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第一章
始まりの刻④
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「聞いたぞサキト、あの実戦機もどきで五体墜としたらしいな」
長身でサキトと同じく唐揚げ定食を頬張る男―――シンカーは箸を片手に言った。
満員御礼の食堂の中、危うく立ち食いという羽目になりかけて、そこにたまたま居合わせたシンカーとヒタキ2人とサキトは同席で昼食を取ることになった。
三人がちょうど座れる円形のテーブル席で、拳骨を食らってダウンしているヒタキを除いて、シンカーとサキトは食事をしている。
このメトロポリス13番島ではかつての極東方面と呼ばれる地域から避難してきた難民がほとんどを占めており、二百年経った今でも人口のほとんどが極東出身の人の血が混じっていて、その文化もそのまま受け継がれている。そのため食事のメニューもその影響を受けており、おかずと白米と汁物などが一緒になった定食と名前のつく献立が多い。
「あれでもれっきとした実戦機なんだけどな、一応」
シンカーと同じようにサキトも唐揚げを食しつつ言った。
すると、まあそうだなとシンカーは食事を続けながら、冷静に言う。
「どこの”島”にもAFVが足りてなかった時、練習機[トリニティ]を実戦でも使えるように申し分程度の装甲をのっけて、有り余った推進機を装備しただけの機体で正式名称[トリニティMK-2]、お前が使ってるのはリファイン型だったはずだが、整備がくそ楽なぶん本来の練習機の[トリニティ]に生産取られて、慢性的なパーツ不足に襲われているっていう不遇な機体ではあるがな」
「うっ」
その通りだった。
トリニティが紙装甲で武装が少ないというのはもはや周知の事実だが、問題はそこだけではなくそのパーツの入手がやや困難であるというところにもあった。
機甲士の育成が急務とされているこの現状では、練習機としてのトリニティはかなり重宝されていた。整備が簡単で、ほかの機体に比べて廉価、そして操縦面でも扱いやすいことはかなりの良点であり、単に機甲士の育成だけでなく、整備のしやすさは整備士の育成の初期段階に使われることもある。
結果的にニーズの高い練習機の方にパーツが回され、圧倒的に不評のMK-2にはあまりパーツが回ってこないという欠点があった。その被弾時のダメージの大きさから機体自体は安いものの整備コストは高くつくということもある。
サキトは唸ることしかできなくなった。すると、シンカーの拳骨を食らって、机に突っ伏していたヒタキが顔を上げた。
「速度、加速は現存する機体の中でもぴかいちだけど、紙装甲が評判で通常型のレールガンですぐおしゃかになるからほとんど使われなくなったんでしょ、あれ?」
さらに、
「おまけにその速度も通常の動力源を使った機体だけの中に限った話で、シンカーと私が乗るような[D2リアクター]搭載の固有機には及ばないじゃない、あっちは武装をいっぱいつけてるのに。おまけに、うちらの機体に比べたら反応速度遅いし」
「……」
サキトは何も言えなくなった。
確かに、サキトの駆る[トリニティ]はトップクラスのスピードを誇る。加速も早く、瞬間最高スピードは他の機体の追随を許さないほどだ。しかし、[D2リアクター]と呼ばれる主機を搭載する固有機と呼ばれるエース級のみが操縦を許された機体と比較すると話はまた違ってくる。
[D2リアクター]は今この世界に存在する主機の中で最も桁違いなエネルギー、[D2粒子]を生み出す、最強の動力源だ。
生産は連合の首都として運用されている[第一航空機動都市]、つまり[キャピタル]のみが管理している。
生産元はどこかしらの工業都市[インダストリアル]だというのがもっぱらの噂だが、その正体、生産場所、内部機構の全てが最高機密であり、完全なブラックボックスとして扱われている。[D2リアクター]の勝手な分解、調査は軍規によって固く禁じられていて、過去に解析を試みた軍の整備兵はどこかに連行されたまま、機密保持を理由に戻ってくることは無かった。
連合の強固な防衛によってその存在が守られている[D2リアクター]ではあるが、それに見合う以上の性能なのだった。実際、現存する機動都市の主機は大型の[D2リアクター]たった三基で、それでも都市部の電力、推進機、兵器群の出力を賄っている。
そして、[D2粒子]は思考制御において、凄まじいアドバンテージを持っていた。
サキトの乗るような通常機の場合、思考操縦する際に頭部に装着するヘッドセットから専用のモジュールが脳波を読み取り、それを情報として変換してから実際の機体の動作に反映するという物なのだが、固有機は違う。
主機によって生み出された[D2粒子]には思考伝達をそのままユニットに伝えることができるという、オカルティックな性質を持っているそうだ。
とはいえ解析を禁じられているためはっきりとしたことは、サキト達には分からないし、知ることもできない。
ただ、
「俺はシンカーほど腕も経験も戦果もないからな、むしろ同期の中でシンカーは一番ずば抜けすぎてる、数多のエース級の機甲士の中で弱冠20歳で固有機を勝ち取る奴はそうそういないんだよ。調律師が足りてないこのご時世ではね」
[D2リアクター]の最大の特徴は、調律師と呼ばれる専用の使い手がいないと扱うことができないのだった。
「ヒタキは調律師だから分かると思うけど、D2リアクターの扱いは難しい。あの主機はその時その時に綿密な調整を行わないとすぐ暴走するし、出力が高すぎて機甲士のみだったら正確な操縦ができない。おまけにその調整もあの粒子と謎の親和性を持つっていう”島”に十人ちょいいるかいないかの才能のある調律師の思考による制御でしか行えないんだから調律師の数が少なすぎる。だから何の戦果も腕もない俺には配備されることすらないんだよ」
「ほえー、そうだったんだー」
目の前の小柄な金髪の調律師、ヒタキは目を真ん丸にして感嘆の言葉を漏らした。
固有機の絶対数ははるかに少ない。機体を操縦する機甲士と[D2リアクター]を扱う調律師による、必然的に二名の操縦が必要な機体は、その並外れた性能をもつといえども年間に何機かは撃墜され、そのたびに貴重な調律師は失われる。
エースパイロットは戦場の中でたびたび生み出されるが、完全に才能によってえらばれるとされる調律師は、リアクターの扱いなどをずっと学び、感覚を身に着けるのに軽く十年以上はかかるそうだ。その才能は貴重でかつ先天性であるがゆえにそもそも人数が少ない。さらに素質があったとしても、調律師になることができないパターンが少なからず存在するようで、固有機の担い手になるには相当の戦果を挙げなければ選ばれない。
「シンカーってそんなすごかったんだ、ちょっと操縦が上手い短気な奴くらいにしか思ってなかったよ」
頭の痛みが引いたのか、やっと昼食に手を付け始めたヒタキは挑発的な目でシンカーを見てにやにやと笑う。
「いつももやかましいくせに、ミーティング中も戦闘中もやかましくて、すぐにフラフラどっか行って、招集にも応じないお前が天賦の才能を持った超人っていうのにも驚きだけどな、俺は」
挑発しても冷静に返されるどころか、シンカーに逆に煽られたヒタキはテーブルをバンと叩いて立ち上がった。
「なんだとー!ビビってると思ってリラックスさせてやろうと親切心で話しかけてやっているっていうのにお前は!」
「だからうるせえっつーの!黙って食えや!」
「シンカーもうるさいですぅぅ!はい論ばぁぁ」
二度目の拳骨が落ちた。
「うごぉぉぉぉ」
先ほど見た光景がまた再現される。ヒタキはまたテーブルに突っ伏して動かなくなった。
フン、と鼻を鳴らしたシンカーは箸を持ち直してサキトに向き直る。
「まあ、俺の場合はたまたまみたいなもんだ。サキトはここに配属されたが、俺は第八航空機動都市に配属されただろ?そこで”島”に大規模な[カーヴェイン]が来襲して、それを潰していたらかなりの撃破数になっていたってだけだ」
シンカーは続けて、
「今じゃありふれたみたいな”第八の悲劇”なんて呼ばれているが、あれは本当の地獄だったよ。先遣隊で出された部隊は通常型と砲撃型の掃射に巻き込まれて全員吹っ飛んだ。あっという間に恐慌状態になった部隊が散り散りになって逃げるのを、運がいいのか奴らがバラバラになって追い回してきてな、ひたすら各個撃破で戦った。死んだ奴の武器を拾って、そいつの機体を盾にしてな」
いつの間にか食事を終えていたシンカーは、箸をおいていつにもなく真剣な表情でサキトを見ていた。
「俺とお前の腕はたいして変わらん、どころかお前のほうが一歩上だ。瞬時に機転を利かせる思考のスピードと、その操縦センスは並大抵のものじゃない。単騎で、しかもあんなおもちゃで複数の敵を片づけられるのがいい証拠だ」
そう言うと、表情を少し穏やかにしたシンカーはなんてな、と笑みをこぼす。
サキトは固有機を手に入れるほど高みに上り詰めた同期で戦友を黙って見ていた。
”第八の悲劇”は第八航空機動都市に二個大隊ほど、数にして450体を超えるカーヴェインが襲い掛かり、大勢の死傷者を出して”島”を航行不能に追いやるほど大損害を出した歴史的な出来事だった。
戦ったほとんどの機甲士は戦死、または行方不明となったが、その中で数少ない生存者になったシンカーの目は年齢は変わらずとも、どことなく偉大な英雄のそれに感じられた。
シンカーはテーブルの上に置かれたつまようじに手を伸ばしながら、また口を開いた。
「まあ、結局のところ生き残るのが大事ってことだ。どんなに優れたやつでも生きていなけりゃどうしようもない。トリニティとお前のセンスがかみ合っているのは間違いないが、紙装甲ってデメリットはもしもの時にお前の寿命を刈り取る。リツカ姐さんから聞いたが次の機体探してるんだろ?選ぶ時間も慣れる時間も十分にある。その辺覚えといてくれよ」
「そうだな、考えてみる」
サキトはそう言うと残った定食を食べ始めた。
長身でサキトと同じく唐揚げ定食を頬張る男―――シンカーは箸を片手に言った。
満員御礼の食堂の中、危うく立ち食いという羽目になりかけて、そこにたまたま居合わせたシンカーとヒタキ2人とサキトは同席で昼食を取ることになった。
三人がちょうど座れる円形のテーブル席で、拳骨を食らってダウンしているヒタキを除いて、シンカーとサキトは食事をしている。
このメトロポリス13番島ではかつての極東方面と呼ばれる地域から避難してきた難民がほとんどを占めており、二百年経った今でも人口のほとんどが極東出身の人の血が混じっていて、その文化もそのまま受け継がれている。そのため食事のメニューもその影響を受けており、おかずと白米と汁物などが一緒になった定食と名前のつく献立が多い。
「あれでもれっきとした実戦機なんだけどな、一応」
シンカーと同じようにサキトも唐揚げを食しつつ言った。
すると、まあそうだなとシンカーは食事を続けながら、冷静に言う。
「どこの”島”にもAFVが足りてなかった時、練習機[トリニティ]を実戦でも使えるように申し分程度の装甲をのっけて、有り余った推進機を装備しただけの機体で正式名称[トリニティMK-2]、お前が使ってるのはリファイン型だったはずだが、整備がくそ楽なぶん本来の練習機の[トリニティ]に生産取られて、慢性的なパーツ不足に襲われているっていう不遇な機体ではあるがな」
「うっ」
その通りだった。
トリニティが紙装甲で武装が少ないというのはもはや周知の事実だが、問題はそこだけではなくそのパーツの入手がやや困難であるというところにもあった。
機甲士の育成が急務とされているこの現状では、練習機としてのトリニティはかなり重宝されていた。整備が簡単で、ほかの機体に比べて廉価、そして操縦面でも扱いやすいことはかなりの良点であり、単に機甲士の育成だけでなく、整備のしやすさは整備士の育成の初期段階に使われることもある。
結果的にニーズの高い練習機の方にパーツが回され、圧倒的に不評のMK-2にはあまりパーツが回ってこないという欠点があった。その被弾時のダメージの大きさから機体自体は安いものの整備コストは高くつくということもある。
サキトは唸ることしかできなくなった。すると、シンカーの拳骨を食らって、机に突っ伏していたヒタキが顔を上げた。
「速度、加速は現存する機体の中でもぴかいちだけど、紙装甲が評判で通常型のレールガンですぐおしゃかになるからほとんど使われなくなったんでしょ、あれ?」
さらに、
「おまけにその速度も通常の動力源を使った機体だけの中に限った話で、シンカーと私が乗るような[D2リアクター]搭載の固有機には及ばないじゃない、あっちは武装をいっぱいつけてるのに。おまけに、うちらの機体に比べたら反応速度遅いし」
「……」
サキトは何も言えなくなった。
確かに、サキトの駆る[トリニティ]はトップクラスのスピードを誇る。加速も早く、瞬間最高スピードは他の機体の追随を許さないほどだ。しかし、[D2リアクター]と呼ばれる主機を搭載する固有機と呼ばれるエース級のみが操縦を許された機体と比較すると話はまた違ってくる。
[D2リアクター]は今この世界に存在する主機の中で最も桁違いなエネルギー、[D2粒子]を生み出す、最強の動力源だ。
生産は連合の首都として運用されている[第一航空機動都市]、つまり[キャピタル]のみが管理している。
生産元はどこかしらの工業都市[インダストリアル]だというのがもっぱらの噂だが、その正体、生産場所、内部機構の全てが最高機密であり、完全なブラックボックスとして扱われている。[D2リアクター]の勝手な分解、調査は軍規によって固く禁じられていて、過去に解析を試みた軍の整備兵はどこかに連行されたまま、機密保持を理由に戻ってくることは無かった。
連合の強固な防衛によってその存在が守られている[D2リアクター]ではあるが、それに見合う以上の性能なのだった。実際、現存する機動都市の主機は大型の[D2リアクター]たった三基で、それでも都市部の電力、推進機、兵器群の出力を賄っている。
そして、[D2粒子]は思考制御において、凄まじいアドバンテージを持っていた。
サキトの乗るような通常機の場合、思考操縦する際に頭部に装着するヘッドセットから専用のモジュールが脳波を読み取り、それを情報として変換してから実際の機体の動作に反映するという物なのだが、固有機は違う。
主機によって生み出された[D2粒子]には思考伝達をそのままユニットに伝えることができるという、オカルティックな性質を持っているそうだ。
とはいえ解析を禁じられているためはっきりとしたことは、サキト達には分からないし、知ることもできない。
ただ、
「俺はシンカーほど腕も経験も戦果もないからな、むしろ同期の中でシンカーは一番ずば抜けすぎてる、数多のエース級の機甲士の中で弱冠20歳で固有機を勝ち取る奴はそうそういないんだよ。調律師が足りてないこのご時世ではね」
[D2リアクター]の最大の特徴は、調律師と呼ばれる専用の使い手がいないと扱うことができないのだった。
「ヒタキは調律師だから分かると思うけど、D2リアクターの扱いは難しい。あの主機はその時その時に綿密な調整を行わないとすぐ暴走するし、出力が高すぎて機甲士のみだったら正確な操縦ができない。おまけにその調整もあの粒子と謎の親和性を持つっていう”島”に十人ちょいいるかいないかの才能のある調律師の思考による制御でしか行えないんだから調律師の数が少なすぎる。だから何の戦果も腕もない俺には配備されることすらないんだよ」
「ほえー、そうだったんだー」
目の前の小柄な金髪の調律師、ヒタキは目を真ん丸にして感嘆の言葉を漏らした。
固有機の絶対数ははるかに少ない。機体を操縦する機甲士と[D2リアクター]を扱う調律師による、必然的に二名の操縦が必要な機体は、その並外れた性能をもつといえども年間に何機かは撃墜され、そのたびに貴重な調律師は失われる。
エースパイロットは戦場の中でたびたび生み出されるが、完全に才能によってえらばれるとされる調律師は、リアクターの扱いなどをずっと学び、感覚を身に着けるのに軽く十年以上はかかるそうだ。その才能は貴重でかつ先天性であるがゆえにそもそも人数が少ない。さらに素質があったとしても、調律師になることができないパターンが少なからず存在するようで、固有機の担い手になるには相当の戦果を挙げなければ選ばれない。
「シンカーってそんなすごかったんだ、ちょっと操縦が上手い短気な奴くらいにしか思ってなかったよ」
頭の痛みが引いたのか、やっと昼食に手を付け始めたヒタキは挑発的な目でシンカーを見てにやにやと笑う。
「いつももやかましいくせに、ミーティング中も戦闘中もやかましくて、すぐにフラフラどっか行って、招集にも応じないお前が天賦の才能を持った超人っていうのにも驚きだけどな、俺は」
挑発しても冷静に返されるどころか、シンカーに逆に煽られたヒタキはテーブルをバンと叩いて立ち上がった。
「なんだとー!ビビってると思ってリラックスさせてやろうと親切心で話しかけてやっているっていうのにお前は!」
「だからうるせえっつーの!黙って食えや!」
「シンカーもうるさいですぅぅ!はい論ばぁぁ」
二度目の拳骨が落ちた。
「うごぉぉぉぉ」
先ほど見た光景がまた再現される。ヒタキはまたテーブルに突っ伏して動かなくなった。
フン、と鼻を鳴らしたシンカーは箸を持ち直してサキトに向き直る。
「まあ、俺の場合はたまたまみたいなもんだ。サキトはここに配属されたが、俺は第八航空機動都市に配属されただろ?そこで”島”に大規模な[カーヴェイン]が来襲して、それを潰していたらかなりの撃破数になっていたってだけだ」
シンカーは続けて、
「今じゃありふれたみたいな”第八の悲劇”なんて呼ばれているが、あれは本当の地獄だったよ。先遣隊で出された部隊は通常型と砲撃型の掃射に巻き込まれて全員吹っ飛んだ。あっという間に恐慌状態になった部隊が散り散りになって逃げるのを、運がいいのか奴らがバラバラになって追い回してきてな、ひたすら各個撃破で戦った。死んだ奴の武器を拾って、そいつの機体を盾にしてな」
いつの間にか食事を終えていたシンカーは、箸をおいていつにもなく真剣な表情でサキトを見ていた。
「俺とお前の腕はたいして変わらん、どころかお前のほうが一歩上だ。瞬時に機転を利かせる思考のスピードと、その操縦センスは並大抵のものじゃない。単騎で、しかもあんなおもちゃで複数の敵を片づけられるのがいい証拠だ」
そう言うと、表情を少し穏やかにしたシンカーはなんてな、と笑みをこぼす。
サキトは固有機を手に入れるほど高みに上り詰めた同期で戦友を黙って見ていた。
”第八の悲劇”は第八航空機動都市に二個大隊ほど、数にして450体を超えるカーヴェインが襲い掛かり、大勢の死傷者を出して”島”を航行不能に追いやるほど大損害を出した歴史的な出来事だった。
戦ったほとんどの機甲士は戦死、または行方不明となったが、その中で数少ない生存者になったシンカーの目は年齢は変わらずとも、どことなく偉大な英雄のそれに感じられた。
シンカーはテーブルの上に置かれたつまようじに手を伸ばしながら、また口を開いた。
「まあ、結局のところ生き残るのが大事ってことだ。どんなに優れたやつでも生きていなけりゃどうしようもない。トリニティとお前のセンスがかみ合っているのは間違いないが、紙装甲ってデメリットはもしもの時にお前の寿命を刈り取る。リツカ姐さんから聞いたが次の機体探してるんだろ?選ぶ時間も慣れる時間も十分にある。その辺覚えといてくれよ」
「そうだな、考えてみる」
サキトはそう言うと残った定食を食べ始めた。
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