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48:たとえ見えなくても(3)
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「悠紀くんは毎日これを見てるんだね。じゃあさ、川で見た花河童ってどんな感じだったの?」
「あれは、こんな感じ」
悠紀くんが落書きじみた絵を描き、それを元に亜紀くんが現実には存在しない生き物の姿を白紙上に描き出す。
亜紀くんが頭に花を乗せた可愛らしい河童を描き終えてからも、悠紀くんは人魚や幽霊、狐の耳と尻尾を生やした人型のあやかしなどの話をし、それらを逐一亜紀くんが活き活きとした絵で描いてくれた。
次の題材は登校途中で見た、黒いマリモのようなあやかしだ。
亜紀くんが無心で鉛筆を動かしている間、悠紀くんは気になる話をした。
なんでも高校入学初日、悠紀くんは山神さまに呼び止められたそうだ。
「登校したときに『第三校舎の西側の階段は使うな』って言われた。理由を聞いたら『お前がそこに行けば厄介なことになる予感がする。でも、近づかなければ大丈夫』だと」
「え。それ、本当に大丈夫なの? 悠紀くんが階段を使ったら、具体的にどんなことが起こるの?」
悠紀くんが朝、講堂側の階段は使いたくない、と言った理由がここで判明した。
「さあ」
悠紀くんは首を傾げた。
「元神様だからか、あいつはたまに、第六感というか、未来予知能力みたいなものが働くことがあるらしい。でも、何がどうなるのかまでは詳しくわからないんだと。だから、とにかく近づくなって。それだけ」
「なんだそりゃ。具体的にどうなるんだよ? そこが一番知りたいのに」
亜紀くんが鉛筆を持つ手を止めて弟を見た。
「……。試しに行ってみようか?」
悠紀くんは少し考えた末、とんでもないことを言い出した。
「危ねーから止めろ馬鹿ッ。お前な、あやかし絡みの事件に巻き込まれたって、こっちは見えないんだから助けようがないんだぞ!? また完徹でお前を探し回る羽目になるのはご免だからな!」
怒られて、悠紀くんは口を閉じた。
完徹で探し回るって、過去に何があったんだろう。
「オレはあそこの階段をよく使うけど、別に何ともないけどな? 嫌な感じとかもしないし。階段にまつわる話なんてあったか? 聞いたことないな……」
左手でスケッチブックを持ち、鉛筆を握ったままの右手を顎の下に当て、眉根を寄せて考え込む亜紀くん。
「厄介なこと……よくある学校の怪談みたく、階段を上りきったら見知らぬ異界に迷い込む? 階段から落ちて怪我をする? それとも――」
亜紀くんの呟きを聞いて最悪を想像してしまい、背筋が寒くなった。
「止めて!!」
「うおっ」
聞くに耐えず悲鳴をあげると、亜紀くんはびくっと身体を震わせた。
「悠紀くん!!」
私は亜紀くんを放って悠紀くんの両腕を掴んだ。
今日はよく人の腕を掴む日だ。
「西側の階段は使っちゃダメだよ! 何があっても絶対だからね! 試しに行ってみよう、とかも絶対禁止!! とにかく危ないことは全部禁止!!」
「……わかった」
悠紀くんは面喰った様子で頷き、私に腕を掴まれたまま亜紀くんを見た。
お前が脅かすようなことを言うからだぞ、と目が文句を言っている。
「あれは、こんな感じ」
悠紀くんが落書きじみた絵を描き、それを元に亜紀くんが現実には存在しない生き物の姿を白紙上に描き出す。
亜紀くんが頭に花を乗せた可愛らしい河童を描き終えてからも、悠紀くんは人魚や幽霊、狐の耳と尻尾を生やした人型のあやかしなどの話をし、それらを逐一亜紀くんが活き活きとした絵で描いてくれた。
次の題材は登校途中で見た、黒いマリモのようなあやかしだ。
亜紀くんが無心で鉛筆を動かしている間、悠紀くんは気になる話をした。
なんでも高校入学初日、悠紀くんは山神さまに呼び止められたそうだ。
「登校したときに『第三校舎の西側の階段は使うな』って言われた。理由を聞いたら『お前がそこに行けば厄介なことになる予感がする。でも、近づかなければ大丈夫』だと」
「え。それ、本当に大丈夫なの? 悠紀くんが階段を使ったら、具体的にどんなことが起こるの?」
悠紀くんが朝、講堂側の階段は使いたくない、と言った理由がここで判明した。
「さあ」
悠紀くんは首を傾げた。
「元神様だからか、あいつはたまに、第六感というか、未来予知能力みたいなものが働くことがあるらしい。でも、何がどうなるのかまでは詳しくわからないんだと。だから、とにかく近づくなって。それだけ」
「なんだそりゃ。具体的にどうなるんだよ? そこが一番知りたいのに」
亜紀くんが鉛筆を持つ手を止めて弟を見た。
「……。試しに行ってみようか?」
悠紀くんは少し考えた末、とんでもないことを言い出した。
「危ねーから止めろ馬鹿ッ。お前な、あやかし絡みの事件に巻き込まれたって、こっちは見えないんだから助けようがないんだぞ!? また完徹でお前を探し回る羽目になるのはご免だからな!」
怒られて、悠紀くんは口を閉じた。
完徹で探し回るって、過去に何があったんだろう。
「オレはあそこの階段をよく使うけど、別に何ともないけどな? 嫌な感じとかもしないし。階段にまつわる話なんてあったか? 聞いたことないな……」
左手でスケッチブックを持ち、鉛筆を握ったままの右手を顎の下に当て、眉根を寄せて考え込む亜紀くん。
「厄介なこと……よくある学校の怪談みたく、階段を上りきったら見知らぬ異界に迷い込む? 階段から落ちて怪我をする? それとも――」
亜紀くんの呟きを聞いて最悪を想像してしまい、背筋が寒くなった。
「止めて!!」
「うおっ」
聞くに耐えず悲鳴をあげると、亜紀くんはびくっと身体を震わせた。
「悠紀くん!!」
私は亜紀くんを放って悠紀くんの両腕を掴んだ。
今日はよく人の腕を掴む日だ。
「西側の階段は使っちゃダメだよ! 何があっても絶対だからね! 試しに行ってみよう、とかも絶対禁止!! とにかく危ないことは全部禁止!!」
「……わかった」
悠紀くんは面喰った様子で頷き、私に腕を掴まれたまま亜紀くんを見た。
お前が脅かすようなことを言うからだぞ、と目が文句を言っている。
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