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【 旅と温泉グルメ しゃぶれどもしゃぶれども(中部編) 】
21: 長野 木曽路 JR中央西線沿いを走る その1
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ある雨の日、白髪をたたえた酔漢が、自分の居る谷底から、山頂にある寺へと続く石の階段を、ふらふらと登っていた。
頂上の寺には、過去から現在に流されてしまった聖人を祭った祠があると言われている。
崖に切り込まれるような石段からは、周囲の厳山が見えるのだが、それらの山の中腹から上は、白くけぶる霧に巻かれて墨色に滲んでいる。
酔漢は、己の酔いを楽しむかのように、厳しい石段をゆっくり上がるのだが、その愉悦も我が身一人ならではの事と、そう自らの気持ちを吟味する程度の意識はまだあるようである。
もっとも人一人が、やっとの道幅の石段だ。
こんな場所では、だれもこんな酔っぱらいと一緒に山を登りたいとは思うまい。
酔漢はふっと思う。
かの聖人は、時を飛び越えたといわれるが、それは本来、彼が人々と分かち合えていた筈の「共有体験」という記憶を、彼が所有していないという事でもある。
それはこの男のような悔いの多い人生にあっては、いっそ清々しい事のようにも思えるが、やはり本当は寂しいものなのだろうか?
酔漢自身の決して凡庸ではなかった「生」に照らし合わせると、その答えは、より深い霧の中に逃げていくようであった。
酔漢は、己の身体から酒の精が抜けていくのを感じながら、自分がせり上がってきた谷底を眺めた。
深い緑青色の水が圧倒的な量感をたたえて、山を押し分けるように流れている。
此処の谷底に、奇岩が多いのはそのせいだ。
件の聖人は、この奇岩の上で、夢の夢から醒め、本当の意味でこの現実世界に覚醒したのだという。
その時この聖人は、かって「只の人」として生きていた時代から、何百年の時を超えたのだった。
その寝覚めやいかに、、。
上の駄文は、長野県木曽郡上松町にある奇勝「寝覚めの床」に赴いた時に浮かんだ断章です。
アンは、この時、すでに飲酒の状態で、運転を相方に代わって貰っているドライブの途中でした。
つまりそういう、ほろ酔い気分で「寝覚めの床」に降りて行ってたんです。
ちなみに、木曽は、あの浦島太郎が竜宮城から帰還して彷徨い込んだ土地なんですって。
で、太郎君が竜宮から帰還した海岸は、京都の天橋立という(これはパンフレットの受け売り)んですが、、、。
その太郎君が、なぜ木曽くんだりまでやってきたのか、、。
アンには余程、その道行き(あるいはそのフィクションの荒唐無稽な力技)の方が、余程ミステリーなのでした。
しかし自然の奇観と言うものは、これほどに、人の想像力を刺激するんですねー。
そうそう、この奇観、JR中央線の車窓から見下ろす事が出来る筈です。
頂上の寺には、過去から現在に流されてしまった聖人を祭った祠があると言われている。
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もっとも人一人が、やっとの道幅の石段だ。
こんな場所では、だれもこんな酔っぱらいと一緒に山を登りたいとは思うまい。
酔漢はふっと思う。
かの聖人は、時を飛び越えたといわれるが、それは本来、彼が人々と分かち合えていた筈の「共有体験」という記憶を、彼が所有していないという事でもある。
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酔漢は、己の身体から酒の精が抜けていくのを感じながら、自分がせり上がってきた谷底を眺めた。
深い緑青色の水が圧倒的な量感をたたえて、山を押し分けるように流れている。
此処の谷底に、奇岩が多いのはそのせいだ。
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その時この聖人は、かって「只の人」として生きていた時代から、何百年の時を超えたのだった。
その寝覚めやいかに、、。
上の駄文は、長野県木曽郡上松町にある奇勝「寝覚めの床」に赴いた時に浮かんだ断章です。
アンは、この時、すでに飲酒の状態で、運転を相方に代わって貰っているドライブの途中でした。
つまりそういう、ほろ酔い気分で「寝覚めの床」に降りて行ってたんです。
ちなみに、木曽は、あの浦島太郎が竜宮城から帰還して彷徨い込んだ土地なんですって。
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アンには余程、その道行き(あるいはそのフィクションの荒唐無稽な力技)の方が、余程ミステリーなのでした。
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