6 / 13
エルフの過去
06話 クッソ婆あぁぁ!
しおりを挟む私はゴスロリファッションのおばあさんの元で、見習いとして過ごす事となった。
おばあさんは里の人達から大婆様と呼ばれている。だから私も、大婆様と呼ぶ事にしたのだ。
「大婆さま、シャシャンボの実、沢山摘んで来ましたよ!」
「じゃあ、洗って干しといておくれ。」
「はーい。」
井戸の冷たい水で、ジャブジャブ洗いながら冷えたシャシャンボを一粒口に放り込む。舌で押しつぶすとプチッと弾けた。
「しゅっぱ。」
「つまみ食いするんじゃないよ!」
「へーい。」
大婆様は1番の年長者で、里ではちょっとおかしなボケ老人だと認識されている。
里の人達はみんな素朴な民族服を着ているのに、大婆様だけエルフらしからぬハード・コアな格好をしているもんね?
例えるなら、人里離れたのどかな農村に、聖●魔IIのデーモン閣下が混ざっちゃってる感じ。違和感ありありだよ。
それから大婆さまは、都合の悪いことはぜんぶ忘れたふりをする。苦言なんかは全く聞こえ無いふりをするしね。
「あれ!!さっき私が作っておいたオヤキが無い!?」
「なんだい、それ?みてないねぇ。もぐもぐ。」
「あ゛ぁぁー!!それ、私のオヤツ!!」
「はぁ、全く。何の事だか?最近物忘れが酷くてねぇ。」
「くっそ、ばばぁ。」
「様をつけな、様を!」
「大クソババぁ様、私のオヤツ返せぇ!!」
こんないい加減なババァだけど、実は一流の薬師で、その知識は膨大だ。だから、密かに弟子入りしたいエルフは沢山いる。
いつものように大婆様と言い争っていると、ノックの音がして、店の扉がぎぃと開く。
「大婆さま、こんにちは!!」
弟子になりたい筆頭。里長の息子で三男のポルチーニがまた来た。春風のように爽やかな見た目の彼は、薬学に興味があるのか大婆さまの所へ調合について質問にやって来る。噂では優秀らしいけど?
「今日こそ弟子にして下さいよ!ね?」
「え??何だって??」
「だから、弟子にして下さいって!!」
「えぇ??」
「だから、弟子に!」
「はぁ、すまないねぇ、最近耳が遠くてよく聞こえないんだ。あたしゃもう、老い先短い身だから。他を当たっておくれよ。」
大婆さまは、誰が来てもこうやって追い返す。本当は凄い地獄耳だって事、私は知ってるけどね。
ポルチーニは、見習いの私が気に入らないのか、毎回ギロリと睨みつけて来る。
「チッ。人もどきが。」
そしてこんな風に、すれ違い様に小声で悪態をついていく。でもね、こんなのは無視より断然マシ。そう思う。
だって、全くいないものとして扱われる方が結構傷つくからね。必死に話しかけているのに、目すら合わせて貰えなかったりすると、まるで自分が透明人間か幽霊にでもなってしまった様な、そんな虚無感に襲われる。
だから私は今までの不安を解消するように、大婆さまの元で真剣に学んだ。文字の読み書きから、エルフの掟や周辺国の力関係なんかまで。大婆さまは、質問すればなんでも答えてくれたしね。
雑用や仕事の手伝いをする以外は、勉強に費やした。前世でもこんなに勉強した事なかったね。寝る間も惜しんで頭に叩き込む。早く1人でも生きていく術を身につけたかったから。
だって里では相変わらず無視され続けていたし。大婆様は私を引き受けてくれたけど、時々別れを匂わせる事を言った。この関係は、ずっとは続かない。結局、私の居場所はここには無いのだとそう思ったんだ。
*****************
『グゥー、ギュルルルー。』
はぁ、お腹すいた。精霊と契約してから、最近やたらとお腹が空く様になった。ピカロが時々やって来て、私から根こそぎ魔力を奪っていくせいだと思う。何とかしないとな。
そう思っていると、かまどの方から何か香ばしい香りが漂ってきた。(くんくん)自然と口内に、唾液が溢れる。(じゅるっ)
「わぁ、大婆さま。いい匂いですね。」
「ツキヨタケのクッキーを、焼いたんだよ、食べるかい?」
「わぁ!やったー!いただきます。」
そのクッキーは微かに発光していて、キラキラとファンタジーな見た目をしていた。私はそれを物珍しさから、喜んでパクッとくちにほうりこんだ。
その後、後悔するとも知らずに。
「ぐはっ、じ、じだが、じびれゔっ。」
「イッヒッヒッ!!また引っかかったね!!アンタ本当にバカだねぇ。他人を信用するなってあんなに忠告してるのに、もっと疑い深くならなきゃ酷い目に遭うよ。こんな風にね。」
「ぐっ、ぐぞばばぁぁーー!!」
私はその後、このクソばばぁ様にさんざん騙され続ける事になる。でもこれは、人の世界で油断しないように躾けてくれてたんだって、今なら分かる。
0
あなたにおすすめの小説
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる