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最終章 終焉、あるいは再生への道筋
81: 老狼の闘い
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「その悪い癖を止めるのと一緒に、その人や人形も返してもらえると有り難いな。」
煙猿は、突然後ろからかけられた声に驚きもせず、ゆっくり振り返った。
数メートル先に、月光を浴びた男がうっそりと立っている。
なめし革のやや丈の長いジャケットが、月の光に濡れているように見えた。
左手には長刀を、鞘ごとぶらさげるように持っている。
「この俺が気づかないとはな、、、あんた、何者だ?」
感覚がオーバーフローしてる、自分は薬を多く摂りすぎているのかも知れないと煙猿は考えていた。
常人だとアッパー系の薬の摂取量と覚醒の度合いは、比例するような錯覚に陥るものだが、煙猿の特殊体質にはそういった事は起こらない。
『薬で得られる万能感は偽物だ』、煙猿はそれを生理的に理解している。
煙猿が薬に求めているのは身体能力の飛躍だけだったが、今日はそのバランスを崩していた。
日中、人を惨殺した興奮が薬の大量摂取を促し、それが煙猿の明晰さを鈍らせていた。
「この俺が、は余計だよ。私の接近に気が付かないのは、単にお前が鈍いせいだ。」
その男の挑発に、煙猿はニヤリと笑う。
その間、煙猿の右手はさりげなく注射器の入ったケースを尻ポケットに戻し、腰に吊ってあるチェーンソーのキーフォルダーの位置を確かめている。
「挑発のつもりなら止めておくんだな、時間の無駄だ。もう一度聞く、名前はなんという。これでも敬意をはらってるんだぜ。俺はこれから殺す相手の名前など気に掛けない人間だ。」
「それは有り難いな。それでは名乗っておこうか、、蛇喰だ。蛇喰剛人。」
剛人はそう応えながら、じりじりと二人の間の距離をつめている。
「蛇喰、、?この所長さんをガードしてた連中の親玉か。」
「違うな、そいつは俺の弟だ。」
二人のやりとりが続く。
その間二人とも、それぞれが置かれた状況を吟味していた。
剛人は先ほど煙猿が手に持っていた注射器のケースの事を、煙猿は気配さえ見せず接近してきたこの蛇喰という男の戦闘能力を。
「弟?・・・ふん、どうでもいいがな。なあ、蛇喰さんよ、あんた、銃を用意してないのか?俺はさっきからあんたが、ぶら下げてる日本刀が気になってしかたがないんだ。」
「弟とは違って、銃は持たない主義だ。それに煙猿には、銃は効かないと聞いている。煙に弾をぶち込むみたいなもんだと、、ならば、この刀で煙を両断してやるつもりで持ってきた。」
剛人が銃を持たない主義というのは本当だったが、煙猿のような薬中のサイコパスに銃を使うことに抵抗はなかった。
抵抗がないのにも関わらず、剛人が銃を所持しなかったのは、リョウつまり「涼子」の手前だった。
涼子は、何がなんでも目川救出の現場に付いて来ると言い、それならばと持たせた自衛用の拳銃も、煙猿を殺すために使用しそうな気配だった。
そんな彼女の手前、こうやって自分の身でその姿勢を示すしかなかったのだ。
敵に死を与えるは、最後の最後だ。
でなければ、人は死と生を弄ぶようになる。
それに剛人自身が行ってきた煙猿の調査結果でも、煙猿が銃の類を使った殺しをやらない事が判っていて、それならばフェアに、といういかにも剛人らしい判断もあったのだ。
「うれしいな。俺も銃は嫌いだ。あんなもんで人を殺しても何も面白くない。必要なのは手応えだ。肉を切り、骨を断つ手応え、、それが唯一、人の存在を実感する方法だ。違うか?」
「違うね。」
そう言った途端、剛人が跳ねた。
次に着地する寸前に、煙猿を両断できる距離まで間合いは既に詰まっていた。
煙猿は、それを見越したように、剛人に向かって、目川を乗せた車椅子を思い切り突き出した。
剛人のジャンプは煙猿が想像したよりも遙かに高く、そして煙猿が突き出した車椅子のスピードは、剛人のとっさの判断よりも速かった。
結果、剛人は自分に突進してくる車椅子の上を飛び越え、予定していた着地点の半歩後ろ遠くで、その剣を抜きうつ形になった。
浅い。
しかし、続く剣の一伸びで、しとめられる間合いだった。
剛人の抜き打ちは、地面から斜め上に、煙猿の脇腹をすくい上げるように切り込む軌道を見せた。
「飛ばれた相手からは、上からの斬撃が来る」という相手の読みの裏をかいている。
次の瞬間、ズンという手応えと共に、頭上から煙猿の内蔵が飛び散ってくる、そう思った瞬間、剛人は自分の剣が「滑る」のを感じた。
反応は早かった。
剛人は、直ぐさま、自分の身体を煙猿の身体に巻き付けるような形で起こし、再び飛び退った。
その時、剛人の手には、煙猿の尻ポケットから抜き取った注射器ケースが握られていた。
剛人の両手が、自分の注射器ケースと日本刀で塞がっている、チャンスだ、、、煙猿は思わず攻撃の反応をしかけた。
しかし「まて、そんな事など隙にはならない相手だ。」という直感が、辛うじて煙猿の反射的な動きを止めた。
「ほう、よく止めたな、」という表情で剛人がにやりと笑った。
そして剛人が煙猿の目の前で、注射器ケースを床に落とすと、それを踵で粉々に踏み砕いた。
これで最低限、剛人はリョウの目の前で、目川を剥製にされるという最悪の事態を避けられた事になる。
「居合いか、、見事なもんだ。だが最初の攻撃を俺はかわした。お前の攻撃の間合いが、理解できたということだ。それに反してお前は、俺がどうやってお前の最初の一撃を防いだのか、未だに判らないんだろ?」
「よく喋るな。お人形相手でないと、人間が怖くて喋れない奴だと聞いていたんだがな。」
煙猿は心理戦の達人でもある、だが剛人も百戦錬磨の老練なファイターだ。
二人の挑発合戦は続く。
しかし、実際には煙猿の言う通り、剛人は居合いの間合いを見きられつつあるのに、煙猿の攻撃手法が判らないでいた。
これは圧倒的に、剛人の不利だった。
剛人は、煙猿に車椅子ごと突き飛ばされた目川の様子を探った。
目川は車椅子ごと壁に激突し、車椅子から放り出されて床に倒れたままだ。
その位置は、二人から遠い。
煙猿が目川を人質に取って戦おうとしたとしても、そこに行く前に決着がつけられる距離だ。
迷っている暇はない、太刀筋はまだ完全に見切られたわけではない。
煙猿の手の内はそのうち見えてくる。
誉められた人生ではないが、少なくとも武道の修練だけは真面目にやってきた。
覚醒剤の勢いをかって、人殺しをしているようなサイコパスに遅れを取るつもりはない。
そう剛人は腹をくくる。
「今度、刀を抜いたら、わざわざそれを鞘に納める必要はないぜ。それ刃渡り71センチ、、、だろ?」
煙猿の挑発が、次の戦闘開始の合図だった。
剛人が再び飛ぶように、踏み込んだ。
煙猿がそれをサイドステップでかわす。
まさに目の前から煙のように消え去る。
普通ならそれで、相手は煙猿に背後に回り込まれ、首にチェーンソウを巻き付けられてその首を落とされる。
だが今、煙猿が相手をしている男は、剛人だった。
体術と剣術を混ぜ合わせたような動きが、煙猿を追尾し、居合いの二の太刀を放つ。
煙猿は、自分に振り向きざま剣を振り下ろしてくる剛人の動きに対し、頭上に張ったワイヤーを受けだけに使わず、そのまま斜め前に押し込んでいき、相手の力を流しながら攻撃に転ずるイメージを閃光のごとく思い浮かべた。
後は簡単だ。
身体がかってに、それを実現化する。
それが薬の力だった。
最後には、蛇喰の右腕が、その肩から刀ごと切り落とされている筈だ。
煙猿は、突然後ろからかけられた声に驚きもせず、ゆっくり振り返った。
数メートル先に、月光を浴びた男がうっそりと立っている。
なめし革のやや丈の長いジャケットが、月の光に濡れているように見えた。
左手には長刀を、鞘ごとぶらさげるように持っている。
「この俺が気づかないとはな、、、あんた、何者だ?」
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常人だとアッパー系の薬の摂取量と覚醒の度合いは、比例するような錯覚に陥るものだが、煙猿の特殊体質にはそういった事は起こらない。
『薬で得られる万能感は偽物だ』、煙猿はそれを生理的に理解している。
煙猿が薬に求めているのは身体能力の飛躍だけだったが、今日はそのバランスを崩していた。
日中、人を惨殺した興奮が薬の大量摂取を促し、それが煙猿の明晰さを鈍らせていた。
「この俺が、は余計だよ。私の接近に気が付かないのは、単にお前が鈍いせいだ。」
その男の挑発に、煙猿はニヤリと笑う。
その間、煙猿の右手はさりげなく注射器の入ったケースを尻ポケットに戻し、腰に吊ってあるチェーンソーのキーフォルダーの位置を確かめている。
「挑発のつもりなら止めておくんだな、時間の無駄だ。もう一度聞く、名前はなんという。これでも敬意をはらってるんだぜ。俺はこれから殺す相手の名前など気に掛けない人間だ。」
「それは有り難いな。それでは名乗っておこうか、、蛇喰だ。蛇喰剛人。」
剛人はそう応えながら、じりじりと二人の間の距離をつめている。
「蛇喰、、?この所長さんをガードしてた連中の親玉か。」
「違うな、そいつは俺の弟だ。」
二人のやりとりが続く。
その間二人とも、それぞれが置かれた状況を吟味していた。
剛人は先ほど煙猿が手に持っていた注射器のケースの事を、煙猿は気配さえ見せず接近してきたこの蛇喰という男の戦闘能力を。
「弟?・・・ふん、どうでもいいがな。なあ、蛇喰さんよ、あんた、銃を用意してないのか?俺はさっきからあんたが、ぶら下げてる日本刀が気になってしかたがないんだ。」
「弟とは違って、銃は持たない主義だ。それに煙猿には、銃は効かないと聞いている。煙に弾をぶち込むみたいなもんだと、、ならば、この刀で煙を両断してやるつもりで持ってきた。」
剛人が銃を持たない主義というのは本当だったが、煙猿のような薬中のサイコパスに銃を使うことに抵抗はなかった。
抵抗がないのにも関わらず、剛人が銃を所持しなかったのは、リョウつまり「涼子」の手前だった。
涼子は、何がなんでも目川救出の現場に付いて来ると言い、それならばと持たせた自衛用の拳銃も、煙猿を殺すために使用しそうな気配だった。
そんな彼女の手前、こうやって自分の身でその姿勢を示すしかなかったのだ。
敵に死を与えるは、最後の最後だ。
でなければ、人は死と生を弄ぶようになる。
それに剛人自身が行ってきた煙猿の調査結果でも、煙猿が銃の類を使った殺しをやらない事が判っていて、それならばフェアに、といういかにも剛人らしい判断もあったのだ。
「うれしいな。俺も銃は嫌いだ。あんなもんで人を殺しても何も面白くない。必要なのは手応えだ。肉を切り、骨を断つ手応え、、それが唯一、人の存在を実感する方法だ。違うか?」
「違うね。」
そう言った途端、剛人が跳ねた。
次に着地する寸前に、煙猿を両断できる距離まで間合いは既に詰まっていた。
煙猿は、それを見越したように、剛人に向かって、目川を乗せた車椅子を思い切り突き出した。
剛人のジャンプは煙猿が想像したよりも遙かに高く、そして煙猿が突き出した車椅子のスピードは、剛人のとっさの判断よりも速かった。
結果、剛人は自分に突進してくる車椅子の上を飛び越え、予定していた着地点の半歩後ろ遠くで、その剣を抜きうつ形になった。
浅い。
しかし、続く剣の一伸びで、しとめられる間合いだった。
剛人の抜き打ちは、地面から斜め上に、煙猿の脇腹をすくい上げるように切り込む軌道を見せた。
「飛ばれた相手からは、上からの斬撃が来る」という相手の読みの裏をかいている。
次の瞬間、ズンという手応えと共に、頭上から煙猿の内蔵が飛び散ってくる、そう思った瞬間、剛人は自分の剣が「滑る」のを感じた。
反応は早かった。
剛人は、直ぐさま、自分の身体を煙猿の身体に巻き付けるような形で起こし、再び飛び退った。
その時、剛人の手には、煙猿の尻ポケットから抜き取った注射器ケースが握られていた。
剛人の両手が、自分の注射器ケースと日本刀で塞がっている、チャンスだ、、、煙猿は思わず攻撃の反応をしかけた。
しかし「まて、そんな事など隙にはならない相手だ。」という直感が、辛うじて煙猿の反射的な動きを止めた。
「ほう、よく止めたな、」という表情で剛人がにやりと笑った。
そして剛人が煙猿の目の前で、注射器ケースを床に落とすと、それを踵で粉々に踏み砕いた。
これで最低限、剛人はリョウの目の前で、目川を剥製にされるという最悪の事態を避けられた事になる。
「居合いか、、見事なもんだ。だが最初の攻撃を俺はかわした。お前の攻撃の間合いが、理解できたということだ。それに反してお前は、俺がどうやってお前の最初の一撃を防いだのか、未だに判らないんだろ?」
「よく喋るな。お人形相手でないと、人間が怖くて喋れない奴だと聞いていたんだがな。」
煙猿は心理戦の達人でもある、だが剛人も百戦錬磨の老練なファイターだ。
二人の挑発合戦は続く。
しかし、実際には煙猿の言う通り、剛人は居合いの間合いを見きられつつあるのに、煙猿の攻撃手法が判らないでいた。
これは圧倒的に、剛人の不利だった。
剛人は、煙猿に車椅子ごと突き飛ばされた目川の様子を探った。
目川は車椅子ごと壁に激突し、車椅子から放り出されて床に倒れたままだ。
その位置は、二人から遠い。
煙猿が目川を人質に取って戦おうとしたとしても、そこに行く前に決着がつけられる距離だ。
迷っている暇はない、太刀筋はまだ完全に見切られたわけではない。
煙猿の手の内はそのうち見えてくる。
誉められた人生ではないが、少なくとも武道の修練だけは真面目にやってきた。
覚醒剤の勢いをかって、人殺しをしているようなサイコパスに遅れを取るつもりはない。
そう剛人は腹をくくる。
「今度、刀を抜いたら、わざわざそれを鞘に納める必要はないぜ。それ刃渡り71センチ、、、だろ?」
煙猿の挑発が、次の戦闘開始の合図だった。
剛人が再び飛ぶように、踏み込んだ。
煙猿がそれをサイドステップでかわす。
まさに目の前から煙のように消え去る。
普通ならそれで、相手は煙猿に背後に回り込まれ、首にチェーンソウを巻き付けられてその首を落とされる。
だが今、煙猿が相手をしている男は、剛人だった。
体術と剣術を混ぜ合わせたような動きが、煙猿を追尾し、居合いの二の太刀を放つ。
煙猿は、自分に振り向きざま剣を振り下ろしてくる剛人の動きに対し、頭上に張ったワイヤーを受けだけに使わず、そのまま斜め前に押し込んでいき、相手の力を流しながら攻撃に転ずるイメージを閃光のごとく思い浮かべた。
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