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第2章 乙女ゲームの矯正力は強いのか

辺境伯領都ベーゼル

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  領都ベーゼルに入ったら、直ぐに、屋敷に来る様にとは言われたけど……

  まず、冒険者ギルドに顔を出した。

  Aランク以上の冒険者の移動は、ギルドに報告する事になってるんで。

  まあ、報告せず、のらりくらりしてる者も居るには居るんだけどね。

  カウンターで、タグをだして、「ライラです。2ヶ月こちらに居ます」と言えば……

  「歓迎します」と言ってくれ、ちょっとホッとした。

  小娘にしか見えないので、絡みフラグあるかと思ったんだけど、お昼だもんねえ。


  領都ベーゼルは、砦の城壁内にある都市として、発展したからか、入って来た城門は、第5門で南と西があり、東もあるけど、常時は閉められている。

  理由は、中級ダンジョンに近い為、スタンピードが起きない限り、開かれる事はないそうだ。

  鐘が鳴らされたら、ギルドに来てください。と冒険者ギルドの受付嬢に言われた。

  けど、軍事用の北門があると言う話があるんだよね。

  それで、来いと言われてるお屋敷があるのは、当然、1番奥。

  第3を潜るまでが、主に平民が多く暮らしてる。

  第2までは、辺境伯に仕える兵士や使用人に、その家族が住んでるそうで……

  第3でも門番が居て、チェックはされたけど、門は開いてた。

  それが、第2からは閉まっていて、ヴィルジーク様の手紙がなければ、中には入れなかっただろう。

  冒険者ギルドのAランクのギルドタグがあったとしても。

  まあ、最後の第1門を抜けた先には、屋敷の執事さんという者が待っていてくれ、ちょっとホッとした。

  「よくぞ、おいでくださいました」

  その言葉で、ジロジロ見て来てた門番、目を逸らした。

  
  王宮とは違う意味で、立派な屋敷の横には高い見張り塔があって、たぶん鐘楼も兼ねてる。

  冒険者ギルドの受付嬢が言うには、最低1月に1度は鳴ってるそうなので、その内耳にするだろう。

  厩はあっちかと見ていれば、クライブ・オーネストだと挨拶された執事さん。

  「王都のデイビッドさんは……」と口にすれば、父親だそうです。

  で、自分が言い出した飛龍は、召喚獣の物が多いけど、飛行訓練中にワイバーンに出くわす事もあり、従魔契約をする事が増えて来て……

  第1門内に住んでいて、大きな顔をしてた者は、飛龍の小屋を作るって事で、追い出したんだそうだ。

  それだけじゃなく、第2門内も、そんなに敷地面積ないので、領都ベーゼルを出て行ったそうだ。

  だって、ダーイン伯爵領、大半が魔の森だとしても、他の町がない訳じゃないから。

  そんな内輪話、自分にして良いのか?と思いながら聞いてたんだけど……

  何の協力もしないので、苦慮してた処だったらしい。

  それで、転移の門の魔法陣を、秘匿であったとしても、掘ってくれる魔術師は、今までいなかったそうで……

  動けなくなったら、王都に移動して、貴族との交流を担当するという、現当主と面会して欲しいと言われ、驚いたけど、了承した。

  ヴィルジーク様は、とっくにこっちに来ていて、精力的に、領内を回ってるそうだ。


  「旦那様、起こしでございます」

  クライブさんの声掛けに「入れ」と返事があり……

  執務室に案内されたんだけど、床に絨毯はないので、どうしても足音がする。

  クライブさんが開いた扉内には、重厚なマホガニーぽくみえる机の前に座る、屈強な初老の男性が居た。

  ヴィルジーク様とは血が繋がってないので、似てないけど、それでも強面なのが共通点だね。

  「ライラ・ドーリッシュです」

  そう言って、一応、カーテシーで挨拶をしたんだ。

  だって、庶子といえ、一応、子爵家令嬢だから。

  顔を上げて「成人しましたので、Aランク冒険者として、生きて行くつもりです」そうきっぱりと口にすれば……

  虚を突かれた顔をした辺境伯が居た。

  「ギルバート・ロイド・ダーインだ」

  そう言って、手を差し出して来られたので、呆気に取られたけど、日本風の握手をすれば、笑ってる。

  何で、笑ってるの?と思わなくはなかったんだけど、まあ、ダーイン伯爵として、確認したかった事があったんだろう。

  だって、秘匿案件と言え、無償で、転移の門の魔法陣を掘るっていうんだから。

  「それで、早速、掘らせて貰えますか?魔力を満たし、王都に行けるかも試しておきたいので」

  そう言えば、「案内してやれ」と言ってくれた。


  クライブさんの後に付いて、地下に降りたんだけど……

  「もしかして、新しく地下作られたんですか?」

  そういう様に、石などが摩耗していないんだもん。

  頷くクライブさんに「誤魔化しておきますね」と言って、作られた一帯に、古めかしくする偽装を掛けた。

  指1本無詠唱に、目を丸くされたんだけど……

  「さすが、陣を刻まれるだけありますね」だって。

  それから、用意されてた場所で、転移の門の魔法陣を刻んで行く作業を始めたんだけど、出来るまで人を入らせないでくれと頼んだんだ。


  転移の魔法陣と門の魔法陣で違うのは、1つで完成されている陣か、対になっているかだけど……

  通常の転移陣は行先が書き込まれていて、現れる場所には何もない為、転移魔法以上に魔力を食うんだ。

  下手すると、魔獣の召喚陣以上に。

  特に、載っていた実証結果では、人が増えれば増えるほど必要な為、机上の空論と言われる由縁になった模様。

  それに対し、予め固定したポイント同士間であれば、飛ぶ際に必要な魔力量は減らす事が出来るの。

  そう、門の魔法陣と転移の魔法陣を切り離して、リンクさせる事で成り立つの。

  これを発表すれば、魔術師塔に就職出来るだろうけど、戦争を放棄した世界ではないので、できるだけ秘匿するのが、最良の決断だと思うんだ。

  そんな事を考えながら、掘って行った。


  最後に、磨り減らない為と書き込みを弄られない様に、固定魔法を掛けた後、魔力を流し始めた。

  と言っても、固定ポイントの門の魔法陣にだけ。

  「出来ました」と、扉の向こうに声を掛ければ……

  クライブさんだけじゃなく、辺境伯も、ヴィルジーク様も居た。

  驚いてたら、「お疲れ様」とヴィルジーク様に言われ、「お気遣いなく」と答えてた自分。

  王都の屋敷で、ヴィルジーク様には1度説明はしてるんだ。

  「今の状況は、固定ポイントである門に、魔力が流されてる状況です。今から転移の魔法陣に魔力を流します」

  そう言って、魔法陣に乗って、自分自身に掛けてれば……

  「魔法陣に流すんじゃないのかい?」と聞かれた。

  「違い……」ますと言う前に、移動してた。


  「おお!成功ですかな」と口にしたのは、王都に居るデイビッドさんで……

  「成功ですね!」と言えば、嬉しそうに微笑んでる。



  その後、領都ベーゼルと王都を何度も行き来してた、嬉しそうな辺境伯とヴィルジーク様が居た。

  自分は、領都内で泊まる気がなく、外で召喚獣の小屋を出そうと思ってたのに……

  飛龍たちを見せて貰ってる内にくれてしまい、遠慮したのに、晩餐と泊まるのを余儀なくされた。

  本当は、貴族子女は独身男性の屋敷に泊まると、傷物扱いされるんだ。

  だけど、この場所が辺境領だし、自分は一応、子爵家令嬢って事になってるけど、平民のAランク冒険者だからさ。


  次の朝早くに、中級ダンジョンに潜るからって事で、早々に、屋敷を出ただけでなく、領都ベーゼルも出たんだけど……

  「何とも、難攻不落ですな」と言われてるとは思ってなかったんだ。


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