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第4章 魔界チェルノボグ・サーカスでの彷徨
39: ブラック・キュアアンフィニ
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「お二人ともチェルノボグは初めて?」
プラスティネ-ション標体の前で凍り付いている僕たちの背後から声がかかった。
妙にテカテカした素材で出来た竜の模様のある白いチャイナドレスの女が近づいて来いていた。
僕は、スナップドラゴンのゲームに成功し、この竜を呼び出したのだろうか、、、。
背が高くて筋肉質な身体に、ドレスの白い生地がぬめるようにまとわりついている。
でもその生地はラバーでもない、PVCでもない、、一体何で出来ているんだろう、、、それにしてもこの女、腰は見事にくびれているけれど、肩幅が立派過ぎる。
その女もゴムで出来たガスマスクを被っていたが、色が違った。
毒々しい紫。
ゲストのガスマスクの色は総て黒だ。
鮮やかな紫で、光沢のあるエナメルに近い塗料でコーティングをしてあるのだろう。
ガスマスクのぞき穴である丸いガラスの奧に、強いアイメイクをした女の目が見える。
深くて嗄れた声や、血管の浮いた腕からそう若い女ではないことが読みとれた。
「おたく、ここの人?」
さすがにおぼっちゃまくんは上流階級の人なので、こういう場面でも物怖じというものがない。
「まあ、ある意味、そうとも言えるわね。ところで・・チェルノボグの醍醐味は人体剥製の鑑賞だけじゃないんだけど、少し覗いてみる?私が案内してあげるわ、」
ゆで卵を逆さにしたような紫ガスマスクの頭頂にスポットライトの光が反射してる。
僕の頭の中で、危険信号が微かに点滅し始めている。
これはなんの合図なんだろう?
紫ガスマスクの女は腰を振りながら、ヒールの先端をコンクリートに突き刺すように歩く。
この女の着ている生地はなんだろう、、、見たことがない、テカリを売り物にする布地は身体に対するフィット率が高い、、つまり生地が薄い事が多い。
けれど、この女の着ているものは妙に分厚く見える。
パンティのラインだとか、ブラのラインだとかが映らなくていいんだろうけど、、。
チャイナドレスの深いスリットラインから見える脚は、強度の高いストッキングで覆われていて筋肉質で見事なほどすらりとしてる。
そうだ・・・女装した男!!やっと気付いた。
チャイナドレスの下は、きつい体型補正下着やパッドなんかが、いっぱい隠されているに違いない。
いつもなら一目で見抜ける事が、ガスマスクや場内の異様な雰囲気に呑まれて気が回らなかったんだ。
でもその事に気が付いた途端に、僕の中の危険信号は、何故かもっと強く瞬き始めた。
このとき僕の直感は、違う事を訴えかけていたといのに、僕にはその正体が判らなかったのだ。
その暴発した直感の為に、気持ちが凄く混乱していた。
最近見たアニメで、ある男の子が、本来、女の子の特権である筈のスーパーヒロインに「アンフィニって、フランス語で『無限』っていう意味なんだ。その名前に負けないよう、僕はもう一度、なりたい自分を探すよ」とか言っちゃって、ちゃっかりスーパーヒロインにトランスジェンダーみたく変身しちゃう意味を、グルグルと考えてる、、、。
・・・自信をなくした子どもや傷ついた子どもへの、『大丈夫だよ、きっと君ならやれるさ!』って、そんな大人達からのメッセージなのかも知れないけど、それを口にする大人達が、いざという時に踏ん張りきれないで作った社会が、子ども達を追い詰めてるって事を、何故判らないんだろう?
何故、自分が闘わないで、何故、脳天気に子ども達へ可能性を語りかけられるんだろう?
それが今の時代にウケるからかな、、。
ねぇ教えて、所長、、。
・・・そうじゃない、そうじゃないんだよ、リョウ、しっかりして!!
私はブラック・キュアアンフィニよ、とでも名乗りそうな、紫ガスマスクの女装者が、コンテナを改造したブースに僕たちを誘導する。
「ここはビアホールなの、ただし、服が濡れるから裸になってもらう必要があるわ。特製ビールサーバーを使えるのは一人一回。待ち時間は、それなりに長いけど、順番が回って来るまで、見物が出来るから退屈はしない。さあこちらに来て。」
二つに仕切られたコンテナの待合室にあたる部分には先客が5・6人いた。
いずれも恰幅のよい中年男性だ。
待合室には、大きなガラス窓が取ってあって、もう一つの部屋の様子がのぞき込めるようになっている。
僕たちはガラス窓に最も近い位置に座らされた。
どうやら初見者の鑑賞用に確保された特別席のようだった。
「ここで、見学すればいいわ、私は他のゲスト達にちょっとご挨拶、、すぐに戻って来るから、何処にもいかないでね。」
僕たちは椅子に座っていたから、この時初めて、女装者を見上げる形で、ガスマスクの開口口からその口元をはっきり見ることができた。
グロスの聞いた赤い口紅、、でも口元には化粧では隠しきれない皺が見えた。
年齢で言えば四十を超えていそうだった。
「おいおい、、、なんて酷いんだ。」
鷹匠クンが急に僕の手を握りしめて来たので、僕は注意を紫ガスマスクの女装者から、窓の向こう側の世界に慌てて戻すことにした。
ビニールシートを引いた空間の中の雛壇に、その少女は股を広げて座っていた。
一メートルに満たない雛壇の一番高い場所には、大きなビア樽が置いてあった。
そして少女の口には、ビア樽から導かれたホースが繋がれ、下腹部の秘所から黄金色の液体が勢い良く噴出している。
それを仰向けになって口で受け止めているのが、でっぷりと腹の出た全裸の中年男だった。
勿論、その顔は黒いガスマスクで覆われている。
中年男は、ひとしきり液体を飲み干すと、やおら立ち上がり、ビア樽の元栓を閉じ、少女の口に繋がれたホースを外した。
そして中年男は、自分の身体のありとあらゆる部分を、その少女の身体の総てになすり付け始めた。
中年男が自分のお尻を突き出して、それを少女の顔になすり付け始めた時に、鷹匠クンの表情を盗み見したら、彼の顔は真っ赤になっていた。
僕は、それが彼の怒りのせいである事を、密かに願った。
「オー、始まったか、、いよいよ次は我々の番ですな。」
「マスクは顔隠しにはいいが、キスが出きんのはこまりますな。」
そんな会話をしながら、二人の男が僕たちの真後ろに席を詰めて来た。
「ところでおたく、有匡組のうわさ話、お聞きになりましたか?」
「ああ、あの話ね、ここにも影響がでるんじゃないかと心配は心配なんだが。」
「たしかに、関西と対立関係にある関東の有匡組がねぇ、、驚いたことに関西の臓器売人から移植用の心臓を買うんだ。しかもその売人、テンロンの人間ときた。関西の組としちゃ、穏やかじゃないだろうな。特にテンロンを膝元に抱えてる神代組はピリピリしてる筈だ。」
「神代組は関西のトップだからね。でも有匡も有匡だ。そんな事をすれば、関西を刺激するのは目に見えているだろうに。それに有匡の力なら、臓器の一つや二つ、自分の所でなんとでも都合が付くだろうにね。」
「それだけテンロンの臓器は質が良いって事ですよ。なにせ、客のリクエストを聞いた上で、若い娘から直取りだから。東南アジアの話じゃない、このニッポンでですよ。それに事が露見しても、相手がテンロンだと警察が動かないのがいい、、。」
「いいや、有匡組はそういったことを口実にしてワザと関西を刺激してるって話もありますな。第一、ドンが心臓移植が必要な状況だってことをバラすのは、もうそれなりの体制が有匡組に整っているってことじゃないのかなと、」
ガラス窓の中のガスマスクの淫獣は、少女の口に向かって腰を動かし始めている。
「・・まあ関東と関西の間で、物騒な事が始まらなければいいんですがな、巻き添えをくらっちゃ、たまったもんじゃない。しかしこうして見ると、つくづく全国を統一してたY組の存在が懐かしいですな。」
「さっき、話に出てた神代組に蛇喰って男がいるんだが、噂じゃこの男が凄いらしい。この男が本気を出せばY組のようなものがもう一度出来るとかなんとか。」
僕は何気なく聞いていた二人の話の中に、蛇喰の名前が出て来たので、一瞬心臓が止まりそうになった。
探偵事務所を放置したまま行方の知れない所長が、最後に残した情報が「蛇喰」という名前だったからだ。
「もう駄目だ!!いこう!」
混乱の極みにあった僕を追撃するように、突然、鷹匠クンが僕の手を引っ張って立ち上がった。
後ろにいた中年の男達が、吃驚したように僕たちを見ている。
どうやら鷹匠クンは、目の前で繰り広げられる死体少女への屈辱行為を正視し続ける事に絶えられなくなったらしい。
僕は平気だ、、、。
何故、平気なのか、それを考えると、酷い頭痛がするからその理由は考えないけど、、。
僕たちが、このコンテナを後にしようとした時、僕たちを塞ぐように、例の紫ガスマスクの女装男が腰に握り拳を当てて、仁王立ちしていた。
その時、僕はやっと気付いたのだ。
この女装男こそが、僕の探し求めているあの「河童」ではないのかと。
プラスティネ-ション標体の前で凍り付いている僕たちの背後から声がかかった。
妙にテカテカした素材で出来た竜の模様のある白いチャイナドレスの女が近づいて来いていた。
僕は、スナップドラゴンのゲームに成功し、この竜を呼び出したのだろうか、、、。
背が高くて筋肉質な身体に、ドレスの白い生地がぬめるようにまとわりついている。
でもその生地はラバーでもない、PVCでもない、、一体何で出来ているんだろう、、、それにしてもこの女、腰は見事にくびれているけれど、肩幅が立派過ぎる。
その女もゴムで出来たガスマスクを被っていたが、色が違った。
毒々しい紫。
ゲストのガスマスクの色は総て黒だ。
鮮やかな紫で、光沢のあるエナメルに近い塗料でコーティングをしてあるのだろう。
ガスマスクのぞき穴である丸いガラスの奧に、強いアイメイクをした女の目が見える。
深くて嗄れた声や、血管の浮いた腕からそう若い女ではないことが読みとれた。
「おたく、ここの人?」
さすがにおぼっちゃまくんは上流階級の人なので、こういう場面でも物怖じというものがない。
「まあ、ある意味、そうとも言えるわね。ところで・・チェルノボグの醍醐味は人体剥製の鑑賞だけじゃないんだけど、少し覗いてみる?私が案内してあげるわ、」
ゆで卵を逆さにしたような紫ガスマスクの頭頂にスポットライトの光が反射してる。
僕の頭の中で、危険信号が微かに点滅し始めている。
これはなんの合図なんだろう?
紫ガスマスクの女は腰を振りながら、ヒールの先端をコンクリートに突き刺すように歩く。
この女の着ている生地はなんだろう、、、見たことがない、テカリを売り物にする布地は身体に対するフィット率が高い、、つまり生地が薄い事が多い。
けれど、この女の着ているものは妙に分厚く見える。
パンティのラインだとか、ブラのラインだとかが映らなくていいんだろうけど、、。
チャイナドレスの深いスリットラインから見える脚は、強度の高いストッキングで覆われていて筋肉質で見事なほどすらりとしてる。
そうだ・・・女装した男!!やっと気付いた。
チャイナドレスの下は、きつい体型補正下着やパッドなんかが、いっぱい隠されているに違いない。
いつもなら一目で見抜ける事が、ガスマスクや場内の異様な雰囲気に呑まれて気が回らなかったんだ。
でもその事に気が付いた途端に、僕の中の危険信号は、何故かもっと強く瞬き始めた。
このとき僕の直感は、違う事を訴えかけていたといのに、僕にはその正体が判らなかったのだ。
その暴発した直感の為に、気持ちが凄く混乱していた。
最近見たアニメで、ある男の子が、本来、女の子の特権である筈のスーパーヒロインに「アンフィニって、フランス語で『無限』っていう意味なんだ。その名前に負けないよう、僕はもう一度、なりたい自分を探すよ」とか言っちゃって、ちゃっかりスーパーヒロインにトランスジェンダーみたく変身しちゃう意味を、グルグルと考えてる、、、。
・・・自信をなくした子どもや傷ついた子どもへの、『大丈夫だよ、きっと君ならやれるさ!』って、そんな大人達からのメッセージなのかも知れないけど、それを口にする大人達が、いざという時に踏ん張りきれないで作った社会が、子ども達を追い詰めてるって事を、何故判らないんだろう?
何故、自分が闘わないで、何故、脳天気に子ども達へ可能性を語りかけられるんだろう?
それが今の時代にウケるからかな、、。
ねぇ教えて、所長、、。
・・・そうじゃない、そうじゃないんだよ、リョウ、しっかりして!!
私はブラック・キュアアンフィニよ、とでも名乗りそうな、紫ガスマスクの女装者が、コンテナを改造したブースに僕たちを誘導する。
「ここはビアホールなの、ただし、服が濡れるから裸になってもらう必要があるわ。特製ビールサーバーを使えるのは一人一回。待ち時間は、それなりに長いけど、順番が回って来るまで、見物が出来るから退屈はしない。さあこちらに来て。」
二つに仕切られたコンテナの待合室にあたる部分には先客が5・6人いた。
いずれも恰幅のよい中年男性だ。
待合室には、大きなガラス窓が取ってあって、もう一つの部屋の様子がのぞき込めるようになっている。
僕たちはガラス窓に最も近い位置に座らされた。
どうやら初見者の鑑賞用に確保された特別席のようだった。
「ここで、見学すればいいわ、私は他のゲスト達にちょっとご挨拶、、すぐに戻って来るから、何処にもいかないでね。」
僕たちは椅子に座っていたから、この時初めて、女装者を見上げる形で、ガスマスクの開口口からその口元をはっきり見ることができた。
グロスの聞いた赤い口紅、、でも口元には化粧では隠しきれない皺が見えた。
年齢で言えば四十を超えていそうだった。
「おいおい、、、なんて酷いんだ。」
鷹匠クンが急に僕の手を握りしめて来たので、僕は注意を紫ガスマスクの女装者から、窓の向こう側の世界に慌てて戻すことにした。
ビニールシートを引いた空間の中の雛壇に、その少女は股を広げて座っていた。
一メートルに満たない雛壇の一番高い場所には、大きなビア樽が置いてあった。
そして少女の口には、ビア樽から導かれたホースが繋がれ、下腹部の秘所から黄金色の液体が勢い良く噴出している。
それを仰向けになって口で受け止めているのが、でっぷりと腹の出た全裸の中年男だった。
勿論、その顔は黒いガスマスクで覆われている。
中年男は、ひとしきり液体を飲み干すと、やおら立ち上がり、ビア樽の元栓を閉じ、少女の口に繋がれたホースを外した。
そして中年男は、自分の身体のありとあらゆる部分を、その少女の身体の総てになすり付け始めた。
中年男が自分のお尻を突き出して、それを少女の顔になすり付け始めた時に、鷹匠クンの表情を盗み見したら、彼の顔は真っ赤になっていた。
僕は、それが彼の怒りのせいである事を、密かに願った。
「オー、始まったか、、いよいよ次は我々の番ですな。」
「マスクは顔隠しにはいいが、キスが出きんのはこまりますな。」
そんな会話をしながら、二人の男が僕たちの真後ろに席を詰めて来た。
「ところでおたく、有匡組のうわさ話、お聞きになりましたか?」
「ああ、あの話ね、ここにも影響がでるんじゃないかと心配は心配なんだが。」
「たしかに、関西と対立関係にある関東の有匡組がねぇ、、驚いたことに関西の臓器売人から移植用の心臓を買うんだ。しかもその売人、テンロンの人間ときた。関西の組としちゃ、穏やかじゃないだろうな。特にテンロンを膝元に抱えてる神代組はピリピリしてる筈だ。」
「神代組は関西のトップだからね。でも有匡も有匡だ。そんな事をすれば、関西を刺激するのは目に見えているだろうに。それに有匡の力なら、臓器の一つや二つ、自分の所でなんとでも都合が付くだろうにね。」
「それだけテンロンの臓器は質が良いって事ですよ。なにせ、客のリクエストを聞いた上で、若い娘から直取りだから。東南アジアの話じゃない、このニッポンでですよ。それに事が露見しても、相手がテンロンだと警察が動かないのがいい、、。」
「いいや、有匡組はそういったことを口実にしてワザと関西を刺激してるって話もありますな。第一、ドンが心臓移植が必要な状況だってことをバラすのは、もうそれなりの体制が有匡組に整っているってことじゃないのかなと、」
ガラス窓の中のガスマスクの淫獣は、少女の口に向かって腰を動かし始めている。
「・・まあ関東と関西の間で、物騒な事が始まらなければいいんですがな、巻き添えをくらっちゃ、たまったもんじゃない。しかしこうして見ると、つくづく全国を統一してたY組の存在が懐かしいですな。」
「さっき、話に出てた神代組に蛇喰って男がいるんだが、噂じゃこの男が凄いらしい。この男が本気を出せばY組のようなものがもう一度出来るとかなんとか。」
僕は何気なく聞いていた二人の話の中に、蛇喰の名前が出て来たので、一瞬心臓が止まりそうになった。
探偵事務所を放置したまま行方の知れない所長が、最後に残した情報が「蛇喰」という名前だったからだ。
「もう駄目だ!!いこう!」
混乱の極みにあった僕を追撃するように、突然、鷹匠クンが僕の手を引っ張って立ち上がった。
後ろにいた中年の男達が、吃驚したように僕たちを見ている。
どうやら鷹匠クンは、目の前で繰り広げられる死体少女への屈辱行為を正視し続ける事に絶えられなくなったらしい。
僕は平気だ、、、。
何故、平気なのか、それを考えると、酷い頭痛がするからその理由は考えないけど、、。
僕たちが、このコンテナを後にしようとした時、僕たちを塞ぐように、例の紫ガスマスクの女装男が腰に握り拳を当てて、仁王立ちしていた。
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