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幸せのオムライス

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第二章 ヤマネコ商会、爆誕!:商人、はじめます

第94話 いざ商業ギルドへ! 子供だからってナメないでくださいね

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 翌朝。
 私は、文明の光に満ちた、素晴らしい目覚めを迎えた。

 窓から差し込む柔らかな朝日、小鳥のさえずり、そして何より、私の体を優しく包み込む、このふっかふかのベッド!
 ああ、最高……! 一生の半分くらい、ここで過ごしたい……!

(……いやいや、ダメだ、私! 今日から私は、ハルモニアの市場に革命を起こす、新進気鋭の起業家になるんだった!)

 ゴロゴロしたい誘惑を、鋼の意志(当社比)で振り払い、ベッドから飛び起きる。
 10歳の健康優良児ボディは、今日も絶好調だ。

『コトリ、おはよう!』

 ベッドの足元で丸くなっていたコロが、私の起床を察知して、嬉そうに尻尾を振っている。
 うん、可愛い。今日も一日、頑張れる気がするよ。

 身支度を整え、コロと一緒に一階の食堂へ向かう。
 カランコロン、と。
 私たちが食堂に入ると、女将さんが「あら、おはよう、コトリちゃん」と、温かい笑顔で出迎えてくれた。

「おはようございます、女将さん」

「昨日はよく眠れたかしら?」

「はい! 天国かと思いました!」

 私の素直すぎる感想に、女将さんは「まあ!」と嬉しそうに笑っている。
 朝食は、昨日と同じ、女将さん自慢の焼きたてパンと、温かい豆のスープ。
 そして、今日は小さなココット皿に、とろりとしたスクランブルエッグまで添えられていた。

(うーん、美味しい! この、絶妙な半熟加減……! やるわね、女将さん!)

 私は、パンをスープに浸しながら、今日の行動計画(ミッション)を脳内で最終確認する。
 よし、まずは身分を固めないとね!
 ビジネスの基本は、信用だ。そして、信用の第一歩は、公的な『身分証明』から。
 この世界では、それが『ギルドの登録証』ということになるらしい。

 腹ごしらえを済ませた私は、女将さんに「ちょっとお出かけしてきます!」と元気に挨拶をし、コロを連れて宿を出た。
 目指すは、ハルモニア商業ギルド。
 私の商人としての人生が、ここから始まるのだ!

 ◇

 昨日手に入れた『ハルモニア商業地図』を片手に、私たちは商業地区を歩く。
 地図によれば、商業ギルドは、中央広場に面した、ひときわ大きな建物らしい。

 冒険者ギルドが体育会系の部室だとしたら、商業ギルドは、さながら文化系の生徒会室といったところか。
 建物の前には、高価そうなローブを身にまとった商人や、帳簿らしきものを抱えた書記官風の人々が、忙しそうに出入りしている。
 うん、冒険者ギルドみたいに、昼間から酔っ払いが喧嘩してるような物騒な雰囲気は、微塵もない。素晴らしい!

(よし、ここなら私でも大丈夫そうね。いざ、潜入!)

 深呼吸を一つして、重厚な木の扉を押し開ける。
 カラン、と。
 冒険者ギルドのドアベルとは違う、上品で、涼やかな音が鳴った。

 中は、外観以上に落ち着いた空間だった。
 冒険者ギルドの、あの汗と酒の匂いが混じった熱気とは、まるで別世界だ。

(うわー、前世の高級ホテルのロビーみたい……! ってそれはちょっと言い過ぎか……)

 場違い感に少しだけ気後れしながらも、私は背筋を伸ばし、受付カウンターへと向かう。ローブで顔があまり見えないのを良いことに、私は努めて冷静に振る舞った。
 カウンターの中では、眼鏡をかけた、いかにも「仕事できます」という感じの女性職員たちが、黙々と書類仕事をこなしている。

「あの、すみません」

 私が声をかけると、一番手前に座っていた女性が、顔を上げた。

「はい、どのようなご用件でしょうか?」

 その口調は、丁寧だけど、どこか事務的。
 前世で、市役所の窓口でよく聞いたタイプの声だ。

「商人として、ギルドに登録したいのですが」

 私がそう言うと、彼女は、あからさまに眉をひそめた。

「……商人登録? 悪いけど、お子様のおままごとなら、他所でお願いできる? こっちは今忙しいから」
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