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第3章 ベイギャング達の死
12: 悪魔に取り憑かれたロボット
しおりを挟む映像の全てを見終わった守門は、軽い目眩を覚えて目を閉じた。
これが今度の悪魔祓いの任務なのか?と。
近代兵器の圧倒的な殺戮能力を目の前にして、気持ちがすり潰されかけていた。
そして一つの疑問を感じていた。
・・・これは本当に悪魔憑きの仕業なのか?
自分が呼ばれたということは、やはりアイツは悪魔に取り憑かれたロボットと考えて良いのか?
あのロボットはそのままでも充分、悪魔的だった。
今まで戦ってきた相手と似た雰囲気は確かにある。
人間に憑く『柱』は、人の死に興味を持っているのだ。死を知るために人を殺す。
だが暴走したロボット自体が、『柱』のように考えるなら、その思考パターンを持ってして悪魔が取り憑いたとは言えないのではないか?
赤座が、最初に守門のエクソシストとしての「見立て」をさせるために、あえてこの映像を伏せて、現場跡だけを最初に見せた理由が判ったような気がした。
赤座も、この事件は悪魔憑きとは関係ない所で起こったのではないか?という可能性を捨てていないのかも知れなかった。
だが、これを悪魔憑き事案として扱うという、上からの命令は絶対だ。
どうせ任務を全うしなければならないのなら、その見立て結果がどうであれ、赤座は彼なりの拠り所を、エクソシストである守門から得た上で事を進めたかったのだろう。
赤座は、組織全体の捜査方針が打ち出されていても、それが間違っているなら孤立を恐れず粘り抜き自分一人でも正解に辿り着けるタフな刑事だった。
だからオカルト刑事と、仲間にからかわれても、超常現象事件は超常現象事件として、なに一つ誤魔化すことなく、その事案を「本当の解決」に、導いていけたのだ。
そのことを、守門は彼との昔の付き合いでよく知っていた。
そして「歌う鳥の会」は、超常現象が関与しない事件には決して手を出さない。
もちろん赤座がいる特殊課を新たに設置した警察上層部も、別の意味でそうだろう。
彼ら警察の見立て違いは、彼ら自身の致命傷となるからだ。
それでも今回の事案には、従来の悪魔祓い案件とは違う何ががあった。
それは単に、ロボットが悪魔に取り憑かれるわけがないという単純なものから来るものではなかった。
「あのロボット、それ自体が安全装置になる特殊な軽量バッテリーを積んでいたそうだ。で、高出力のレーザー射出、それと推測される稼働可能時間。製造元に言わせると、どう計算しても、あの二台の車をぶった斬った時点で、ロボットは止まってなきゃおかしいらしい。それがずっと動き続けてる。」
「だから悪魔憑きだと?ちょっと疑問が残りますね。エクソシストの僕がそういう疑問を口にするのは、なんですけどね、、。それにどうみても、あのロボットは戦闘用だ。本来、人を殺せる能力がある。単にプログラムが暴走したと、捉えてもおかしくはない。」
もしあの映像の中で、ロボットが一度でも空間転移の類のことをやっていれば、悪魔憑きと言われて納得もするが、とにかく今の守門の状態では、現場跡を見たくらいで何もはっきりした事は掴めなかった。
「言い方の問題だろ?どこかの誰かが、悪魔が取り憑いてプログラムを暴走させたと言ったとして、その説が正しいかどうかの議論は、悪魔の存在自体が信じられない世界では議論自体が成り立たない。この長台詞、舌を噛みそうだ、、須賀事件だよ。言い当ててるよな。・・かってはな。だが今は違う。」
赤座は初めてニヤリと笑った。
守門には記憶がなかったが、この回りくどい台詞は、昔、守門が超常現象をあまり信用しない赤座に使った言葉の転用だった。
須賀事件での守門の役回りは、小説に登場する、刑事を助ける探偵のようなものだった。
今度はあの時とは逆に、相手がロボットだからと言う理由だけで、頭から悪魔憑きを疑ってかかっている守門の姿勢を、赤座がやんわりといさめたのだ。
「とは言っても、まあ今でも、大方の人間は、悪魔憑きじゃないという方の理屈を考えるのが普通だろうな。あのロボットが、何時までも稼働するのは、自己修復機能とかがあって、バッテリーもどこかの電源から自分で充電したんじゃないかとかな。でもそれは素人の勝手な科学技術信仰のなせるワザだよ。そういうの、製造元によると一切ないそうだ。あのレーザーも、武器と言うより、本来はバッテリーを強制的に完全放電させる事を目的として本体に組み込んだものらしい。どうせ外せないエネルギー直結の基本安全装備なら、ついでに武器に転用しちゃえって事だったみたいだぜ。攻撃する相手がいないなら、空に向かってうちゃいいわけだからな。それもこれもロボットの完全制御を模索する中での一アプローチなんだそうだ。なにしろ今のロボットてのは、超優秀なAIを積んでる、それを如何に人間のコントロール下に置くかが重要なんだそうだ。その為には、複雑な事をするより、単純な仕組みの方が確実だ。電源を落とす、機械は止まる、なっ?その特殊なバッテリーが切れた時点で、あのロボットは誰がどう関わろうと停止する。そういう事だ。」
「そうなんですか・・科学が進歩すると、妙な所に拘るんですね。普通は長時間持つバッテリーだとか、電源供給の互換性だとかを追求する。」
そう言いながら、守門は「小夏」となって転移し、サタンジと共に見たあの世界のビジョンを思い出している。
闇の空間に浮かぶ無数の光点、その中でも特に『柱』たちを惹きつける一定の色味を持った光点が、すなわち人間存在だった。
『柱』は、その中でもある特定色域を持つ光点に吸い寄せられるように飛んでいく。
別に悪魔が、わざわざ人間を選んで取り憑いているわけではないのだ。
その光点が、人間の世界から見て何者であるのかは、『柱』にとって何の意味もない。
確かに、その色味には、人間性が関係している。
だがそれはあくまで人間界から見た時の価値観上の問題であって、それは悪魔、すなわち『柱』にとっての意味はないのだ。
それは人間が考えるような、善悪の問題でさえない。
つまり今回、その光点の一つが、こちらから見れば人間ではなく、たまたま人工知能だったという事なのだろうか?
守門はその可能性を考えてみたが、今の段階ではなんとも判断がつかなかった。
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