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結婚生活
大嫌い
しおりを挟む家に戻るなり、ゼイルドに寝室へと連れていかれた。
「旦那様、一つお聞きしてもよろしいですか」
シャルロットは今からするであろう行為を少しでも引き延ばすため、ゼイルドに向き直る。
「…なんだ」
「なぜユーリお兄様にあんな風な言い方をされたのですか」
「俺を責めるのか」
「そうではありません。確かにユーリお兄様と二人で話をしていました。けれど、それなりの距離は取っていたでしょう」
欲を言えば、もっと近くに寄りたかった。昔のように手を繋いで、抱き締めて欲しかった。けれどそれは叶わないから我慢していた。のに。
「…ならば逆に聞くが」
「!」
「俺はお前にあの男が話しかけるのを見ていた。お前があの男を庇った理由はなんだ」
「それは、…旦那様が、ユーリお兄様に厳しい物言いをなさるからですわ」
「…なんだと?」
「ユーリお兄様は私を心配してくださっていたのに、あんな言い方をされれば誰だって嫌になります。私は元から旦那様が大嫌いですが、ユーリお兄様は…」
「なんだと?俺のことが嫌いだと?」
「あら、知りませんでしたか?私、旦那様が大嫌いですわよ」
初めから嫌いだったのではない。
無神経な行動や発言に、愛想を尽かしたのだ。
「…おれのことが、嫌い、だと」
「えぇ、大嫌いです!」
愛そうとした。そのための努力だって、何度もした。けれどその度にこの男は裏切ってきた。酷い言い回しをして、気に入らなければ物に当たる。
「まさかご自分が好かれているとお思いですか?」
「な、にを…」
「私が一度でもあなた様をゼスと呼んだことがありまして?私が貴方を旦那様と呼ぶのは、貴方の名前を口にしたくもないからよ!」
義両親に嫌味を言われる度に笑うこの男が、人にはネチネチ言うくせに自分はてんで自由なこの男が、人の大切なものを簡単に棄てるこの男が、私は大嫌い。
「旦那様はもう覚えてないでしょう?私がこの家に来たときに持っていた、パールのネックレス。あれは大切な、お父様に初めて頂いたプレゼント。私があの時泣いて探しているのを見て、貴方は笑っていましたわよね。そんなもの、また買えばいい、と」
「あ、あれはもう古くて、傷だらけで、お前には相応しくないと思って…!お、お義父さんから貰ったものなのだと知っていれば、俺だって!」
「いいえ、そんなの関係ない。だってあのネックレスは結局見つからず終いでしたもの。私にとっての大切な思い出を貴方は棄てた。それに変わりありませんわ」
本性を知ってから、この男にわざわざそんな説明なんかしようと思わなくなった。けれど最低限の良識があるのなら、人の物を勝手に棄てようなんて思わないはずだ。
「ハッキリ言いますけれど、私は貴方なんかとの子供が出来るなんて、まっぴらごめんです!」
そこまで言い切ると、ゼイルドは黙り込んだ。
その日、ゼイルドは何もすることなく、シャルロットを置いて自室へと帰っていった。
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