44 / 48
43
しおりを挟む午後の薬屋開けるまでに、師匠に、薬草畑を見て貰ったら……
たまげてた。
妖精の道から来てたルカも、ガラスの塔の温室内だけだったので、扉からは初めてで……
「こんなに広くなかったんだけどな…」と、師匠に呟かれてた。
首を傾げてたけど、リーナの記憶でも、いつの間にか、この広さで……
『リーナいっぱい持ち込んでるにゃ!』
コレなんて珍しいにゃ~!と言って、花を摘もうとしたルカ……
ダダっと走り始めた花に、目が丸くなった!
『花が走ってるって、魔化したにゃ!?』
そう言って、追い掛け始めたんだけど……
『そうにゃ!流行病レムダの素材、カマーにゃ!待つのにゃ!』
ルカが思い出した!とばかりに、叫んでる。
師匠は、「やれやれ」と言いながらも笑ってた。
「妖精だけでなく、精霊までもが住み着いてるだなんて、もうちょっとキツめの使用者制限が要りそうだよ」
困ったと言いたげだけど、顔は笑ってた。
「ディビットは弾かれてた様だけど、入れてたらきっと、大笑いしてそうだ」
弾かれてたって……目端が利くウサギさんだこと……
いつの間に?って……リリカの話をするのに来たタイミングでかな?
でも、弾かれたって事は持って帰ろうとしたって事だよね?
自分が首を傾げてた時、ウサギ獣人さん、大急ぎで、砦に帰っていた。
ココココ!と、コンコンとゆっくりノックじゃなく、連打ノック……
「おい、ディビット、いい加減にしろや!」
「一応、これでも長官室なんだぞ!」
部屋の中の者に文句を言われてた。
「お前も、ルドの様に、番が居たとかじゃねーだろうな」
大きな焦げ茶のマホガニーの様な執務机の前で、書類相手に格闘してたのは、この西の砦の長官で、狼獣人のスヴェン。
格が上がると、毛色が白に近くなって行く狼獣人で……
青み帯びた白は、かなりの腕前。
だが、番が現れるかは別問題で……
後輩で、ようやく灰色の毛が白くなり始めたルドルフことルドは、ロートンが召喚し、追放されてやって来たユウリを見付けた。
狼獣人にとって、番は唯一無二だけに、成人して早々、冒険者になって探し歩いただけあって……
先を越されて、イラっとしてた。
けど、こればっかりは適当には見つけられない。
執務室にいた黒豹の副長、ノアもまた番が居らず、独身。
もう1人の者は、スヴェンの秘書の様な事をしてる侍従で、垂れ耳の犬の獣人は優しげな顔付きをしてるウィル。
砦において、メスを含め女性が憧れてる連中だった。
「番じゃないけど、番?」と自身で言って、首を傾げたウサギ獣人。
いや違う?と、また首を傾げたウサギ獣人さんを笑ってた連中。
「ルカの番なのかな?リーナは……」
そう言って、違う事で急いで来たのに忘れて、考え始めた。
「あー、噂になってたな。ルカの嫁さんの猫獣人」
ウィルが1番噂を耳に入れて来るタイプで……
「ディビットが言うように、魔法大国大慌てらしいぞ」
そういう黒豹のノアは、まさかの繋がりで、アランとは兄弟で番探しの旅で、魔法大国に居たもよう。
「お調子者で、ギルドの飼い猫って事だったけど、意外と頭の回転は早い、隠密系も得意だったとは……」
そう言って、資料を机に乗せたスヴェン。
「番じゃなくても、アランのお気に入りになってたってとこか」
ちょっと驚いた口調になったウサギ獣人のディビット。
「飯が美味い…ちょっと可愛い…見飽きない…って、これ報告書?」
ノアから見せられたものに目を通し、唖然とした。
けど、「あ!そう、コレ!これの話をしようと思って来たのに!」
報告書を見て思い出したディビット。
「ここに書かれてる扉だけど!今、グラディエーヌ薬屋の裏にあってさあ!手を伸ばしたら弾かれたんだ!そしたら……」
「ヒルデガルド薬師が、何十年も前に作った、薬草畑という名の亜空間だ」
「なんだ……スヴェン知ってたのか…」
ちょっと拗ねた顔になったディビット。
「弟子といえ、猫獣人の薬師のアンナに渡すなんて!という者が出るくらいの逸品だし、故郷が他国でエスペラントだ」
「帝国が、魔王国の次に狙ってる王国だしな」
「番探しで1番見付けられるって言われてた国な」
番話が再び顔を出し、全員、眉を寄せた。
「ルドのやつ、匂いもだが、相手が人族だから、渡す花探し始めたのか?」
獣人同士であれば分かる番独特の匂いだけど……
人族は分からないし、浮気性だしって事で、獣人というか龍人が考えたのが……
相手の結婚時の心が留められる花。
魅了に近いけど、相手が誰でもじゃなく、番う相手だけ限定。
幻惑の花といえ、匂いを嗅ぐだけで、アウト!で……
リーナは見た事ないけど、アッチの百合のカサブランカ並に大きく、艶やかで……
アッチでも結婚式のブーケに使われてる。
「それが……ルドのやつ使わないって、言ってるそうで……」
ウィルが困った様に口にした。
「なら、当分、俺らは顔を出さない方が良いだろうな」
全員が頷いたけど……
「それは良いんだけど!砦にも、亜空間の薬草畑が欲しいんだ!」
ディビットの願いは、直ぐに脚下された。
「お前に管理されたら、全部、毒草になりそうだから無理だ」
えええ~!という声が響いていた。
明日は薬屋の休日って事で、何しようかな?と思いながら……
風魔法で、人参の皮を剥いてたら……
「こんばんは」っていうナオトくんの声がした。
あら、この薬屋自体が結界内だから、入れたんだと思ってたんだ。
と思ったら、帰ったと思ってたリリカとミホ、ユウリも居て……
「リーナさんには、ここに来るまでお世話になったので……」
そう言い出して……
裏口から入って貰ったら……
「俺が作ったんですけど…」そう言って出されたのが……
「ピーラーにゃ!」と叫んでた。
これがあるかないかで、料理が楽になる!
他にも泡立て器とか……泣けるにゃ~!
リリカにはっていうか、ルカと師匠にも、前世の記憶があるとは口にしたけど……
アッチの記憶に、個人情報は全くないのに、やたら食べ物系を覚えてるには笑われたけど。
この世界で前世の記憶持ちっていうのはザラにいる。
異世界っていうのは珍しいけど。
更に、召喚ではない落ち人も10年に数度の確率で現れてるらしい。
(ギルド資料室本より)
それだから、高校生たちが抱いてた違和感が晴れて……
リリカから、自分の欲しいものが伝わり、今って状態だね。
その時に、ウィーンと掃除ロボがスタンバイ位置から離れて……
ルカと自分が、同時にビクッとしてた。
ナオトくんの手が撫でたそうにしてたけど……
獣人は撫でちゃダメって言ったからか、我慢してる。
獣人じゃない猫もいない訳じゃないけど……
野生なので、ペットとして飼うのなら……
「あ!そうか!契約獣か、召喚獣にゃ!」
猫獣人が猫を飼うっていうのも変かな?
ここのじゃなく、アマイルの冒険者ギルドの資料室で見付けたのよ。
冒険者ギルドの裏の建物で、召喚獣の魔法陣があるの。
あ、でも、召喚の魔法陣なんて、もう見たくないよね?
なら、貸馬屋に居るのと契約かな?
そこら辺の事を教えたら、行ってみると言ってた。
お土産に、師匠の好物になったショコラをあげたら、顔を綻ばせてた。
魅了付きのカカオをどうにかしたくて、師匠を頼ったら……
とりあえずやってみろって言われたの。それで……
カカオを皮を剥いたら、魅了効果が半減し、豆を焙煎して砕いて、遠心分離でカカオマスとバターに分けたら……
魅了効果が雲散……何処に行った?
それで、滑らかにするっていう作業後、蜜蝋をペレットにする様に、氷魔法で冷やして、常時はペレットって事にした筈なんだけど……
最初に作った、覚えてる限りのショコラが結構、減って行くので……
ペレットである時なんかない……
ちなみに、ルカも自分も、猫は猫でも妖精なので、食べてる~!
猫に、いや猫獣人にも、ネギ系同様、チョコは禁忌にゃ!
ブラッドオレンジのジャムを作った残りの皮を、砂糖で煮詰めて乾かしたピールのチョコがけが、今のお気に入りなのにゃー!
師匠は、砕いたナッツのプラリネをチョコ塗れにしたものが特に。
ルカは『目移りするにゃ!どれも美味にゃ~』と蕩けてる。
師匠たちでそんな反応だから、ここではないだろうから、懐かしいだろって渡したけど……
「チョコだ!」「嬉しい!」「これは何処で!?」
食い付き具合が凄いし、師匠とルカからの無言の圧も凄かったので……
出処は適当に誤魔化した。
ごめんにゃ……当分、自分しか無理にゃ……
亜空間だから、理を早めれば1ヶ月もすれば実るけど、今はもう収穫しちゃったから、これ以上は無理にゃー!
あと、トワイゾのランベルト商会で買ったコーヒーは根付いたよ!
ラノベどおり成長促進する効果があったスライムゼリーの薄め液と、魔力を注ぐ事で、コーヒー豆が生るまで3ヶ月弱だった。
妖精達は採集を手伝ってくれないけど、これまた師匠の好物になった。
焙煎だけは、火が種火か着火くらいしか出来ないので、師匠の方が得意です。
魔道具のコンロでも、火加減は超難しい!
ゴリゴリ粉砕は、風魔法でにゃ……けど、手回しでも良いから……道具を……コーヒーミル……
淹れ方は、ネルドリップでにゃ!
さすがに、バーコレーターとかはないだろうし……
いや、掃除ロボ作った人のところ行ったら、あるかにゃ?
カスは消臭効果あるので、乾かして残してるにゃ!
そうそう!ルカったら、闇じゃなく光で!うにゃー!
『おかしいにゃ?得意属性はあるけど、なんでも使える筈にゃ』
そう言ってるけど、光はできないにゃ!
首を傾げるルカに、師匠が……
「白猫に近くなったのなら、今は出来るんじゃないかい?」
本当なら、もっと精進するにゃ!
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる