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終幕
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師弟ともにかけがえのない時を歩もう
それから半年後、天狗の里で祝言が行われた。主役は勿論長である千風と小雪。風琴達もその席に呼ばれることとなった。もう殆んど日常生活に支障はないとはいえ、長時間の飛行は難しい。それ故、途中まで月夜が風琴を胸の前で運んだ。
皆、久しぶりの祝い事だと飲めや歌えの大騒ぎ。月夜は隣に座る風琴をちらちらと見ながら、宴の御馳走を食べていた。普段、静かな場所で暮らしているせいか、このような賑やかな席は落ち着かない。師匠は騒がず静かに酒を飲んでいた。
「師匠、奥方殿の花嫁衣装綺麗ですね」
「そうだな」
師匠はさして興味がないと言いたげに頷く。そんな師匠に少しむっとしつつも、花嫁の方を観察することにした。花嫁は天狗面ではなく、淡い桃色の薄絹で顔を隠している。衣装は華美すぎず華やかな刺繍が施されていた。きっと師匠にも似合うだろうな。一瞬そんなことを考えてしまい、頭を振った。
「天狗の婚礼の衣装には、裏地に互いの羽根を縫い付けてある。比翼連理の証であるとな」
「比翼連理ですか。師匠……その……師弟でも可能ですか」
師匠に花嫁衣装を着させるのは無理があるだろう。だけども、羽根を縫い付けることぐらいはさせてほしい。だがあっさり一蹴されてしまった。
「たわけ。比翼であると言うには百年早い。まだまだ修行に励め」
百年か。人にとっては長いが、天狗ならば短いのだろうか。その頃、私達は平穏な日常を過ごせているかは分からない。せめて、貴方を守れるようにはなりたい
「はい、精進いたします。ですので師匠、百年後には認めてくださいね」
「お前というやつは……。まあ良い。手合わせで1本くらい取れたら比翼連理だと認めてやろう」
師匠は酒を飲みながら笑みを浮かべる。その笑みが優しくて、見ていると私の胸がほんのりと温かくなった。
祝言の宴が終わったのは夜遅く。流石に夜に飛ぶのは危険ということで、長の屋敷に泊まることにした。私達が案内されたのは、かつて師匠が暮らしていた一室。古くも上品な調度品が置かれている。
「此処が師匠が生活しておられた部屋なのですね」
「ああ……。案外変わっておらぬな」
面を取って部屋を眺める師匠は、どこか寂しげな目をしている。師匠にとって、此処は懐かしくも辛い場所だろう。私が師匠の身体を抱き締めようとした時、外で気配がした。
「兄上、少しお話がございます」
「長よ、今夜は奥方との大事なときでしょう? よろしいのですか?」
「大丈夫です。少しだけですから。それに小雪にも了承を得ました」
一体何なのだろうか。折角祝い事があったのだ。悪い報せでないと良いが。
「長殿、私も同席してよろしいでしょうか」
いつもならば、師匠と長の話し合いには参加しないことが暗黙の了解だ。しかし、今はそのようにさせてはいけない気がする。
師匠は驚いた顔をした。反対されるかと身構えたが、師匠は私の肩を引き寄せる。
「月夜が同席するとあらば、話を伺いましょう」
師匠がそのようなことを仰ってくださるとは。比翼でなくとも、蚊帳の外の扱いされずに同席できるだけで、目頭が熱くなった。
長殿は部屋に入るなり、面を外して頭を下げた。
「兄上、今まで申し訳ございませんでした。父上だけでなく、兄上のお母上までもを死なせてしまった挙げ句、兄上を隠居の身に追いやってしまって」
敵の話によると、長は下手人の血を引いているだけであって、直接手を汚したわけではない。それでも、己の責任と感じてしまっているのだろう。長は深々と頭を下げたままである。
「どうか顔を上げられよ。貴方のせいではないし、貴方と義母上を恨んではいない」
武家ならば、親の罪は子の罪となりかねないが、天狗の場合はそうならないのか。それとも、師匠の心が広いのか。どちらにせよ、師匠は本当に恨んでおられない。だが、長殿は顔をお上げにならなかった。
「いいえ。私に上げる権利はございませぬ。兄上や父を傷つけて、就いた長の座に何の価値がありましょうや。兄上がお望みとあらば、長の座を兄上に返上したいと思っております。私のような何の取り柄もない者は、長の座には相応しくないですから」
「えっ!?」
長の言葉に、思わずすっとんきょうな声を出してしまった。師匠が天狗の頭領となれるのであれば、お祝いせねばならない。
だがそれでは、せっかくの二人きりの生活が無くなるではないか。時折、若衆の話し合いに参加するだけでも、師匠と会えない時間が寂しいのに。師匠をじっと見ていると、師匠が私の肩を引き寄せる。
「案ずるな。我の考えはお前と同じだ」
私の耳元でそう囁くと、長の方に向き直った。
「今更、長の座など要らぬ。それに、皆はお前が長だと認めているぞ。この間は、突然の襲撃にも慌てず、皆を取り纏めたそうではないか。満身創痍になりながらも、里の為を思うお前は長の器に相応しい。だから、どうか己を卑下しないでくれ」
「兄上……」
はらはらと涙を流す長の顔を、師匠はそっと拭う。そんな師匠の顔は、弟を大切に思う兄そのものであった。
「償いがしたいのならば、これからも長の座を全うするのがお前の仕事だ。我はこの生活で十分満足している。自慢の弟子がいるからな。お前が悩んでいる時は、いつでも相談に乗ってやるから。長として生きろ」
師匠に自慢の弟子と言われたことで、思わずにやけそうになるのを必死に堪えつつ、嗚咽する長殿の背を擦る。この様子だと、泣き止むまでに時間がかかりそうだ。
「長殿、私が師匠をお守りします。ですから、今後も長として里を守ってください。師匠ほどはお力になれませぬが、私も貴方をお支えしますから」
「ありがとうございます……。兄上……月夜殿……」
泣き崩れた長は、私とさほど年が変わらない青年に見える。ああ……この方も師匠のように辛い思いや重圧を必死に堪えてこられたのか。やはり、師匠の兄弟なのだな。長を宥めながら、しみじみと思い耽ってしまった。
翌日、長の屋敷で朝食を頂いてから帰ることになった。宴以外で長とその奥方殿と共に食事をするのは栄誉なことらしいので、粗相が無いように注意を払いながら食べる。
奥方殿と違って、長殿が少し疲れている様子なのは嫌というほど泣いたせいなのか。美味な朝食を頂いた後、帰る準備をする。その間、師匠と長殿は何やら談笑を交わしていた。私は四半刻も経たない内に帰る準備を終えて、師匠の隣に並ぶ。
「ではもう帰るが……長殿よ、衿元に注意してください。夫婦で仲睦まじいのはよろしいことですが」
師匠が長殿の耳元で言ったのが、辛うじて聞こえた。途端に長殿の耳元が真っ赤になる。
「あ、ありがとうございます、兄上。どうかお元気で」
そう言って、いそいそと衿元を整える。まさか……師匠と同じく責められるのがお好き……いや、止めておこう。私は聞こえなかった振りをした。
「長殿、婚礼にお招きくださり、ありがとうございました。いつか、此方にも遊びにいらっしゃってくださいね」
「ええ、月夜殿もどうかお元気で。今度来る日は、土産などを持参いたしますよ」
長殿に松風殿と奥方殿に見送られながら空を飛ぶ。皆の姿が見えなくなると、師匠は私に声を掛けた。
「月夜、もう抱えてもらっても良いか」
「勿論。その前に、師匠の翼に触らせて頂いても良いですか」
「ん? ああ、いいが。いつも触っているだろうに」
師匠は苦笑しながら振り向く。私の腰を抱き締めると、翼を動かすのを止めた。艶々な羽や黒くて大きい翼は誰にも負けない程、美しくて力強い。
「やはり、師匠の翼は大きくて、触り心地が良いですね。あの時と変わらない」
「そうか? 我にしてみれば、お前はあの頃とは随分変わったぞ」
師匠は面を取ると、優しい表情で笑った。きっとあの頃も、面の下でそのような笑みを浮かべていたのだろう。出会った時は、貴方の腕の中で月を見た。今は、貴方を抱き締めて青空を見ている。貴方のぬくもりは今も昔も変わらない。大きな翼に守られていたが、今度は私が貴方を守れるように誰よりも強くなりたい。
「師匠、もう翼を仕舞って大丈夫ですよ」
師匠が翼を仕舞ったのを確認すると、師匠の身体を胸の前で抱き抱える。不意に師匠は私の面を外すと、私の唇に生温かいものが触れた。
「月夜、お前と巡り会えて良かったと思っている」
「私もです。師匠、誰よりも貴方を愛しております」
再び口づけを交わす。空には2人の他には誰もいない。2人は幸せに満ち足りた顔で笑い合うと、長年共に過ごした庵へと戻った。
《終》
それから半年後、天狗の里で祝言が行われた。主役は勿論長である千風と小雪。風琴達もその席に呼ばれることとなった。もう殆んど日常生活に支障はないとはいえ、長時間の飛行は難しい。それ故、途中まで月夜が風琴を胸の前で運んだ。
皆、久しぶりの祝い事だと飲めや歌えの大騒ぎ。月夜は隣に座る風琴をちらちらと見ながら、宴の御馳走を食べていた。普段、静かな場所で暮らしているせいか、このような賑やかな席は落ち着かない。師匠は騒がず静かに酒を飲んでいた。
「師匠、奥方殿の花嫁衣装綺麗ですね」
「そうだな」
師匠はさして興味がないと言いたげに頷く。そんな師匠に少しむっとしつつも、花嫁の方を観察することにした。花嫁は天狗面ではなく、淡い桃色の薄絹で顔を隠している。衣装は華美すぎず華やかな刺繍が施されていた。きっと師匠にも似合うだろうな。一瞬そんなことを考えてしまい、頭を振った。
「天狗の婚礼の衣装には、裏地に互いの羽根を縫い付けてある。比翼連理の証であるとな」
「比翼連理ですか。師匠……その……師弟でも可能ですか」
師匠に花嫁衣装を着させるのは無理があるだろう。だけども、羽根を縫い付けることぐらいはさせてほしい。だがあっさり一蹴されてしまった。
「たわけ。比翼であると言うには百年早い。まだまだ修行に励め」
百年か。人にとっては長いが、天狗ならば短いのだろうか。その頃、私達は平穏な日常を過ごせているかは分からない。せめて、貴方を守れるようにはなりたい
「はい、精進いたします。ですので師匠、百年後には認めてくださいね」
「お前というやつは……。まあ良い。手合わせで1本くらい取れたら比翼連理だと認めてやろう」
師匠は酒を飲みながら笑みを浮かべる。その笑みが優しくて、見ていると私の胸がほんのりと温かくなった。
祝言の宴が終わったのは夜遅く。流石に夜に飛ぶのは危険ということで、長の屋敷に泊まることにした。私達が案内されたのは、かつて師匠が暮らしていた一室。古くも上品な調度品が置かれている。
「此処が師匠が生活しておられた部屋なのですね」
「ああ……。案外変わっておらぬな」
面を取って部屋を眺める師匠は、どこか寂しげな目をしている。師匠にとって、此処は懐かしくも辛い場所だろう。私が師匠の身体を抱き締めようとした時、外で気配がした。
「兄上、少しお話がございます」
「長よ、今夜は奥方との大事なときでしょう? よろしいのですか?」
「大丈夫です。少しだけですから。それに小雪にも了承を得ました」
一体何なのだろうか。折角祝い事があったのだ。悪い報せでないと良いが。
「長殿、私も同席してよろしいでしょうか」
いつもならば、師匠と長の話し合いには参加しないことが暗黙の了解だ。しかし、今はそのようにさせてはいけない気がする。
師匠は驚いた顔をした。反対されるかと身構えたが、師匠は私の肩を引き寄せる。
「月夜が同席するとあらば、話を伺いましょう」
師匠がそのようなことを仰ってくださるとは。比翼でなくとも、蚊帳の外の扱いされずに同席できるだけで、目頭が熱くなった。
長殿は部屋に入るなり、面を外して頭を下げた。
「兄上、今まで申し訳ございませんでした。父上だけでなく、兄上のお母上までもを死なせてしまった挙げ句、兄上を隠居の身に追いやってしまって」
敵の話によると、長は下手人の血を引いているだけであって、直接手を汚したわけではない。それでも、己の責任と感じてしまっているのだろう。長は深々と頭を下げたままである。
「どうか顔を上げられよ。貴方のせいではないし、貴方と義母上を恨んではいない」
武家ならば、親の罪は子の罪となりかねないが、天狗の場合はそうならないのか。それとも、師匠の心が広いのか。どちらにせよ、師匠は本当に恨んでおられない。だが、長殿は顔をお上げにならなかった。
「いいえ。私に上げる権利はございませぬ。兄上や父を傷つけて、就いた長の座に何の価値がありましょうや。兄上がお望みとあらば、長の座を兄上に返上したいと思っております。私のような何の取り柄もない者は、長の座には相応しくないですから」
「えっ!?」
長の言葉に、思わずすっとんきょうな声を出してしまった。師匠が天狗の頭領となれるのであれば、お祝いせねばならない。
だがそれでは、せっかくの二人きりの生活が無くなるではないか。時折、若衆の話し合いに参加するだけでも、師匠と会えない時間が寂しいのに。師匠をじっと見ていると、師匠が私の肩を引き寄せる。
「案ずるな。我の考えはお前と同じだ」
私の耳元でそう囁くと、長の方に向き直った。
「今更、長の座など要らぬ。それに、皆はお前が長だと認めているぞ。この間は、突然の襲撃にも慌てず、皆を取り纏めたそうではないか。満身創痍になりながらも、里の為を思うお前は長の器に相応しい。だから、どうか己を卑下しないでくれ」
「兄上……」
はらはらと涙を流す長の顔を、師匠はそっと拭う。そんな師匠の顔は、弟を大切に思う兄そのものであった。
「償いがしたいのならば、これからも長の座を全うするのがお前の仕事だ。我はこの生活で十分満足している。自慢の弟子がいるからな。お前が悩んでいる時は、いつでも相談に乗ってやるから。長として生きろ」
師匠に自慢の弟子と言われたことで、思わずにやけそうになるのを必死に堪えつつ、嗚咽する長殿の背を擦る。この様子だと、泣き止むまでに時間がかかりそうだ。
「長殿、私が師匠をお守りします。ですから、今後も長として里を守ってください。師匠ほどはお力になれませぬが、私も貴方をお支えしますから」
「ありがとうございます……。兄上……月夜殿……」
泣き崩れた長は、私とさほど年が変わらない青年に見える。ああ……この方も師匠のように辛い思いや重圧を必死に堪えてこられたのか。やはり、師匠の兄弟なのだな。長を宥めながら、しみじみと思い耽ってしまった。
翌日、長の屋敷で朝食を頂いてから帰ることになった。宴以外で長とその奥方殿と共に食事をするのは栄誉なことらしいので、粗相が無いように注意を払いながら食べる。
奥方殿と違って、長殿が少し疲れている様子なのは嫌というほど泣いたせいなのか。美味な朝食を頂いた後、帰る準備をする。その間、師匠と長殿は何やら談笑を交わしていた。私は四半刻も経たない内に帰る準備を終えて、師匠の隣に並ぶ。
「ではもう帰るが……長殿よ、衿元に注意してください。夫婦で仲睦まじいのはよろしいことですが」
師匠が長殿の耳元で言ったのが、辛うじて聞こえた。途端に長殿の耳元が真っ赤になる。
「あ、ありがとうございます、兄上。どうかお元気で」
そう言って、いそいそと衿元を整える。まさか……師匠と同じく責められるのがお好き……いや、止めておこう。私は聞こえなかった振りをした。
「長殿、婚礼にお招きくださり、ありがとうございました。いつか、此方にも遊びにいらっしゃってくださいね」
「ええ、月夜殿もどうかお元気で。今度来る日は、土産などを持参いたしますよ」
長殿に松風殿と奥方殿に見送られながら空を飛ぶ。皆の姿が見えなくなると、師匠は私に声を掛けた。
「月夜、もう抱えてもらっても良いか」
「勿論。その前に、師匠の翼に触らせて頂いても良いですか」
「ん? ああ、いいが。いつも触っているだろうに」
師匠は苦笑しながら振り向く。私の腰を抱き締めると、翼を動かすのを止めた。艶々な羽や黒くて大きい翼は誰にも負けない程、美しくて力強い。
「やはり、師匠の翼は大きくて、触り心地が良いですね。あの時と変わらない」
「そうか? 我にしてみれば、お前はあの頃とは随分変わったぞ」
師匠は面を取ると、優しい表情で笑った。きっとあの頃も、面の下でそのような笑みを浮かべていたのだろう。出会った時は、貴方の腕の中で月を見た。今は、貴方を抱き締めて青空を見ている。貴方のぬくもりは今も昔も変わらない。大きな翼に守られていたが、今度は私が貴方を守れるように誰よりも強くなりたい。
「師匠、もう翼を仕舞って大丈夫ですよ」
師匠が翼を仕舞ったのを確認すると、師匠の身体を胸の前で抱き抱える。不意に師匠は私の面を外すと、私の唇に生温かいものが触れた。
「月夜、お前と巡り会えて良かったと思っている」
「私もです。師匠、誰よりも貴方を愛しております」
再び口づけを交わす。空には2人の他には誰もいない。2人は幸せに満ち足りた顔で笑い合うと、長年共に過ごした庵へと戻った。
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