気高き翼に手を伸ばす

幽月 篠

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※天狗、策に溺れる※

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抗いたいのに身体が心に従わない

 風琴は口に入ってくる舌すら拒むことが出来なかった。

「んぅ……っ……う……」

 男に唇を奪われるのは生まれて初めてのこと。ぬるついた舌が上顎を舐め、己が舌に絡みつく。本来の自分ならばおぞましいと思えるのに、今の自分は何故だかこの行為に溺れそうになっている。

「はっ……あ……」

 ろくに息も出来ずにいると、月夜は唇を離した。唇と唇が銀の糸を引く様がはしたなく思えて、風琴は目を逸らす。すると月夜は露になっている風琴の肌を壊れ物のように指を這わせた。

「っ……ん……ふ……」
「師匠、貴方も同じ薬をお飲みになったのですね。身体が熱いです」

 ああそうだよ。毒見と味見、そして好奇心故であった。だがこうなるなら一回分全部飲むべきではなかったと今更後悔する。月夜の指の感触に声を堪えていると、突然胸の突起を引っ掛かれた。

「ああっ……!? 月夜っ……やめっ……」
「師匠がずっと黙っておいででしたので。……師匠は此処でそのような可愛らしい声を上げられるのですね」

 羞恥で風琴が耳まで真っ赤になる。我は本当は乳首などで感じたことなどない。これは薬のせいなのだ。 
 情けない声がこれ以上漏れないように、唇を手で覆う。すると、強い力で手首を掴まれた。手の甲に唇を当てられ風琴はびくりと震える。

「師匠、声抑えないでください」

 平常の自分ならばいとも容易く手を振り払える。なのに……今の自分には振り払える気がしなかった。

 風琴にとって童同然の月夜の言葉に抗えない。それどころか、言葉すらも甘美な妙薬のように、身体を蝕んでいく。
 月夜は、金縛りにあったように動けなくなった風琴の両手を、自分の髪紐で風琴の頭上に纏める。そして、風琴の固くなり始めた胸の頂きに口付けた。

「ひぅ……あんっ……ああ……や……ぁ……」

 赤子が母親の乳を吸うが如く胸の頂きを含まれ、風琴は身体を仰け反らせる。違う。こんな艶やかな甘い声を出しているのは、我ではない。我であってはいけない。
 現実から目を逸らしたくても、身体に絶え間無く走る。

「ふっ……く……う……」

 快楽は紛れもない現実であると、叩きつけられる。快楽のせいか、はたまた自分への情けなさ故か。風琴の目尻からつうっと涙が溢れ落ちた。まずい。もうすぐ達してしまう。だが弟子の前で達するなど、師匠としての面目が丸潰れだ。
 風琴が必死に達するのを堪えていると、突然中心を布越しで引っ掛かれた。

「っ__!? はっ……そこ……は……やめっ……」
「ですが師匠、こんなに固くされてお辛そうですよ。私が今楽にして差し上げます」

 月夜は風琴の褌を脱がせる。中心を冷たい空気に晒されて、風琴が吐息を吐くと、月夜はとろとろと透明な液を溢れさせているそこを、手で包み込んだ。
 それだけで、風琴は身体をびくびくと震わせる。月夜は目を細めると、骨張った指でそっと中心を扱いた。

「っ……ああ……ぐぅ……。か………は……ッ」

 奥歯を噛んで必死に堪えようとした風琴であったが、指が与える快楽にあっさりと陥落する。
陥落の証である白濁は、月夜の手を艶やかに濡らした。

「はあ……ぁ……」

 風琴は大きく胸を上下して、呼吸する。どうしてこんなことになった。隠居の身とは言え、我は天狗の長の兄だ。自分で言うのもなんだが、里では武芸で我の右に出るものなどいなかった。そんな我が人間に翻弄されるなど笑われる。
 ともかく早く月夜から離れなければ。風琴が月夜の身体を蹴って逃げようとしたが、逆に足を掴まれた。

「っ……」

 月夜にこんな力があっただろうか。せめてもの抵抗として風琴が潤んだ目で睨み付けるが、月夜はただ笑みを浮かべるのみ。掴んだ足を少し横に広げられ、反対の手で後孔に触れられる。
普段意識などしない部分を、円を描くかのようにじっとり触られて、肌が粟立った。

「月……夜……嫌……っ……ああ__!?」

 突然指が後孔に押し入ってくる。その異物感と恐ろしさに思わず悲鳴を上げてしまった。指は風琴の出した白濁で濡れているものの、引き裂かれるように痛い。だが妙薬を飲んだせいか、風琴はこのようなこと快楽を得てしまう。

「ぐ……っ……ぎ……ぁ……」

 異物が入る気持ち悪さと痛みと快楽が同時に襲い、吐き気がする。風琴が必死に唇を噛んで耐えていると、月夜が唇を重ねてきた。唇を噛むなと言いたげに舌が風琴の唇を抉じ開ける。
 何でも良いからこの苦しみから抜け出したい。そのような思い一心に我は唇を開いて月夜の舌と絡めた。唾液が入り交じり、ぼうっと頭に霧がかかる。
 最初に唇を重ねた時は恐怖でしかなかったが、今は安らぎでしかない。口吸いの快感に身を委ねるにつれ、今まで我を苦しめてきた感触が嘘のように消え失せた。

「ん…………ふ……ぅ……んん___っ!?」

 苦しみが失せて眠気に襲われ始めた時、後孔で蠢いていた指がある部分を掠る。途端に腰が砕ける程の甘い痺れが身体に走った。
 本能が危険だと告げて、身を捩るが意味などなく、ただ月夜の指に翻弄される。

「んん__っ……ふ……ううっ……」

 嫌だ。おかしくなる。月夜の腕に爪を立てようとしたが、それだけは止めろと理性が訴える。今まで大事に育ててきた愛しい子だ。稽古ならともかく、自分の意思で傷つけたくはないと。それはそうだが、抱かれるのもまずいのでは。唇を離そうとするも、舌を深く絡めているので中々離れることが出来ない。

「ううっ……ふ……んっ……ぁ……」

 2本、3本と指を増やされ、腰が別の生き物のように動いてしまう。ああ駄目だ。考えることすら億劫になる。何度も白濁を出させられ、風琴の理性は快楽に蕩かさせる。くちゅくちゅと自分の後孔で鳴る水音や、口吸いの合間に洩れる自分の声が最早遠いていく。
 風琴が考えることを完全に放棄しようとしたその時、指が一気に引き抜かれた。

「んんっ………」

 唇も離され風琴は本能のままに空気を貪る。風琴がろくに動けもせずにいると、衣擦れが部屋に響いた。早く逃げなければ。足に力を入れようとする。だが何故かろくに身体に力が入らず、足の爪は茵を掻くばかりである。
 それでも無理矢理力を込めようとした時であった。風琴の視界に、それまで隠されていた月夜のそれが映ったのは。
 それが何であるか認識した途端、風琴は全身に冷水を浴びたが如く、悪寒に襲われる。

「待って……月夜……ちがっ……う……そんな……大きいの……入ら……ない……」

 ほんの少し前まで、そんな凶悪な大きさではなかったではないか。例え、抱かれることを許容したとしても、流石にそれは尻が裂けてしまう。

「大丈夫です。なるべく傷つけないようにします」

 月夜のそれが後孔の入口に触れる。嫌だ……我は抱かれるなど。誰か助けてくれ。そう叫びたかったが、願いも空しく少しずつ月夜の熱が身体を暴いていった。

「あ………っ……ぐ……」

 妙薬の効果があれど、身体が引き裂かれるように痛い。風琴は恐怖に呑まれ浅い呼吸を繰り返す。止めどなく涙を流して耐えていると、額に柔らかな温もりが触れた。

「師匠、息をゆっくり吸ってください。それで痛みも和らぎますから」

 風琴は震える唇で、言われた通りにゆっくりと呼吸をする。ほんの少しだけだが痛みが和らぐと、少しずつ熱が我の身体に沈み込んでいった。
 どれくらいあるのだろうか。まさか腹を突き破ったりしないだろうか。恐怖はあれど、深呼吸のおかげか平静を取り戻しつつ考える。

「月夜……まだ……?」
「もう少しです。師匠……ああ……中がとても熱い」

 月夜は熱を帯びた声で囁く。少し前までは甲高い年相応の声だったというのに、声変わりを迎えて低く色を帯びた声に腰が浮く。風琴が思わず腰を動かすと、快楽が身体を襲った。

「ひうう……!? あっ……」
「くっ……」

 腰を動かしたせいで、変なところに当たってしまったようだ。月夜が何故か呻き声を上げる。まさか我の中で折れたとかないよな……?

「月夜……大丈夫か……??」
「いえ……大丈夫です。それより中に殆ど入りましたよ」

 気づくと、もう入ってしまったようだ。……ああ、我の計画が台無しではないか。風琴は力なく笑うしかない。

「ようやく師匠とひとつになれましたね。お慕い申し上げている御方と肌を重ねられるなんて、夢のようです」

 組み敷かれる上に女役で快楽を得ているのは不本意ではあるが、月夜が我のことをこれ程思ってくれるのは嬉しい。

「ああ我もだ。……つ、月夜。そろそろ抜いてくれないか。もう十分であろう」
「え……? まだまだこれからですよ」
「へ……? まだとは………ああっ____!?」

 まだとは何だと言い終えない内に、がっしりと腰を掴まれると、熱の楔が身体を穿ち始めた。

「ああっ……月……夜……っ……そこ……いやぁ……」

 身体を何度も貫く熱の楔に理性を侵される。青年になったばかり故の抑えられぬ激しい情欲から、逃れられない。
 部屋に風琴の嬌声が響く一方、月夜はただ荒い息を吐いていた。余裕のない獣の瞳が射抜くのは、長年師匠と慕っていた美しい男の乱れるあられもない姿。

「やああっ……前……さわっ……る……な……!」

 子種を植え付けるばかりの雄と化したと思いきや、必要ないであろう勃ち上がった己の中心を握られ、風琴は萌葱色の目を大きく見開く。まさか女役で自分の物が硬くなっているなど知りたくなかった。

「あんっ……いや……こん……なの……」

 肌がぶつかる度に奥を抉られ、甘く狂おしい快感に身体が熔けそう。前もぬちぬちと扱かれ、自分がもうすぐ達しそうになることは悟っていた。
 だが認めたくない。自分が女役で快楽を得るような淫らな天狗であることを。だが奥を抉られる度に、自分の身体が熱の楔を離すものかと締め付けている。
それに否応なしに鼓膜を叩くは、律動の繰り返しで生じる水音と自分の艶やかな声。風琴は羞恥と情けなさから逃れるように考えることを放棄する。

「師匠……師匠っ……」
「あう……はっ……あ……」

 ただ人形同然に揺すぶられ快楽を享受する。普段凛と見据える瞳はとろりと蕩け目の前にいる青年を捉えているかさえ怪しい。

「ひああっ………うあ……んああっ____」
「っ……」

 一番奥まで打ち付けられると、風琴は身体を仰け反らせてぱたぱたと白濁を溢す。そのすぐ後に、中で熱い物が爆ぜたのを感じた。どくどくと注ぎ込まれるそれに身体がひくりと痙攣する。

「師匠……お慕い申し上げております……」

 朦朧とする意識の中で聞こえた声は、先程まで荒々しく身体を暴いていたとは思えぬ程に酷く優しい声。

「…………」

 月夜のたわけが。怒鳴って部屋から蹴飛ばしたいが、妙薬のせいでその気力がない。重ったるい瞼を抉じ開けて一瞬だけ月夜を睨む。

「師匠……?」

 不安げに此方を伺う月夜を無視するように、風琴は眠りに身を委ねた。
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