それなりに怖い話。

只野誠

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しんねん

しんねん

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 男は新年に買い物に行く。
 昨日まで、大晦日まで、仕事で忙しかったからだ。
 男のしている職種は正月だろうが関係はない。
 ただ、一月一日、今日は男が休みの順番だっただけだ。

 正月休みの期間はそうやって、順番に休みを取って仕事を回しているのだ。
 男からしたら、一日だけ休めてもな、とそう思うだけだか。

 正月らしい気分はこれっぽっちもない。

 それでも、正月ということもあってか、なぜか空気が澄んでいる気がする。
 気持ちがよく、車道を通る車もない。

 男が子供の時はスーパーも正月は休みだったが、最近ではそんなこともなく正月でも店が開いている。
 そのことに感謝しつつ買い物をする。
 まあ、男もどちらかというと正月に働いている側の人間なのだが。
 適当に食材を買い込む。
 特に特別な物は買わない。
 休みと言っても今日一日だけで明日も仕事なのだから。
 本格的な休みは、一月の中旬になってからだ。

 とはいえ、今日は正月であり、まだ元旦だ。
 お餅くらい買っても良いだろうと、男は餅を手に取る。
 ただの切り餅だ。

 年がら年中売っているようなただの餅だ。

 男は、餅なんて買うの何年ぶりだろうか? そう思い、レジを済ませ外に出る。
 家に帰っているときだ。

 男はそれを見た。

 なんというのだろうか。
 それは人間ではない。
 いや、人型はしている。
 が、どこが作りもののような、人形、そう、人形めいた一団がいるのだ。

 男はそれを一目見て、ああ、神様だ。
 そう思った。

 七福神、の一団の様に思えた。
 それは半透明であり、煌びやかであり絶えず光の中にいて、朗らかで、神聖であり、なによりも輝いている。
 その一団は正確には七福神ではない。そもそも七人どころがもっと人数がいる。
 だけど、それに類するような存在なのだと、男には理解できた。
 名も知らないような神様の一団、男にはそう思えた。
 その一団は笑顔で楽しそうにしながら、道路を挟んで反対側の道をゆっくりと歩いて行く。

 男はなんとなくその一団を目を閉じて拝む。
 男が目を開けたとき、その一団はもういなかったが、新年早々良いものを見た、そう考えた。

 きっと今年は良い年になる。

 男はそう確信したという。





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