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第2章 ファック・パペットの憂鬱

12:  平行四辺形

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 平行四辺形の面積は、(面積)=(底辺の長さ)×(高さ)で求められる。
 この事は、平行四辺形の(底辺)と(高さ)を共有する長方形を考えることで説明できる。
 で、長方形の面積の公式は「縦×横」だ。
 だが、最初に長方形の面積の公式を、機械的に暗記した少年・リクこと真栄田陸は、歪な形である平行四辺形の面積が「底辺の長さ×高さ」で求められる事に驚きを覚えた。
 そしてそれを図解で示されると、今度は、この公式について、まるでそこに世界の秘密が隠されているかのような驚きを覚え、そして深く納得した。

 なんの事はない、長方形は平行四辺形の一部であり、長方形で底辺といえば下側の辺のことであり、長方形で高さといえば縦の長さのことなのだ。
 だが、目で見た時、この2つの図形の形は、明らかに違う。
 違うから、人間は、この二つの形に、違う名前を与えて来た筈だと。
 それなのに、この二つの「中身」は、同じなのだ。
 人は自分のものの見方・つまり価値観という刃で、一生他人と戦い続ける。
 少なくとも、少年・リクの境遇はそうだった。
 周囲の大人達は、皆、お互いを傷つけあって暮らしていた。
 だが世界の「中身」は、長方形と並行四辺形の様に同じものなのだ。
 ただ見栄えが違うだけだ、、。


 陸は、エリカの尻穴を巧みに指で刺激しながら、舌と口唇を絶妙に使ってのキスでエリカを翻弄する。 
 男にする時、女にする時、又、相手の年齢や性癖に対応して、そのテクニックは自在に変わる。
 そして陸からは、若さの匂いがした。
 エリカもまだ若いのだが、陸からは羨ましさを覚えるほどの若い匂いがするのだ。
 若いツバメを持とうとする熟女の気持ちがわかるような気がした。 
 さらに、舌をからませるキスが、陸の経験の豊富さを感じさせた。 

「リクくん、君って、若いくせに女泣かせなのね」 
 ようやく口を離してキスが中断したので、エリカは感心して言った。 
「そうかな……」 と、陸は端正な顔に笑みを見せてとぼける。 
「ねえ、リクくん、あたしのお尻に入れてみたくなった?」 
「うん」 
「ほら、リクくんのあそこ、立ってきてるし」 
 エリカはさっきから、陸の下腹部に手を伸ばしていた。
 陸のペニスを触って揉み摺りしていると、それが素晴らしい係数で勃起してきて、エリカは嬉しくなっていたのだ。 

「お姉さんって、色っぽくてさ、女みたいに悶えるね」 
「でも、おチンチンが付いてる?でしょ。」 
「女のあそこみたいなお尻だし」 
「生で入れさせてあげるわよ。それから中で出させてあげる。はやく入れたい?」 
「うん」 
 エリカは、「そこのバッグ、取って」と、陸をあごで使い、可愛いまでに従順な陸の手に小さなボトルを握らせた。 
「これ、何?」 
「ラブオイル」 
「どうすんの、これ?」 
「塗るのよ。滑りを良くするの、わかる?」 
「そうか……、なるほどね」 
「たっぷり塗ってちょうだい」 と言ってから、エリカは身体を起こし、うつぶせに這った。 

 白い臀部を高く掲げて自分を晒し、 「あたしのお尻にたっぷりと塗ってちょうだい」 と、エリカは甘えた声音でねだった。 
 陸の指先が臀部の中央に侵入してくる。
 ローションをまぶした陸のヌルヌルの指先に、エリカはうっとりとなってしまう。 
「奥のほうまで塗って、って言ってるでしょ」 
 ヒップをくなくなとくねらせながら陸の指を締めつけて、強い命令口調だが甘えるような媚を含んだ声を出す。 
「リクくん、君のにも塗っとくのよ、わかってる?」 
「うん」 

 陸の熱い先端が中心部に触れた瞬間、エリカは「あんっ!」と喘いでしまった。 
 しかし、ここからは初心者を誘導してやらねばならない。 
「リクくん、入る?」 
「うん、きついね」 
「先を押しつけて、捻じこむのよ」 
「こう?」 
「そうそう、もっと腰に力を入れて」 
「あんん」 
「もっと、入れて、奥まで」 
 声が掠れてくる。 

 陸がエリカの背中におおいかぶさってきて、手入れの行き届いた艶やかな黒髪をかき分けて汗ばんだうなじに口唇を当てた。 
「あんっ!」 
「お姉さん、女の匂いがするよ」 
 何?この子、どうしてこんなに口が上手いの?
 甘え上手な子供みたい。
「んん」 
「痛くないの?」 と、陸に耳元で囁かれ、エリカは首筋に這う若者の口唇のくすぐったくて嬉しい余韻から我に返った。 

「痛くなんかないわよ、心配しないで」 
「でも、お尻だよ?」 
「バカねえ、男どうしなんだからさ、お尻の穴を使うのが当たり前でしょ」 
「そうだけど」 
「リクくんのほうはどう?いい?」 
「うん」 
「アナルは初めてなんでしょ。それとも、女の子のアナルを掘ったことがあったりして」 
「ないよ。そんな」 
 嘘だ、と思った。

「リクくんは女性専門なのね。でも男もいいでしょ?」 
 陸を安心させる為にそう言ったが、指尻の推理では陸は、バイだ。
 ただし男性を相手にする時は、受けが専門なのだろう。
  それもハードゲイの本格的な行為には、まだ至っていない筈だ。
 おそらく、その入り口で彼の本当の仕事は終わってしまう。

 失踪者の一人のプロフィールが頭に浮かぶ。
 ゲイの攻めの男性、45歳、IT企業役員。
 丑寅巡査部長は、この男のブログや書き込みもファック・パペットのプロフィールを作成する為の資料にしたと言う。
 確かにこの陸なら、いとも簡単に、この失踪者を釣り上げる事が出来ただろう。

「なんかちがうよね」 
「どうちがうの?」 
「これだけ奥に入れても何も当たらないんだよね、お尻って」 
「リクくんの先ちょにあるのは腸よ、私のは子宮じゃないんだから」 
「それにさ、フリクョンがすごいね」 
「何よ、それ?」 
「摩擦っていうか、締りがいいっていうか」 
「気に入ってくれた?」 
「うん」 
「病み付きになったりして、」 
「ホモに目覚めてもいいけどさ、お姉さんみたいな美人じゃないとダメだな」 
 これは恐らく、本気で言っている。
 この子は、自分のセックスを恐ろしい程、冷静に見ているようだ。

「あら、うれしいこと言ってくれるわね」 
「中で出してもいい、って言ってたよね」 
「いいわよ。いっぱい出してくれたら。その後は、たっぷり時間をかけて、お口でしてあげる。」 
「お姉さんって、上手そうだもんね」 
「リクくんは若いから、1回抜いたぐらいじゃ物足りないでしょ。今夜はとことん付き合ってあげるわよ。」 
 本気で、そうするつもりでいた。
 指尻ゑ梨花は、この青年をファック・パペットではないかと思い始めていたし、一方、「エリカ」はこの青年を本気で気に入り始めていたからだ。

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