ゴックン、その口で食べるの？ ／Osaka発ドラァグドライブ、掛け違いの旅

【 旅と温泉グルメ しゃぶれどもしゃぶれども（番外編） 】

22: 雨と海水浴

　雨だ。
　いつも早朝散歩へ出かける市民球場のグランドが水浸しだった。
　こういうのは全然マシな程度で、最近の集中豪雨とかは常軌を逸してるって感じだな。
　日本の天候、「観測史上最大の」言葉が毎回聞かれるようになってかなり久しい。
　大規模自然災害にしたって、今は、日本全国各地持ち回りみたいになってて「お気の毒に」とか言ってる時間があったら、貴方も覚悟決めなさいって感じでしょ。
　まあそれでも自然が穏やかな時は、そんな自然を愛でたいものだけど。

　球場から結構手近に見える山並みも、雲と霧が掛かって水墨画の状態になっている。
　そして草木の朝露に似た雨の匂い。
　こういう光景は嫌いじゃない。
　ふと小さい頃、両親に連れていって貰った海水浴の事を思い出す。

　本当に微かな記憶だ。
　今でも良いお天気の日を狙って、海水浴に行ける家族は殆どないだろう。
　みんな父親や母親の勤務の都合で「お出かけ」になる日程が決まる。
　だから真夏だって、雨が降るときもあれば、シーズン遅れの台風に捕まる時だってある。

　でも折角、海に泳ぎに行って雨なんて子どもには許せない事なのだ。
　そう、お天道さんのやる事と判っていても悔しいのは悔しい。
　パパが立ててくれたテント入り口に膝を抱えて座り込み、ずっと海の上に降りしきる雨や、雨にけぶる遠くの岬を見つめていた記憶がある。
　動物の形をした大型浮き輪のパンパンに張った大きさがやけにもの悲しい。
　海水に濡れて重たくなった髪から滴が時々肌に伝わり落ちてくる。
　ママが肩からタオルをかけてくれる。

　でもじっと砂に吸い込まれていく雨粒を見ている内に、子ども心にも諦める事や「侘びしい」気分っていうものも覚えていったような記憶がある。
　もうすぐ冬だっていうのに海水浴の事を思い出すなんて不思議だね。
　・・アン、今日初めて街中でクリスマスのデコレーションを見つけたよ。