ゴックン、その口で食べるの? /Osaka発ドラァグドライブ、掛け違いの旅

Ann Noraaile

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【 東南アジアの旅 】

07: 初めてのバリ旅行 ジャランジャランは明日から ①バリへ

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 最近、なんだがわけもなく満ち足りた感情と、すごく不安で飢えた感覚が交互に訪れる。
 帰国後の荷物整理もまともに出来ていない毎日の中で、まだ配り切れていない土産物にと買った籐細工のバックだとか、旅先の残骸を見ながら、そんな二つの感情の中で溺れそうになっている自分がいる。

 去年の夏、ベトナムから帰って来た時も、しばらく口の中に出来の悪いボールギャグを噛まされているような気分が続いたけれど、、今度もそんな感じ。

 ただ今度はベトナムのピリピリした感じではなく、ぼわーっとした感覚があって、ラバースーツを脱いだ後、バスに浸かっている様なゆったりとした開放感があるのだ。
 ちょっと気障に言うと、もしかしたら人間には発見すべき「居場所」はなくても、「帰っていい場所」が必ず用意されているのではないかという感覚だ。


    ・・・・・・・・・

 日輪を背負いし者の枯れ荒野
   肌を焼く哀 荒く厳しく
  
 狂歌の字数がそろった。これでバリに出かける前の最後のWeb更新に華が添えられる。
 でもこの狂歌、我ながらとても古くさい感じ。
 数日前の四国ドライブで見た室戸岬に立つ弘法大師立像の印象と、Webで仲良くさせてもらっているメランコリーな男性へのエールのつもりで詠んだものだ。
 「彼」は自分が精神を病んでいると言うが、アンは「病んでいない人」など誰一人としていないような気がする。
 もちろんその線引きには、社会が定めた、人間の収容容量の境界線が重要な役割を果たすのだろうが。
 アンには時々、精神を病んで彷徨している人の姿が、どこか真理を求める修行者のように見える事があって、「彼」の姿が空海の姿とダブったのだ。  

 日本に上陸した台風が北陸方面に移動し始める頃に、関西空港で搭乗手続き開始って感じの旅行だった。
 伊丹空港へのアクセスは大渋滞って聞いていたから国内線はまだ台風の影響を受けていたのだろう。
 デンパサール空港での入国手続きは、極めてあっさり終了し、やっぱりここは「神々の住む島」なんかじゃなくてプチ・ハワイなんだと気付かされる。

 空港の両替ブースでは激しい呼び込み合戦があり、そんな喧噪の中でアンと相方はびびりながら1万円分を両替。
 街の両替商の方が高レートなのは判っているけど、こちらは例によって馬鹿でかい荷物持ちだし、今夜早速この荷物を運んでくれるボーイさんにチップが必要になる。
 あまりの愛想の良さに「これって詐欺じゃないの」とかこっちが疑心暗鬼に陥っていると、両替ブース内の若い男の子達は68.5万Rpを並べて見せる。
 「騙したりしないよ。ほらね。」って感じ。
 更にこっちが疑い深そうな目で見ると何故かもう一度同じく68.5万Rpを並べてこのレートで「もってけ」というゼスチャー。

 所が実際には「え?レートは1円が68.5Rpなんでしょ。なんでこんなに多くくれるの」という良い方の事態が発生した。
 相場はさっき見せたとおりだけど、俺達はこれでやってるんだぜ、どうだい、得しただろ?って事なのか?
 頭の中に?マークが激しく点灯するんだけど、相方は1万円しか出していないのに「ディス、オールオーケー?」って言いながら、そそくさと併せて137万Rpをかき集めてしまう。

 落ち着いて考えて見ると1万円で2万円分の現地通貨に変えた事になるのだけれど、、、別に相方に悪気があったわけではないのだ。
 あるいは、これでも空港での両替屋には利益があったのかも知れないし。
 とにかく両替ブースの「呼び込み合戦」という初めての体験に舞い上がってしまったのは二人とも一緒で、なにがどうだったのか未だによく判らないのである。
 
 でもあれが何かのミスだったとしても、両替の若い子たちって、事の顛末に後で気づいても、あまり堪えていないような気がするな。
 なぜって「それがバリ」って気がするんだよね。
 彼らってお金に対して、、強欲なのか無頓着なのか、、、それはこの旅の中で、いつも考えさせられる事だったんだけれど。

 日本からの航空便は夜着くパターンで、現地ガイドさんの送迎マイクロバスに乗せてもらった時は、外はもう真っ黒だった。
 アンはなぜか、この道行きの間中、お盆で帰った田舎の山道をずーっと思い出してた。
 そう「外国に来たーっ」て感じじゃなく、何となく懐かしい気がするのね。
 途中で溝に落ちてひっくり返っているバスや、その側でちっとも慌てふためかずに闇の中に座り込んでいる人々を発見。
 そして裸電球に照らされた夜店が出ているお寺の夏祭りも、なんだかほのぼのとした日本の田舎を思わせる。

 でもバスが何台もオートバイに抜かされ始めると、ベトナムやタイの交通事情を思い出して「バリよ、お前もか」ってちょっと陰鬱な気分にもなった。
 実際、中央ラインなんて誰も意識していない走りぷりで、しかも異常にオートバイの数が多いんだよね。



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