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第3章 聴講生になったので、自由にします!

新しいダンジョンは

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  執事のクライブさん自身が赴いて、案内されたんだけど……

  案内された執務室には当主のダーイン伯爵だけだったので、ちょっと残念な気分になったんだけど、隠す様に頭を下げて、カーテシー。

  ドレス姿ではないので、手元は持ち上げてる格好だけ。

  「ヴィルはちょっとだけ出掛けてるけど、じき来るよ」

  見透かした様に、そう言って微笑んでるので、微笑み返すので精一杯。

  憧れてるなんて知られたら遠ざけられそうで……

  ダンジョンを見付けた話をし始めた。


  「ダンジョンNo.101って、ウプラムより15も新しいって事になるんだねえ」

  そうは言ってるけど、ダーイン伯爵の眉間の皺が深いのは、名前がねえ。

  「ブリュンヒルデの隠れ家」

  鑑定を勿論して来たんだけど、鑑定した時は誰それ?だったの。

  名前を聞いて、眉間に深い皺を寄せた伯爵に、覚えがあるんだと気付いて聞けば……

  同じ者とは限らないが、と前置きされ告げられたのが……

  「150年ほど前に居た帝国の皇子妃の名前がブリュンヒルデで、その当時居た魔王に拐われた」

  その為、それ以降、娘にブリュンヒルデの名前を付ける者は居ないって話は分かる気がする。

  けど、「いわくありげな名前ですね」と口にすれば、頷かれた。

  そうしていれば、ヴィルジーク様が来られたんだけど、息を切らしてどうしたの?


  「いやちょっとね、大丈夫」

  そういうヴィルジーク様、何故か、自分が座ってるソファの空いてる横に座った。

  やや違和感を覚えながら、自分がよく飲む煎茶の常温をガラスコップで出してあげた。

  秋の夕暮れなので、温度が下がって来てるけど、勢いよく飲むには常温が良いからね。

  実際、ヴィルジーク様、自分が出す物に信頼してくれてるのか、勢いよく飲み干した。

  息をついた後、クライブさんに紅茶を出して貰えば良いしね。


  にっこにこの笑顔で、「ありがとう」と言った後、自分が出してた北西の森の地形把握で描いた地図を覗き込んだヴィルジーク様。

  だけど、その笑顔は自分を殺りに来てます。

  ピシリと固まった自分を、ダーイン伯爵が見てた事に気付かず、見付けたダンジョンの話に戻した。

  だけど、出入口が落とし穴の様で、落っこちた事で見付けた話には、ヴィルジーク様だけでなくダーイン伯爵まで、顔色を変えた。

  というのも、よく考えれば、今までにも調査をしてない筈がないのよ。

  手をこまねいていて良いはずがないの、辺境領だけに。

  それが知られてないって事は、調査に入った者は無事に帰って来てるのか?と思い至った。

  それも、這い上がるにも、ザイルみたいな丈夫なロープと腕力がないと無理な深さだと言えば、眉間の皺の数が増えた。

  自分の場合は飛行型の召喚獣が居たから、助かったけどね。

  それに、場所も、森の中で少し開けた草原の中と、足元が見渡せられない状態だったとまで告げたんだ。

  魔物がいっぱい出入りしてるのなら、草は倒れてると思ってたのが敗因だった。



  その後、夕食に誘われたんだけど、召喚獣の小屋に母が居るので、と言って断れば……

  3人固まったんだけど、いち早く我に返ったクライブさん気付いた模様。

  「父とマーゴット薬師、宿に泊まってたと思ってたのですが、そちらに泊まらせて戴いてたのですか?!」  

  頷きながら、「内緒ですよ」と口元に指を置き、秘密のジェスチャーをすれば、「勿論です」と約束してくれた。

  「テイマー以外の者でも入れるのか……」

  そう呟いたヴィルジーク様、期待する様な目を向けて来た。

  困った顔をすれば、耳と尻尾が垂れた様な大型のワンコが居た。

  母を驚かせるかも知れないので。と前置きし……

  召喚獣の小屋を出せる広さの地面を借りる許可を貰えば……

  お披露目などに使う広間に面した奥庭を借りれた。

  そう、召喚獣の小屋は地面でないと顕現出来ないんだ。

  室内では無理です。


  自分が先に中に入り、母にお客様が来るとだけ告げて戻って来た。

  その時には、レイトルは厩に戻っていて、フレスベルグ夫婦も塔の巣箱。

  新婚なんでね。

  イベルダだけがログハウスの中にいて、暖炉の前で毛繕いしてた。

  ヴィルジーク様とダーイン伯爵を招き入れれば……

  目を丸くして固まるのも無理はない。

  婆ちゃんでも固まったくらいだから。

  「凄いな……他のテイマーの小屋の中に入った事がないから比較出来ないが、凄いな」

  すぐに口を開いたのはヴィルジーク様だったけど、ダーイン伯爵は無言だけど、目を輝かせてた。

  そんなに感動せずとも、と思ってたら……

  「ウェンディ!ウェンディじゃないか!」

  って、何で母の名前を呼んでるの?

  首を傾げてたら、「お久しぶりでございます」と言って、頭を下げてる母。

  ぇぇぇぇ!母、知り合いなの!?


  ログハウスの中に案内すれば、これまた驚かれたけど、アットホームな印象の家なので、直ぐにリラックスされた。

  クライブさんには申し訳ないけど、ログハウスの中で夕飯を食べるそうです。

  母もにこにこして、料理を出して振舞ってるし。

  鮭のルイベの前菜から、ドライカレーにコッコの唐揚げと、貴族のテーブルに並ぶ様な物ではないけど、美味しそうに食べてくれた。

  サラダやスープもだしたけど、デザートにはアフォガートを。

  冷たいバニラアイスに、温かいコーヒーを注ぐ物なので、相手を選ぶけど、お客様2人には合った模様。


  その後、母とダーイン伯爵の関係を聞けば……

  色恋の関係ではないけど……

  辺境領にまで支店を置いて、商いをしてくれる数少ない商家だったので、学園に通っていた時、顔見知りになったと。

  言う事だったけど、本当?

  どうも、2人の表情を見てる、それだけじゃなかった気がする。

  けど、かたや平民の商家だし、侯爵相当の辺境伯だもんねえ。

  それに学年も違うし、お互い、学園を卒業してしまったら、分からなくはない。

  双方に、それを乗り越えるだけの感情が無ければ、先に続かないよねえ。

  老いらくとまでは行かないけど、背負ってる物が減った今なら、寄り添えるかもね。

  そう思ってしまった。考えてしまった。

  けど、そう甘くはないよねえ。



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