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エルフの過去
09話 ツンデレのピカロ
しおりを挟む私は相変わらず、エルフの癖に肉を食べていた。ピカロが根こそぎ魔力を奪った日は、酷くお腹が空くのだ。野菜だけではとてもじゃないけど、この空腹を満たす事が出来なかった。
他のエルフは肉を食べたくなったりしないので、私はどうやら悪喰らしい。(たぶん、前世で食べてた記憶があるせいだと思うけど。)他のエルフには、食べている所を絶対に見られるなと大婆さまに注意された。
だから、なるべく控えるようにはしている。でも肉を食べて臭いと感じるのは精霊達だけみたい。大婆さまは私の事、臭くないって言ってたし。私が肉を食べていても、エルフは精霊程匂いに敏感じゃないみたい。
その代わり、ニンニクとかネギの根菜類はすぐバレるらしいから里にいる間は、絶対食べないようにと言われた。薬味大好きなんだけど、残念だ。
でも精霊達にとって、私は今も臭いまま。ピカロ以外の精霊には相変わらず避けられている。出会うたびに逃げられるのは、メンタルが削られるので私は、なるべく香りには気を遣うようにしている。
人間の国で売っている石鹸で毎日体を洗い、手作りの香油も全身に塗っている。おかげで以前はカサカサだった肌が、艶々になった。今では大婆様もこの香油を愛用している。
ココ油にジャスミンとレモンを混ぜると華やかな香り。これは精霊の好む香りで、私の体臭を多少は緩和してくれているはず?それにピカロは契約を交わした事で、徐々に私の匂いに慣れていったみたい。だって、今もそばいるからね。
「ピカロ、新しい服が出来たよー!」
私は倒したオークの腰布をきれいに洗って熱湯消毒し、色のある植物で染めた。ピカロの服や自分の服を作るのに使っているのだ。なんせ、300枚以上もあるから。大婆さまは呆れてたけど、活用できるものはなんだって使う。布は店で買ったら高いけど、これは無料だしね。
魔物の出す糸で編まれているからか、とても頑丈だ。但し洗濯前は死ぬほど臭い。これを使おうとする奴は私だけらしい、人も使わない布だ。
「これはいいな、気に入ったぜ!!」
今回の服は力作で、ボンタンに長ランの不良スタイル。背中の刺繍には定番の『喧嘩上等』の文字。毎日他の精霊と喧嘩ばかりして来るピカロには、ぴったりの刺繍だと思う。頑丈だから、多少の乱闘でも破れない。
喜び勇んで着込むピカロを微笑ましい気持ちで眺める。ピカロが着ると、まるで80年代に流行った「なめ猫」みたいに可愛いなぁ、と思った。そういえば前世、通学用の乗車カードにリバイバルしたなめ猫デザインのパスを使っていたっけ?
ーーーまぁ。そんな事、どうでもいいや。
今回は、ピカロにただ衣装を作っただけでは無い。背中の刺繍に潜ませた魔法陣を密かに起動させる。
「拘束!」
動けなくなったピカロの口を、急いで塞ぐ。これは、私の真名を呼ばせない為だ。命令されたら逆らえなくなっちゃうからね。
「む、むぐーーー!!」
私は大婆さまに教えてもらった正しい契約方法で、ピカロと契約をし直す事にした。だって、毎回魔力を全部抜かれるのは流石にキツいからね。今まで、油断させる為にピカロに甘いふりをしていたんだ。
決して見た目が可愛いから、嬉々として猫可愛がりしてたわけじゃないんだからね!私はこの日の為に、用意しておいた新たな魔法陣を起動させる。
「服従!通り名ピカロ 、真名をピカレスクに設定。ピカレスク!これより、お互いの真名を口にしたり、使用するのを禁じる!」
これでお互い相手に命令する事が出来なくなった。普通は、契約者側が有利になるように縛るらしいけど。前世の記憶があるせいか、無理矢理服従させるような事はしたくなかった。自分がされたらイヤだからね。
大婆さまに甘いと言われても、好きじゃないんだから仕方ない。
「拘束解除!!」
「くっそぉー、卑怯だぞ!!騙したなぁ!!これじゃぁ、オマエの魔力を強奪出来ねぇじゃねぇかぁ!!」
「通り名を使ってお互いに、お願いをするのはオッケーなんだよ、ピカロ。」
「エリン!!俺様に魔力を全部寄越せ!!」
ピカロと契約を解除する事も出来たけど、ピカロは私の名付け親だ。それに私はピカロが付けてくれたエリンと言う名前を結構気に入っている。
「じゃあピカロ、半分だけね!!」
今回は半分だけ魔力を分けてあげる。
「畜生!エリンのケチ!覚えてろよー!」
ピカロは悔し涙を流しながら飛び出していった。
大婆様に後から教えて貰って知ったんだけど、妖精はエルフが与える名前を気に入ってないと、契約自体できないらしい。だからピカロは、この名前をめちゃくちゃ気に入ってたって事になる。
だって一瞬で、契約できちゃったしね。そんな素直じゃない所も、ツンデレで可愛いと思ってしまうのだ。
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