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しおりを挟むリリこと愛する妻リリアンヌが、伴も連れず出掛け姿を消したのは、自身の侍従であるアスコットが出奔したのと同時だった。
すわ、駆け落ちか?など表に居る使用人は口には出さないが、侍女以下の下男下女がこそこそと口さがない。
だが、誰もが脳裏に浮かんだ事だろう。
しかし、義妹のシンディと違い、太っている頃から、自身を笑顔で慕っていてくれた事は事実だ。
さらに、彼女の行方不明で周囲に聴き込んだことで、数日前に医師を屋敷に呼んでおり、妊娠を告げられていた事が判明した。
尚のこと、リリが自ら居なくなることは有り得ない。
リリが居なくなった日は、国王陛下から秘密裏に任命され、他国に諜報に出てる者と直に会う為、娼館が隠れた会合場所だった。
リリの悪夢が予知夢に近いと、侯爵家で理解してから直ぐ、宰相である父は国王陛下に知らせてある。
そういう意味でも、リリの行方不明は一大事なのだが……
リリの予知夢は、隣国の策謀の夢なのではないか?
そう言い出したのは、第2王子であったマクシミリアン殿下を亡くした国王陛下だった。
ただ、そう考えたのは証拠もない憶測でしかなかったのだが……
国王陛下の今までの経験則からだと言われれば、反論しにくい。
と言うのも、隣国と帝国の間のいざこざは、どうやら佳境の様で進退窮まってる状態の様だ。
娼館で会った諜報の者が、そう伝えて来てた。
それだけでなく、諜報員のヨアが気になったという話が……
「隣国に、貴族家から何らかの理由で放逐された者が住んでる屋敷があった」
それも、放蕩三昧で放逐された者が、隣国で放蕩を毎日続けてる様で、思わず眉を顰めていた。
のだが、「その屋敷が先日、放火され焼け落ちた」という事に、眉が跳ね上がっていた。
「酒と女に溺れている者ばかりだったから、全員死亡だ」
そう言ってから、元どこの家の者なのか、ヨアが調べたリストをに目を通せば……
リリの妹のシンディもある意味、高位子息狙いな娘だったが、他の令嬢と大差はなかった。
しかし、シンディ以上に有名だったのが、子爵家の庶子だったという事で引き取られて、学園に通ってたマリアという名の者だった。
ただ、マクシミリアン殿下を始め高位子息になるほど、魔力が高い為、制御の為の腕輪を常時着けているのだが、その腕輪は防御の腕輪でもある為……
魅了や幻惑、洗脳などの魔法に掛かる事はない。
そのマリアは、マクシミリアン殿下にも近付いたが、反対に看破され、掛けようとしたという事で罪を問われ、退学処分となり、子爵家からも放逐されたとの事で、話は終わっていたのだが……
そのマリアが落とした子息連中が居ない訳ではなく、魔力量が少ないと言われてた伯爵家子息が最高位で、子爵家、男爵家の者が、勝手に婚約破棄などをして、家から放逐されていた。
その者達がそっくり隣国に居て、屋敷で酒池肉林の毎日を過ごしていたとなれば、裏を感じずにはいられなかった。
その者達が住んでいた屋敷が放火により焼けおち、焼死したとなれば……
証拠隠滅をはかったという印象を覚えた。
のだが、愕然としたのは、あのマリアの事件があったのは既に3年前の話だ。
その頃から、隣国は悪意を持って入り込んでいる事になる。
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