春、陽気の良い

角砂糖

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ある晴れた、撫子の揺れる

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翌朝。晴子は忽然と姿を消した。
それはもう大変な大事おおごとになった。
こんな小さな村で若い娘が消えてしまったのだ。
朝から村総出で捜索をしたが、彼女は見つからなかった。
「晴子……ねえ!晴子!今日は一緒にお昼を食べようって……言ったじゃない……!!!どこにいるの……っ!」
亜莉子の悲痛な声に、村の大人達は声を掛けることも出来なかった。
私も近寄ろうか迷ってしばらくうろうろしていたが、どうしても話しかける事が出来なかった。
……正直、この村で若い女性1人消えても不思議なことでは無い、と思う…。
この辺りは過疎が進んでいる上に山の中で、死角は多い。
亜莉子には申し訳無いが、きっと晴子は見つからないのでは無いか、と思っていた。
 それからしばらく、亜莉子は体調を崩し、寝込んでしまった。
村の大人達は……
「あんな可愛くていい子に限ってこんな思いして……。可哀想にねぇ。」
「晴子ちゃんはどこに行っちゃったんだかなぁ…。」
などと話していた。
亜莉子は誰に対しても優しく、周りから本当に好かれているのだ。
だからこそ周りからの同情の声が止まなかった。
 体調が回復すると、私は亜莉子に話したいと言われていつもの東屋に呼ばれた。
「ねぇ……姫実。村の大人達は私に同情してくれるわ。その気持ちは凄く伝わってくるし、声だって入ってくる。
でも、その気持ちが辛いの。晴子は?晴子はいなくなってしまった、誘拐よ、これは誘拐事件だわ…?
なのに、私にばかり同情の気持ちを寄せて……辛いの。分かって…くれる…?」
亜莉子の気持ちは痛いほど伝わった。
村を歩いていると、大人達は皆亜莉子の心配ばかりで、晴子はどこへ行ったのかと言うことくらいしか話していない。
「分かるわ、皆酷い。皆が心の優しい、素敵なところだと思ってたのに…。」
 晴子の家は貧しかった。
洋服は亜莉子のようにたくさんは持っていないし、勉強だって家事をしながらでは満足に出来ない。
いつも亜莉子に教えて貰っていた。
「なんでこうなってしまうの?どうして…晴子は、とってもいい子なの。
料理なんて、私よりも晴子の方が上手だし、子供をあやすのも晴子の方が上手。いいお母さんになれるわ、彼女は…。」
「そうなの……きっとみんな表面しか見ていないのね、」
亜莉子は立ち上がって、姫実の前に立った。
「私は絶対に諦めない…!絶対、1人でも探し出して見せるわ!」
突然立ち上がった亜莉子にびっくりしたものの、私もすぐに賛同した。
「私だって!大切な友達なんだもの。協力するわ!」
この日は、2人でどこを探すか、どうやって探すかと作戦会議をして別れた。
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