」
ただそう言っておれ達の方を向いた。デスバルトから出てきたからだろうか、魔神ルシフェルの魔力はデスバルトと同じくらいか、やや少ないくらいであった。
……少ないと言っても異常な魔力量だ。普通にやっては間違いなく一方的に殺される。だが変だ。普通に考えて大英雄が封印するなら、こんな罠みたいなことをするだろうか。
「……お前、魔神ルシフェルだろ……! なんで……三界の中に……ッ!!」
「“お父様”だろ。エスト」
「エストッ……!!」
ルシフェルはそう言って指を動かすと、魔力がおれの身体を貫いた。見えなかった。間違いなくさっきまでのデスバルトと同じくらいの力だ。
「……だが私も気分が良いからな。教えてやろう」
「……」
「2000年前、私はアリオスに敗北したとき確かに封印された。だがそれは不完全な封印であった。当然だ。私は神なる存在なのだからな。ただ不完全といえ、時間が経てば完全に封印されてしまう。ならどうすればいいか」
「私は自身を3体の魔族に封印し直したのだ。とはいえ強力な封印であった。“強力な3体の魔族が全員、全ての力を出し切って死んだ場合に私の封印が解かれる”という条約を結んだ上でしか封印を分割することは出来なかった。その上彼らは私の力の一部を吸収してより強くなってしまうのだから……絶望したものだ。だからお前には感謝しているさ。エストよ」
「……ッ!」
「欲を言えばデスバルト達がもう少しお前達を殺してくれていれば良かったな。力を取り戻すまでにまだ時間が掛かる。私の邪魔になる者は消してくれれば……いや、今の貴様らなど私の邪魔にすらならんな」
……今のおれ達に勝機はない。だが今しか勝機はない。放っておいては力を取り戻すだろう。なんとかして今、全てに決着をつける必要がある。
「……お前達……今……全てを燃やせ……! 今……コイツを討つぞ……!」
バンリューの言葉に他のみんなも続いた。確かに今しかない。それは正しいのだが……みんな殺されてしまうぞ……!
早くおれも加勢しないと……。しかし、昇華の疲弊とダメージの蓄積したおれは立ち上がることすらも出来なかった。
隣にいるセリアが流れ弾を喰らわないように守ってくれているが……それも時間の問題だ。早く……無理やりにでも再び昇華させないと………!
「私は『混沌の支配者』、この世界の秩序だ!貴様ら下等な人間ごときが、私の前に立つでない!」
「ッ!?」
ルシフェルがそう言った途端、近づいたバンリュー達に強力な重力が働いて地面にめり込んでいった。言葉の通り立つことすらままならない様子だ。
「私の能力は新たな秩序を作るものだ。貴様らは私に届きすらしない」
「この程度の……重力で……封じれると思うなよ……!」
バンリューは雷になってルシフェルに接近した。しかし壁でもあるように近づくことが出来なかった。ギルバートの氷も届かない。リンシャが空間を割こうにも、瞬間移動をしようとも壁に遮られた。
誰も“近づけない”ようだった。そして魔力の塊が1人ずつ貫いていく。誰の攻撃もルシフェルに届かないのに、ルシフェルの攻撃はどんな障壁も越えていく。
全てを遮断し全てを無視する。まさに無敵のような力であった。だからこそ……なんとかしておれが立たないと……。
みんなが少しずつ倒れていく。なんの慈悲もなく心臓を貫いていってる。ガルヴァンの声が、ギルバートの声が、少しずつ消えていく。
おれは……おれは死んでも構わない……。この戦いが終われば……滅んだって構わない……。だから戦わせてくれ……。
——おれが“死ぬ”代わりに“戦わせて”くれ……!
おれは一時的に戻ってきた力で起き上がり、白い光を纏った。
「…………『融合身体強化』……」
「……!? エストッ!? 無茶しちゃ……!!」
「……ごめんな。悪いとは……思ってるよ。でも今回だけは許してくれ」
おれは再び作った右手でセリアの頭を優しく撫でた。無理やり言葉を遮ったのだ。申し訳なく思いながらもおれはそう言うしかなかった。
そしてルシフェルの方を見上げた。まるで神みたいに空を飛びやがって。
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