願掛けでどうにかなるものならば、とっくに好きだと言われている。

わをん

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あれ。その、末路。

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 僕にとっての、理想の顔だから。顔で選ぶとか、ナシですか?

 必死に演技した。セックスに慣れたテイを装った。

「ね、ほら、気持ちいいでしょう? 僕を女の代わりにしてください……っ」
「神林君はどう見たって男だろ」

 首の後ろから、吐息とともに投げつけられるように言われた。更に激しくなった。

「……好きです、好きです、刑部さん。僕を刑部さんのものにしてください」

 陰茎を掴まれて乱暴に、けれども絶妙な力加減でしごかれた。長い指に絡みつくように握られて包まれる。

 刑部さんにこの僕が、ソレをされているという事実は否定しようがない。

 刑部さんの腰の動きがより一層激しくなった。肌がぶつかり合う音、湧き立つ独特な匂い、視覚、全てが自分にとって初体験だ。初めての人が刑部さんだなんて、これを運命と言わずして何と言うんだ。

 僕の初恋はこの人だったんだ。

 僕にシロツメクサの指輪をくれたことを完全に忘れている、この人。

「あっ、……出る、出ちゃうからっ、あの、部屋を汚しちゃうからっ、やめて、待って……っ」
「出しなよ、ほら」

 濡れた粘膜を擦る音の中で前立腺を刺激されれば、絶頂はすぐそこだ。
 
 再び体を引っ張られて、刑部さんの腰の上に正面で座らされた。上のシャツを脱ごうとしたら止められた。刑部さんは息を乱しながら僕を睨んできた。
 
 刑部さんの顔が近づいてきた。期待はあったが念願が叶った。

 そのとき、やっと初めてのキスができた。それによって完全に制御を失い、刑部さんのシャツに白濁した液体をぶちまけたのだが、そんなことで止まるような人でなかった。

 無遠慮に舌が入ってきて口内を蹂躙され、求められていると感じたときは、さっきのイラマで失敗したのが帳消しになったような気がして、嬉しくて涙が出そうになった。

「……んっ、んんっ」

 また、この度、刑部さんはキスが超絶上手いということがわかった。息継ぎのために唇が離れそうになるのを急いで取り戻すというのを何度も繰り返した。互いの呼吸を合わせるように。

 子どもの頃に出会った僕たちであるが、大人になったらこうなった。長い時間をかけて。

 ここに来て、僕の心は完全に溶解した。

 刑部さんが体位を変える。そのとき、中に入っていた刑部さんのものがムクムクと大きくなるのを感じた。接合部分を見ることはできない。どれだけ拡張されてしまったのだろう。下から内臓を押されて、ヴッと変な声が出るのを抑えていたら、

「声を、我慢しないで」

 低めの声を耳元で囁かれた。

 こんなときの声までいい……。

「中に出して、いい……?」
 



 終わったあと、刑部さんはすぐに僕から離れた。

「これで、思い出になれた?」

 なれました。これは餞別ですか? 涙を堪えながら黙って頷くと、

「出てって」

 そう言われた。言われるがまま、従った。

 公道では泣かずに我慢したが、ホテルで号泣した。今日が金曜日で良かった。

 やっぱり、僕じゃダメだったんだ。

 あれきりで、あれ以来だった。
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