それなりに怖い話。

只野誠

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うどん

うどん

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 部屋に落ちていた。
 うどんのような、何かが。
 けど、それはうどんではない。

 白く長く細い。
 質感もうどんそのものだ。

 一本だけだが、それが部屋の床に落ちていた。

 男が何でうどんが床に落ちている?
 そう思っていると、そのうどんがのたうち回り始めた。

 男はビクっとする。
 もっと近くにいたら腰を抜かしていたくらいは驚く。

 何かの幼虫か、と男が思うがどう見てもうどんそのものだ。
 そう言えば、うどんに似た寄生虫が居るという話を男は思い出す。

 いや、きしめんだったか? と男がそんなことを考えていると、そのうどんのようななんかが、床から移動していこうとしている。
 流石にそれを逃すのは嫌なので、テッシュを多めに持ってそれで、うどんのような何かをつまんで外に出そうと考える。

 だが、そのうどんのようななにかは思いのほか、激しく動く。
 多めのテッシュでもそれから逃げ回るようにのたうち回るのだ。

 男は何となく、それを触りたくなかったので悪戦苦闘する。
 その結果、テッシュではダメだと悟る。

 長い上に、男が思った以上に勢いよくそれはのたうち回るのだ。
 そして、そのうどんのようななにかが物陰に入りそうになったので、男は仕方なく机の上に置いておいた、昨日これで丼ものを作って食べて、洗わずにおいておいてしまった、どんぶりをその上にかぶせる。

 それは何とか成功し、うどんのような何かを閉じ込めることには成功した。
 その証拠にどんぶりを通して、中で動き回っている振動が聞こえてくる。

 一安心したところで、男はこれはいったい何なんだと考える。
 なにかの幼虫にしては長すぎる。
 生物にしては目も口もない。
 見た目は完全にうどんである。

 とりあえず殺虫剤でもかけておくかと、男が殺虫剤を台所からとってくる。
 噴出孔が長く細いノズルになっていて、どんぶりを少し持ち上げれば中に殺虫剤を送り込めるはずだ。

 殺虫剤を取ってきた男はどんぶりを少しだけ持ち上げ、その中に殺虫剤を噴射する。
 そうするとどんぶりの中で、うどんのようななにかがものすごい勢いでのたうち回っている。

 しかも、うどんのような何かも必死なのか、どんぶりが少し持ち上がったりするくらいだ。
 男は慌てて、近くにあった分厚い本、辞書をどんぶりの上に置く。

 それでも、コトコトコトと、どんぶりの中で暴れるような男が聞こえてくる。

 だが、それも最初だけでそのうち静かになる。
 男はとりあえず、もうこのどんぶりは使えないな、と、思いつつも、もういい時間なことに気が付く。
 何か食べようと思い冷蔵庫を開ける。

 冷蔵庫にあった食べ物はうどんだけだった。

 男は買い物に行くことを決心する。
 ついでに、男が買い物に行って帰ってくると、どんぶりはひっくり返されていて、中にいたなにかは逃げていた。




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