さぁ、離縁して下さいませ。

伊月 慧

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別居生活

事件③

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 フィリアを自分のものにしたかった。


 男の名前を、俺は偽って呼び出した。

 のこのこと現れたフィリアに心が張り裂けそうになった。

「…フィリア」
「アズル?どこ?」
「ここ、だよ」
「きゃっ…!」

 彼女は頬を赤くして、俺の顔を見た瞬間に真っ青になった。

「ゼスっ…!?」
「…!」

 咄嗟に呼ばれた愛称に、ドキリとした。
 何故、このタイミングで言うのか。

「や、やめっ…なにするの!!」
「…アンタを俺のモンにするんだよ」

 彼女が欲しい。欲しくてたまらない。

「いやぁぁぁぁあ!!」

 彼女は悲痛な叫び声と共に、空き部屋の窓辺へと寄った。

「近付かないで…!」

 女だったら、こうされたら皆喜んだのに。どうしてお前は。

「…近付いたらどうかなるのかよ?」

 ここは三階だ。それに服も破れた今、飛び降りる覚悟なんてないだろう?

 一歩、また一歩。

 あと一歩、近付けば触れられた、のに。

「こうなるのよ」

 ニコリと笑って、彼女は飛び降りた。

「フィリア!!」



 その後すぐに、医師が来た。
 けれどフィリアは結局、未だに目覚めないままだ。


「…ゼイルド様」

 冷ややかな視線を送ってきたのは、バロンだった。

「…父さんは?」
「貴方のしでかしたことの後始末に追われておりますが」

 バロンの嫌味も言い返せないほどに、ゼイルドは自分の過ちを理解していた。

「…あなたはイルタナー家の次期当主の自覚がないようですね。…昔と比べて少しは成長したと思いましたが…私の勘違いだったようです」


 そのすぐ後のことだ。

 父が死んだ。過労だった。

 日々、俺のせいで頭を悩ませていた父だ。最後まで俺は、親不孝者だった。

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