騙されて奴隷にされてたおっさん、即買いしたらチートすぎてヤバい!

厨二病・末期

文字の大きさ
13 / 13
エルフの過去

閑 話 青春のポルチーニ (中編)

しおりを挟む

 【 side ポルチーニ 】

 僕は酷くむしゃくしゃして、門前の小石をコツンと蹴り上げた。ころころと転がる白い玉砂利の先に、ニヤニヤとイタズラを思いついた、子供のような笑みを浮かべる次兄がいた。

 「よぉ、今から大婆様んトコ行くんだろ?だったらついでに、お使いを頼まれてくれないか。」

 軽く手を挙げ親しげに声をかけてくる次兄は、つい最近結婚したばかり、今は夫婦2人で離れの別宅に住んでいる。

 僕と兄は歳が30ほど離れているから、小さな頃は殆ど会った事が無かった。エルフの平均寿命は600歳前後、30才の歳の差は結構近い方だけど。

 歳が近くっても、幼少期に一緒に遊んだ経験は全く無い。次兄は数年前、深い森の奥で雑草を食べる赤子を見たそうだ。皆んなはイタズラ妖精に化かされたんじゃ無いかって言ってたけど。必死で這いずる様が、酷く恐ろしかったんだとか。それ以来、次兄は小さな子供が苦手なんだ。

 だから、幼い僕に会いに来る事が出来なかったらしい。まぁ、兄弟なのに500も歳の差があって、顔すら見た事が無いってエルフも沢山いるから、それに比べたら僕達はまだ仲が良い方なのかもな。

 「なんだよ、何買ってくりゃ良いんだ??」

 次兄は僕の肩を抱いて顔を寄せ、ヒソヒソと囁くように耳打ちした。

 「大婆様に、テングを4粒くれって言えば分かるからさ。そいつをこっそり買ってきて欲しいんだ。」

 「テング???何だ、それ。飴玉か?」

 大婆様はこの里1番の薬師で、病気の時はみんな大婆様の店で薬を買う。最近では、子供用の安い雑菓子なんかも一緒に売っていて、里のどの薬屋よりも人気がある。

 「ははっ。まだまだお子様のお前は、知らなくても良いんだよ。流行りの世界樹グミを一緒に買ってやるから、それでも食ってろ。」

 姉さん女房で尻に敷かれている癖に、次兄は会うとこんな風に僕をからかって来る。今年で僕は16才、もう成人なのに。

 「なんだよそれ、買ってこないぞ!」

 「まぁ。そう言うなって、小遣いをやるからさ。テングは、あれだよ。オトナの気付け薬みたいなもんだ。体の一部を強化してくれる。」

 次兄は得意げに片方の眉を上げ、グッと右肩に力を込めた。力こぶを作ってフフンと笑う。

 「テングは、腕力を強化するのか??まさか森に出て、魔物を倒しに行くとか?」

 「ぷははっ。バカだな、そんな訳無いだろ。今夜ヨメと特訓するんだ、寝技のな。」

 そう言って、僕にコインを握らせる。

 「ふーん。組み手じゃなく?」

 「くくっ。あれだ、ベットの上でスコーピオンデスロックを試す。これ以上は、聞いてくれるな?さぁ、判ったら早く買ってこい。」

 「チッ。変な夫婦だな、意味わかんねー。」

 次兄は昔からお調子者で、周りから全く期待されていない、その癖、皆んなからは可愛がられていた。この掴みどころの無い要領の良さが、僕には酷く羨ましかったりする。

 「ウチだけじゃ無いぞ?仲のいい夫婦は、テングを飲むんだって。」

 「へーへー。」

 僕は気の抜けた返事をしてから、歩き出す。次兄はからかって来るけど、何故か憎めないんだよな。結局、テングが何の薬なのかわからずじまいだ。

 ーーーでも。たぶん、その薬はきっと。

 精霊魔法の強化訓練にでも使うんだろう。魔法ってのは、競争相手がいた方が上達するしな。次兄はだらしない性格だから、寝転がったまま筋トレでもするのかもな。

 僕はそう決めつけて、預かったコインをポケットの中でジャラリと鳴らした。貰った小遣いで、最近売り出した世界樹グミでも買うか。空色の水たまりをぴょんと飛び越え、大婆さまの家に続く薬草畑の急な丘を登る。

 「はぁ、面倒だな。おい、ブナピ手伝え。」

 風が吹き抜け、乾いた芝が空を舞う。僕は契約した、しもべ精霊のブナピを呼び寄せた。

 「ポルチーニ様っ、魔力を下さい!」

 「わかってるって、ほらよ。」

 僕は少し多め、10分の1程度の魔力をブナピに与えた。最近、精霊同士の力比べでコテンパンに負けて帰って来る。プナピは高位の精霊の筈なんだけどな。いったいどこの精霊にやられてるんだ?

 僕は、風魔法で疾風を発動させる。そして緑香る坂道を、精霊魔法を使ってビュンビュンと風を切って駆け上がった。


*****************


 古びた木製のドアをいつものように、軽くコンコンとノックしてドアノブを回す。そして僕は、にっこりと笑って挨拶をした。

 「こんにちは!大婆様!」

 近所の奥方エルフ達にも評判だった僕の爽やかスマイルは、大婆さまには全く通用しない。

 「なんだ、また来たのかい。弟子は間に合ってるって言ってるだろ。さっさと帰んな。」

 嫌そうな顔をする大婆様に、僕は慌てて言葉をつけ足す。

 「今日は用事があって来ました!テングを4粒買いに来たんです。」

 「ん?まさか、アンタが使うんじゃないだろうね?」

 訝しげな表情でジロリと睨む大婆さまに、僕ってかなり嫌われているのか?と、ショックを受ける。

 「え?あ、はい。次兄の使いです。」

 大婆様はそれを聞いて、納得顔で頷いた。

 「あぁ。そうかい、あの新婚の。じゃぁ、ご祝儀に少しだけ安くしておこうかね。」

 僕は次兄から預かったコインで、薬の代金を支払った。お釣りの駄賃が、多めに手に入ったので人気のグミも2つ注文した。

 「ところで大婆さま。テングとは何に効く薬なのですか?いったい、何処をを強化するんです?」

 「ん、ん?ま、まぁ、オトコの為のクスリじゃ。アンタにゃまだ早いからね。間違っても飲むんじゃ無いよ!!一錠でも大変な事になるからね!」

 「は、はぁ。」

 男だけが飲む物なのか?何故か大婆さまの説明も曖昧で、やっぱりよくわからない。この薬が一体何用なのか、こうなると酷く気になってしまう。

 大婆さまは、隣の倉庫に向かって大声を上げた。

 「エリンー!客だよ、調合しとくれ!」

 「はーい。」

 遠くから、人モドキが返事をした。

 「倉庫にエリンがいるから、このメモを渡して商品を受け取っておくれ。あの子に渡せば調合出来るからね。」

 「・・・分かりました。」

 モドキは、この薬が何なのか知っている。それに調合までできる。あいつだって僕と同い年くらいの筈だ。自分だけが子供扱いされたみたいで、僕は何故だかイライラした。

 「ああ、そうだった。ついでに丸薬を作る魔道具の魔石が切れそうだって、言っといておくれ。」

 「はい。」

 僕は作り笑顔でにっこり笑い、モドキの場所に向かう。大婆様に背を向けると、無理して笑みを作ったせいで、右下の瞼がピクピクと痙攣した。


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...