悪夢

ふにゃー

文字の大きさ
2 / 13

2

しおりを挟む



  自分の夢の話を聞いたレイノルドが、宰相をしてる父に相談し、領地に戻ったとは、自分は知らなかった。

  なので、レイノルドも、自分の話が気持ち悪く思ったんだと理解し、意気消沈した。

  レイノルドが来なくなって、シンディからは散々な言われようだったけど、5歳なので、誰かに吹き込まれたんだと思う。

  だけど、両親からは何も言われないと思ったら、自分とレイノルドとの婚約が成ったと言われた。

  侯爵家が頷いたそうだけど、婚約者はリリアンヌだと書き込まれてた様だった。

  父は首を傾げてたけど、満足はしてる様で、「迷惑は掛けるなよ」とだけ言われた。

  母はまあ、「良かったわ」と言って微笑んでた。

  シンディの言葉が、母からの言葉ではない事を祈るしかない。



  その後、レイノルドの顔は見てないけど、「夢を見てないかい?」と手紙は度々届いた。

  手紙に添え、ちょっとした物を贈って来られ、それだけでも、心が和んだ。

  と言うのも、継嗣予定のレイノルドって事になってるので、侯爵夫人になるのだからと、マナー教育がされる様になったの。

  まあ、淑女としての嗜みの刺繍と楽器の練習は楽しみの1つになったので良いけど。

  それまでは、屋敷内にある図書室に籠って、本を読む事だけだったから。

  シンディは、自分に張り合おうとして、始めたけど、ダンス以外は逃げ出してた。




  レイノルドが、婚約者をリリアンヌにと言った時から、ゴラスティーニ侯爵家では、婚約者は自分だった。

  自分の悪夢が予知夢だと気付いたのは、生家ではなく、侯爵家だった。

  「中々、会いに来れなくてごめんね。リリの悪夢を消すのに領地に戻ってた」

  そう言われ、目を丸くしてた。

  だって、今まで、自分の話を聞いて信じてくれ、動いてくれる者なんて、初めてだった。

  嬉しくて、涙が溢れれば、肩を抱き寄せ、頭を撫でてくれた。

  「怖い夢を見たら、他の人には言わず、僕に教えて。リリを守るから」

  彼の言葉から、優しい気持ちが伝わって来て嬉しかった。

  おデブであろうと。

  シンディに、ふわふわデブが、ボンレスハムになったんだと言われたとしても。



  その後、我がソビジェーブ家が、主に迷惑をかけてた様に思う。

  だって、ある夜の夢は……

  行った事ないので、多分、王宮の広間かな?

  とても大きく豪勢で華美な場所で、
  「リリアンヌ・ソビジェーブ、お前との婚約を破棄する!」と宣言されていた。

  その傍らに、妹のシンディが居て、婚約者にはシンディを選ぶと言っていて……

  婚約者はレイノルドだって言うのになんで?

  夢を見てる時も困惑してたけど、起きても困惑してた。

  一応、破棄を叫んでた方が、この国の第2王子殿下だとは、引きこもりでも知ってただけに。

  この話を、レイノルドに直ぐに話せば……

  巨体を揺らして、大爆笑してた。

  それまで、レイノルドが言うには、自分の夢は百発百中だったらしいけど……

  「さすがに、その夢だけは有り得ないだろ」

  そう言って、笑ってたのよ。

  いくら、第2王子のマクシミリアン殿下が、レイノルドと同じ歳だけに、分からなくはなかった。

  といっても、第2王子の側近に、高位貴族の1人であるレイノルドが、側仕えに上がらなかったのは異例なんだって。

  何でも、レイノルドのデブさ加減が気に入らなかったって話だけど……

  社交界が、高位貴族ゆえ口にしないけど、影で失笑してるのは知ってる。

  自身の体型の維持や綺麗に整えるのは、貴族としては必然の常識だとされているから。

  なので、「リリが嫌なら痩せるよ」とは言われてるけど……

  「レイが痩せたら、ご令嬢方が殺到するよ」

  困った様に言えば、嬉しそうに笑ってた。

  それに、美味しそうに食べるレイノルドが好きで、差し入れにお菓子を作るのも楽しみになってたから。

  ただ、いつもシンディと比べられ、貶められてたから、気付かなかったんだ。

  懸想されてる事に。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ふしあわせに、殿下

古酒らずり
恋愛
帝国に祖国を滅ぼされた王女アウローラには、恋人以上で夫未満の不埒な相手がいる。 最強騎士にして魔性の美丈夫である、帝国皇子ヴァルフリード。 どう考えても女泣かせの男は、なぜかアウローラを強く正妻に迎えたがっている。だが、将来の皇太子妃なんて迷惑である。 そんな折、帝国から奇妙な挑戦状が届く。 ──推理ゲームに勝てば、滅ぼされた祖国が返還される。 ついでに、ヴァルフリード皇子を皇太子の座から引きずり下ろせるらしい。皇太子妃をやめるなら、まず皇太子からやめさせる、ということだろうか? ならば話は簡単。 くたばれ皇子。ゲームに勝利いたしましょう。 ※カクヨムにも掲載しています。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

処理中です...