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面の下にあるもの
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いつもと変わらず強くて気高い貴方が脆く見えるのはどうしてだろうか
異界への道に飛び込んだ月夜達は、気がつくと薄暗い空間にいた。この場所で合っているのだろうか。月夜は神経を研ぎ澄ます。すると、微かにではあるが風琴が同じ空間にいるのを感じた。
「剣殿、師匠の居場所がお分かりですか」
「邪気が阻害してはいるが、方向は何となく分かる。ただ、簡単には通してもらえなさそうだぜ」
剣殿の視線の先には無数の化け物が蠢いている。そしてそれらは此方に近づいていた。
「騰蛇とやら、早速だが手伝ってもらえるかな」
剣殿が私の後ろにいる騰蛇殿に目を向ける。騰蛇殿は当たり前だと得物を手にした。
「その為に此方に来たのだから。剣殿は準備万端のようだな。……月夜殿、得物を握れ。さもなくば、お師匠を助け出せませんぞ」
「……分かっております」
月夜は己の腰にある剣を鞘から取り出した。関ヶ原の時、酷使したというのに、全く欠けることなどなく煌めいている。どうか師匠を助けるために力を貸してくれ。月夜は柄を握りしめる。
「では行くぞ」
風琴の剣に続いて、月夜は化け物に己の剣を振り下ろす。血飛沫が月夜の衣を濡らすが月夜は怯むことなく先へと進む。人だった頃の私は、血に怯えていた。今だって少しだけ怖い。それでも、私は貴方を失うことの方が怖いから、足を前に踏み出すのです。敵を斬る月夜の目には冷たい光が宿っていた。
四半刻後、月夜達は入り組んだ洞窟のような道を走っていた。どういうわけか、異界の警備用の化け物としか遭遇しない。一体これはどういうことだろうか。月夜は幸いだと思いつつも、嫌な予感を覚えていた。
「剣殿、あとどのくらいかかりますか」
「近いと思うぞ。……まずいっ……避けろ!」
月夜は反射的に後方に跳ぶ。距離を取って敵を見上げると、月夜の顔が青ざめた。
「なっ……」
そこにいたのは、風琴が不在の際に庵に現れたあの化け物と瓜二つの生き物であった。どうしてこんなところに。月夜は今までの猛攻が嘘かのように、指が震えた。
あの時、直視していなかったが、それはおぞましい姿をしていた。己の背丈と変わらぬ蜥蜴のような姿だが、歯は狼のように鋭い。口からはどろどろとした黒い粘液を滴らせていた。
涼太殿が足を食い千切られ、何人もの天狗が食われた。私に出来たのは、涼太を部屋に匿っただけ。あの時の師匠のようなことが出来るだろうか。
「馬鹿、しゃんとしろ」
剣殿は怯えてしまった私を見かねたのか、私の背中をばしんと叩く。そして師匠が私を叱る時と同じ厳しい表情を見せた。
「騰蛇との手合わせで疲弊していたのにも関わらず、主はお前を助けたのだ。お前がしっかりせずしてどうする」
そうだ。師匠は手合わせであれだけ凄まじい闘いを繰り広げたのに、私のために駆けつけてくださった。今、私が倒さなくてどうする。月夜は妖力で翼を編むと、地を蹴って飛んだ。
「皆さん、私が囮になります。お力をお貸しください!」
月夜はそう叫ぶと、化け物の目の前を飛んで引き付ける。化け物は月夜を狙っているのか、前肢や舌を伸ばしてきた。それを月夜は凄まじい早さで避ける。その間に、風琴の剣と騰蛇が斬りつける。だが、いくら斬りつけても瞬く間に傷口が再生した。
「あの時の風琴殿は火事場の馬鹿力でも出したのか。……っおい、剣殿。あれを再現できないか!」
上空では月夜が化け物の注意を逸らすために飛び回っているが、長時間飛ぶのは限界なのだろう。衣が何ヵ所も裂けていた。
「無理に決まっているだろうが。……いや、あれがあったな。騰蛇、俺を使え」
剣の身体が光を帯びたかと思うと、元の剣の姿に戻り、騰蛇の手のひらに収まった。
『あの蛇神の力が籠っている。これならば、相剋であろうが神気で縛ることも用意だろう』
「なるほど、心得た」
騰蛇は頷くと、勢い良く化け物の脚を斬りつける。今度は再生せぬまま、斬り飛ばし化け物の体勢が崩れた。斬りつけた箇所から蛇神の神気が化け物の身体中を覆い、締め付けていく。化け物は身動きも出来ずに、おぞましい鳴き声を上げた。
「月夜殿、今だ!」
「はい!」
月夜は剣を両手に構えると、雷のように化け物の脳天を貫いた。化け物の絶叫と共に、化け物の絶叫と月夜の剣から生じた妖力の光が空間を満たす。
光が収まった頃には、化け物が黒焦げになっていた。私がやったのか。震える指で剣を鞘に納めて、前を見る。そこには見たこともない装飾の扉があった。この奥に師匠がいる。直感のままに駆けて、扉を開けた。そこには、寝台に横たわる人影があった。寝台を覆う布のせいで見えないが、師匠だと断言できる。
「師匠! ご無事ですか!?」
月夜は寝台を覆う絹の布を捲る。そこには手足に鉄の手枷を填められ、鎖に繋がれた風琴の姿があった。ぐったりと蒼白い顔をして目を閉じて横たわっており、手枷の部分には血が滲んでいる。それとは不釣り合いに上等な異国の女物であろう衣を纏っている
月夜は風琴のその姿に血の気が引いた。
呼吸はある。だが妖気を殆んど感じられない。早く薬師に診てもらわなければ。そのためには、手枷を外さなければならない。どうやって外そうか。月夜が風琴の手首に触れた時、指がぴくりと震えた。
「あ……月……夜……?」
「師匠……?」
微かな声が耳に届き、月夜は風琴の顔を見る。萌葱の瞳と目が合った途端、涙が溢れそうになったが何故か視界が回った。月夜が気づいた時には、素顔を晒した風琴が恐ろしい顔で月夜の首を捕らえている。
「本当に月夜なのか。月夜になりすましているのならば、我の堪忍袋の緒が切れるぞ」
一瞬即発の威圧感に月夜は呑まれそうになる。だがこのまま怯んでは、首の骨を折られかねない。月夜は面を取って叫んだ。
「貴方の月夜ですよ! 本物です!」
「何? 本当か?」
風琴は疑いつつも、月夜の頬を引っ張る。餅のように遠慮なく掴まれて、月夜は涙目になった。
「師匠……いひゃいです……。ねっ……本物でしょう?」
「……本物だな。お前、どうやってここに来た」
風琴は月夜の頬や指などに触れていたが、ようやく本物と分かったのか、月夜の上から離れた。
「紅月殿や泰重殿、そして鞍馬の頭である天狗殿にも協力していただきました」
「僧正坊殿もか。迷惑を掛けたな。ではこれは崩しても良いな。月夜、瑪瑙に触れてくれ」
瑪瑙に触れるとはどういうことだろうか。月夜は首を傾げながらも、赤瑪瑙の腕輪に触れる。赤瑪瑙が光ったと思うと、手枷が砂のように崩れた。足の枷も同様に崩れ落ちる。
「これで良い。月夜、我の剣はあるか。急いで里に戻らねばならない」
万全の状態でないのに里に戻ろうとなされるのは、師匠を捕らえた輩が里に危害を加えようとしているのだろうか。月夜が口を開きかけた時、風琴の目の前に剣が片膝を突いて頭を垂れた。
「我が主、貴方の剣ならば此処におります」
「……お前も助けに来てくれたのか。捕らわれている間、考える時間はあったのでな。約束を果たすとしよう」
まるで昔から知っているような優しい声音。私が知らないだけで、師匠と剣殿は話したことがあるのだろうか。
「雪のような美しい髪と刀身ばかりが頭に残っていてな。銀華というのはどうだ」
「銀華……有り難く頂きます」
剣殿……否、銀華殿は一筋涙を溢すと、鞘に入った状態の剣に戻った。約束とはそういうことだったのか。
一瞬、嫉妬を覚えた己が恥ずかしくなる。それにしても、美しい響きの名前だ。そう思いながら、師匠が大事そうに銀華殿を抱えているのを横目に、師匠の面を手に取る。面も紐もどうやら無事のようだ。
「師匠、これを」
「ああ、助かる」
師匠は私に笑みを向けると、面を被った。面の奥の瞳はいつもと変わらない。よかった。いつもの師匠だ。そう思ったのも束の間、立ち上がろうとした師匠がよろけてしまった。
「月夜、早く里に向かうぞ。すまぬが我を抱き抱えてくれ」
「承知しました」
満身創痍なのに、里のことを思うのか。1度は貴方を追い出したのに。そんな思いを飲み込む。そして扉の外で待っている騰蛇殿に声をかけた。
「騰蛇殿、師匠は無事でした」
「それはよかったな。此方はちと厄介なことになっている」
厄介なことだと。月夜は騰蛇の視線の先を追う。そこには、眼帯をした青年がにやりと嗤いながら私達を見つめていた。
「良くやったねえ。風琴のお弟子さん」
「黒雅……貴様……」
忌々しげな師匠の声が耳に響いた。
「風琴のお弟子さんに、騰蛇の兄さんと随分賑やかだなあ」
「随分変わったな、凪。道満の後ろに隠れていた小僧が、なんとまあ見違えたことよ」
騰蛇殿が「凪」と呼んだ途端、黒雅の顔から笑みが消えた。
「その名はとうに捨てたんだ。もうその名前で呼ぶなよ? 俺、怒るかもしれないからさ」
黒雅は視線を私と師匠に戻すと、にたりと嗤う。すると、私の腕の中の師匠が微かに震えた。
「風琴、もう帰っちゃうの? 一緒に楽しい時を過ごしたのに」
「たわけ。楽しい訳など無いだろう」
冷たい声で即答する師匠。黒雅は残念と言いながらも、楽しげな顔のままだった。
「あんなに悦んでたくせに。まあいいか。でもさ、助ける必要あるの? 君の弟は君の両親を殺した奴らの血を引いているのに?」
「…………母だけでなく父もか?」
風琴が震える声で問う。黒雅はゆっくりと頷いた。
「俺が糞親父に殺されかけたと言っただろう? それは外法師にお前とお前の母への呪詛を依頼した報酬として売られたのさ。どのように扱っても結構ってな」
そこまでして師匠と師匠の母を殺したかったのか。同情などしたくないのに敵の生い立ちに胸がちくりと痛む。
「お前の父を殺したのは俺だけど、それを頼んだのは坊っちゃんの継母。そしてお前に濡れ衣を被せたんだ。それを鵜呑みにして、みんな坊っちゃんを責めたらしいな。慕っていたのに手のひら返し。結局天狗は人間と同類。そんな奴ら助けたって意味ないだろ。また坊っちゃんを責めるかもしれない。なあ、坊っちゃんもお弟子さんも一緒にいよう? もう傷つかなくて済むようにしてやるからさ」
先程とがらりと変わった声は何処までも甘く優しくて、気持ち悪くなる。師匠は何も言わずに俯いて、私にしがみついた。そうだ。師匠を追いやった者達を助けて何になる。それに、師匠がこんな男に囚われたのは、彼らのせいではないか。そう口にしたい。だが……。月夜は口を開いた。
「師匠、貴方のお望みのままに。私は貴方に何処までもついていきます」
「月夜……」
師匠が泣きそうな声で私の名前を呼ぶ。面で隠れているというのに、貴方の脆さに触れた気がした。大丈夫ですよと言う代わりに、師匠を強く抱き締めた。師匠は私から黒雅へと視線を移す。
「だからなんだ。我は短い間であろうと里の長を務めた身。里の者を守らぬ訳が無かろうが! 我に甘言を弄したつもりなら、大間違いだ!」
師匠の凛とした声が響く。やはり貴方は気高い御方だ。貴方が険しい道を行くと言うのなら、私は傍で貴方を守ろう。それが私の生きる意味なのだから。
「そういうことだ。諦めるんだな黒雅」
騰蛇殿の神気が揺らめいたかと思うと、黒雅に炎が襲いかかる。黒雅は笑みを浮かべたまま炎に燃やされると、その姿が瞬時に羽に変わった。
「やはり本体ではなかったか。急ぐぞ、月夜」
「承知しました」
私は己の翼を広げると、出口へと急ぐ。出口に着くまでの間、師匠は震える指で私の身体にしがみついていた。どれ程辛い思いをされたのだろう。
泣いてくださって構わないのに、貴方は涙を見せようとすらしない。そんな貴方が気高くて強いと思う。ただ脆いとも思ってしまうのだ。私は貴方が砕けてばらばらにならないようにと、今は願うしかない。月夜は悔しげに唇を噛んだ。
いつの間にか大量に追ってきた化け物どもを引き離し、出口の穴へと飛び込む。気がつくと、元の場所に戻ってきていた。
「月夜殿!」
泰重殿が目を潤ませて此方に駆け寄ってくる。心配をかけてしまったのか。申し訳ないと思いつつも、我々の身を案じてくれるのが嬉しかった。
「泰重殿、無事に戻って参りました」
その時、師匠が私の胸を軽く押して降ろすように促す。本当に良いのだろうか。そう思いつつも、師匠を降ろした。すると、師匠は少しふらついたが、皆にゆっくり頭を下げる。
「僧正坊殿、紅月に泰重。我の為に助力頂き感謝いたす」
「何当然のことをしたまでよ。なあ人間ども」
「ええ。……風琴殿、火急の件がございます。長にお渡しした呪具が発動したようです。六合が既に召喚されたかと」
珍しく紅月殿が険しい顔をしている。黒雅が言っていたことと、師匠が里に戻ろうとしているのはこのことか。しかし、満身創痍の師匠を連れていっては、身の危険が及ぶのではないか。
「知っている。我を捕らえていた者が企てたのでな。紅月、騰蛇殿を呪具を通して送れるか」
「送れますよ。騰蛇、隠形して」
「心得た」
紅月殿は騰蛇殿の姿が消えてから何やら術を唱え始める。唱え終わると、それまであった騰蛇殿の気配が消えた。
「これで良いでしょう。ですが、風琴殿。貴方も行かれるのですか。今の貴方は危ういというのに」
紅月殿は分かっているのだろう。外傷が無くても、師匠がどれだけ傷ついたかを。
「行かねばならぬ。それが我の使命だからだ。月夜、着替えはあるな」
「はい、すぐにでも準備いたします」
「……月夜殿、あの部屋をお使いください」
紅月殿は今朝使っていた部屋を手で指し示す。師匠を支えながら部屋に向かう時、目の端に唇を噛む紅月殿が映った。部屋の中に入ると、師匠は女物の衣を脱ぎ捨て、いつもの修験者の衣に着替える。
手首足首以外の傷は見当たらない。だが、ただでさえ線の細い身体は、更に痩せてしまっていた。それを見ているだけで、胸が引き裂かれそうだ。そんな身体も衣に隠され、髪型以外はいつもの師匠に戻る。
「我と共にいた同胞達はどうした」
「東雲殿が師匠の代理として凩様を筆頭に、里に帰還するよう命じました」
「それで東雲は?」
「師匠をお助けするため、蛇神に妖力を渡されました。意識を失っておりますが、身体に別状はないかと」
「そうか。あやつにも迷惑かけたな。後で謝ろう」
師匠が謝ることではない。悪いのは、あの黒雅という男なのだから。後ろから抱き締めてしまいたい。貴方を危険な目に遭わせたくない。だけどそんなことを貴方は望まない。
「では師匠、行きましょう」
「ああ」
月夜は胸に湧き上がる諸々を飲み込むと、障子を開いた。
外では先程の3名が待っていた。
「ところで風琴、どうやって戻るつもりだ。その様子では飛ぶのも辛いだろうて」
「月夜に渡しておいた団扇を使えば、なんとかなるかと」
団扇も使い方によっては己を意のままに運ぶことができるらしい。欠点はそのような使い方をすると、妖力を激しく消耗することだが。すると僧正坊が懐から団扇を取り出した。
「わしが里まで送ってやろう。そうした方が、おぬしも戦う力を温存できる上に、半刻もかからぬからな。ただし風琴、死ぬなよ。おぬしの為に、わしや陰陽師達が手を貸したのだ。それを無駄にするようなことは許さん」
「胆に銘じます」
僧正坊は飄々と言ってはいるが、面の奥の瞳は冷たい。もし師匠が死ねば、黄泉まで追ってきて八つ裂きにでもすると告げているようだ。師匠はそんな僧正坊に臆することなく、頷いた。
「では、此処に残っている数名のおぬしの同胞ごと、山に送ってやろう。後でわし達も来る。礼に酒を用意しておけ」
「はっ。有り難き幸せ」
師匠が頭を下げる。僧正坊はそれを見て頷くと、今度は私に近づいた。私の肩に触れると、辛うじて聞こえるか聞こえないかの声で囁く。
「月夜よ。風琴は強がる癖がある。全力で守ってやれ」
「勿論にございます」
私がどれだけお役に立てるか分からない。だが、私は既に剣を血で濡らしたのだ。もう、守られるだけの子供ではない。僧正坊は目を細めると、私の肩を軽く叩いた。
そして私は待機していた同胞達を呼び集めた。召集は瞬く間に終わり、1ヶ所に集まる。
「ではいくぞ。変なところに吹き飛ばされぬようにな」
僧正坊が団扇を一度扇いだ途端、突如巨大な竜巻が起こる。身体が浮き上がったと思った途端、里の方へと飛ばされた。翼を広げてはいるが、はためかせる必要が無いほど、身体が持ち上げられている。目が回ることもなく、意外と快適だ。
「月夜、少し妖気をくれ。丹田から妖気を引き出すのに必要なのだ」
丹田を活性化させるのではなく、引き出すと。もしや妖気の前借りをするつもりか。万が一、師匠の寿命が削れてしまったらどうするつもりなのだ。月夜が答えずにいると、くしゃりと頭を撫でられた。
「大丈夫だ。お前が心配しているようなことはない。数ヶ月あまり動けない程度で済む」
それでも十分私には辛いのだが。しかし、このままでは師匠が闘う前になぶり殺されてしまう。月夜は仕方なく、風琴の手を掴んだ。触れ合っている箇所から、じんわりと月夜の妖気が流れていく。
「此度はお前に背中を預けたい。その覚悟は出来ているか」
今まで東雲殿に預けていた背中を、私に任せてくださるのか。嬉しさと、私に出来るのかという不安がある。それでも、やるしかないのだ。貴方が私の生きる理由なのだから。
「はい。出来ております」
互いの指を強く絡め合う。ほどけることがないように。離れることがないように。言葉を交わさなくても、互いの今の願いが同じなのだと分かっていた。
異界への道に飛び込んだ月夜達は、気がつくと薄暗い空間にいた。この場所で合っているのだろうか。月夜は神経を研ぎ澄ます。すると、微かにではあるが風琴が同じ空間にいるのを感じた。
「剣殿、師匠の居場所がお分かりですか」
「邪気が阻害してはいるが、方向は何となく分かる。ただ、簡単には通してもらえなさそうだぜ」
剣殿の視線の先には無数の化け物が蠢いている。そしてそれらは此方に近づいていた。
「騰蛇とやら、早速だが手伝ってもらえるかな」
剣殿が私の後ろにいる騰蛇殿に目を向ける。騰蛇殿は当たり前だと得物を手にした。
「その為に此方に来たのだから。剣殿は準備万端のようだな。……月夜殿、得物を握れ。さもなくば、お師匠を助け出せませんぞ」
「……分かっております」
月夜は己の腰にある剣を鞘から取り出した。関ヶ原の時、酷使したというのに、全く欠けることなどなく煌めいている。どうか師匠を助けるために力を貸してくれ。月夜は柄を握りしめる。
「では行くぞ」
風琴の剣に続いて、月夜は化け物に己の剣を振り下ろす。血飛沫が月夜の衣を濡らすが月夜は怯むことなく先へと進む。人だった頃の私は、血に怯えていた。今だって少しだけ怖い。それでも、私は貴方を失うことの方が怖いから、足を前に踏み出すのです。敵を斬る月夜の目には冷たい光が宿っていた。
四半刻後、月夜達は入り組んだ洞窟のような道を走っていた。どういうわけか、異界の警備用の化け物としか遭遇しない。一体これはどういうことだろうか。月夜は幸いだと思いつつも、嫌な予感を覚えていた。
「剣殿、あとどのくらいかかりますか」
「近いと思うぞ。……まずいっ……避けろ!」
月夜は反射的に後方に跳ぶ。距離を取って敵を見上げると、月夜の顔が青ざめた。
「なっ……」
そこにいたのは、風琴が不在の際に庵に現れたあの化け物と瓜二つの生き物であった。どうしてこんなところに。月夜は今までの猛攻が嘘かのように、指が震えた。
あの時、直視していなかったが、それはおぞましい姿をしていた。己の背丈と変わらぬ蜥蜴のような姿だが、歯は狼のように鋭い。口からはどろどろとした黒い粘液を滴らせていた。
涼太殿が足を食い千切られ、何人もの天狗が食われた。私に出来たのは、涼太を部屋に匿っただけ。あの時の師匠のようなことが出来るだろうか。
「馬鹿、しゃんとしろ」
剣殿は怯えてしまった私を見かねたのか、私の背中をばしんと叩く。そして師匠が私を叱る時と同じ厳しい表情を見せた。
「騰蛇との手合わせで疲弊していたのにも関わらず、主はお前を助けたのだ。お前がしっかりせずしてどうする」
そうだ。師匠は手合わせであれだけ凄まじい闘いを繰り広げたのに、私のために駆けつけてくださった。今、私が倒さなくてどうする。月夜は妖力で翼を編むと、地を蹴って飛んだ。
「皆さん、私が囮になります。お力をお貸しください!」
月夜はそう叫ぶと、化け物の目の前を飛んで引き付ける。化け物は月夜を狙っているのか、前肢や舌を伸ばしてきた。それを月夜は凄まじい早さで避ける。その間に、風琴の剣と騰蛇が斬りつける。だが、いくら斬りつけても瞬く間に傷口が再生した。
「あの時の風琴殿は火事場の馬鹿力でも出したのか。……っおい、剣殿。あれを再現できないか!」
上空では月夜が化け物の注意を逸らすために飛び回っているが、長時間飛ぶのは限界なのだろう。衣が何ヵ所も裂けていた。
「無理に決まっているだろうが。……いや、あれがあったな。騰蛇、俺を使え」
剣の身体が光を帯びたかと思うと、元の剣の姿に戻り、騰蛇の手のひらに収まった。
『あの蛇神の力が籠っている。これならば、相剋であろうが神気で縛ることも用意だろう』
「なるほど、心得た」
騰蛇は頷くと、勢い良く化け物の脚を斬りつける。今度は再生せぬまま、斬り飛ばし化け物の体勢が崩れた。斬りつけた箇所から蛇神の神気が化け物の身体中を覆い、締め付けていく。化け物は身動きも出来ずに、おぞましい鳴き声を上げた。
「月夜殿、今だ!」
「はい!」
月夜は剣を両手に構えると、雷のように化け物の脳天を貫いた。化け物の絶叫と共に、化け物の絶叫と月夜の剣から生じた妖力の光が空間を満たす。
光が収まった頃には、化け物が黒焦げになっていた。私がやったのか。震える指で剣を鞘に納めて、前を見る。そこには見たこともない装飾の扉があった。この奥に師匠がいる。直感のままに駆けて、扉を開けた。そこには、寝台に横たわる人影があった。寝台を覆う布のせいで見えないが、師匠だと断言できる。
「師匠! ご無事ですか!?」
月夜は寝台を覆う絹の布を捲る。そこには手足に鉄の手枷を填められ、鎖に繋がれた風琴の姿があった。ぐったりと蒼白い顔をして目を閉じて横たわっており、手枷の部分には血が滲んでいる。それとは不釣り合いに上等な異国の女物であろう衣を纏っている
月夜は風琴のその姿に血の気が引いた。
呼吸はある。だが妖気を殆んど感じられない。早く薬師に診てもらわなければ。そのためには、手枷を外さなければならない。どうやって外そうか。月夜が風琴の手首に触れた時、指がぴくりと震えた。
「あ……月……夜……?」
「師匠……?」
微かな声が耳に届き、月夜は風琴の顔を見る。萌葱の瞳と目が合った途端、涙が溢れそうになったが何故か視界が回った。月夜が気づいた時には、素顔を晒した風琴が恐ろしい顔で月夜の首を捕らえている。
「本当に月夜なのか。月夜になりすましているのならば、我の堪忍袋の緒が切れるぞ」
一瞬即発の威圧感に月夜は呑まれそうになる。だがこのまま怯んでは、首の骨を折られかねない。月夜は面を取って叫んだ。
「貴方の月夜ですよ! 本物です!」
「何? 本当か?」
風琴は疑いつつも、月夜の頬を引っ張る。餅のように遠慮なく掴まれて、月夜は涙目になった。
「師匠……いひゃいです……。ねっ……本物でしょう?」
「……本物だな。お前、どうやってここに来た」
風琴は月夜の頬や指などに触れていたが、ようやく本物と分かったのか、月夜の上から離れた。
「紅月殿や泰重殿、そして鞍馬の頭である天狗殿にも協力していただきました」
「僧正坊殿もか。迷惑を掛けたな。ではこれは崩しても良いな。月夜、瑪瑙に触れてくれ」
瑪瑙に触れるとはどういうことだろうか。月夜は首を傾げながらも、赤瑪瑙の腕輪に触れる。赤瑪瑙が光ったと思うと、手枷が砂のように崩れた。足の枷も同様に崩れ落ちる。
「これで良い。月夜、我の剣はあるか。急いで里に戻らねばならない」
万全の状態でないのに里に戻ろうとなされるのは、師匠を捕らえた輩が里に危害を加えようとしているのだろうか。月夜が口を開きかけた時、風琴の目の前に剣が片膝を突いて頭を垂れた。
「我が主、貴方の剣ならば此処におります」
「……お前も助けに来てくれたのか。捕らわれている間、考える時間はあったのでな。約束を果たすとしよう」
まるで昔から知っているような優しい声音。私が知らないだけで、師匠と剣殿は話したことがあるのだろうか。
「雪のような美しい髪と刀身ばかりが頭に残っていてな。銀華というのはどうだ」
「銀華……有り難く頂きます」
剣殿……否、銀華殿は一筋涙を溢すと、鞘に入った状態の剣に戻った。約束とはそういうことだったのか。
一瞬、嫉妬を覚えた己が恥ずかしくなる。それにしても、美しい響きの名前だ。そう思いながら、師匠が大事そうに銀華殿を抱えているのを横目に、師匠の面を手に取る。面も紐もどうやら無事のようだ。
「師匠、これを」
「ああ、助かる」
師匠は私に笑みを向けると、面を被った。面の奥の瞳はいつもと変わらない。よかった。いつもの師匠だ。そう思ったのも束の間、立ち上がろうとした師匠がよろけてしまった。
「月夜、早く里に向かうぞ。すまぬが我を抱き抱えてくれ」
「承知しました」
満身創痍なのに、里のことを思うのか。1度は貴方を追い出したのに。そんな思いを飲み込む。そして扉の外で待っている騰蛇殿に声をかけた。
「騰蛇殿、師匠は無事でした」
「それはよかったな。此方はちと厄介なことになっている」
厄介なことだと。月夜は騰蛇の視線の先を追う。そこには、眼帯をした青年がにやりと嗤いながら私達を見つめていた。
「良くやったねえ。風琴のお弟子さん」
「黒雅……貴様……」
忌々しげな師匠の声が耳に響いた。
「風琴のお弟子さんに、騰蛇の兄さんと随分賑やかだなあ」
「随分変わったな、凪。道満の後ろに隠れていた小僧が、なんとまあ見違えたことよ」
騰蛇殿が「凪」と呼んだ途端、黒雅の顔から笑みが消えた。
「その名はとうに捨てたんだ。もうその名前で呼ぶなよ? 俺、怒るかもしれないからさ」
黒雅は視線を私と師匠に戻すと、にたりと嗤う。すると、私の腕の中の師匠が微かに震えた。
「風琴、もう帰っちゃうの? 一緒に楽しい時を過ごしたのに」
「たわけ。楽しい訳など無いだろう」
冷たい声で即答する師匠。黒雅は残念と言いながらも、楽しげな顔のままだった。
「あんなに悦んでたくせに。まあいいか。でもさ、助ける必要あるの? 君の弟は君の両親を殺した奴らの血を引いているのに?」
「…………母だけでなく父もか?」
風琴が震える声で問う。黒雅はゆっくりと頷いた。
「俺が糞親父に殺されかけたと言っただろう? それは外法師にお前とお前の母への呪詛を依頼した報酬として売られたのさ。どのように扱っても結構ってな」
そこまでして師匠と師匠の母を殺したかったのか。同情などしたくないのに敵の生い立ちに胸がちくりと痛む。
「お前の父を殺したのは俺だけど、それを頼んだのは坊っちゃんの継母。そしてお前に濡れ衣を被せたんだ。それを鵜呑みにして、みんな坊っちゃんを責めたらしいな。慕っていたのに手のひら返し。結局天狗は人間と同類。そんな奴ら助けたって意味ないだろ。また坊っちゃんを責めるかもしれない。なあ、坊っちゃんもお弟子さんも一緒にいよう? もう傷つかなくて済むようにしてやるからさ」
先程とがらりと変わった声は何処までも甘く優しくて、気持ち悪くなる。師匠は何も言わずに俯いて、私にしがみついた。そうだ。師匠を追いやった者達を助けて何になる。それに、師匠がこんな男に囚われたのは、彼らのせいではないか。そう口にしたい。だが……。月夜は口を開いた。
「師匠、貴方のお望みのままに。私は貴方に何処までもついていきます」
「月夜……」
師匠が泣きそうな声で私の名前を呼ぶ。面で隠れているというのに、貴方の脆さに触れた気がした。大丈夫ですよと言う代わりに、師匠を強く抱き締めた。師匠は私から黒雅へと視線を移す。
「だからなんだ。我は短い間であろうと里の長を務めた身。里の者を守らぬ訳が無かろうが! 我に甘言を弄したつもりなら、大間違いだ!」
師匠の凛とした声が響く。やはり貴方は気高い御方だ。貴方が険しい道を行くと言うのなら、私は傍で貴方を守ろう。それが私の生きる意味なのだから。
「そういうことだ。諦めるんだな黒雅」
騰蛇殿の神気が揺らめいたかと思うと、黒雅に炎が襲いかかる。黒雅は笑みを浮かべたまま炎に燃やされると、その姿が瞬時に羽に変わった。
「やはり本体ではなかったか。急ぐぞ、月夜」
「承知しました」
私は己の翼を広げると、出口へと急ぐ。出口に着くまでの間、師匠は震える指で私の身体にしがみついていた。どれ程辛い思いをされたのだろう。
泣いてくださって構わないのに、貴方は涙を見せようとすらしない。そんな貴方が気高くて強いと思う。ただ脆いとも思ってしまうのだ。私は貴方が砕けてばらばらにならないようにと、今は願うしかない。月夜は悔しげに唇を噛んだ。
いつの間にか大量に追ってきた化け物どもを引き離し、出口の穴へと飛び込む。気がつくと、元の場所に戻ってきていた。
「月夜殿!」
泰重殿が目を潤ませて此方に駆け寄ってくる。心配をかけてしまったのか。申し訳ないと思いつつも、我々の身を案じてくれるのが嬉しかった。
「泰重殿、無事に戻って参りました」
その時、師匠が私の胸を軽く押して降ろすように促す。本当に良いのだろうか。そう思いつつも、師匠を降ろした。すると、師匠は少しふらついたが、皆にゆっくり頭を下げる。
「僧正坊殿、紅月に泰重。我の為に助力頂き感謝いたす」
「何当然のことをしたまでよ。なあ人間ども」
「ええ。……風琴殿、火急の件がございます。長にお渡しした呪具が発動したようです。六合が既に召喚されたかと」
珍しく紅月殿が険しい顔をしている。黒雅が言っていたことと、師匠が里に戻ろうとしているのはこのことか。しかし、満身創痍の師匠を連れていっては、身の危険が及ぶのではないか。
「知っている。我を捕らえていた者が企てたのでな。紅月、騰蛇殿を呪具を通して送れるか」
「送れますよ。騰蛇、隠形して」
「心得た」
紅月殿は騰蛇殿の姿が消えてから何やら術を唱え始める。唱え終わると、それまであった騰蛇殿の気配が消えた。
「これで良いでしょう。ですが、風琴殿。貴方も行かれるのですか。今の貴方は危ういというのに」
紅月殿は分かっているのだろう。外傷が無くても、師匠がどれだけ傷ついたかを。
「行かねばならぬ。それが我の使命だからだ。月夜、着替えはあるな」
「はい、すぐにでも準備いたします」
「……月夜殿、あの部屋をお使いください」
紅月殿は今朝使っていた部屋を手で指し示す。師匠を支えながら部屋に向かう時、目の端に唇を噛む紅月殿が映った。部屋の中に入ると、師匠は女物の衣を脱ぎ捨て、いつもの修験者の衣に着替える。
手首足首以外の傷は見当たらない。だが、ただでさえ線の細い身体は、更に痩せてしまっていた。それを見ているだけで、胸が引き裂かれそうだ。そんな身体も衣に隠され、髪型以外はいつもの師匠に戻る。
「我と共にいた同胞達はどうした」
「東雲殿が師匠の代理として凩様を筆頭に、里に帰還するよう命じました」
「それで東雲は?」
「師匠をお助けするため、蛇神に妖力を渡されました。意識を失っておりますが、身体に別状はないかと」
「そうか。あやつにも迷惑かけたな。後で謝ろう」
師匠が謝ることではない。悪いのは、あの黒雅という男なのだから。後ろから抱き締めてしまいたい。貴方を危険な目に遭わせたくない。だけどそんなことを貴方は望まない。
「では師匠、行きましょう」
「ああ」
月夜は胸に湧き上がる諸々を飲み込むと、障子を開いた。
外では先程の3名が待っていた。
「ところで風琴、どうやって戻るつもりだ。その様子では飛ぶのも辛いだろうて」
「月夜に渡しておいた団扇を使えば、なんとかなるかと」
団扇も使い方によっては己を意のままに運ぶことができるらしい。欠点はそのような使い方をすると、妖力を激しく消耗することだが。すると僧正坊が懐から団扇を取り出した。
「わしが里まで送ってやろう。そうした方が、おぬしも戦う力を温存できる上に、半刻もかからぬからな。ただし風琴、死ぬなよ。おぬしの為に、わしや陰陽師達が手を貸したのだ。それを無駄にするようなことは許さん」
「胆に銘じます」
僧正坊は飄々と言ってはいるが、面の奥の瞳は冷たい。もし師匠が死ねば、黄泉まで追ってきて八つ裂きにでもすると告げているようだ。師匠はそんな僧正坊に臆することなく、頷いた。
「では、此処に残っている数名のおぬしの同胞ごと、山に送ってやろう。後でわし達も来る。礼に酒を用意しておけ」
「はっ。有り難き幸せ」
師匠が頭を下げる。僧正坊はそれを見て頷くと、今度は私に近づいた。私の肩に触れると、辛うじて聞こえるか聞こえないかの声で囁く。
「月夜よ。風琴は強がる癖がある。全力で守ってやれ」
「勿論にございます」
私がどれだけお役に立てるか分からない。だが、私は既に剣を血で濡らしたのだ。もう、守られるだけの子供ではない。僧正坊は目を細めると、私の肩を軽く叩いた。
そして私は待機していた同胞達を呼び集めた。召集は瞬く間に終わり、1ヶ所に集まる。
「ではいくぞ。変なところに吹き飛ばされぬようにな」
僧正坊が団扇を一度扇いだ途端、突如巨大な竜巻が起こる。身体が浮き上がったと思った途端、里の方へと飛ばされた。翼を広げてはいるが、はためかせる必要が無いほど、身体が持ち上げられている。目が回ることもなく、意外と快適だ。
「月夜、少し妖気をくれ。丹田から妖気を引き出すのに必要なのだ」
丹田を活性化させるのではなく、引き出すと。もしや妖気の前借りをするつもりか。万が一、師匠の寿命が削れてしまったらどうするつもりなのだ。月夜が答えずにいると、くしゃりと頭を撫でられた。
「大丈夫だ。お前が心配しているようなことはない。数ヶ月あまり動けない程度で済む」
それでも十分私には辛いのだが。しかし、このままでは師匠が闘う前になぶり殺されてしまう。月夜は仕方なく、風琴の手を掴んだ。触れ合っている箇所から、じんわりと月夜の妖気が流れていく。
「此度はお前に背中を預けたい。その覚悟は出来ているか」
今まで東雲殿に預けていた背中を、私に任せてくださるのか。嬉しさと、私に出来るのかという不安がある。それでも、やるしかないのだ。貴方が私の生きる理由なのだから。
「はい。出来ております」
互いの指を強く絡め合う。ほどけることがないように。離れることがないように。言葉を交わさなくても、互いの今の願いが同じなのだと分かっていた。
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