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第1章 冒険者になって、自由に生きるんだ!

5歳〜8歳

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  5~8歳の平民の子供って、普通、家の手伝いや勉強の合間に遊んでるものだ。

  まあ、自分の場合は、生まれた家が貧乏なので、朝から夕方まで忙しくしてるけど。

  ちなみに、母の両親兄弟は、自分が生まれる数年前にあった流行病で亡くなってるので、母を助けてくれる者はいなかった。

  そんな中、良い噂のなかった子爵家で求人があり、働きに出向き、今がある。

  それでも、隙間産業じゃないけど、家で出来る刺繍やレース編みなどの内職で稼いでるけど、楽ではない。

  一応、亡くなるまではそこそこの商家だったらしいので、出来たんだって。

  商家を継ぐ者も居たし、母が美人だったから、貴族と縁付ける様に、魔法学園にも通ってたって。

  なるほどー、それで生活魔法の使い方が上手い訳が分かった。

  母に商売っ気があれば、続けられた可能性もあるし、魔法の使い方も上手いので、魔術師塔の勤務でなくても、街中の魔法屋を開けたと思うんだけどね。

  今思えば、視野が狭かったと母は悔いてる。

  そんな状態なので、自分が少しでもと思い、薬屋に弟子入りし働いてるのに…

  やっぱり子供だからか視野は狭く、自身の範疇でしか判断出来ない様だ。

  家の事情で行動は変わるものなのに、自身が遊べるなら遊べると思うのか、誘ってくる。

  自分がヒロインだからなのか、母に似て可愛らしい事には気づいてはいたけど……

  身を落とさない様に、懸命に働いてるのに、守られていると分かってない者は我儘だ。

  女の子は言い聞かせれば、裕福でなければないほど分かってくれるけど、男の子は傲慢だ、裕福であればあるほど。

  その為、最近は気配を消すだけじゃなく、姿を消す魔法を習得して、逃げてる。

  だって、自身と婚約なりすれば、世話するよ楽できるよ的な、絶対に受け入れて貰えると疑わずに、上から目線で話をしてくるのは、母に纏わりつく野郎とさほど違わないんだもん。



  薬屋での手伝いしながらの勉強は、婆ちゃんに紙の作り方を教えた事で順調。

  ちなみに、製紙方法、この世にまだないと聞いて、え?となったのは、ギルド登録で紙が出てきてたから。

「アレは木を割いたものじゃ」と婆ちゃんに言われ、絶句した。

  薄くて白っぽいから紙だと思ってたの。

  それで、婆ちゃんと一緒に、初めて商業ギルドに行って、登録したんだけど、登録したのは1つじゃないんだ。

  中世ヨーロッパで蔓延し多くの者が死んだペストを起こすネズミの駆除に、毒団子を作ったの。

  そこら辺に生えてる草で、毒と鑑定出来るものと安い酒を蒸留して毒汁にし、小麦粉で団子にする。

  のに、ゴミ溜めの処にあった小さい金属のヤカンに、鍛冶屋のゴミ山にあった金属の管を繋いで、蒸留装置を作った。

  この溶接過程で、何故か鍛冶スキル発生……たぶんしたと思う。

  湯気を冷やして蒸留する方法は、薬の調合過程ではあるけど、酒ではなかった模様。

  という事は、ワインはあってもウィスキーはないって事だ。

  それで、婆ちゃんに毒団子売ってもらおうとしたら、こっぴどく怒られたんだけど、着眼点は良かったらしい。

  お菓子の様な小麦色が良くないそうで、真っ赤にする事で売り出した。

  なので、登録は、その蒸留酒もなんだけど…

  麦のエールで作ったから、ウィスキーなんだけど、葡萄のワインで作ったらブランデーになるんだよ。

  紙に酒、商業ギルドでは大きな話題で、毒団子はひっそりとしてた。

  ただ、登録使用料は一律で決まっていて、配分だけが変えられるんだと初めて知った。

  それも、アイデア料とか職人とか全く関係なく、ギルド、登録者の取り分だけ。

  なんだけど、その特許・レシピを使用し生み出された製品については、特許とは別契約で……

  こっちの方が重要なのだとは!

  婆ちゃんがいなかったら、商業ギルドに絡め取られてた!

「計算出来るのに、馬鹿だねえ」と婆ちゃんに言われたもん。

  自分の取り分は少なくても良いと思ったけど、何もしてない中立ちの商業ギルドが、いっぱい取るなんて有り得ない~!

  ので、婆ちゃんの進める通り、使用契約の方は、職人4、商会2、自分3、ギルド1にしたんだ。

  その際、商業ギルドに登録されてるレシピの一覧を見せてもらおうと思ってたんだけど……

  羊皮紙って事もあり、本状に綴じられて壁1面あり、呆然としてたら、手伝ってくれたんだけど、石鹸の作り方は既に登録されてた。

  ただ、大昔なので、製品売買契約は期日が終わっていて、作り方レシピを買って作っても、取られるのは売上の1割をギルドにだけらしい 。

  でも、レシピ内容と違うものなのであれば、新登録扱いになるそうだ。

  でね、石鹸製作で出る廃液は精製する事で、グリセリンが出来るんだけど、グリセリンは保湿性が高いの。

  なので、化粧水には必須に近いんだよ。

  そこら辺をチェックすれば無くて……

  帰ろうとする婆ちゃんの袖を引っ張り、保湿性化粧水の作り方をレシピ登録した。

  提出すべき品物もあったんで。

  婆ちゃんだけでなく、商業ギルドの連中、目を見開いてたけど、転生者の侯爵家のコーデリア・ロッテンマイヤーの事を思えば、早めに動いて、記憶を金に変えておくべきだよ。

  彼女が作るだけの知識があるかは不明だけど、転生者であるのは確かだし、悪役令嬢の可能性に気付けば、逃走資金調達確保しようと思うでしょ。

  まあ、自分たち以前にも、転生者は居たんじゃないかっていう形跡はあるんだけど……

  物を知っていても、作り方を知らなきゃ出来ないよねえ。

  例えば、化粧品関係とか、料理関係とか……

  近いうちに、鍛冶屋のおっちゃんの処に顔を出して、色々作ってもらおうと思いながら、商業ギルドを出たんだ。

  けど、婆ちゃんに出た途端、拳骨を落とされた。

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