ヒロインだと言われたって知るか!

ふにゃー

文字の大きさ
28 / 79
第2章 乙女ゲームの矯正力は強いのか

辺境伯領都ベーゼル

しおりを挟む




  領都ベーゼルに入ったら、直ぐに、屋敷に来る様にとは言われたけど……

  まず、冒険者ギルドに顔を出した。

  Aランク以上の冒険者の移動は、ギルドに報告する事になってるんで。

  まあ、報告せず、のらりくらりしてる者も居るには居るんだけどね。

  カウンターで、タグをだして、「ライラです。2ヶ月こちらに居ます」と言えば……

  「歓迎します」と言ってくれ、ちょっとホッとした。

  小娘にしか見えないので、絡みフラグあるかと思ったんだけど、お昼だもんねえ。


  領都ベーゼルは、砦の城壁内にある都市として、発展したからか、入って来た城門は、第5門で南と西があり、東もあるけど、常時は閉められている。

  理由は、中級ダンジョンに近い為、スタンピードが起きない限り、開かれる事はないそうだ。

  鐘が鳴らされたら、ギルドに来てください。と冒険者ギルドの受付嬢に言われた。

  けど、軍事用の北門があると言う話があるんだよね。

  それで、来いと言われてるお屋敷があるのは、当然、1番奥。

  第3を潜るまでが、主に平民が多く暮らしてる。

  第2までは、辺境伯に仕える兵士や使用人に、その家族が住んでるそうで……

  第3でも門番が居て、チェックはされたけど、門は開いてた。

  それが、第2からは閉まっていて、ヴィルジーク様の手紙がなければ、中には入れなかっただろう。

  冒険者ギルドのAランクのギルドタグがあったとしても。

  まあ、最後の第1門を抜けた先には、屋敷の執事さんという者が待っていてくれ、ちょっとホッとした。

  「よくぞ、おいでくださいました」

  その言葉で、ジロジロ見て来てた門番、目を逸らした。

  
  王宮とは違う意味で、立派な屋敷の横には高い見張り塔があって、たぶん鐘楼も兼ねてる。

  冒険者ギルドの受付嬢が言うには、最低1月に1度は鳴ってるそうなので、その内耳にするだろう。

  厩はあっちかと見ていれば、クライブ・オーネストだと挨拶された執事さん。

  「王都のデイビッドさんは……」と口にすれば、父親だそうです。

  で、自分が言い出した飛龍は、召喚獣の物が多いけど、飛行訓練中にワイバーンに出くわす事もあり、従魔契約をする事が増えて来て……

  第1門内に住んでいて、大きな顔をしてた者は、飛龍の小屋を作るって事で、追い出したんだそうだ。

  それだけじゃなく、第2門内も、そんなに敷地面積ないので、領都ベーゼルを出て行ったそうだ。

  だって、ダーイン伯爵領、大半が魔の森だとしても、他の町がない訳じゃないから。

  そんな内輪話、自分にして良いのか?と思いながら聞いてたんだけど……

  何の協力もしないので、苦慮してた処だったらしい。

  それで、転移の門の魔法陣を、秘匿であったとしても、掘ってくれる魔術師は、今までいなかったそうで……

  動けなくなったら、王都に移動して、貴族との交流を担当するという、現当主と面会して欲しいと言われ、驚いたけど、了承した。

  ヴィルジーク様は、とっくにこっちに来ていて、精力的に、領内を回ってるそうだ。


  「旦那様、起こしでございます」

  クライブさんの声掛けに「入れ」と返事があり……

  執務室に案内されたんだけど、床に絨毯はないので、どうしても足音がする。

  クライブさんが開いた扉内には、重厚なマホガニーぽくみえる机の前に座る、屈強な初老の男性が居た。

  ヴィルジーク様とは血が繋がってないので、似てないけど、それでも強面なのが共通点だね。

  「ライラ・ドーリッシュです」

  そう言って、一応、カーテシーで挨拶をしたんだ。

  だって、庶子といえ、一応、子爵家令嬢だから。

  顔を上げて「成人しましたので、Aランク冒険者として、生きて行くつもりです」そうきっぱりと口にすれば……

  虚を突かれた顔をした辺境伯が居た。

  「ギルバート・ロイド・ダーインだ」

  そう言って、手を差し出して来られたので、呆気に取られたけど、日本風の握手をすれば、笑ってる。

  何で、笑ってるの?と思わなくはなかったんだけど、まあ、ダーイン伯爵として、確認したかった事があったんだろう。

  だって、秘匿案件と言え、無償で、転移の門の魔法陣を掘るっていうんだから。

  「それで、早速、掘らせて貰えますか?魔力を満たし、王都に行けるかも試しておきたいので」

  そう言えば、「案内してやれ」と言ってくれた。


  クライブさんの後に付いて、地下に降りたんだけど……

  「もしかして、新しく地下作られたんですか?」

  そういう様に、石などが摩耗していないんだもん。

  頷くクライブさんに「誤魔化しておきますね」と言って、作られた一帯に、古めかしくする偽装を掛けた。

  指1本無詠唱に、目を丸くされたんだけど……

  「さすが、陣を刻まれるだけありますね」だって。

  それから、用意されてた場所で、転移の門の魔法陣を刻んで行く作業を始めたんだけど、出来るまで人を入らせないでくれと頼んだんだ。


  転移の魔法陣と門の魔法陣で違うのは、1つで完成されている陣か、対になっているかだけど……

  通常の転移陣は行先が書き込まれていて、現れる場所には何もない為、転移魔法以上に魔力を食うんだ。

  下手すると、魔獣の召喚陣以上に。

  特に、載っていた実証結果では、人が増えれば増えるほど必要な為、机上の空論と言われる由縁になった模様。

  それに対し、予め固定したポイント同士間であれば、飛ぶ際に必要な魔力量は減らす事が出来るの。

  そう、門の魔法陣と転移の魔法陣を切り離して、リンクさせる事で成り立つの。

  これを発表すれば、魔術師塔に就職出来るだろうけど、戦争を放棄した世界ではないので、できるだけ秘匿するのが、最良の決断だと思うんだ。

  そんな事を考えながら、掘って行った。


  最後に、磨り減らない為と書き込みを弄られない様に、固定魔法を掛けた後、魔力を流し始めた。

  と言っても、固定ポイントの門の魔法陣にだけ。

  「出来ました」と、扉の向こうに声を掛ければ……

  クライブさんだけじゃなく、辺境伯も、ヴィルジーク様も居た。

  驚いてたら、「お疲れ様」とヴィルジーク様に言われ、「お気遣いなく」と答えてた自分。

  王都の屋敷で、ヴィルジーク様には1度説明はしてるんだ。

  「今の状況は、固定ポイントである門に、魔力が流されてる状況です。今から転移の魔法陣に魔力を流します」

  そう言って、魔法陣に乗って、自分自身に掛けてれば……

  「魔法陣に流すんじゃないのかい?」と聞かれた。

  「違い……」ますと言う前に、移動してた。


  「おお!成功ですかな」と口にしたのは、王都に居るデイビッドさんで……

  「成功ですね!」と言えば、嬉しそうに微笑んでる。



  その後、領都ベーゼルと王都を何度も行き来してた、嬉しそうな辺境伯とヴィルジーク様が居た。

  自分は、領都内で泊まる気がなく、外で召喚獣の小屋を出そうと思ってたのに……

  飛龍たちを見せて貰ってる内にくれてしまい、遠慮したのに、晩餐と泊まるのを余儀なくされた。

  本当は、貴族子女は独身男性の屋敷に泊まると、傷物扱いされるんだ。

  だけど、この場所が辺境領だし、自分は一応、子爵家令嬢って事になってるけど、平民のAランク冒険者だからさ。


  次の朝早くに、中級ダンジョンに潜るからって事で、早々に、屋敷を出ただけでなく、領都ベーゼルも出たんだけど……

  「何とも、難攻不落ですな」と言われてるとは思ってなかったんだ。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

【完結】大魔術師は庶民の味方です2

枇杷水月
ファンタジー
元侯爵令嬢は薬師となり、疫病から民を守った。 『救国の乙女』と持て囃されるが、本人はただ薬師としての職務を全うしただけだと、称賛を受け入れようとはしなかった。 結婚祝いにと、国王陛下から贈られた旅行を利用して、薬師ミュリエルと恋人のフィンは、双方の家族をバカンスに招待し、婚約式を計画。 顔合わせも無事に遂行し、結婚を許された2人は幸せの絶頂にいた。 しかし、幸せな2人を妬むかのように暗雲が漂う。襲いかかる魔の手から家族を守るため、2人は戦いに挑む。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...