ゴックン、その口で食べるの? /Osaka発ドラァグドライブ、掛け違いの旅

Ann Noraaile

文字の大きさ
141 / 177
【 東南アジアの旅 】

06: ベトナム サイゴン・サイゴン ⑥後書き、あるいはボーナストラック

しおりを挟む
 ベトナムに行って絶対食べたいもの、それはチェー。
 よーするに餡蜜の親戚みたいなもの。
 ベトナムに行って見つけたいもの。
 それは「夏至」に出てくる優しげな部屋空間。

 ありましたよ。両方を叶えてくれる場所が。
 その名もラフネ・ソネ。
 ここを見つけるのに約二十分の時間と、ベトナム叔父さん達のご尽力が必要だったけど。
 ラフネ・ソネは99が含まれているビルの二階にあるんだけど、一見さんには一階にある入り口は絶対見つけられないと思うんだ。
 見つけられたとしてもあの階段を上がるのは勇気がいると思うな。
 そこで登場してくれたのがベトナム叔父さんA。
 叔父さんAは、大きな声で最初から「おい日本人。ラフネ・ソネはそこだよ。」って迷子バレバレモードのアン達に声をかけてくれてたんだけど、彼が市内に五万といる「オートバイにもたれ掛かって一日中を過ごす正体不明人間」族だったので、「なにー?この叔父さん。」てな感じで無視してたの。

 それで、他のいかにも健全な商売人って感じの叔父さんBに場所を訪ねたら、そこら中から人がわらわらと集まってきて、あれやこれやとアンの差し出した地図を見て相談をぶつわけ、、(うーん、、どっかのガイドブックにベトナム人は地図が読めないって書いてあったような、、まさかねー、、でもこの感じは、、。)で結局、地図からは何も判明せず、叔父さんB曰く、「お前達の探しているラフネ・ソネはここから約三キロ西へ行った所だ。」と指さし確認してくれたのでした。

「サンキュー」って愛想良く言ってみたものの「アン、場所的にはここで絶対合ってると思うんだけどな。三キロも行ったらさっきの場所に戻っちゃうよ。」って事で、その辺をうろうろしてたら、再び叔父さんAが「お前らさっきからなにしてんだ。ラフネ・ソネはそこだって言ってんだろうが」と声をかけてくる。

 もうこうなったら度胸を決めるきゃないって感じで「ユーノウ、ラフネ・ソネ?」って聞いたら、俺についてこいって感じで、アン達が何度もその前を通った薄暗い上り階段に私たちを案内するじゃないの。
 麻薬取引でもしてそうな細長い通路に連れ込まれて「やばいんじゃない。」って思う間もなく、叔父さんAは更に奥まった通路に入っていく。
 確かにそこにはお店らしきドアがあるんだけど、何故かクローズドの掛札が、、、。
 でもこの叔父さん、掛札を外して、なにやら店の中に声をかけている様子。
 そして中からあわてて出てきたのがラフネ・ソネの店員さんという顛末。

 叔父さんは「やることをやったから俺は帰るぜ」って感じで、颯爽と引き上げていったんだけど、、感謝するより先に「あんた何者?」っていう感じが強い人でした、、はい、、ゴメンネ、叔父さん。
 今までさんざ、ベトナムの悪口を書いたけど、実は無茶苦茶、親切な人たちが市内にだって一杯存在するんだ。って事です。
 こんな光景、日本にはないでしょ。
 日本人はやさしいけど、出しゃばってまで他人の事、面倒見てくれないもの。

 ラフネ・ソネは素敵な店です。
 なんてたってオーナーが日本人女性、、つまりお店自体が、日本人の描くベトナムの美しい幻影を見事に具現化したものなんだから。
 フランス風空間を持つラフネ・ソネの先客は、ヨーロッパ系の小柄な中年オヤジと背の高い若いアジア人女性。
 彼ら、ずばり不倫カップルでしょう。
 このオヤジ、横に彼女を侍らせながら店に入って来たアンにまで色目使いやがって一体何様のつもりだ、てな感じの人です。
 白人優位感覚がその醜い身体からにじみ出てるぞ。
 商売抜きで鞭でしばいてやりたいよ。
 ・・まったくもう。

 でも良い隠れ家だよなー。
 外の喧噪と、この内側の静謐さを隔てているのは、緑と花で飾られた出窓、、、ホーチミンシティの殺人的な雑踏もスクリーンに切り取ってしまえばそれなりに美しい、、、そして天井では巨大な扇風機がゆっくり回っている、、。
 蓮のグリーンティを飲み、念願のチェーを食べる。
 なんだろうこの懐かしさは、、子どもの頃に食べた(あるいは食べた筈の)お菓子の味がする。
 美味しさなら、今の食べ物の方がずっと上だ。
 見てくれの美しさも今の食べ物のほうがずっと上だ。
 だけど今の食べ物を食べたって、ジーンとはしない。
 きっとそれは食べ物だけじゃないだろうと思う。

「物が豊かになったから、心が貧しくなったんじゃない。物に関わる力と、物に心を込める力がなくなっただけだ。」確かそんな事を言っていた人がいたっけ、、。
 グリーンティの黄緑の透明が午後の光の中で静かに輝いていた。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...