異世界転移して獣人王子様に見初められた俺がオメガになって世界を救う、かもしれない!?

わをん

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021-② 真剣勝負!

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 俺は隙をついてライオンとクマの間をすり抜け、教会内部に逃げ込んだ。

 広い聖堂の中には石壁の敷居がある。その一つ一つは礼拝堂になっている。

 まるで迷路のようだ。これで奴らの視界を遮ることができそうだ。

 壁掛けランプが点灯している。俺は奥に進んだ。

 剣を交える音がする。

「ウィール!!! いるのか!?」

 教会内は広く、俺の声は叫んでも叫んでも吸収されてしまう。

「……いるんだろ! くっそ!! あれからメチャクチャ大変だったんだからな!!こんなところで何して……」

 憤慨する俺の眼前に現れたのは——。

「!?」
 
 俺はその彫像を見上げて絶句した。

「ノエル、様……」

 なんだこれ……。頭飾りがドームの天井に届くほどに、デカい。

 これを祀るためのドーム……。

 俺は立ち止まり、女の彫像を仰ぎ見た。

 何故か追手は来ない。
 エーファは逃げ切ったのか。ジークは何をしてるんだ。もう何もわからない。

 長椅子が等間隔に置かれていたが、木製ゆえにほぼ朽ちていた。その影にいたのは——。

「……アンバー!?」
「……カイ」
「アンバー……、会えて良かった! 捕まったって聞いてたけど? こんなところで何してるんだ?」
「カイこそ。……良かった、無事で。でも、何でここに……。本物?」
「アンバーこそ……、折角のドレスが……」

 アンバーは俺の頬に手を伸ばして、優しく微笑む。頬に感じるヒト肌。ようやく安心できるヒトに会えた……。

 アンバーのドレスはところどころ千切れてボロボロだった。腹を押さえながら彫像の台座を背凭れにして座っている。

「ウィルはどこに……」

 と言いかけて、言い淀んだ俺。赤紫のドレスのためにしばらく気づかなかったが、アンバーの腹のあたりが血に染まっている……。

「血。……血! アンバー、それ! 血! 誰にいつどこでヤられたんだ!」
「落ち着いて。大丈夫。止血はした」
「止まってるようには見えないが!?」
「うるさい。まだ敵はいる。警戒しろ」
「全然大丈夫じゃないだろ! 手当しないと! 安静にしてないと!」

 偵察隊はここには来ていないのか。
 仲間は何をしているんだ! どうして俺はこんなときに何もできないんだ!
 
「……っ」

 俺は急いでコートを脱いた。そのコートをアンバーの肩にかける。

「痛くないか?」
「カイ。私のことはいい。私の命はカイにやる。振り返るな。私は……、どうにでも、なる……」

 突然、アンバーがおかしなことを言い出した。

「だから、ウィルを助けて。早く行って」
「助けてって。ウィルが危ないってこと!? ……何言ってんの。だって、あいつ強いじゃん……」

 アンバーが俺の後ろを指差した。

「危ない、カイ!」

 アンバーが叫ぶのと同時だった。俺はアンバーを抱えて床に這うようにして背後からの攻撃を避けた。

 カンッと石壁を剣先が突く音を聞いた。ホントに危なかった!

「怪我してるのにごめん!」

 非常事態とは言え、怪我人を押し潰してしまった!

「いい……、大丈夫」

 アンバーを抱き留めたまま、バッと振り返る。そこには片手で刀を振り落としたネズミが立っていた。

 片腕が、ない戦士。なんだか……、フラフラとしてて幽霊みたいだな……。

「………」

 ネズミが俺の方を見て、聞いたことのない言葉で苦しげに話しかけてくる。

 俺は戸惑いを隠せない。ネズミからは急激に攻撃性が削がれたようだが、友好的な話はできそうにない。言葉が通じない以上に、これまでの小競り合いが尾を引く……。

 どこからともなくゾンビのように、他のネズミたちも次々と姿を現す。

 俺たちは取り囲まれた。

 俺はアンバーの前に出る。この獣人世界でアンバーは珍しく俺より小柄なんだよ。男の俺が守らなきゃ。

 身体能力の高いネズミたちが俺に飛びかかってきたら話はそこで終了だ。

 体が震える。

「………」

 ネズミたちが知らない言葉で俺に向かって問いかけてくる。

 そして、おのおの剣先を下ろし始めた。だが、信用はできない。

「……アンバー。こいつらは何を言ってるんだ」
「わからない」

 そこでネズミが一人、唐突にバタンと倒れた。脱力してその場に崩れ落ちるようにだ。するとまた一人、また一人、ドミノ倒しのようにパタン、パタンと倒れていく。

 床の上で身を縮めるように悶え始めるネズミたちを見て、助かったぁ、なんて安心できるわけがない。

「えっ、何……」

 気づいたらアンバーまでもが、自分の体を抱えて倒れ込むように蹲っている。

「どうした、アンバー! 傷が痛むのか?」

 傷だらけのアンバーが息も絶え絶えで苦しんでいる。どうしよう! 何が起こってるんだ!? 全員倒れて無事なの俺だけ!? もおぉ、早く来てくれよ! ジーク。

「ウィル……」

 アンバーが空中に血塗れの手を伸ばす。

 俺はその手が翳す方角を見て、アンバーが言わんとしていることをやっと理解した。

「あ……」

 そうか。あの重量級サベラどもがこの中に入って来なかった理由。

 最大出力中の絶対的最強アルファがいるから聖堂内に入って来れなかったんだ。男オメガの俺にはプレッシャーが効かない。

 つまり、ここにウィルがいる……。


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