おしとやかな令嬢だと思われていますが、実は王国内で私だけ無限にスキルを取得できるので、裏では最強冒険者として暗躍しています。

月海水

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魔力汚染

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「逃げられはしないわよ」

 赤フードをかぶった私は、ベルドロール家の奥、おそらくバルゴの私室まで、当主バルゴ・ベルドロールを追い詰めていた。

 魔法が使えるわけでもなければ、強いスキルが使えるわけでもない。

 そんな悪党を追い詰めることは、さっきまでのタルクとの戦闘と比べれば容易いことだった。

「赤フードの冒険者……思っていた以上の脅威だ。早めに不意を突いて始末しておくべきだったな」

 バルゴは憎々しげに言う。

 だが、不意打ちを受けたところでベルドロールの黒装束たちの攻撃は、私のパッシブスキルに阻まれて、ろくに効果を発揮しないだろう。

 つまり、最初からバルゴとベルドロール家に勝ち目などなかったのだ。

 だが、追い詰められて逃げ場を失ったバルゴに、まだ会話をする余裕があることが気になった。

 ーー早めに倒してしまった方がいい。

 私がバルゴに接近しようとすると。

 先ほどの黒装束連中がどこからか現れ、バルゴの盾になるように立ちはだかった。

「なんとしても時間を稼げ! その間に私は最終手段を使うッ!」

 そして、バルゴが取り出したのは小さな筒状の何かを取り出した。先端は尖り、透明な筒の中には濁った液体が入っている。

「タルクなどあくまで実験体に過ぎぬ。こんなものを私自身が接種することは想定していなかったが……もはや、ベルドロール家に未来はない」

 私はバルゴの言葉で気づく。

 彼が手に持っているのは、何かの注入器だ。

 そして、おそらくあの液体はタルクにも注入されたもの。

「これは人間を魔力汚染させ、強制的に魔法使いへ仕立て上げる鉱石液だよ。魔力鉱石を砕き、特殊な製法でようやく作り上げたものだというのに……これを世に広めることができないのが残念だ」

「魔力汚染による、強制的な魔法使い化……」

 ようやく、魔法使いになるための方法が判明した。

 つまりは大量の魔力を流し込んで、魔力汚染を強制的に引き起こすことで、自ら化け物になるということだ。

 そんな風に作られた魔法使いは長く生きることはできないだろう。

 やはり、世の中に認められるような技術ではない。

「この注入器には通常の百倍の濃度の鉱石液が入っている。これを注入すれば、私はとんでもない化け物となるだろう。だが、それでもーーエルバルク家に負けたままでは、プライドが許さないのだ」

 そう言って、バルゴは注入器を自らの腕に刺した。
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