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6話
しおりを挟む今日は葵さんとの初めての二人三脚練習の日。俺は学校のジャージを着て、待ち合わせ場所の河川敷で待っていた。すると、遠くの方から学校のジャージを着て、自転車に乗った葵さんがやって来た。
俺はまずここで一安心。葵さんが自転車に乗れる程度の運動神経は持っていたことに。
「おまたせしました。それより聞いてください!私つい最近自転車に乗れるようになったんですよ!すごくないですか?」
安心から不安へと一気に変わった。
「じゃあ、早速二人三脚の練習始めよっか」
「はい」
「葵さん、紐貰っていい?」
「えっ、紐はセイギさんが持ってくるんじゃ……」
「…………………………」
「…………………………」
うん、紐がない。紐がない=二人三脚出来ない。詰みました。練習できません。
「どうしよ葵さん?」
「すいません。私が練習頼んだんですから、私が紐を持ってくるのが普通ですよね。この自転車で私が紐買いに行ってきます」
そう言って、葵さんが自転車をよろよろと漕ぎ出した。小さな声で『右,左,右,左』と言っている。転ぶんじゃないか、と思った瞬間やっぱり転んだ。
「大丈夫、葵さん! って、自転車壊れてるじゃん!」
「えっ、うそ! あーー、私の新しい自転車が!」
珍しく葵さんが取り乱している。
「葵さんの自転車も壊れちゃったし、俺が紐買ってくるよ。葵さんはこのベンチで休んでて」
「ほんとに、すいません。ほんとに………」
めっちゃしょげてる。小さい葵さんがより小さくなってる。
「じゃぁ、行ってくる」
「お願いします………」
紐ってどこで買えば良いんだ? 手芸屋さん? 100円ショップ? まぁ、とりあえず駅の方に行くか。ここから駅まで走って5分ぐらいで着くはずだから、そのぐらいの距離なら走れるだろ。
ー15分後ー
「よし、駅についた」
俺が行ったのは100円ショップの『ショウソー』 やっぱり、100円ショップといえばここだろう。お菓子や子供の玩具、生活必需品まで、なんでも100円で手に入る。
今日は休日なので人が多く歩きづらい。人ごみをかき分け、お目当ての紐を発見した。沢山の紐がある中から、とりあえず俺は目に留まった『手芸用糸』と書いてあるものを買うことにした。
今すぐこの時の俺に言ってやりたい。『君が今持ってるのは、紐じゃない。糸だよ』って。
そして買い物を終え、ショウソーを出た。右手のビニール袋には、紐(糸)と葵さん用の絆創膏が入っている。そのビニール袋を右肩に掛け、全力で走り出そうとした時、葵さんの姿が視界に入った。いや、違う。こんなとこに葵さんがいるわけがない。あれは、茜さんだ。
「茜さーん!」
「あれ?セイギくんじゃん!こんなとこで何してるのー?しかも、学校のジャージ着て」
「あっ、えっと………」
二人三脚の練習のことは、隠したほうが良いのかな?葵さんは茜さんに迷惑かけたくないって言ってたし黙っておこう。そうすると、言い訳が必要だな。うーん………
「あっ、ちょっと手芸でもしようかなって。だから材料買いに来た」
「セイギ君手芸するの!?以外!」
心が痛む。手芸なんてやったこと無い。
「茜さんこそ何してるの?」
「私はねー。体育祭で使うプラカードの材料買いに来た!」
「そっか、茜さん実行委員だもんね。頑張って!」
「ありがとうーー! じゃ、また明日学校でー」
初めて茜さんの私服見たけど、イメージのまんまだ。下はグレーのチェックのミニスカートを履いて、上は黒い長袖の服。肩から提げた小さめのバックが全体をまとめている。一言でまとめればオシャレだ。なのに、俺はジャージ。まぁ細かいことは気にするな。急いで葵さんの元へ帰ろう。ここから走ればどんなに遅くても15分で着くはず。
ー20分後ー
「ごめん葵さん、おまたせ!」
「ほんとに、すいません!わざわざ、紐まで買いに行ってもらって」
「ううん、全然大丈夫。それより葵さん怪我はない?」
「大きな怪我では無いんですが、少し膝あたりを擦りむいてしまって………」
「一応、紐と一緒に絆創膏も買ってきたから、」
「何から何まですいません………」
運動神経は悪いけど、手先は器用なんだな。俺が絆創膏貼ると毎回空気入っちゃうもん。
「セイギさん、ください」
「えっ、何を?」
「紐です!」
「えっ、練習やるの?」
「もちろん」
「葵さんが大丈夫なら良いけど………。はい、紐」
「……………セイギさんこれって?」
「紐だけど?」
「セイギさん、冗談が上手ですねー。ほら、早く紐出してくださいよー」
「だから、それが紐だって」
「セイギさん、商品名読めます?」
「読める?って『手芸用糸』でしょ」
「セイギさん、最後なんて言いました?」
「だから、『手芸用糸』 あっ!!!! 俺、紐じゃなくて糸買ってきてるじゃん!」
「コレでやったら、足首から血出ますよ」
「すいませんでしたー! 葵さん!」
「いや、よく考えれば私が紐を持ってくるのを忘れたのが悪いんです。すいません」
「なんか今日はもう帰りますか、」
「そうしますか、」
なんで集まったのかわからない日。でも、どこか楽しかった。たまにはこんな日があっても良いのかなと思いながら家へ帰った。
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