アラサー魔法少女ミラクル☆ルチカ!!~マスコットキャラの愛が重くて面倒臭いと思っているけど本人には内緒だよ~

空木切

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日常編

2 仲間の魔法少女探しは?

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 ――約一年前。

 黒い兎が落ちている。陽波は立ち止まった。黒い兎が道の端に落ちているというのに、誰も見向きもしないで通り過ぎていく。

 陽波も通り過ぎようとして、しかしあまりに可哀想だったのでつい近寄ってしまった。黒い兎といっても、ぬいぐるみだ。生きた兎ならともかく、ぬいぐるみが落ちているくらいでは誰も気にも留めないかもしれない。陽波はしゃがんで、黒兎のぬいぐるみを拾い上げた。

「重い……」

 ぬいぐるみにしてはずっしりしている。生き物のような重みだ。しかしどう見ても現実の兎からは程遠いファンシーな目と手足である。それと長い耳。

「ま、魔法少女になってください!! お願いします!」

 ぬいぐるみが突然喋った。陽波が目を丸くしていると、ぬいぐるみはぎゅっと目を閉じてぐったりした。陽波は唖然とぬいぐるみを見つめ呟く。

「最近の玩具、すげー……」

 こんなにリアルに動くんだ。驚きのあまり、陽波はぬいぐるみを家に持ち帰った。玩具であれ声を聞いた以上、その場に置いて帰るのは気が引けたのだ。


 家に持ち帰り、汚れているので洗おうとした。

「待てよ。でも電池式だったら洗うとまずいな」

 どこかに洗う時の注意書きがあるだろうか、陽波は黒兎の体をくまなく点検した。すると、

「わぁーっ!! やめて! やめてください!」

 兎はじたばたと手足を振った。陽波は感心する。

「え、すごっ! 玩具の進化が著しい」
「玩具じゃない! 俺は玩具じゃない!」
「分かった分かった」

 最近の玩具、本当にすごいなあ。陽波はスイッチを探そうとして、手を叩かれた。兎を落としてしまう。
 拾おうとした手が触ったのは、青年の頬だった。黒い兎耳が生えた青年が床に横たわり、陽波を懇願するように見上げていた。

「……え?」
「あの、俺、今すごく困ってて、助けてほしくて、君に魔法少女に……」
「ぎゃあーっ!?」

 陽波は咄嗟に平手打ちを食らわせていた。



**



 黒い兎、アストは惑星アニムスからやってきた。平行世界にある惑星だという。この世界でいう地球と同じ存在で、地球の裏にアニムスが存在している。

 アニムスは、生物の感情が具現化している惑星だ。ある時を境に地球から多くの負の感情が流れ込むようになり、惑星の環境が悪くなり始めた。それを何とかする為に地球に派遣されてきたのがギオンとティグロだ。

 しかし彼らは地球に溢れる負の感情を具現化させ、怪物を作ると、地球で大暴れするようになった。このままでは地球が危ないと、止める為にやって来たのがアストだ。しかしアストだけの力では怪物を浄化することが出来ない。地球の少女の力を借りなくては、ということで誕生したのが魔法少女だ。



「ってことなんだってさ。分かった?」
「まあ、はい」
「ごめんねー変なことに巻き込んで。私らも少女じゃないけどさ、まあ気楽にやってこうよ」


 陽波の目の前には二十代の女性が二人いた。魔法少女の仲間だという。元々三人でやっていたのが、一人が結婚を機に引退してしまい、アストは代わりの魔法少女を探して道で行き倒れてしまった。それを拾ったのが陽波だったというわけだ。

 長髪の女性、ミラクル☆ミスティだという女性は溜め息を零した。

「そもそもミラクル☆アイスが辞めたのが悪い。勝手にいきなり辞めますってさ、アストもオッケーしちゃうし、それがおかしい」
「アストももっと強気で言った方が良かったんじゃないの?」
「はい。すみません……」

 アストは青年の姿で正座をしている。どうやらこの魔法少女二人の尻に敷かれているようだ。陽波は憐れむ気持ちでアストを見ていた。

 ミラクル☆ヒールだという短髪の女性が足の爪を切りながら陽波に言った。

「なんかね、元々は中学生くらいの女の子が魔法少女やってたらしいんだけど、あのくらいの歳って色々ナイーブじゃん? 受験とかも重なってそれどころじゃなくなって辞めて、代わりに私らに声がかかったわけ」
「社会人だって結構忙しいんだけどね……。三人いれば合体技が使えて楽だから、陽波さんが手伝ってくれると助かるよ」

 陽波はファンタジーと現実の入り混じる話を聞いて、混乱しながらひたすら頷き続けた。

 アストがひたすら頭を下げて申し訳なさそうにしていたのが痛々しくて、陽波は断れないままに魔法少女をやることになってしまったのだった。
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