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日常と年越しと再び訪れた者
日常と年越しと再び訪れた者 その1
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収穫祭から特に何もなく二か月が過ぎて、季節は完全に冬、それも年の瀬となっていた。
もちろん、何かあった者もいるが、少なくともミア本人には特に何も起きなかった。
しいてあげるなら、ミアちゃん係と呼ばれる集団にルイーズという、この領地の姫様が加わったことくらいだ。
ついでにルイーズ本人は何かあった一人で、家や家出のことでもめにもめていたりする。
それは置いておいて、ミアたちはいつも通り食堂に集まりだらだらとしている。
なぜ集まるかは、この食堂には暖炉があり暖かいからだ。
「もう年末ですね、また講義がなくなりますよ」
ミアが残念そうにそう言って、食堂の机に上半身を投げだした。
そんなミアを見てスティフィは少し疲れた表情を見せる。
「いいじゃない。ミアに付き合っている私の身にもなってよ。講義が増えすぎてついていくのがやっとよ」
既に優等生のフリは追いつかず、ミアが増やしに増やした講義についていくだけで精いっぱいのスティフィがうんざりしながら、机に投げ出したミアを小突く。
魔術という学問も技術も、どうしても感覚で教えなければならないところが多く、同時に魔術を三から四種程度が生徒では限界と言われている中、ミアはその倍近くの講義を受けている。
普通ならついていくのも難しいとされる中、ミアを筆頭にスティフィもジュリーもよく講義を受け続けられているものだ。
そのことが分かっているので、小突かれたミアは軽くスティフィを睨むだけで何も言わない。
「わ、私もです……」
と、座学では本物の優等生であるジュリーでさえ、ミアに付き合って受ける講義を増やした結果、勉強に追われてうんざりしている。
「無理に受けなくてもいいのでは? と、言うのは二人には酷ですね」
現在は休学中扱いのマーカスがスティフィとジュリーを見てそう言った。
スティフィとジュリーの二人はミアに付き添うようにと上から言われていて、それを断れる状況にない。
生活費を稼がなくてよくなったミアが朝から晩まで講義を受け続ける様になったせいなのだが、それに自分の意志とは関係なく付き合わなければならない二人にとっては大変なことだろう。
特にジュリーは生活費も自分で稼がなくてはならないのだから、さらに苦労がかさむ。
「そうよ」
「そうですよ」
スティフィとジュリーが同時に頷いた。
ただそんなことミアが聞いたところで、神の命で魔術を学びに来ているミアがその手を緩めるわけもない。
そんな様子をなんとなく見ていたエリックが唐突に外を見ながらつぶやいた。
「にしても、寒いよな。毎日雪降るとか、ここは北国かよ」
エリックが漏らした言葉はもっともだ。
本来、大陸の南側であるこの地域は、それほど寒くなる地方ではないはずなのだが、この地域は昔から夏はとことん暑く、冬はとことん寒くなる。
元々海が近く湿気も多いせいか、毎日雪が降り、今日も吹雪いているわけではないが、景色は雪に覆われている。
「ここの気候は特別ですからねぇ」
この領地の出身でもあるマーカスがしみじみとそう言った。
「冬山の王でしたっけ? マーカスさんは会ったことあるんですよね? どんな精霊王なんですか?」
寒さの原因は自然を管理している精霊王が怒った結果で、冬に力が強くなる精霊王が北の山脈から凍えるような風を吹かしているからだ。
そんな精霊王にマーカスは一時期捕まり、生きたまま眠らされて氷漬けにされていたことがある。
「そうですね、身の毛もよだつ王で、見た目には白い毛皮に覆われた痩身の大男ですか」
マーカスは思い出すのも嫌と、言った表情を浮かべながらもそれを説明してくれる。
「やっぱり実体化してるのね」
普通の精霊は特別な目でも持っていない限り人間の眼には見えることはないが、精霊王もまた特別で人の眼に見える様に実体化することがある。
主に人間と接触するときに実体化するのだが、冬山の王は絶えず実体化しているとのことだ。
そして、恨みつらみを言いながら、この地方の北の山脈を徘徊している。
もし人間がそんな精霊王に遭遇すれば、マーカスのように捕らえられ氷の中で緩やかに死に向かう眠りにいざなまれてしまう。
「そう言えば、もうそろそろ年越しよね? お姫様は実家に帰らなくていいの? やることあるんじゃないの?」
これ以上話題に進展がなさそうなので、スティフィが話題を変える。
最近スティフィに新しい趣味ができた。
この領地の姫であるルイーズをからかうことだ。
家出してきて来年の春からこの魔術学院の生徒になると、公言しているルイーズはなんだかんだでミアちゃん係の一員に収まっている。
はじめこそ、取り巻きのようにルイーズの周りには人が集まっていたが、結局それらの人間はルイーズに家に帰ることを薦めてくるため、それらの人間とはルイーズ自身が距離を置くようになった。
その結果、知り合いと呼べるような人間は、この場にいる者しかいなくなり今に至る。
スティフィも事あるごとに、ルイーズに帰るように促してくるが、それはブノアという護衛を恐れてのことだとルイーズには理解できているし、スティフィが自分をからかっているだけというのも理解できている。
ルイーズにとって自分をからかってくるような同世代の人間は初めてだったため、実は新鮮で悪い気はしてはいない。もちろんそれを表に出すようなルイーズではないが。
「帰りません」
スティフィが茶化して来たことに、ルイーズが毅然と答えると、
「……」
ルイーズの護衛のブノアが何とも言えない表情を見せた。
「なんですかブノア?」
それに気づいたルイーズがブノアに問う。
「いえ、なんでもありません」
仏頂面を見せながらもブノアはそう答えるしかない。
「あんたも大変よね」
と、今度はブノアを見てスティフィは茶化すが、ブノアはスティフィに対して何も反応しない。
「まあ、冬の間は何もやることないですからね」
その様子を見てミアはそう言って、やっと食堂の机から身を起こした。
「ん? ミアちゃんところは年明けとかでの神事はないのか?」
エリックが珍しく興味を持ったのか、そんな事を聞くと、
「ないですよ? 普通はなにかあるんですか?」
ミアは他の神様のことにも興味ありとそう聞いてきた。
「年明けに何もないの? 珍しいわね」
その言葉にスティフィも反応する。
ついでにデミアス教では影響力の強い指導者によりかわるのだが、概、年始より年末、大晦日の方により重要な神事が多い。
ただスティフィはそれよりもミアのことを優先しろと、ダーウィック大神官に命じられているため、それらの神事に今年は参加するつもりはない。
そもそも自由を謳うデミアス教では神事への参加も本来は自由ではある。
「普通はだいたいあると思いますよ?」
ジュリーの所属している輝く大地の教団は、光の三大宗教と呼ばれているもののうちの一つだが、神事に関して言えばもっとも平均的な、それこそ例にあげられるような一般的な行事の宗教である。
が、ジュリーが所属しているのは、この魔術学院で孤立したくない、援助を受けたい、就職に有利等の理由からでジュリー自身が信仰が深いわけでもない。
そもそもジュリーが所属していたのは学術派閥と呼ばれる学者的な立ち位置の輝く大地の教団内の派閥で、その派閥に所属したのも就職に有利だからという理由からだ。
「そうなんですか? 大きな行事は収穫祭の後は春までないですよ? 他の神様はどんなことをするんですか?」
ミアは興味ありとばかりに、目を輝かせて聞いてくる。
「うちは一年中好き勝手よ? そういうところだし。とはいえ、この地域はダーウィック大神官様の決められた行事だから、割とまともなものが多いんだけど」
ミアの問いに、スティフィが答える。
「デミアス教らしいですね…… でも確かにダーウィック教授が取り仕切っているなら、まともそうですね。ジュリーさんところ、輝く大地の教団はどうなんですか?」
スティフィの説明に納得したミアは今度はジュリーに話を聞く。
ジュリーは少し考えたが特に変わることのない行事ばかりで、逆に説明しにくい。
「うちは普通ですね、年末は家族で集まって、年越しを迎えて、新年になったら神殿に祈りに行くといった感じです。それよりも年始に華やかなのは太陽の戦士団ですよ、ねえ? マーカスさん?」
なのでジュリーは、同じ光の三大宗教と呼ばれている太陽の戦士団の信奉者だったマーカスに話を振る。
確かに太陽の戦士団は年始早々から華やかというか、少しうるさいくらいで有名だ。
「ええ、まあ。太陽の、と言っているくらいなので、特に初日の出は神聖視されてますからね。年末年始は色々と忙しいですが、今の俺には関係ないですよ」
「今は冥府の神の信者、ということでいいんですか?」
ミアがそう聞くと、マーカスも自信なさげにだが頷いた。
「そうなりますね。直接会っているうえに使命まで授かりましたから。ついでにそちらのほうは…… 俺は何一つ行事を知りませんよ」
マーカスもそう言いつつ何かした方がいいのか、とも考えるが身近に冥府の神デスカトロカを信奉している者など知らない。
そもそも、冥府の神自体を信奉する者自体があまりいない。それを探し出すのも一苦労だろう。
それに信仰はあっても、それが宗教まで成長してない可能性の方が高い。恐らく行事も何もないだろう。
「俺も知らないな。うちのは商いの神様らしいけど、興味ないから全く知らんし」
エリックがマーカスに同意するように大きくうなずきながらそう言った。
「エリックさんには初めから聞いてません」
ミアもエリックが神様をあまり敬ってないことを知っているので、まともに相手はしない。
それはミアがエリックを苦手とする一面でもある。
なのでかは、わからないがミアは話を変える。
「そう言えば、だいたいどこの領地にも主神と言えるような神様がいると聞いたんですけど、リズウィッド領にもそんな神様はいるんですよね?」
領地とは元々国であり、主神ともいえる神が存在するはずなのだが、ミアは未だにこの領地の神の名を聞いたことがない。
「当たり前です。と、言いたいところですが、リズウィッドの神は少し特殊なのでミア様が知らなくても無理はないです」
と、ルイーズが答えるが、そのルイーズも少し困った顔をしている。
「特殊なんですか?」
と、ミアは妙味を寄せる。
「はい、そもそも秘匿の神なので、その名もその神の話すらも、あまりしてはいけません。なので、これ以上聞かないでください」
ルイーズにそう言われてしまい、ミアもそれ以上聞くことができなくなってしまった。
まあ、そんな主神が治める領地だからかこそ、シュトゥルムルン魔術学院のように大規模な中立の魔術学院が作れたわけでもあるが。
「わ、わかりました。聞きません。でも確かにそれは特殊ですね」
そう言ってミアとルイーズが話しているのを、スティフィがボケっと見ていて気が付く。
「んー、こうやってみると、ミアとお姫さん、確かに顔似てるわね。本当に姉妹なんじゃない?」
そして、その気づいたことをそのまま口にする。
「は? い、いえ、その可能性は否定できないですが…… か、確たる証拠もないのにそんなこと言わないでください!」
ルイーズが必死になってスティフィに抗議するが、スティフィはそれを薄ら笑いを浮かべて楽しそうに見ている。
「まあ、そうだったとしても、私は貴族になるつもりはないんですけど」
そして、ミアが淡々と思っていることを口にする。
ミアには絶対的に信じる神がいて、この魔術学院に来たのも、その神に命じられたからに過ぎない。貴族になりに来たわけではない。
「本当にこの方は!!」
だが、幼い頃よりこの領主の娘として、それなりに厳しく育てられたルイーズにはミアの言葉な聞き捨てならないものだ。
彼女にはこの領主の娘としての誇りがある。
なのだが、
「もう二か月も家出している今のお姫さんにミアを責める権利はないでしょうに?」
と、スティフィにそう言われてルイーズも黙るしかない。
「それは…… そうです……」
その誇りを投げうってしまっていて、今は家出の身である。
ミアのことを責めることは今のルイーズにはできない。
そもそも神の命で動いているミアに、人の身で何か言えることなどない。
「なら、さっさと帰りなさいよ」
さらに、スティフィがルイーズに追撃する。
スティフィ的にはルイーズの反応が楽しくてしょうがない、と言った感じだ。
「嫌です」
ルイーズがそう言ってそっぽを向いた。
「珍しいですね、スティフィが他人を諭すだなんて」
ミアも人のことを言えないが、少し困ったようにスティフィとルイーズを見てそう言った。
「いや、そこの護衛がどうにもおっかなくてね。腕利きすぎるのよ、姫の護衛と言っても強すぎなのよ、なんなのあいつ?」
本人を目の前にしてスティフィは遠慮なくそんなことを言うが、ブノアは相手にしない。
その代わりというわけではないが、スティフィの言葉にルイーズが得意そうな顔を見せる。
「ブノアは私の幼いころよりの守護騎士です。あと、そこのマーカス様の遠い親戚です」
「本当に親戚だったんですね……」
と、ジュリーが少し驚いた顔をして、マーカスとブノアを見比べる。
が、少なくとも外見上は特に似たところは見つけられない。
「ええ、まあ」
と、ブノアが不愛想に返事をする。
「カリナさんから聞いたんですけど、巨人の……」
と、ミアが不用意にそんなことを言い出すのでルイーズが慌てて止める。
「その話は口外禁止です、ミア様。下手をしたら口封じしなければなくなります」
ルイーズは必至でミアを睨むが、
「あ、すいません…… でも私やルイーズ様もそうなんですよね?」
と、ミアは懲りた様子がない。
「ですから、口にしないでください! ついでに私は、私というかリズウィッド家は該当しません。ステッサ家を筆頭にそれに連なる者だけですので」
その昔、外道狩り衆の長とこの領地の貴族、ステッサ家との婚姻で外道狩り衆を取り込んだと言われている。
それ以来、ステッサ家はリズウィッド領の裏を担う貴族として暗躍してきた。
ただそれも近年、外道狩り衆を解散することでなくなったわけだが、ミアのように気やすく口外していい話ではない。
神々に弓を弾き、神々と戦争を起こした巨人の力など、利用していい物でもない。
そもそも外道狩り衆がこのリズウィッドに根付いたのも、その主神が秘匿の神であり、その力を借りたかったという要因もある。
すでに力を封印し解散しているとはいえ、余り世間に知られていい話でもない。
「そうなんですね。すいません。とりあえず黙ります」
ルイーズが顔を真っ赤にして怒っているのでミアは謝って黙ることにした。
ただミアとしては、カリナにもよくしてもらっているし、ロロカカ神の御使いも元巨人だというので、そこまで禁忌という気がしないのだ。
「何、ミアの出自の話? それなら興味あるけど?」
スティフィがミアのことと聞いて話に入ってくる。
「内緒らしいので言えないですよ」
と、ミアが呑気にそんなことを言う。
その様子にルイーズがため息をついて、
「この話は本当に、この辺にしてください」
と、そう言った。
さすがにスティフィもこれ以上は冗談じゃ済まされない、という雰囲気を感じ取る。
相手はなんだかんだでこの領地のお姫様なのだ。
家出中だからと、スティフィはからかってはいるが、ルイーズがブノアに命じれば、左手が使えないスティフィではブノアには到底かなわない。
それくらいの実力差がある相手なのだ。
「はいはい、じゃあ、年末年始の話に戻しましょうね。初日の出を見るんだっけ?」
もう一度話を変えようと、いや、戻そうとしてスティフィがそう言ってマーカスに話を振る。
だが、デミアス教の天敵とも言える太陽の戦士団の話を自分から振らなくてはならなくて、スティフィは嫌な顔をする。
「まあ、そうですね。山の頂上などへ行き、初日の出を迎え太陽に祈りを捧げる、のが太陽の戦士団で大晦日からお祭りで、年越しして初日の出を拝んで午後からまた祭りで日が暮れたら、それに合わせて寝る、というのが太陽の戦士団の年末年始の過ごし方ですね」
「なにその、下手な羽目の外し方みたいなの……」
マーカスの言葉にスティフィが思った素直な感想をそのまま述べる。
「でも、いいですね、山の頂上から初日の出とか」
けれど、それにミアが興味を持つ。
「ん? じゃあ、俺らも行くか? 裏山の頂上なら山道あるし割とすぐだろ?」
それにエリックが乗ってくる。
「えぇ? この雪の中を? しかも初日の出っていうことは暗いうちからでしょう? いやよ、そんなの」
この寒い雪の中、山を登るのは嫌だとスティフィが反論するが、
「あっ、それいいですね! やりましょう!!」
ミアがそう言ってしまう。
ミアがそう言ってしまったからには、スティフィもジュリーももう強制参加のようなものだ。
「嘘でしょう…… ミア、考え直しさないよ」
スティフィが意気消沈してそう言って、ジュリーが諦めた様に、
「あー、先に年末年始の集まりのお断りしておかないと……」
と、予定の変更を考え始めた。
まあ、ジュリー的には年末年始に小うるさい教授に会わなくていいと言う点だけは内心は嬉しくもあるが。
「おっ、じゃあ、頂上でグレン鍋でも作るか!」
その二人とは逆にエリックは気分上々のようだ。
「また怒られるわよ」
スティフィが白けた目を向けるが、そんなことを気にするエリックではない。
「バレなきゃ怒られないってさ」
「まあ、好きにしなさいよ」
と、スティフィは諦めた様にそう言った。
「じゃあ、決まりですね。あ、スティフィ、そのまま初狩りもしたいので、あの矢の出る武器も持ってきてください!」
ミアはそう言ってにこやかに笑った。
何もない年末年始にやることができてうれしい、と言った表情を浮かべている。
やはりティンチルで本格的な娯楽を体験して知ってしまった為か、ミアは娯楽に飢えているようだ。
「はいはい、わかりました、はぁ…… せっかく講義がなくなってゆっくりできると思ったのに……」
スティフィはため息をつきつつも、なんだかそれも悪くないとばかりに、楽しそうな表情を浮かべた。
もちろん、何かあった者もいるが、少なくともミア本人には特に何も起きなかった。
しいてあげるなら、ミアちゃん係と呼ばれる集団にルイーズという、この領地の姫様が加わったことくらいだ。
ついでにルイーズ本人は何かあった一人で、家や家出のことでもめにもめていたりする。
それは置いておいて、ミアたちはいつも通り食堂に集まりだらだらとしている。
なぜ集まるかは、この食堂には暖炉があり暖かいからだ。
「もう年末ですね、また講義がなくなりますよ」
ミアが残念そうにそう言って、食堂の机に上半身を投げだした。
そんなミアを見てスティフィは少し疲れた表情を見せる。
「いいじゃない。ミアに付き合っている私の身にもなってよ。講義が増えすぎてついていくのがやっとよ」
既に優等生のフリは追いつかず、ミアが増やしに増やした講義についていくだけで精いっぱいのスティフィがうんざりしながら、机に投げ出したミアを小突く。
魔術という学問も技術も、どうしても感覚で教えなければならないところが多く、同時に魔術を三から四種程度が生徒では限界と言われている中、ミアはその倍近くの講義を受けている。
普通ならついていくのも難しいとされる中、ミアを筆頭にスティフィもジュリーもよく講義を受け続けられているものだ。
そのことが分かっているので、小突かれたミアは軽くスティフィを睨むだけで何も言わない。
「わ、私もです……」
と、座学では本物の優等生であるジュリーでさえ、ミアに付き合って受ける講義を増やした結果、勉強に追われてうんざりしている。
「無理に受けなくてもいいのでは? と、言うのは二人には酷ですね」
現在は休学中扱いのマーカスがスティフィとジュリーを見てそう言った。
スティフィとジュリーの二人はミアに付き添うようにと上から言われていて、それを断れる状況にない。
生活費を稼がなくてよくなったミアが朝から晩まで講義を受け続ける様になったせいなのだが、それに自分の意志とは関係なく付き合わなければならない二人にとっては大変なことだろう。
特にジュリーは生活費も自分で稼がなくてはならないのだから、さらに苦労がかさむ。
「そうよ」
「そうですよ」
スティフィとジュリーが同時に頷いた。
ただそんなことミアが聞いたところで、神の命で魔術を学びに来ているミアがその手を緩めるわけもない。
そんな様子をなんとなく見ていたエリックが唐突に外を見ながらつぶやいた。
「にしても、寒いよな。毎日雪降るとか、ここは北国かよ」
エリックが漏らした言葉はもっともだ。
本来、大陸の南側であるこの地域は、それほど寒くなる地方ではないはずなのだが、この地域は昔から夏はとことん暑く、冬はとことん寒くなる。
元々海が近く湿気も多いせいか、毎日雪が降り、今日も吹雪いているわけではないが、景色は雪に覆われている。
「ここの気候は特別ですからねぇ」
この領地の出身でもあるマーカスがしみじみとそう言った。
「冬山の王でしたっけ? マーカスさんは会ったことあるんですよね? どんな精霊王なんですか?」
寒さの原因は自然を管理している精霊王が怒った結果で、冬に力が強くなる精霊王が北の山脈から凍えるような風を吹かしているからだ。
そんな精霊王にマーカスは一時期捕まり、生きたまま眠らされて氷漬けにされていたことがある。
「そうですね、身の毛もよだつ王で、見た目には白い毛皮に覆われた痩身の大男ですか」
マーカスは思い出すのも嫌と、言った表情を浮かべながらもそれを説明してくれる。
「やっぱり実体化してるのね」
普通の精霊は特別な目でも持っていない限り人間の眼には見えることはないが、精霊王もまた特別で人の眼に見える様に実体化することがある。
主に人間と接触するときに実体化するのだが、冬山の王は絶えず実体化しているとのことだ。
そして、恨みつらみを言いながら、この地方の北の山脈を徘徊している。
もし人間がそんな精霊王に遭遇すれば、マーカスのように捕らえられ氷の中で緩やかに死に向かう眠りにいざなまれてしまう。
「そう言えば、もうそろそろ年越しよね? お姫様は実家に帰らなくていいの? やることあるんじゃないの?」
これ以上話題に進展がなさそうなので、スティフィが話題を変える。
最近スティフィに新しい趣味ができた。
この領地の姫であるルイーズをからかうことだ。
家出してきて来年の春からこの魔術学院の生徒になると、公言しているルイーズはなんだかんだでミアちゃん係の一員に収まっている。
はじめこそ、取り巻きのようにルイーズの周りには人が集まっていたが、結局それらの人間はルイーズに家に帰ることを薦めてくるため、それらの人間とはルイーズ自身が距離を置くようになった。
その結果、知り合いと呼べるような人間は、この場にいる者しかいなくなり今に至る。
スティフィも事あるごとに、ルイーズに帰るように促してくるが、それはブノアという護衛を恐れてのことだとルイーズには理解できているし、スティフィが自分をからかっているだけというのも理解できている。
ルイーズにとって自分をからかってくるような同世代の人間は初めてだったため、実は新鮮で悪い気はしてはいない。もちろんそれを表に出すようなルイーズではないが。
「帰りません」
スティフィが茶化して来たことに、ルイーズが毅然と答えると、
「……」
ルイーズの護衛のブノアが何とも言えない表情を見せた。
「なんですかブノア?」
それに気づいたルイーズがブノアに問う。
「いえ、なんでもありません」
仏頂面を見せながらもブノアはそう答えるしかない。
「あんたも大変よね」
と、今度はブノアを見てスティフィは茶化すが、ブノアはスティフィに対して何も反応しない。
「まあ、冬の間は何もやることないですからね」
その様子を見てミアはそう言って、やっと食堂の机から身を起こした。
「ん? ミアちゃんところは年明けとかでの神事はないのか?」
エリックが珍しく興味を持ったのか、そんな事を聞くと、
「ないですよ? 普通はなにかあるんですか?」
ミアは他の神様のことにも興味ありとそう聞いてきた。
「年明けに何もないの? 珍しいわね」
その言葉にスティフィも反応する。
ついでにデミアス教では影響力の強い指導者によりかわるのだが、概、年始より年末、大晦日の方により重要な神事が多い。
ただスティフィはそれよりもミアのことを優先しろと、ダーウィック大神官に命じられているため、それらの神事に今年は参加するつもりはない。
そもそも自由を謳うデミアス教では神事への参加も本来は自由ではある。
「普通はだいたいあると思いますよ?」
ジュリーの所属している輝く大地の教団は、光の三大宗教と呼ばれているもののうちの一つだが、神事に関して言えばもっとも平均的な、それこそ例にあげられるような一般的な行事の宗教である。
が、ジュリーが所属しているのは、この魔術学院で孤立したくない、援助を受けたい、就職に有利等の理由からでジュリー自身が信仰が深いわけでもない。
そもそもジュリーが所属していたのは学術派閥と呼ばれる学者的な立ち位置の輝く大地の教団内の派閥で、その派閥に所属したのも就職に有利だからという理由からだ。
「そうなんですか? 大きな行事は収穫祭の後は春までないですよ? 他の神様はどんなことをするんですか?」
ミアは興味ありとばかりに、目を輝かせて聞いてくる。
「うちは一年中好き勝手よ? そういうところだし。とはいえ、この地域はダーウィック大神官様の決められた行事だから、割とまともなものが多いんだけど」
ミアの問いに、スティフィが答える。
「デミアス教らしいですね…… でも確かにダーウィック教授が取り仕切っているなら、まともそうですね。ジュリーさんところ、輝く大地の教団はどうなんですか?」
スティフィの説明に納得したミアは今度はジュリーに話を聞く。
ジュリーは少し考えたが特に変わることのない行事ばかりで、逆に説明しにくい。
「うちは普通ですね、年末は家族で集まって、年越しを迎えて、新年になったら神殿に祈りに行くといった感じです。それよりも年始に華やかなのは太陽の戦士団ですよ、ねえ? マーカスさん?」
なのでジュリーは、同じ光の三大宗教と呼ばれている太陽の戦士団の信奉者だったマーカスに話を振る。
確かに太陽の戦士団は年始早々から華やかというか、少しうるさいくらいで有名だ。
「ええ、まあ。太陽の、と言っているくらいなので、特に初日の出は神聖視されてますからね。年末年始は色々と忙しいですが、今の俺には関係ないですよ」
「今は冥府の神の信者、ということでいいんですか?」
ミアがそう聞くと、マーカスも自信なさげにだが頷いた。
「そうなりますね。直接会っているうえに使命まで授かりましたから。ついでにそちらのほうは…… 俺は何一つ行事を知りませんよ」
マーカスもそう言いつつ何かした方がいいのか、とも考えるが身近に冥府の神デスカトロカを信奉している者など知らない。
そもそも、冥府の神自体を信奉する者自体があまりいない。それを探し出すのも一苦労だろう。
それに信仰はあっても、それが宗教まで成長してない可能性の方が高い。恐らく行事も何もないだろう。
「俺も知らないな。うちのは商いの神様らしいけど、興味ないから全く知らんし」
エリックがマーカスに同意するように大きくうなずきながらそう言った。
「エリックさんには初めから聞いてません」
ミアもエリックが神様をあまり敬ってないことを知っているので、まともに相手はしない。
それはミアがエリックを苦手とする一面でもある。
なのでかは、わからないがミアは話を変える。
「そう言えば、だいたいどこの領地にも主神と言えるような神様がいると聞いたんですけど、リズウィッド領にもそんな神様はいるんですよね?」
領地とは元々国であり、主神ともいえる神が存在するはずなのだが、ミアは未だにこの領地の神の名を聞いたことがない。
「当たり前です。と、言いたいところですが、リズウィッドの神は少し特殊なのでミア様が知らなくても無理はないです」
と、ルイーズが答えるが、そのルイーズも少し困った顔をしている。
「特殊なんですか?」
と、ミアは妙味を寄せる。
「はい、そもそも秘匿の神なので、その名もその神の話すらも、あまりしてはいけません。なので、これ以上聞かないでください」
ルイーズにそう言われてしまい、ミアもそれ以上聞くことができなくなってしまった。
まあ、そんな主神が治める領地だからかこそ、シュトゥルムルン魔術学院のように大規模な中立の魔術学院が作れたわけでもあるが。
「わ、わかりました。聞きません。でも確かにそれは特殊ですね」
そう言ってミアとルイーズが話しているのを、スティフィがボケっと見ていて気が付く。
「んー、こうやってみると、ミアとお姫さん、確かに顔似てるわね。本当に姉妹なんじゃない?」
そして、その気づいたことをそのまま口にする。
「は? い、いえ、その可能性は否定できないですが…… か、確たる証拠もないのにそんなこと言わないでください!」
ルイーズが必死になってスティフィに抗議するが、スティフィはそれを薄ら笑いを浮かべて楽しそうに見ている。
「まあ、そうだったとしても、私は貴族になるつもりはないんですけど」
そして、ミアが淡々と思っていることを口にする。
ミアには絶対的に信じる神がいて、この魔術学院に来たのも、その神に命じられたからに過ぎない。貴族になりに来たわけではない。
「本当にこの方は!!」
だが、幼い頃よりこの領主の娘として、それなりに厳しく育てられたルイーズにはミアの言葉な聞き捨てならないものだ。
彼女にはこの領主の娘としての誇りがある。
なのだが、
「もう二か月も家出している今のお姫さんにミアを責める権利はないでしょうに?」
と、スティフィにそう言われてルイーズも黙るしかない。
「それは…… そうです……」
その誇りを投げうってしまっていて、今は家出の身である。
ミアのことを責めることは今のルイーズにはできない。
そもそも神の命で動いているミアに、人の身で何か言えることなどない。
「なら、さっさと帰りなさいよ」
さらに、スティフィがルイーズに追撃する。
スティフィ的にはルイーズの反応が楽しくてしょうがない、と言った感じだ。
「嫌です」
ルイーズがそう言ってそっぽを向いた。
「珍しいですね、スティフィが他人を諭すだなんて」
ミアも人のことを言えないが、少し困ったようにスティフィとルイーズを見てそう言った。
「いや、そこの護衛がどうにもおっかなくてね。腕利きすぎるのよ、姫の護衛と言っても強すぎなのよ、なんなのあいつ?」
本人を目の前にしてスティフィは遠慮なくそんなことを言うが、ブノアは相手にしない。
その代わりというわけではないが、スティフィの言葉にルイーズが得意そうな顔を見せる。
「ブノアは私の幼いころよりの守護騎士です。あと、そこのマーカス様の遠い親戚です」
「本当に親戚だったんですね……」
と、ジュリーが少し驚いた顔をして、マーカスとブノアを見比べる。
が、少なくとも外見上は特に似たところは見つけられない。
「ええ、まあ」
と、ブノアが不愛想に返事をする。
「カリナさんから聞いたんですけど、巨人の……」
と、ミアが不用意にそんなことを言い出すのでルイーズが慌てて止める。
「その話は口外禁止です、ミア様。下手をしたら口封じしなければなくなります」
ルイーズは必至でミアを睨むが、
「あ、すいません…… でも私やルイーズ様もそうなんですよね?」
と、ミアは懲りた様子がない。
「ですから、口にしないでください! ついでに私は、私というかリズウィッド家は該当しません。ステッサ家を筆頭にそれに連なる者だけですので」
その昔、外道狩り衆の長とこの領地の貴族、ステッサ家との婚姻で外道狩り衆を取り込んだと言われている。
それ以来、ステッサ家はリズウィッド領の裏を担う貴族として暗躍してきた。
ただそれも近年、外道狩り衆を解散することでなくなったわけだが、ミアのように気やすく口外していい話ではない。
神々に弓を弾き、神々と戦争を起こした巨人の力など、利用していい物でもない。
そもそも外道狩り衆がこのリズウィッドに根付いたのも、その主神が秘匿の神であり、その力を借りたかったという要因もある。
すでに力を封印し解散しているとはいえ、余り世間に知られていい話でもない。
「そうなんですね。すいません。とりあえず黙ります」
ルイーズが顔を真っ赤にして怒っているのでミアは謝って黙ることにした。
ただミアとしては、カリナにもよくしてもらっているし、ロロカカ神の御使いも元巨人だというので、そこまで禁忌という気がしないのだ。
「何、ミアの出自の話? それなら興味あるけど?」
スティフィがミアのことと聞いて話に入ってくる。
「内緒らしいので言えないですよ」
と、ミアが呑気にそんなことを言う。
その様子にルイーズがため息をついて、
「この話は本当に、この辺にしてください」
と、そう言った。
さすがにスティフィもこれ以上は冗談じゃ済まされない、という雰囲気を感じ取る。
相手はなんだかんだでこの領地のお姫様なのだ。
家出中だからと、スティフィはからかってはいるが、ルイーズがブノアに命じれば、左手が使えないスティフィではブノアには到底かなわない。
それくらいの実力差がある相手なのだ。
「はいはい、じゃあ、年末年始の話に戻しましょうね。初日の出を見るんだっけ?」
もう一度話を変えようと、いや、戻そうとしてスティフィがそう言ってマーカスに話を振る。
だが、デミアス教の天敵とも言える太陽の戦士団の話を自分から振らなくてはならなくて、スティフィは嫌な顔をする。
「まあ、そうですね。山の頂上などへ行き、初日の出を迎え太陽に祈りを捧げる、のが太陽の戦士団で大晦日からお祭りで、年越しして初日の出を拝んで午後からまた祭りで日が暮れたら、それに合わせて寝る、というのが太陽の戦士団の年末年始の過ごし方ですね」
「なにその、下手な羽目の外し方みたいなの……」
マーカスの言葉にスティフィが思った素直な感想をそのまま述べる。
「でも、いいですね、山の頂上から初日の出とか」
けれど、それにミアが興味を持つ。
「ん? じゃあ、俺らも行くか? 裏山の頂上なら山道あるし割とすぐだろ?」
それにエリックが乗ってくる。
「えぇ? この雪の中を? しかも初日の出っていうことは暗いうちからでしょう? いやよ、そんなの」
この寒い雪の中、山を登るのは嫌だとスティフィが反論するが、
「あっ、それいいですね! やりましょう!!」
ミアがそう言ってしまう。
ミアがそう言ってしまったからには、スティフィもジュリーももう強制参加のようなものだ。
「嘘でしょう…… ミア、考え直しさないよ」
スティフィが意気消沈してそう言って、ジュリーが諦めた様に、
「あー、先に年末年始の集まりのお断りしておかないと……」
と、予定の変更を考え始めた。
まあ、ジュリー的には年末年始に小うるさい教授に会わなくていいと言う点だけは内心は嬉しくもあるが。
「おっ、じゃあ、頂上でグレン鍋でも作るか!」
その二人とは逆にエリックは気分上々のようだ。
「また怒られるわよ」
スティフィが白けた目を向けるが、そんなことを気にするエリックではない。
「バレなきゃ怒られないってさ」
「まあ、好きにしなさいよ」
と、スティフィは諦めた様にそう言った。
「じゃあ、決まりですね。あ、スティフィ、そのまま初狩りもしたいので、あの矢の出る武器も持ってきてください!」
ミアはそう言ってにこやかに笑った。
何もない年末年始にやることができてうれしい、と言った表情を浮かべている。
やはりティンチルで本格的な娯楽を体験して知ってしまった為か、ミアは娯楽に飢えているようだ。
「はいはい、わかりました、はぁ…… せっかく講義がなくなってゆっくりできると思ったのに……」
スティフィはため息をつきつつも、なんだかそれも悪くないとばかりに、楽しそうな表情を浮かべた。
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