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第3章 聴講生になったので、自由にします!

面倒な事になった

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  5階層から帰還の転移陣で戻れば……

  何階層からの帰還か分かるので、鼻で笑ったヤツが居た様で、一瞬、眉が跳ねた。

  成人したばかりの16歳の女でAランク、強い召喚獣に囲まれてるだけじゃねーか。と文句言ってるヤツが居るのは知ってる。

  上級ダンジョンに乗り込んで来たって思われてるのも。

  だから、ダンジョンに入る時間帯を早くしたんだけど、話は聞いてたんだろ。

  それが戻って来た転移陣は5階層だもんねえ。

  尻尾巻いて戻って来たって、思ったんじゃない?

  そういう意味で、1階層に拘るんじゃなく、サクサクと攻略しとけば良かったのかな。

  真実は違うんだけどね。

  そう思いながら、出張所だけど冒険者ギルドに入って行ったんだ。


  「え?温室に入れたのですか?」

  ギルド職員の声が大きすぎて、ザワついてたギルドのホール、静かになった。

  「条件があるのかも知れないけど、入れたよ」

  そう言って、証拠の上級品質のレアな薬草を束で出せば、目を見開いてた。

  リルパ草と言うのは、群て生えてる場所なんて、自分の小屋の中以外なら、温室でしか見た事ないもん。

  魔物によっては噛まれた処から腐って行く物があって、その毒消しに必須の薬草だけに、常備するのに育ててるんだけど……

  そんな薬草だけに、取引は高額になるの。

  それが束だから、驚くのは無理はない。

  「階層によって、温室にある物が違うし、まるで品種改良してるかの様に、沢山生えてたし……」

  そう言えば、「調査員を出します」と言って、慌て気味に奥の部屋に入って行った。

  カウンターに出してたリルパ草は、直ぐに収納した。

  ちなみに、ダンジョンがある町の冒険者ギルドは、ギルドマスターは1人だけど、副はダンジョンの数+1人居るの。

  なので、副ギルドマスターに報告に行ったんだろう。

  という事は分かってるんだけどね。


  ザワついてるギルド内から、執務室に呼ばれて入り、まだ5階層までだけど、気付いた事を口にすれば……

  「キミは確か、魔術師だけじゃなく、テイマーでもあるが、もしかして……薬師かい?」

  何を今更?と思いはしたけど頷いた。

  「王都のグラニエール薬店のマーゴット婆ちゃんに、5歳で弟子入りしましたが」

  そう口にすれば、副ギルドマスターの口元が引き攣った。

  「あの方も自ら採集に行く人だったが、キミもか」

  その言葉で、婆ちゃんの事を知ってる人なんだ。と分かった。

  溜息を吐いたけど、提案して来た。

  温室の中の情報もだけど、1階層からかなりのランクの魔物が居た様なので、調査してきて欲しいって。

  ただ、1人では信用性が低いので、Aランクのパーティ2組もしくはクランと一緒に行って欲しいって。

  受けても良いけど、かなり面倒じゃないか!

  ちなみに、温室があるのは分かってたけど、誰も入れなかったそうだ。

  条件が薬師なのなら、戦える薬師は稀で、マーゴット婆ちゃんは有名だったらしい。


  調査を兼ねた上級ダンジョンに入る依頼を、ギルドが張り出せば、居た者見に行ったけど……

  条件がAランク以上のパーティだから、眉を顰める者多数。

  と言うか、上級ダンジョンだけに、いる者Bランク以上の筈なんだけどね。

  その時、自分、ギルドの裏手にある広場を借り、召喚獣の小屋を出してた。

  収穫して来た物の大半は、小屋の中の温室には植えてあるので、転移の箱を使用して、婆ちゃんの所に収穫したばかりの薬草を入れて送ってたの。

  売れば高額になるのは分かってるけど、確実に薬に出来る処に送った方が得策でしょ。

  まあ、自分が調合する分も残してるけどね。



  結局、調査依頼は、王都所属で護衛依頼に行ってた者が着き次第、潜るって事になったので……

  着くまで、6階層以下に潜りに行ったんだ。

  けど、本当に不思議で、フィールドが草原になっても、温室はあるの。

  但し、中で生ってる物は違うんだけど。

  ちなみに、6階層にあった温室には、ダチュラ・ウツボカズラや朝鮮朝顔があって、ギョっとした。

  薬にもなるけど、毒激物だもん。
  
  あ、そうそう、ギルドに張り出されてたからか、温室に入ろうとした者が居た様だけど……

  案の定、入れてなかったけど、自分が手を翳すと開くんだよねえ。

  ただ、その階層にあった温室は、薬草ではなく、蕎麦だった。

  草原部でも、1面真っ白な蕎麦の花は咲いてたんだけど。

  何でだろう?と思いながら、鑑定してたら……

  期待してたんだろう。一緒に入って来た者が、残念そうに息を吐いてた。

  白い花でそっくりなので、騙されかけた!

  根が毒物、それも無味無臭の猛毒になる「ネルラ草」じゃないか!

  うわぁ!取り扱い注意!の代物だよ!

  鑑定を持たず、知らない者が手を出すとマズイ。

  なので、蕎麦だと勘違いしてくれてる方がいいよ。

  そう言えば、食いしん坊のうちの子たち賢い様で、全く口にしなかったね。



  クランほど人は多くないけど、10名ものパーティが到着したのが、2週間後で……

  それまでに10階層までは踏破してた。

  いずれクランになるだろうと言われてる「蒼き鋼」には、既に薬師が居るんだ。

  自分以外の薬師でも開けられるかの検証の為に、このパーティに指名依頼が出たらしい。

  以前は、王都で店を開くのを目標にしてたらしいけど、グラニエール薬店の人気と商品を見て、諦めたそうだ。

  それで、出身が一緒だった彼らのパーティに入り、専属の薬師になったそうで……

  日頃は拠点に滞在して調合してるけど、遠方だと一緒に移動するんだって。

  そんな話を聞きながら、1階層から潜ったんだけど……

  案の定、「やっぱ薬師じゃないと開かないのか!」という自体になった。

  ミーリアという名の彼女は勿論、ジョブに薬師があるから開いたけど……

  日頃、彼女の手伝いをしてるというポーターのラウディ、調合出来るからって事で開けようとしたんだけど、開かなかった。

  鑑定でも、ジョブは荷物運びと調合師だからねえ。

  それと、自分が気付いたローズヴァイン等は、言われるまで気付けなかったので、ナーフの索敵専門が凹んでた。

  だけど、ナーフ曰く「不可視の魔法が掛かってる」だって。

  でも、それで虹色羊を見付けられて喜んでたよ。

  羊毛100gで金貨1枚だから。

  前回、小屋の中に入ってった虹色羊11頭は元気。

  山羊の親子と仲良く草を食んでるけど、雨宿りの小屋のサイズが大きくなってた!

  そうそう、いつの間にか増えた空間と言うか……

  フレスベルグのブレンダが、魔の森で見付けて連れて来たのよ、オスを!

  それで契約すれば、小屋の中や巣が大きくなってねえ。

  その加減で、山が退いて、草原部が広がって……

  放牧出来るほど、減らない草があるので、大食いの山羊や羊に、角牛が居ても大丈夫です。

  ちなみに、フレスベルグ2羽が仲良くしてるの、自分は癒されるのに、他の人は戦々恐々だって。

  あ、名前はソル、太陽って意味。

  雷と風のブレンダに、氷と光のソルって最強!

  なんでも、ブレンダから誘った模様……

  小屋の中にある果物で釣って……

  イベルタから愚痴の様に聞かされたんだけど、イベルタもいずれ見付けるんだから!と言ってた。

  ちなみに、イベルタって名前だけど、オスだからね。

  そのイベルタ曰く、レイトルはご主人様命だから、中々、メスは来ないよって……

  あ、そうそう、コーデリアの処の真っ白なタミアも、白ピヨ並にお喋りらしいけど……

  白ピヨ、タミアどっちもオスだったらしいよ。





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