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第2章 乙女ゲームの矯正力は強いのか

中級ダンジョン踏破後

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  バジリスクを倒して、宝箱は開けず、そのままインベントリに収納して、急いだのは……

  ドロップ品がバジリスクの皮に、牙、毒袋と豪勢だった以上に、「勇者の剣」とかいう物騒な物が出たから!

  冒険者たちの言い伝えの中に、「勇者の剣」が出たならば、ギルドに必ず伝えなければいけないという話があって……

  与太話かと言えば、そうじゃなくて、本当に、魔王が復活したら、現れるっていう代物が落ちて……

  本当に、尻尾を引っ張られた猫の様に、びっくり仰天だった。

  なので……

  帰還魔法陣に乗った後、出張所を素通りして、門番が血相を変えて走る自分に驚いてた事も無視してた。

  だって、レイトルに乗る事さえド忘れするくらいの驚愕だったの!


  領都ベーゼルでも、並んで待ってる人達をすっ飛ばして、だけど、門番に小声にするだけの分別は残っていて……

  「勇者の剣が出た!」

  さすがに、門番も「はあ?!」とは声をあげたけど、インベントリから、剣の先を見せれば、声を落として通してくれた。

  勿論、上に報告するには頷いたよ。

  自分は、冒険者ギルドに走ったんだけど、領都内であまり走る者は居ないので、見てこられた。

  だから、何だろう?と思う者が、後ろを着いて来てた。

  ギルドに入った瞬間、「お帰り!ダンジョン……」どうだった?と声を掛けられたとは思うけど……

  「勇者の剣が出た!」

  いずれ知られるんだから、内緒にする必要はない筈だと思い、叫んだ自分。

  殆どの者が、「はあ?!」と怪訝な言動だったんだけど、実際に、インベントリから物を出せば……

  冒険者ギルドには、鑑定が出来る者が居るので、鑑定して貰えば、顔色が変わった。

  「間違いなく、「勇者の剣」だ」

  そう口にした時、奥から領都ベーゼル支部のギルマスが出て来た。

  鑑定したギルド職員に、「間違いないのか?」と尋ね、頷いた事で、事は領都ベーゼルで済む話ではなかった。

  それで、「勇者の剣」は謂れがあって、鞘から抜いた者が勇者であるという話。

  ラノベで、メイドが抜いたって話があったなあ。と思うくらい他人事だったのは、自分は既に試したから。

  本当に抜けなかった。

  そんな剣なので、ギルマスを筆頭に、剣を抜こうと試し始めたんだ。


  居合わせた冒険者たちが抜けないのを確認した頃、ダーイン伯爵家から、命令を持って使者が来た。

  見付けて来た自分共々、伯爵家に行く事になった。

  別に、この1件がなくても行こうとは思ってたんだけどね。

  ギルド職員には、何故か肩を叩かれ、「お疲れ様」と言われたのは何故?

  色々と出して、換金したい物もあるのに!と思いながら、ギルドの外に出れば……

  馬車があって、びっくりしたんだけど、大人しく乗ったんだ。

  召喚獣は、領都に入る時、送り返してる。


  「大変だったな」と言って、ヴィルジーク様自らが出迎えてくれた。

  屋敷に入る前に、現当主のギルバート様まで出て来ていて、ギルドに提出してた「勇者の剣」を押し抱いてる従者から受け取り……

  案の定、抜こうとした。

  「本当に抜けないものなんだな」

  そう言って、ヴィルジーク様に渡した。

  ヴィルジーク様が抜きません様にと、思わず願っていた自分。

  勇者に選ばれるのは栄誉だとされてるらしいけど、この感情は宜しくないものだと思えて、見てなかった。

  「ふぅ。本当に抜けないなあ」

  抜いて誇りたかったのか、困った様な顔をしてるヴィルジーク様を初めて見た様に思う。


  その後、領都の兵達が代わる代わる剣に挑んでた。

  その時には、屋敷の客間で、中級ダンジョン踏破で得た物、考えた事を、最初はギルバート様も居たのだけど、いつの間にか、紅茶も追加され、ヴィルジーク様だけになってた。

  ギルバート様は、剣の事もあって忙しい様で、出て行く時に、「発見者としての栄誉は居るかい?」とは訊かれた。

  と言うのも、早急に、王都に剣を持って行くのが優先される様で、転移の門の魔法陣を使用するのかと思えば、飛龍で向かうらしい。

  この機会に、飛龍の移動を推奨して来るんだってー。

  「栄誉でお腹は膨れないので、要らないです」

  そう答えたのは、発見者という事で、金一封は領主より渡すのは決定事項で、それ以上は出ないと説明されてたから。

  それで、ヴィルジーク様に、中級ダンジョンのお土産も、別ルートがあった話と共に、渡せば……

  別ルートを紙に描き出して、検証結果なども伝えてたんだ。

  だけど、熟成や発酵の魔法を駆使して作ったワインやブランデーよりは、魔力量が少ない者も働ける様にしたい。と展望を教えてくれた。

  自分1人じゃ採れる量も限られてるので、頷いてたんだ。

  実際、かなりの量摘んだのに、ブランデーを2本作ったら、ワインは1樽も残らず、5本がギリギリだったの。

  そうそう、瓶は浜辺の砂から作ったんだよ。

  蓋もガラス。ワインはコルク栓だけど。

  Aランクの魔物が連発で出て来るので、別ルートは上級ですよ。と言えば、心配顔だった。

  9歳の頃から変わらないなあ。

  そう思いながら、黒魔鮪の漬け丼を、夜食として渡して、屋敷を辞して来た。

  まだギルドに報告する事もあって。

  ヴィルジーク様は、魔王を警戒する為、魔の森の巡回を増やすそうです。



  昨日、再びギルドに行ったけど、興奮状態が続いていて、ギルマスの執務室で、中級ダンジョンの別ルートmapを買い取って貰って、説明すれば……

  別ルートだけ、上級認定する為、Aランクの冒険者パーティを指名依頼で送り出すそうだ。

  その際に出た物を出して行けば……

  「どれもこれも一級品で、オークション行きだ!」

  吠えられた。

  オークション=王都で開くので、辺境領都べーゼルでは旨みはないんだってー。

  「王都に連絡しとくから、行ってこい」

  そんな~!代わりにギルドが代行してくれないの?!

  しょうがないので、さっさと行って、戻って来ようと思い、転移しようと思ったんだけど……

  勇者の剣の事もあって、一瞬迷った。

  自重しようと思ったんだ。

  だけど、実力を示した方が優遇して来るという婆ちゃんの言葉を思い出した。

  それで……

  王都の家の裏庭にひとっ飛びして、家に入れば、母は「あら?」と言って、目を回してた。

  転移魔法の説明をして、ギルドに行ったら、辺境領に戻ると言っておいた。

  ギルドから戻って来るまでに、出掛ける用意をしておいて欲しいと頼んだ。

  それからギルドに行けば、辺境領滞在の知らせが出てるので、驚かれた。

  でも、既に、辺境領で「勇者の剣」が見付かった話は届いてたからか、ギルマスの執務室に通された。

  「お前さんが見付けたんだろ」には頷いた。

  けど、王都に戻った理由は、中級ダンジョンに別ルートがあって、その戦利品がオークション物だったと言えば……

  ワクワクした顔付になったギルマス、鑑定のギルド職員を呼んだ。

  けど、裏の倉庫に行かないと出せないと言えば、大声で笑って、背中を叩かれた。


  大量に出た切り身や黒魔鮪などの食材は出す気はないけど、小さい蟹のドロップ品に、スープの元があるとヴィルジーク様に言った様に、ここでも話して、少しだけ渡した。

  大量に消費するのは、王都だしね。

  ラウムリザードだと言われた皮や牙は、辺境領で出した。鮫の骨いっぱい箱も。

  真珠と珊瑚の箱は内緒。

  幽霊船で出る宝箱の金銀財宝箱は、1つずつ鑑定して出すのが面倒で、そのまま出せば、王都に持って行けと言われて、出せば、ギルマス唸った。

  次々に、出す中、目を剥いたのは、やはり香木だった。

  エメラルドグリーンの青緑色のシーサーペントの皮には、目を輝かせ、オークションが楽しみだと言ってたのに。

  「コレは厄介だぞ」とは言ったけど、王家に進呈する伝手はない冒険者だからね。

  他にも、バジリスクの皮にも、唸ってたよ。

  「ライラ、マーゴットの婆さんに言ったのか?」

  そう言われ、バジリスクは薬剤になる事を思い出し、「言ってない!」と声を上げてた。


  辺境領に戻る前に、婆ちゃんの処に寄れば、意味ありげに、カカカと笑って、奥の部屋に通してくれた。

  バジリスクの皮を始め、毒袋を出せば「でかした!」と褒めてくれたんだけど……

  過去の遺産だと言って、くれた物、ビビる品だった。

  ミスリルに、オリハルコン、ヒヒイロカネまでを使用したという、装備ランク神話の魔導銃が出て来た!

  ひえええ!!という代物だけに、婆ちゃん何者だったの?!

  今は腕利き薬師の婆ちゃんだけど。

  ちょうど、バジリスクの皮や毒袋を探してたそうだ。

  「ダンジョンじゃなきゃ内蔵もあっただろうに」

  少々どころじゃなく、残念そうだったけど。

  これが要り用だった理由は、「勇者の剣」と関連する様だけど、それ以上は教えてくれなかった。

  そう、既に、婆ちゃん情報を仕入れていて、自分が発見者って事も、知ってた。

  リキュールとフルーツ酒や唯一残ったワイン1本をお土産に渡しておいた。

  大事そうになおす婆ちゃん、結構飲める口です。

  自分への連絡は、鳩やフクロウに変わる郵便魔法を使う様に頼んだ。


  再び、辺境領都ベーゼルに転移で戻った自分だけど……

  自分1人じゃなく、母を連れていて、領都には入らず、外の森の中に小屋を出した。

  王都のギルドには、オークションが終わったら、ギルドの口座に入金しておいてくれと頼んだ。

  行方を掴ませない様にしたのは、ドーリッシュ子爵家がどう出るか分からないから。

  絶対に、莫大な金額になるオークションだけに、母を枷にとって、金を寄越せと言われかねないもん。

  スタンピードが起こったとしても、召喚獣の小屋は壊れないので、ある意味安全なのよ。

  母は呑気なのか、肝が座ってるのか、魔の森の中だと言っても、「あらそう」だって。

  それよりも、楽ちん生活が出来る小屋内の家で暮らせるって事で、ご機嫌です。

  季節問わずになってる果物も沢山あるからね。

  平民にとって、砂糖は高い買い物だけど、果物は辛うじて買えるの。贅沢ではあるけど。

  以前から、召喚獣になって、小屋に住むと言ってるほどだからねえ。

  そう、王侯貴族が、「勇者の剣」の発現で、世界にも発信しないといけないので、大慌てしてる中、避難してたんだ。

  コーデリアとイルラには、事情を書いて、それぞれフクロウにして飛ばした。

  だけど、コーデリアの方が長文になるのは、致し方ないよね、日本フード情報は重要だから。



  自分の姿が、辺境領には居る様だけど、町の中ではなく、外に居るって事で、ヴィルジーク様が探してる時、王都の話が辺境領に届いた。

  王都でオークションが開かれる予定で、どれもこれもが一級品で、幾らの値が着くか分からないが、高額になるのは確実な代物ばかり。

  王宮に伝手を持ちたい者は、香木を落として進呈すると話をしており、出品者の名は伏せられてるけど、知る者は知っていて……

  ドーリッシュ子爵が、平民が住む界隈で地団駄踏んでた話を聞き、ヴィルジーク様笑ってた。

  賢く立ち回ってると。

  話はそれだけじゃなく、自身の父であり王国軍の将軍も、剣を抜こうと試みており長時間粘ってたそうだ。

  近衛騎士団に居る1番上の公爵になった兄も、領都に居た次兄も王都に出て、試したそうで……

  抜けはしなかったけど、武に自信がある者は全て、1度は試みてる様だった。

  私も試してみましたとあったので、執事のデイビットが手紙の送り主だった。

  国王陛下を始め、王族も抜く試練は与えた後でだが、抜ける者が出て来ないので……

  王宮前に、誰もが試せる様に、剣を置く土台を設置したそうだ。

  魔王の事を考えると、早く勇者を見付かる事を祈ってたヴィルジーク様だった。


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