さぁ、離縁して下さいませ。

伊月 慧

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結婚生活

幸せに

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 周りの女性はみんな言う。

「私の夫も、ゼイルド様のようでしたらよかったですのに…」

 貴族は妾を持って当たり前のこの時代に、ゼイルドは妾を作るでもなく、他の女のところへ行くでもなく、シャルロットの所にだけ帰ってくる。
 周りはそれがシャルロットに対する愛情が多大なのだと言うが、それは違う。
 ゼイルドは面倒事を増やしたくないだけだ。

「…他に妾を作ってくれた方が、まだありがたかったわよ…」

 優しくしてくれる、心配してくれている父を、幸せになるようにとここに送り出してくれた父を、私は心配させることは出来ない。だから唯一心を許せるナカバにも本心は見せなかった。

「シャルロット様がお幸せになられて、本当に良かった」

 それがナカバの口癖だ。

「旦那様は今日も、シャルロット様のために早くお帰りになるそうです」

 帰ってこなくてもいいわ、と言いそうになって深呼吸する。

「まぁ、嬉しい。旦那様が私のために?」

 わざとらしい演技をしながら、大好きなナカバに嘘をつく。これは慣れようだ。

(…私は、ひとり)

 ユーリお兄様にも、きっともう会えない。旦那様はあんなだし。姉は元から頼るわけがない。義母なんて、もっとだ。

「…ねぇ、ナカバ」
「はい?シャルロット様!」
「……私、早く旦那様との子供が欲しいわ」

 そうしたら、解放される。
 こんな風に苦しくなることはない。
 辛くて寂しい日々を送ることも、大好きなナカバに嘘をつくこともなくなる。

「シャルロット様!いいですわねぇ、シャルロット様のお子様なら、きっとシャルロット様に似て…」
「いいえ、旦那様にうんと似て欲しいわ」

 そうすれば、情が移ったりなんかしない。連れていこうなんて絶対に思わない。
 子供は愛の結晶というけれど、愛なんて存在しない私たち夫婦には本来ならば子供すらも作りたくない。

(幸せに、なりたかった)

 母が義母に苛められているのを見ていたから、母が自分の存在が邪魔だと気にしていたから、私は女にそんな思いをさせるような人とは結婚したくなかった。
 ゼイルドは他の女に興味がないようだけれど、私が言いたいのはそういうことではない。
 私が結婚したかったのは、生涯自分だけを愛し続けてくれるような人。それだけだった。それしか求めていなかった。
 外見や容姿なんてどうでも良かった。
 幸せに、なりたかった。
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