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第3章 光の壁
36: 完全制圧
しおりを挟む「あなた方、もしかしたら地上世界の人?」
レイチェル・奥田が聞いた。
どうやら4人の中で彼女は、今の状況が一番判っていないというのか、彼女は残り3人に騙されていたようだ。
「そうだ。」
アレンが嬉しそうに答えた。
「君は悪い人ではなさそうだな。君が本当の事を言ってくれたら、何とかなるかも知れないよ。」
「どうなるというのアレン?あなた本当に甘ちゃんね。底抜けだわ。こいつらは、さっき私たちを殺そうとしていたのよ。普通なら私たちは死んでいる。こいつらを殺しても、私たちの目的に影響はないわ。ダンク、やって!」
シャーロットが苛々した様子で言った。
「人間からの命令は受け付けない。その時を決めるのは私だ。私の疑問は一応解けた。だが、殺したいなら自分でやればいい。私は止めはしない。」
彼らへのブラフは終わったのだという風に、葛星は冷たく言い放った。
それは、シャーロットにすれば予想外の返答だった。
『人間からの、、って何なの?!さっきは私の思惑通りに反応してくれたのに、、、。それに、ココにやって来てから、周囲の事はどこか上の空って感じだったくせに、、さっきのは、私まで利用したの!。』
「いいわ!」
瞬間的に頭に血が上ったシャーロットは、ライフルを肩づけした。
本気だった。
「止めて!言うわ!私たちは混沌王の出生の秘密を探りに来たの!私たちは今の戦争に疑問を感じている!混沌王に危険な秘密があるのなら、それを暴露する、人々は目覚めるわ。いいえ。きっと混沌王には、恐ろしい秘密が隠されている筈だわ!」
レイチェルは、シャーロットの引き金にかかる指を止める為に、悲鳴の様に一気に喋り続けた。
葛星がゆっくり自分の掌で、シャーロットの水平に構えた銃身を押し下げながら言った。
「クン・バイヤーに訊く。お前達がカリニテと呼ぶマシンマンは、お前達をここまで安全に導くために、いくつもの防衛システムを無効化してきたな?」
「そうだ。彼は強いだけではない。そういった事も自在にこなせる。私が多くの部下を引き連れて来なかったのは、彼一人で十分役に立つからだ。」
クン・バイヤーは誇らしげに答えた。
「カリニテが眠りに落ちたのは、この地下道のどの警備システムを停止させた時だ?」
クン・バイヤーは、葛星の慧眼を驚くと共に、それを今、指摘する葛星の意図を計ろうとした。
「考えるな、クン・バイヤー。私を陥れようと考えるのは、時間の無駄だ。死にたくなければ応えろ。」
葛星はシャーロットのライフルを押さえた手を下げた。
ライフルの銃身は、バターにナイフが入ったように、いとも容易く切断された。
その場にいたカリニテ以外のすべての人間の顔が凍り付いた。
「、、、言っても判るまい。MJ880防御ラインを解除した時だ。カリニテが眠りこける前に私にそう言った。カリニテはMJ880を解除する際に多くのメモリを消費するのだそうだ。彼の中で、そのタスクを終えてから、一旦退避させたシステムを復元するまでには、時間がかかるとも言った。その間、彼の人間としての意識は眠り続ける。その後、しばらくは、カリニテの補助システムが起動して、私の命令を聞いて、彼は半分自動的にここまで来たんだ。彼がまともだったら、我々は君の手に落ちるような事はなかった筈だ。、、が、彼は未だに目覚めない。」
クン・バイヤーが苦いものを口から捨てるように言った。
葛星は暫く黙ったままだ。
第二の洞の中には、破壊神の判決を待つように、息苦しい沈黙が続いた。
「どうやら本当のようだな。」
「、、どうでもいいわ。もう休みたい。これ以上、ややこしい事はたくさんよ。」
シャーロットは、役に立たなくなったライフルを捨てると、腰に吊っていた小拳銃を引き抜いて投げやりに言った。
「その為には、あなた方が邪魔なの。弾駆、訊きたいことは訊いたんでしょう。今度は邪魔をしないで。」
アレンは生唾を飲んだ。
今度は葛星は動きそうになかった。
シャーロットはたぶん本気だろう。
ラバースーツの長期に渡る着用と、精神的な極度の緊張。
彼女は常軌を逸している。
止めに入れば先に撃ち殺されるのは自分だ。
捕虜の三人もその雰囲気を察知している。
シャーロットのゴム手袋の指が拳銃の引き金を引き絞り始めたとき、室内に供給されている電圧が下がり、光源の光が弱まった。
停電が起こったのだ。
その時、捕虜達のやや後ろに転がっていた大男が起きあがって、葛星が縛り上げたケーブルやコードをいとも簡単に胸筋の力だけで引きちぎってしまった。
シャーロットが躊躇わずに、小拳銃をマシンマンに向かって発砲した。
三発、マシンマンの胸に向かって見事に連射した。
だがマシンマンは揺らぎもしないでシャーロットの方に歩みよってくる。
確かに歩いてはいるのだが、そのスピードは異常に早い。
この時とばかり、カーリ・ゲナダが縛られたまま、エビが跳ねるようにアレンに体当たりした。
アレンは何の抵抗もできないまま、はね飛ばされる。
シャーロットがカリニテの不死身に驚いている間にカリニテは、その手から小拳銃をあっさりともぎ取り、軽く彼女の頭をなぜた。
シャーロットは脳震盪を起こしてその場に崩れてしまう。
一瞬の出来事だった。
カリニテは次に葛星の目の前に立った。
そして口ひげのある分厚い唇を歪めて不敵に笑った。
マシンマンとしては、あまりに人間くさい笑いだった。
「お前、手強そうだな。嬉しいぜ。」
二人が対峙している間、レイチェルはクン・バイヤーににじり寄り、口で彼の戒めを解き始めている。
彼らは同志ではなかったが、チームではあったようだ。
「カリニテ。その化け物を殺してくれ!」
クン・バイヤーが、戒めの解けた手首をマッサージしながら吠えた。
「察する所、お前さんの主な武器は、その奇妙なパワードスーツの表面に埋め込まれた超振動ブレードだな。儂の人工皮膚の下にある合金の硬度を試してみるかい?」
カリニテの体重の乗ったフック気味の鉄拳が、葛星のこめかみに伸びた。
それはたとえ、次の必殺の攻撃の為のフェイントであったとしても、もの凄いスピードだった。
一方、葛星は、何故か先ほどから塑像の様に直立したまま、その攻撃を避けようともしない。
カリニテの鉄拳が葛星のヘルメットをブチ割る瞬間に、その動きが完全に止まった。
動きが止まったというより、その身体全体の機能が停止したようみ見える。
「何を気取ってやがるんだ?この居眠り野郎!気を抜くとそいつにやられるぞ!」
どんな状況でも、相手に対する嘲りを口に出してしまう、それがカーリ・ゲナダだった。
そして、カーリ・ゲナダは、荒事をくぐり抜けて来た人間らしい観察力を持っていた。
「・・彼は気取っている訳ではない。動けないのだ。私の命令なしではな。私はたった今、M880jラインを解除した彼のサブシステムを理解し制御した。これから彼は、私の下部だ。」
葛星はまるで時間が凍り付いてしまったようなカリニテの側から、するりと離れた。
カーリ・ゲナダは時を置かず、側に転がっているアレンの腰から拳銃を引き抜くと葛星に向かって発砲した。
案の状、通常の弾丸が葛星を貫けぬ事を確認したカーリ・ゲナダは、人質のアレンのこめかみにその銃口を向けようとした。
だがその手から拳銃は、葛星の方から飛来した黒い光を放つ何かによってはね飛ばされてしまっていた。
後に、拳銃に深く食い込んだ爪先ほどのブレードを見たカーリは、それが自らの身体に発射されなかった事を深く感謝した。
「カリニテを奪われたお前達に金輪際、チャンスはない。諦めろ。それとも私と戦って、おのが身体をバラバラに解体されたいか?」
全てを拒絶し、決定する声が響いた。
そこには、地上人に葛星と呼ばれる、赤と黒の死神がいた。
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