さぁ、離縁して下さいませ。

伊月 慧

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結婚生活②

自分の気持ち

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 ふと、自室にある本にシャルロットは目を奪われた。

「あら…?」

 それはシャルロットがこの家に嫁いで来る前、幼い頃からずっと好きだった小説だ。
 冒険物なのだけれど、恋愛色が少し強かったのが印象的だった。描写がとにかく上手くて、読んでいるうちに悲しくなったので結局最後まで読めていない。

(今日はもう、することもないし。…久しぶりに、本でも読もうかしら)


***


 読んでいて悲しくなるのは、やはり変わらなかった。
 主人公の少年が、旅先で出会った女性に惹かれる部分は何ともいえない。今まで読んできたハッピーエンドではなく、かと言ってバッドエンドでもない。
 女性には婚約者がいて、主人公の少年はどうすることも出来ずに、身が引き裂かれるような気持ちになるのだ。
 好きになった人に、もう相手がいる。それは一体どんな気持ちだろう。
 なぜか主人公の少年にゼス様を重ねてしまった。ゼス様は「終わった」と言った。今はもう、本当にゼス様の中でも吹っ切れたこと。なのにどうして何も関係のない自分がこんなにも、あの女性に対してモヤモヤするのか分からない。
 小説に『嫉妬』だとか『恋煩い』とかの言葉を見つける度に、心がどくりと高鳴る。
 有り得ないことだ。私は彼をあんなに嫌っていたのだから、今更好き、なんて。私たちはあくまで仮面夫婦。そこに特別な感情など要らない。

 ーーけれど?
 もし、ゼス様が心から慕う人が出来て、その人を愛人としてこの家に囲うと言い出したら?
 私は子供を産む。この子が男の子だったら私の役目は終わるに等しい。だからなんの権限も口を出す理由もなくなる。
 それなのに、それを考えたくないと思う自分がいる。
 自分の気持ちが、もう分からない。
 
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