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結婚生活②
初恋は淡く
しおりを挟むフィリアが今も、眠り続けている。
父の知り合いが経営している病院の最上階の、角の部屋。まるで死んだように、それでも生きている彼女が眠っている。
何度も足を運ぼうとした。その度に怖くなって、立ちすくんで、みっともなく座り込んだ。泣きたいほど怖かったけれど、俺が泣いていいはずもなく、ただ、眠れぬ夜をさ迷った。
イルタナー伯爵家という肩書きがあれば、誰でも平伏すなんて、バカなことを考えていた自分が恨めしい。
けれど、正妻にしてやると言ったことは偽心ではない。本当に、…いや、自分がそうしたかっただけなのだろう。
フィリアとの結婚を目前に控えていたアズルは、今もフィリアの部屋へと通い詰めているらしい。今でも、目覚めるのを願って。
もう誰かを想ったりしない。
そう、決めた。
それなのに。
「わっ……申し訳ない…」
たった一瞬のことだった。
「こ、こちらこそ申し訳ございません…」
フィリアへの初恋という淡い名の感情は一瞬にして消えた。そして、残ったのはシャルロットへの恋情と、フィリアへのただの、罪悪感だった。
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