獣人世界へ、ようこそ?

ふにゃー

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  午後の薬屋開けるまでに、師匠に、薬草畑を見て貰ったら……

  たまげてた。

  妖精の道から来てたルカも、ガラスの塔の温室内だけだったので、扉からは初めてで……

  「こんなに広くなかったんだけどな…」と、師匠に呟かれてた。

  首を傾げてたけど、リーナの記憶でも、いつの間にか、この広さで……

  『リーナいっぱい持ち込んでるにゃ!』

  コレなんて珍しいにゃ~!と言って、花を摘もうとしたルカ……

  ダダっと走り始めた花に、目が丸くなった!

  『花が走ってるって、魔化したにゃ!?』

  そう言って、追い掛け始めたんだけど……

  『そうにゃ!流行病レムダの素材、カマーにゃ!待つのにゃ!』

  ルカが思い出した!とばかりに、叫んでる。

  師匠は、「やれやれ」と言いながらも笑ってた。

  「妖精だけでなく、精霊までもが住み着いてるだなんて、もうちょっとキツめの使用者制限が要りそうだよ」

  困ったと言いたげだけど、顔は笑ってた。

  「ディビットは弾かれてた様だけど、入れてたらきっと、大笑いしてそうだ」

  弾かれてたって……目端が利くウサギさんだこと……

  いつの間に?って……リリカの話をするのに来たタイミングでかな?

  でも、弾かれたって事は持って帰ろうとしたって事だよね?



  自分が首を傾げてた時、ウサギ獣人さん、大急ぎで、砦に帰っていた。

  ココココ!と、コンコンとゆっくりノックじゃなく、連打ノック……
  
 「おい、ディビット、いい加減にしろや!」
  「一応、これでも長官室なんだぞ!」

  部屋の中の者に文句を言われてた。

  「お前も、ルドの様に、番が居たとかじゃねーだろうな」

  大きな焦げ茶のマホガニーの様な執務机の前で、書類相手に格闘してたのは、この西の砦の長官で、狼獣人のスヴェン。

  格が上がると、毛色が白に近くなって行く狼獣人で……

  青み帯びた白は、かなりの腕前。

  だが、番が現れるかは別問題で……

  後輩で、ようやく灰色の毛が白くなり始めたルドルフことルドは、ロートンが召喚し、追放されてやって来たユウリを見付けた。

  狼獣人にとって、番は唯一無二だけに、成人して早々、冒険者になって探し歩いただけあって……

  先を越されて、イラっとしてた。

  けど、こればっかりは適当には見つけられない。

  執務室にいた黒豹の副長、ノアもまた番が居らず、独身。

  もう1人の者は、スヴェンの秘書の様な事をしてる侍従で、垂れ耳の犬の獣人は優しげな顔付きをしてるウィル。

  砦において、メスを含め女性が憧れてる連中だった。

  「番じゃないけど、番?」と自身で言って、首を傾げたウサギ獣人。

  いや違う?と、また首を傾げたウサギ獣人さんを笑ってた連中。

  「ルカの番なのかな?リーナは……」

  そう言って、違う事で急いで来たのに忘れて、考え始めた。

  「あー、噂になってたな。ルカの嫁さんの猫獣人」

  ウィルが1番噂を耳に入れて来るタイプで……

  「ディビットが言うように、魔法大国大慌てらしいぞ」

  そういう黒豹のノアは、まさかの繋がりで、アランとは兄弟で番探しの旅で、魔法大国に居たもよう。

  「お調子者で、ギルドの飼い猫って事だったけど、意外と頭の回転は早い、隠密系も得意だったとは……」

  そう言って、資料を机に乗せたスヴェン。

  「番じゃなくても、アランのお気に入りになってたってとこか」

  ちょっと驚いた口調になったウサギ獣人のディビット。

  「飯が美味い…ちょっと可愛い…見飽きない…って、これ報告書?」

  ノアから見せられたものに目を通し、唖然とした。

  けど、「あ!そう、コレ!これの話をしようと思って来たのに!」

  報告書を見て思い出したディビット。

  「ここに書かれてる扉だけど!今、グラディエーヌ薬屋の裏にあってさあ!手を伸ばしたら弾かれたんだ!そしたら……」

  「ヒルデガルド薬師が、何十年も前に作った、薬草畑という名の亜空間だ」

  「なんだ……スヴェン知ってたのか…」

  ちょっと拗ねた顔になったディビット。

  「弟子といえ、猫獣人の薬師のアンナに渡すなんて!という者が出るくらいの逸品だし、故郷が他国でエスペラントだ」

  「帝国が、魔王国の次に狙ってる王国だしな」

  「番探しで1番見付けられるって言われてた国な」

  番話が再び顔を出し、全員、眉を寄せた。

  「ルドのやつ、匂いもだが、相手が人族だから、渡す花探し始めたのか?」

  獣人同士であれば分かる番独特の匂いだけど……

  人族は分からないし、浮気性だしって事で、獣人というか龍人が考えたのが……

  相手の結婚時の心が留められる花。

  魅了に近いけど、相手が誰でもじゃなく、番う相手だけ限定。

  幻惑の花といえ、匂いを嗅ぐだけで、アウト!で……

  リーナは見た事ないけど、アッチの百合のカサブランカ並に大きく、艶やかで……

  アッチでも結婚式のブーケに使われてる。

  「それが……ルドのやつ使わないって、言ってるそうで……」
  
  ウィルが困った様に口にした。

  「なら、当分、俺らは顔を出さない方が良いだろうな」
  
  全員が頷いたけど……

  「それは良いんだけど!砦にも、亜空間の薬草畑が欲しいんだ!」

  ディビットの願いは、直ぐに脚下された。

  「お前に管理されたら、全部、毒草になりそうだから無理だ」

  えええ~!という声が響いていた。



  明日は薬屋の休日って事で、何しようかな?と思いながら……

  風魔法で、人参の皮を剥いてたら……

  「こんばんは」っていうナオトくんの声がした。

  あら、この薬屋自体が結界内だから、入れたんだと思ってたんだ。

  と思ったら、帰ったと思ってたリリカとミホ、ユウリも居て……

  「リーナさんには、ここに来るまでお世話になったので……」

  そう言い出して……

  裏口から入って貰ったら……

  「俺が作ったんですけど…」そう言って出されたのが……

  「ピーラーにゃ!」と叫んでた。

  これがあるかないかで、料理が楽になる!

  他にも泡立て器とか……泣けるにゃ~!

  
  リリカにはっていうか、ルカと師匠にも、前世の記憶があるとは口にしたけど……

  アッチの記憶に、個人情報は全くないのに、やたら食べ物系を覚えてるには笑われたけど。

  この世界で前世の記憶持ちっていうのはザラにいる。

  異世界っていうのは珍しいけど。

  更に、召喚ではない落ち人も10年に数度の確率で現れてるらしい。

  (ギルド資料室本より)

  それだから、高校生たちが抱いてた違和感が晴れて……

  リリカから、自分の欲しいものが伝わり、今って状態だね。


  その時に、ウィーンと掃除ロボがスタンバイ位置から離れて……

  ルカと自分が、同時にビクッとしてた。

  ナオトくんの手が撫でたそうにしてたけど……

  獣人は撫でちゃダメって言ったからか、我慢してる。

  獣人じゃない猫もいない訳じゃないけど……

  野生なので、ペットとして飼うのなら……

  「あ!そうか!契約獣か、召喚獣にゃ!」

  猫獣人が猫を飼うっていうのも変かな?


  ここのじゃなく、アマイルの冒険者ギルドの資料室で見付けたのよ。

  冒険者ギルドの裏の建物で、召喚獣の魔法陣があるの。

  あ、でも、召喚の魔法陣なんて、もう見たくないよね?

  なら、貸馬屋に居るのと契約かな?

  そこら辺の事を教えたら、行ってみると言ってた。

  お土産に、師匠の好物になったショコラをあげたら、顔を綻ばせてた。

  魅了付きのカカオをどうにかしたくて、師匠を頼ったら……

  とりあえずやってみろって言われたの。それで……

  カカオを皮を剥いたら、魅了効果が半減し、豆を焙煎して砕いて、遠心分離でカカオマスとバターに分けたら……

  魅了効果が雲散……何処に行った?

  それで、滑らかにするっていう作業後、蜜蝋をペレットにする様に、氷魔法で冷やして、常時はペレットって事にした筈なんだけど……

  最初に作った、覚えてる限りのショコラが結構、減って行くので……

  ペレットである時なんかない……

  ちなみに、ルカも自分も、猫は猫でも妖精なので、食べてる~!

  猫に、いや猫獣人にも、ネギ系同様、チョコは禁忌にゃ!

  ブラッドオレンジのジャムを作った残りの皮を、砂糖で煮詰めて乾かしたピールのチョコがけが、今のお気に入りなのにゃー!

  師匠は、砕いたナッツのプラリネをチョコ塗れにしたものが特に。

  ルカは『目移りするにゃ!どれも美味にゃ~』と蕩けてる。

  師匠たちでそんな反応だから、ここではないだろうから、懐かしいだろって渡したけど……

  「チョコだ!」「嬉しい!」「これは何処で!?」

  食い付き具合が凄いし、師匠とルカからの無言の圧も凄かったので……

  出処は適当に誤魔化した。

  ごめんにゃ……当分、自分しか無理にゃ……

  亜空間だから、理を早めれば1ヶ月もすれば実るけど、今はもう収穫しちゃったから、これ以上は無理にゃー!


  あと、トワイゾのランベルト商会で買ったコーヒーは根付いたよ!

  ラノベどおり成長促進する効果があったスライムゼリーの薄め液と、魔力を注ぐ事で、コーヒー豆が生るまで3ヶ月弱だった。

  妖精達は採集を手伝ってくれないけど、これまた師匠の好物になった。

  焙煎だけは、火が種火か着火くらいしか出来ないので、師匠の方が得意です。

  魔道具のコンロでも、火加減は超難しい!

  ゴリゴリ粉砕は、風魔法でにゃ……けど、手回しでも良いから……道具を……コーヒーミル……

  淹れ方は、ネルドリップでにゃ!

  さすがに、バーコレーターとかはないだろうし……

  いや、掃除ロボ作った人のところ行ったら、あるかにゃ?

  カスは消臭効果あるので、乾かして残してるにゃ!

  そうそう!ルカったら、闇じゃなく光で!うにゃー!

  『おかしいにゃ?得意属性はあるけど、なんでも使える筈にゃ』

  そう言ってるけど、光はできないにゃ!

  首を傾げるルカに、師匠が……

  「白猫に近くなったのなら、今は出来るんじゃないかい?」

  本当なら、もっと精進するにゃ!







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