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からす
からす
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鴉がいる。
何もかも真っ黒い鳥だ。
いつも最寄りの駅までの道、その途中にある高い木の上に留まっていて、男がその下を通るとカァカァと鳴く。
男にとってその鴉に特に思い入れがあるわけではない。
いつも通勤途中に、同じ場所に鴉がいる。それくらいの感覚だった。
だが、ある日を境に、その鴉がいなくなる。
男は、ああ、死んでしまったのか、と、なんとなくそう思った。
死因はなんだろう、男は考える。
今は暑い時期だ。全身真っ黒な鴉はさぞ暑いことだろう。
そのせいかもしれない。
餌がない、ということはないだろう。
よくゴミを散らかしている鴉を見ていた。
後は野良猫にやられた、とか、車に跳ねられたとか、寿命だったのかもしれない。
鴉が留まっていた木の下を通るたびに、男は鴉のことを思い出し、そんなことを考えていた。
その日、男は珍しく仕事が早く終わり、定時で帰宅していた。
まだ日が沈み切っていない、そんな時間にだ。
いつもの木の下を通る。
そうすると、カァと一鳴き聞こえて来る。
男は、ああ、生きていたのか、そう思って木の上を見上げる。
すると、そこには大きく羽を広げた鴉がいつもの場所に留まっている。
男が鴉の無事を見て安心していると、鴉は夕闇の空へと飛び立つ。
そこで男も気づく。
鴉というには、その鳥には三倍くらい大きい。
あまりにも大きすぎる。
まるで空を全て覆い尽くすほどの黒い影となって、鴉は空へと飛び立ったのだ。
カァと、鴉は鳴き、男の頭上を旋回している。
男はなんとなく鴉に親しみを感じていたが、鴉の方はそうでもなかったのかもしれない。
その証拠にその鴉は男に向かい急降下を始めた。
男もそんな大きな鴉に襲われたらたまったもんじゃない、とばかりに逃げ出す。
あの鴉がいつも同じ場所に居たのは、自分を獲物だと思っていたからかもしれない、そんなことを男は考えて直走った。
大きな鴉に追われ、男は公園のちょっとした森へと逃げ込んだ。
あの巨体なら森の中までは追ってこれない、そう考えてだ。
男が一息つくと、大きな木の脇に鴉が降りてきて男に向かい、カァ! と鳴いた。
どうやってここまで降りてきたんだ、と男がびっくりしたが、その鴉はまるで闇に溶けるようにその場に消えていった。
男がその場所を見ると、一匹の鴉が野良猫にやられたのか、無残な姿で死んでいた。
これを見つけてほしかったのか、と、男は考え、その鴉の躯を、あの大きな木の下まで持っていき、そこに埋めてやった。
それ以降、男が夕方にその木の下を通ると、今でも、カァ、と鴉の鳴き声が聞こえてくるという話だ。
何もかも真っ黒い鳥だ。
いつも最寄りの駅までの道、その途中にある高い木の上に留まっていて、男がその下を通るとカァカァと鳴く。
男にとってその鴉に特に思い入れがあるわけではない。
いつも通勤途中に、同じ場所に鴉がいる。それくらいの感覚だった。
だが、ある日を境に、その鴉がいなくなる。
男は、ああ、死んでしまったのか、と、なんとなくそう思った。
死因はなんだろう、男は考える。
今は暑い時期だ。全身真っ黒な鴉はさぞ暑いことだろう。
そのせいかもしれない。
餌がない、ということはないだろう。
よくゴミを散らかしている鴉を見ていた。
後は野良猫にやられた、とか、車に跳ねられたとか、寿命だったのかもしれない。
鴉が留まっていた木の下を通るたびに、男は鴉のことを思い出し、そんなことを考えていた。
その日、男は珍しく仕事が早く終わり、定時で帰宅していた。
まだ日が沈み切っていない、そんな時間にだ。
いつもの木の下を通る。
そうすると、カァと一鳴き聞こえて来る。
男は、ああ、生きていたのか、そう思って木の上を見上げる。
すると、そこには大きく羽を広げた鴉がいつもの場所に留まっている。
男が鴉の無事を見て安心していると、鴉は夕闇の空へと飛び立つ。
そこで男も気づく。
鴉というには、その鳥には三倍くらい大きい。
あまりにも大きすぎる。
まるで空を全て覆い尽くすほどの黒い影となって、鴉は空へと飛び立ったのだ。
カァと、鴉は鳴き、男の頭上を旋回している。
男はなんとなく鴉に親しみを感じていたが、鴉の方はそうでもなかったのかもしれない。
その証拠にその鴉は男に向かい急降下を始めた。
男もそんな大きな鴉に襲われたらたまったもんじゃない、とばかりに逃げ出す。
あの鴉がいつも同じ場所に居たのは、自分を獲物だと思っていたからかもしれない、そんなことを男は考えて直走った。
大きな鴉に追われ、男は公園のちょっとした森へと逃げ込んだ。
あの巨体なら森の中までは追ってこれない、そう考えてだ。
男が一息つくと、大きな木の脇に鴉が降りてきて男に向かい、カァ! と鳴いた。
どうやってここまで降りてきたんだ、と男がびっくりしたが、その鴉はまるで闇に溶けるようにその場に消えていった。
男がその場所を見ると、一匹の鴉が野良猫にやられたのか、無残な姿で死んでいた。
これを見つけてほしかったのか、と、男は考え、その鴉の躯を、あの大きな木の下まで持っていき、そこに埋めてやった。
それ以降、男が夕方にその木の下を通ると、今でも、カァ、と鴉の鳴き声が聞こえてくるという話だ。
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