12 / 22
第2章
1︰迷宮管理局 前編
しおりを挟む
ひだまり迷宮の探索が終わり、俺達は迷宮の外へ繋がる通行門の前に立っていた。
本来ならこのまま家に帰るのだが、手に入れたアイテムがUUR武器【機巧剣タクティクス】に、とんでもないアクセサリー【神皇の花飾り】を手に入れてしまったからそうもいかなくなった。
ということで、俺は迷宮管理局の支部へ行くことを決める。
「と、いうことでレアアイテムも手に入れたし、今日の配信はここまでかな。みんなぁー、今日も見てくれてありがとねぇー!」
〈おつおつー〉〈おつつー〉〈おつ〉〈おっつおっつ〉
〈気をつけて帰ってねー〉〈今日も楽しかったよー〉〈ボスとの戦い見たかった〉
〈あ、もう終わりか〉〈終わっちゃうのー?〉〈アヤメ気をつけてねー〉〈アヤメちゃん今日もさいこうに楽しかった気をつけて帰ってね〉
アヤメが手を振り、配信を見ていたリスナー達と別れの挨拶をする。
そして、完全に配信が終わると俺の方へアヤメは振り返り、持っていた【神皇の花飾り】を返してくれた。
「ありがとね、クロノくん。君のおかげで今日の配信は大成功だよ」
「どういたしまして。これからアヤメはどうするんだ?」
「ドローンに設置してるカメラの強化かな。途中でゴーレムの魔力を受けて配信が止まっちゃったみたいだし。クロノくんはどうするの?」
「迷宮管理局に行くよ。レアを二つも手に入れちゃったから、さすがに報告しないとマズそうだからな」
「そっか。じゃあ今日はここでお別れだね」
アヤメは少し寂しそうな顔をする。
うむ、さすが有名配信者だ。寂しそうな顔までかわいいなんて、すごいな。
『何イチャイチャしてるのよ、アンタ達。早くカメラのカスタマイズしに行くわよ』
「お前はどこをどう見たらイチャイチャしていると思うんだ、バニラ?」
『してるじゃない。ま、初々しいから目の保養になるけど今は時間がないの』
バニラがやれやれと頭を振っている。
いやまあ、確かにアヤメのかわいさに目を奪われていたけどさ、そんな言い方するか?
「あははっ、バニラは手厳しいから。後でしっかり言っておくから今回は許して。ね、クロノくん」
「まあ、別にいいけど」
アヤメはもう一度「あははっ」と笑いながら俺に「ありがと」と言ってくれる。
しかし、バニラの発言が予期せぬことだったためかちょっと困り顔だ。
手を合わせ、お礼を言いながら「ごめんねぇ~」と謝る彼女だが、それはそれでかわいらしい。
なぜこんなにも一つ一つの行動が可愛いのだろうか。
うーん、おそらくこれは天性の才能というものなんだろう。
『ちょっと、早くしないと店が閉まっちゃうわよ!』
「はいはーい。あ、そうだ。連絡先を交換しよ。これからクロノくんには配信を手伝ってもらうんだし」
「あ、そうだな。じゃあ俺のコードはこれでっと」
俺はスマホを取り出し、メッセージアプリを起動してコードを表示した。
俺の行動を見たアヤメはちょっと嬉しそうに笑い、スマホを取り出し「読み取り読み取りーっと」と言葉を出しながらコードを読み取る。
直後、【連絡先を追加したよっ】という音声が俺のスマホから放たれた。
「それじゃあ、次の企画が決まったら連絡するね」
「わかった。アヤメ、気をつけて帰れよー」
「うん、またねー!」
アヤメは慌ただしくしながらバニラと一緒に迷宮の外へ出ていった。
有名配信者になると時間にも追われるんだろう。
そんなことを思いつつ、俺も迷宮の外へ出ることにする。
目指すのは町の中心部に建つ迷宮管理局の支部だ。
「あんまり気は進まないんだけどなぁー」
なんせそこには、俺をよく知る人がいる。
だから怒られそうで嫌なんだけど、まあ状況が状況だから行くしかない。
俺はため息を吐きながらまずは町の中心部を目指す。
重たい足を動かしながら駅へ行き、転移床を踏んだ。
一瞬で移動し、そのまま外へ出ると数年前まで寂れていた商店街が目に入った。
迷宮が出現するまで、ほとんどの店がシャッターが降りている商店街だったけど今は全部営業している。
これは迷宮の出現と共に探索者が来るようになり、活気を取り戻したからだ。
だから商店街は地元の人や訪れる観光客だけでなく、探索者も相手に商売をしている店であふれていた。
まさに迷宮さまさまだ。
経済効果はどのくらいなのかわからないけど、一度死んだ商店街を復活させてしまったんだからな。
そんな蘇った商店街通りを進み、俺はその奥にある建物に目を向ける。
それはどの建物よりも一際大きなビルで、掲げられた看板には【迷宮管理局・尾俵支部】という文字があった。
俺はそのビルへ入り、受付をしているおじさんに声をかける。
おじさんはやつれた顔でぎこちない笑顔を浮かべ、こう言葉を口にした。
「いらっしゃい。こんな時間に迷宮探索かい?」
「えっと、アイテムの報告をしたくて……いいですか?」
「アイテムの報告? ああ、あれね。ちょっと待ってて」
「え? あ、はい」
おじさんはそう言葉を告げると、テーブルの上を漁り始めた。
しかし、目当てのものが見つからなかったのか顔が曇る。
なぜだかわからないけど「あれ?」という疑問を浮かべた表情をしていた。
「ごめんね、もうちょっと待ってて」
「はぁ……」
「はて? 書類はどこにやったんだっけかな?」
次第に真剣な表情へ変わり、そこには必要な書類がないと判断したのか何かを探しに事務所の奥へ消えていった。
取り残された俺は、とりあえず受付カウンターの前で立ち尽くす。
しかし、いくら待ってもおじさんは帰ってこない。
そんなに探している書類が見つからないのかな?
そもそもだが、アイテムの報告に書類は必要だったんだろうか。
うーん、ここの職員じゃないからわからないなぁ……
本来ならこのまま家に帰るのだが、手に入れたアイテムがUUR武器【機巧剣タクティクス】に、とんでもないアクセサリー【神皇の花飾り】を手に入れてしまったからそうもいかなくなった。
ということで、俺は迷宮管理局の支部へ行くことを決める。
「と、いうことでレアアイテムも手に入れたし、今日の配信はここまでかな。みんなぁー、今日も見てくれてありがとねぇー!」
〈おつおつー〉〈おつつー〉〈おつ〉〈おっつおっつ〉
〈気をつけて帰ってねー〉〈今日も楽しかったよー〉〈ボスとの戦い見たかった〉
〈あ、もう終わりか〉〈終わっちゃうのー?〉〈アヤメ気をつけてねー〉〈アヤメちゃん今日もさいこうに楽しかった気をつけて帰ってね〉
アヤメが手を振り、配信を見ていたリスナー達と別れの挨拶をする。
そして、完全に配信が終わると俺の方へアヤメは振り返り、持っていた【神皇の花飾り】を返してくれた。
「ありがとね、クロノくん。君のおかげで今日の配信は大成功だよ」
「どういたしまして。これからアヤメはどうするんだ?」
「ドローンに設置してるカメラの強化かな。途中でゴーレムの魔力を受けて配信が止まっちゃったみたいだし。クロノくんはどうするの?」
「迷宮管理局に行くよ。レアを二つも手に入れちゃったから、さすがに報告しないとマズそうだからな」
「そっか。じゃあ今日はここでお別れだね」
アヤメは少し寂しそうな顔をする。
うむ、さすが有名配信者だ。寂しそうな顔までかわいいなんて、すごいな。
『何イチャイチャしてるのよ、アンタ達。早くカメラのカスタマイズしに行くわよ』
「お前はどこをどう見たらイチャイチャしていると思うんだ、バニラ?」
『してるじゃない。ま、初々しいから目の保養になるけど今は時間がないの』
バニラがやれやれと頭を振っている。
いやまあ、確かにアヤメのかわいさに目を奪われていたけどさ、そんな言い方するか?
「あははっ、バニラは手厳しいから。後でしっかり言っておくから今回は許して。ね、クロノくん」
「まあ、別にいいけど」
アヤメはもう一度「あははっ」と笑いながら俺に「ありがと」と言ってくれる。
しかし、バニラの発言が予期せぬことだったためかちょっと困り顔だ。
手を合わせ、お礼を言いながら「ごめんねぇ~」と謝る彼女だが、それはそれでかわいらしい。
なぜこんなにも一つ一つの行動が可愛いのだろうか。
うーん、おそらくこれは天性の才能というものなんだろう。
『ちょっと、早くしないと店が閉まっちゃうわよ!』
「はいはーい。あ、そうだ。連絡先を交換しよ。これからクロノくんには配信を手伝ってもらうんだし」
「あ、そうだな。じゃあ俺のコードはこれでっと」
俺はスマホを取り出し、メッセージアプリを起動してコードを表示した。
俺の行動を見たアヤメはちょっと嬉しそうに笑い、スマホを取り出し「読み取り読み取りーっと」と言葉を出しながらコードを読み取る。
直後、【連絡先を追加したよっ】という音声が俺のスマホから放たれた。
「それじゃあ、次の企画が決まったら連絡するね」
「わかった。アヤメ、気をつけて帰れよー」
「うん、またねー!」
アヤメは慌ただしくしながらバニラと一緒に迷宮の外へ出ていった。
有名配信者になると時間にも追われるんだろう。
そんなことを思いつつ、俺も迷宮の外へ出ることにする。
目指すのは町の中心部に建つ迷宮管理局の支部だ。
「あんまり気は進まないんだけどなぁー」
なんせそこには、俺をよく知る人がいる。
だから怒られそうで嫌なんだけど、まあ状況が状況だから行くしかない。
俺はため息を吐きながらまずは町の中心部を目指す。
重たい足を動かしながら駅へ行き、転移床を踏んだ。
一瞬で移動し、そのまま外へ出ると数年前まで寂れていた商店街が目に入った。
迷宮が出現するまで、ほとんどの店がシャッターが降りている商店街だったけど今は全部営業している。
これは迷宮の出現と共に探索者が来るようになり、活気を取り戻したからだ。
だから商店街は地元の人や訪れる観光客だけでなく、探索者も相手に商売をしている店であふれていた。
まさに迷宮さまさまだ。
経済効果はどのくらいなのかわからないけど、一度死んだ商店街を復活させてしまったんだからな。
そんな蘇った商店街通りを進み、俺はその奥にある建物に目を向ける。
それはどの建物よりも一際大きなビルで、掲げられた看板には【迷宮管理局・尾俵支部】という文字があった。
俺はそのビルへ入り、受付をしているおじさんに声をかける。
おじさんはやつれた顔でぎこちない笑顔を浮かべ、こう言葉を口にした。
「いらっしゃい。こんな時間に迷宮探索かい?」
「えっと、アイテムの報告をしたくて……いいですか?」
「アイテムの報告? ああ、あれね。ちょっと待ってて」
「え? あ、はい」
おじさんはそう言葉を告げると、テーブルの上を漁り始めた。
しかし、目当てのものが見つからなかったのか顔が曇る。
なぜだかわからないけど「あれ?」という疑問を浮かべた表情をしていた。
「ごめんね、もうちょっと待ってて」
「はぁ……」
「はて? 書類はどこにやったんだっけかな?」
次第に真剣な表情へ変わり、そこには必要な書類がないと判断したのか何かを探しに事務所の奥へ消えていった。
取り残された俺は、とりあえず受付カウンターの前で立ち尽くす。
しかし、いくら待ってもおじさんは帰ってこない。
そんなに探している書類が見つからないのかな?
そもそもだが、アイテムの報告に書類は必要だったんだろうか。
うーん、ここの職員じゃないからわからないなぁ……
104
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる